ついに銃撃事件にまで発展…Kendrick LamarとDrakeのビーフを過去の関係性から振り返る


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アメリカのメディアを中心に、日本でもSNSで見ない日はないKendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)とDrake(ドレイク)のビーフ。block.fmではKendrick Lamarが「Euphoria」をリリースした時点までを記事で掲載してきたが、その後5月に入り3日にKendrick Lamar「6:16 in L.A.」、Drake「Family Matters」、Drake「Buried Alive」、Kendrick Lamar「Meet the Grahams」と矢継ぎ早にディス曲の応酬となり、その後も4日にKendrick Lamar「Not Like Us」、翌日5日にDrake「The Heart Part 6」と続いている。
しかし7日になって楽曲の応酬だけでは収まらなくなる事態が発生。Drakeの自宅で勤務していたセキュリティーガードの1人が撃たれる銃撃事件が起こってしまった。
通報を受けた警察は7日午前2時ごろに現地に到着。容疑者と見られる複数の人物は車で逃走し、犯人はわからないまま。撃たれたセキュリティーガードは病院に搬送され、重傷となっている。
さらにその翌日にはDrakeの自宅に侵入しようとした人物が拘束されており、不穏な空気は続いたままだ。ヒップホップを長年追いかけているファンであれば、誰もがThe Notorious B.I.G.(ノトーリアス・B.I.G.)と2Pac(2・パック)の東西抗争を思い出すことだろう。あの時のように最悪の事態とならぬよう願うばかりだ。
東西抗争を知るベテランたちの意見
上記した東西抗争は2人の偉大なるラッパーの死というヒップホップ史上最悪の結果を招いた。同じ時代を生きた先人たちは、今のKendrick LamarとDrakeのビーフをどう見ているのか。2人のベテランの意見を紹介しよう。
まず昨年、ヒップホップ50周年イベントなどで指揮を取ったThe Roots(ザ・ルーツ)のQuestlove(クエストラブ)。Instagramで「この戦争に誰も勝者はいない」とし、「(このビーフは)スキルの争いではなく、レスリングの泥試合のようになってしまった。女性や子供も巻き込み、あらゆる手段でテイクダウンを取ろうとしている。傍観者は何が起こっても自分達に関係のないかのように“RIP”と投稿するだけだ」と、もはや2人だけの争いではない曲の内容に苦言を呈し、最後に「ヒップホップは本当に終わりだ」と締めた。
かつてはN.W.A.のメンバーとしていくつもの争い事に巻き込まれてきた西海岸代表のIce Cube(アイス・キューブ)は「ビーフは揮発性のもの」と例え、「過去のディス曲はヒップホップコミュニティーの中で収まったが今は世界中に広がってしまう」とラッパーの責任感を説いており、「ラッパーのビーフは見たくもないし、キャリアの中で必要なことだとも思わない」とインタビューで応えた。
Ice Cube says he don't like seeing rappers beef and says you have to be careful that a rap beef doesn't turn into a murder, while reacting to the Kendrick Lamar and J. Cole beef before J. Cole apologized.
(🎥 @etalkCTV ) pic.twitter.com/DWVg2MLQpq
— The Art Of Dialogue (@ArtOfDialogue_) May 7, 2024
この2人は本当に長年、このシーンに関わってきただけに大事な意見だ。ヒップホップはかつてのような規模ではなくポップカルチャーともクロスオーバーする時代に、とっくに突入している。それを踏まえて自分の身の回りやそれぞれのファンに悪影響を及ぼすまで展開されてしまえば、不完全燃焼であれ辞めどきなのは間違い無いだろう。
ストリーミングの数字に見るファンの反応
これだけ注目を集めれば最新のディス曲だけでなく、過去の曲にも影響が出てくる。それぞれのストリーミングサイトにおける再生数ではKendrick Lamarはディス曲を除いても49%上昇し、過去のアルバム『Damn』や『Good Kid, M.A.A.D. City』の数字が伸びていると、ビルボードが発表。反対にDrakeはディス曲を含めても4.9%ほど減少。アルバム『For All the Dogs』への影響もない結果となっている。
この数字だけを比べるとKendrick Lamarの勝利となるが、2人を比べた時にリリース量の違いもある。DrakeはKendrick Lamarに比べてコンスタントにシングルやフィーチャリング曲、アルバムやミックステープをリリースしており普段から聴かれている存在で、Kendrick Lamarのファンはこれだけハイペースに曲を(ディス曲だとしても)リリースしていること自体信じられないことだろう。
かつての盟友がどうして
最新の状況を知るのにも一苦労だが、ここで2人の過去の関係性を振り返ってみよう。2010年にアルバム『Thank Me Later』でデビューしたDrakeは、翌年のアルバム『Take Care』でKendrick Lamarをフィーチャーしている。『Take Care』の数ヶ月前にデビューアルバム『Section.80』をリリースしたKendrick Lamarにとって、名前を売るには格好の材料ともなったはずだ。
2012年になるとDrakeはアメリカとヨーロッパを周る「Club Paradise Tour」の数日間で、Kendrick Lamarをオープニングアクトに抜擢。この時今回のビーフにも絡んでいるA$AP Rocky(エイサップ・ロッキー)もオープニングアクトを務めていたというのも、今となっては…。この後3人のコラボに2 Chainz(2・チェインズ)も含めたシングル「F******’ Problems」もリリース。この曲はA$AP Rockyのデビューアルバム『Long. Live. ASAP』に収録された。
2013年8月。ヒップホップシーンはBig Sean(ビッグ・ショーン)の楽曲「Contrlol」におけるKendrick Lamarのバースに衝撃を受ける。「お前らのことは愛してるぜ。けどやってやる」とDrakeやA$AP Rocky、J. Cole,(J・コール)、Meek Mill(ミーク・ミル)らの名前を出したのだ。これに対してDrakeはビルボードのインタビューで「熱血的な意見でそれ以上でも以下でもない」とコンペティションのひとつとして捉えていた。今回のビーフもそれだけだったはずなのだ。
しかし同年10月にBET Hip-Hop Awardsのサイファー企画で改めて、今度はDrakeに向けてディスを送った。名前は出していないもののDrakeとわかる内容に加え「お前はフェイクだ」とディス。この時もDrakeはアルバムの準備とレベルが違うという理由で反応を見せることはなかった。
そして2015年から2016年にかけて。Kendrick Lamarは自身の楽曲「King Kunta」にてDrakeのゴーストライター疑惑に触れると、Drakeはゲスト参加したThe Game(ザ・ゲーム)「100」にて「もし俺がコンシャスなラップをしていたら、お前のファンは全員俺のファンだろうな」と応戦。Kendrick LamarはさらにDr. Dre(ドクター・ドレ)のアルバム『Compton』内でもDrakeをディスしている。
その後冷戦状態となっていたがDrakeとJ. Coleによる「First Person Shooter」からMetro Boomin(メトロ・ブーミン)、Future(フューチャー)そしてKendrick Lamarによる「Like That」。その後の曲へと発展していった。
残念ながら事件にまで発展してしまった今回のビーフ。今後曲がリリースされるとしても、2人ともが社会的な影響力を踏まえた上で、知的なスキルのやり合いに戻して欲しい。ビーフはヒップホップカルチャーのひとつであるとはいえ、当初から書いているようにコンペティション=スキルの競い合いに留まるべきなのだ。






