ディスの応酬から一転、公開謝罪へ。Kendrick LamarとJ. Cole、Drakeも巻き込むディス曲騒動の行方


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これまで6作品で全米1位を獲得しているラッパーのFuture(フューチャー)と、2023年にはコーチェラフェスティバルにも出演したDJ・プロデューサーであるMetro Boomin(メトロ・ブーミン)によるジョイントアルバム『We Don’t Trust You』が3月20日にリリースされ、ビルボードチャートで初登場1位、10位以内にも計5曲がランクインするなどチャートを席巻。
Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)をフィーチャーした「Like That」はシングルとしても1位を獲得し、Metro Boominにとってはレコーディング・アーティストとして初の首位獲得となった。しかし最も注目を集めたのは、Kendrick LamarがDrake(ドレイク)とJ. Cole(J・コール)に向けた痛烈なディスだ。
DrakeとJ. Coleのコラボ曲に対するレスポンス
J. Coleは、昨年10月にリリースされたDrakeのアルバム『For All the Dogs』収録の「First Person Shooter」(全米1位獲得)にて、「誰がやばいって? Kendrick Lamarか? Drakeか? それとも俺か?」とラップし、この3人を“BIG 3”と例えた。
これに対し「Like That」のKendrick Lamarは「Big 3ってなんだよ、Big Meだけだろうが」とリリックを引用し真っ向から口撃。Drakeに対しても「Prince(プリンス)はMichael Jackson(マイケル・ジャクソン)よりも長生きしたぜ」とラップしている。
このリリックの背景には、かつてDrakeがMichael Jacksonの未発表音源を買取り、自分の曲で使用したことに起因する潜在的なディスがあり、なおかつKendrick Lamarは生前のPrinceと共にステージに立ったことがあるという、いろんな意味を重ねた巧みなリリックだ。
以上が「Like That」でKendrick LamarがDrakeとJ. Coleをディスしたという概要。しかしこのディスは一般的に言う「ビーフ」とは遠いところにあることを意識しておきたい。
ビーフではない、健全なスキル争い
使い古された言葉だが“ナンバーワンイズム”とはラップにおける基本的な考え方のひとつだ。今回のKendrick Lamarは、それを思い出させてくれる。
近年取り沙汰されるディスはビーフとすぐに結びついてしまい、互いの地元やチーム同士における抗争、犯罪、最悪それ以上の事態にまで発展してしまっているが、Kendrick LamarはDrakeやJ. Coleの地元や仲間内のことに関しては触れていない。このことからもシンプルに「ナンバーワンは俺だ」と言う姿勢のもとに放たれたディスであると考えられる。
そもそもKendrick Lamarが他のラッパーをディスすることは今に始まったことではなく、2013年にはBig Sean(ビッグ・ショーン)の曲「Control」に参加しDrakeやJ. Coleだけでなく、A$AP Rocky(エイサップ・ロッキー)、Meek Mill(ミーク・ミル)、Tyler, The Creator(タイラー・ザ・クリエイター)ら10名以上の名前を出し「これはヒップホップだ。お前らのことは愛してるけど、やっちまうぜ」とラップ。
この曲もビーフに発展するようなものではなく“ヒップホップ”の上で成り立つ健全なスキル争い、コンペティティブであることを「This is hip-hop」という一言だけで成立させている。強気ではあるがあくまで純粋なKendrick Lamarの姿勢がわかるだろう。そして「Control」から10年以上が経過した「Like That」もまた同じ気持ちから来ているはずだ。
J. Coleが謝罪した理由
そんなKendrick Lamar「Like That」を受けて、4月5日にはJ. Coleが突如アルバム『Might Delete Later』をリリース。作品のラストに収録された「7 Minute Drill」では、「1作目(のアルバム)は傑作だったけど、最新作は最悪だ。2作目は退屈だし、3作目は素晴らしいけどあれがお前の全盛期だろ」などと、Kendrick Lamarに対してディスを返した。
https://youtu.be/5KRMLBh3-N4?si=VOtlG1DnvVEUlgwW
しかしリリースから2日後、自身が主宰するレーベルDreamvilleのフェスに登場したJ. Coleは、ライブ中のMCでなんとKendrick Lamarに謝罪。「7 Minute Drill」のディスを「人生で最もダサいことをしてしまった」と、フェスに集まった観客の前で後悔した。
「『Might Delete Later』については本当に誇りに思っている。ただ一つを覗いて。」「みんなもKendrick Lamarが最高のMCのひとりだと思うだろ?俺もだ」「もし彼がまた反撃してきたとしても、俺はそれを堂々と受け止めて、前に進むよ」
リリースしてからの2日間、全然眠れなかったと後悔を口にしたJ. Cole。自分の精神の平穏を乱すことをしてしまった、これからは自分が本当に追求するべき道に戻るとし、「7 Minute Drill」をストリーミングサービスから削除するつもりだと話した。
J. Cole apologizes to Kendrick Lamar for dissing him on ‘7 Minute Drill’ at Dreamville Fest…
“How many of y’all think Kendrick Lamar is one of the greatest ever to pick up a mic”
“I haven’t been sleeping right the last few days… Ib, we taking that diss off streaming… https://t.co/gafW1g6Hw9
— NFR Podcast (@nfr_podcast) April 8, 2024
アルバムタイトル『Might Delete Later』は「あとで消す」という意味だが、「7 Minute Drill」に関して、J. Coleは不必要で質の低いディスだったと考えていることが伝わってくる。ヒップホップ史上、幾度となく繰り広げられてきたディスの応酬だが、公開謝罪で幕引きというのはなんとも驚きの展開だ。
ちなみに本稿執筆時点で、「7 Minute Drill」はまだストリーミングサービスから削除されてはいない。
Kaney Westも参戦か!?
「Like That」によってKendrick Lamarだけでなく、同時にFutureとMetro Boominとも対立する構図となったDrake。Kendrick LamarはまだまだDrakeに向けた曲の用意があるようで、Drakeサイドは「出せるものなら出してみろ」と挑発をしているのが「Like That」リリース後の近況だ。
このディスり合いを焚き付けるかのようにコメントしてきたのがKanye West(カニエ・ウエスト)。過去にアルバム『The Life of Pablo』収録の「No More Parties in L.A.」でKendrick Lamarとコラボ。Drakeとは2021年に「Free Larry Hoover Benefit Concert」で共演していることを引き合いに出し「Kendrickは曲で、Drakeはコンサートで潰してやった」とInstagramに投稿した。
このコメントについてはまだ誰も反応していないが、このまま見過ごさられるのだろうか…Ty Dolla Sign(タイ・ダラー・サイン)とのジョイントアルバム『Vultures 1』も好調なのだから落ち着いて、と思いたいところだがKanye Westらしいといえばらしい発言ではある。
そして4月12日にはFutureとMetro Boominによる2枚目のアルバムがリリースされる予定。目まぐるしく状況が変わる一連の騒動にまだまだ火種が投下されるのか?アルバムの内容が気になるところだ。


