ビーフにAIを使うのはアリ?ナシ? Drakeが新たなディス曲で2PacとSnoop DoggのAIボイスを使用

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Kendrick Lamar(ケンドリック・ラマー)らからのディスに対するアンサーソング「Push Ups」をリリースしたDrake(ドレイク)による、次なるディス曲「Taylor Made Freestyle」がリークされた。
この曲でDrakeは何と2Pac(2・パック)とSnoop Dogg(スヌープ・ドッグ)という、Kendrick Lamarと同じ西海岸を代表するレジェンド2人のAIボイスを使用し、物議を醸している。
Drake just dropped a track called "Taylor Made Freestyle" on IG with AI verses from Tupac and Snoop Dogg pic.twitter.com/qgJFc5okfk
— Complex (@Complex) April 20, 2024
ビーフの経緯はこちら。
リリックの内容は
AIボイスがアリかナシかの前に、まず「Taylor Made Freestyle」の内容を見てみよう。最初のバースは2Pac(のAI)で、このバースではKendrick Lamarが緊張気味であるとしつつも「俺の精神を受け継いで、西海岸に完全なる勝利をもたらすんだ」と激励している。続くSnoop Dogg(のAI)のラップは「俺はお前にバトンを渡したんだ、お前こそが西海岸のボスであることを見せつけろ」という内容で、互いに(?)Kendrick Lamarを後押ししているように聴こえる。
しかしこれはあくまでDrakeが作り上げたAIボイスによるリリック。当の本人は最後のバースに登場し「最初の曲は1,2時間で作って、この曲ではもっとお前のことをえぐってやる。でもまだ1週間待たないといけないんだろ」と、Kendrick Lamarからレスポンスのないことを引き合いに出している。
この“1週間”とはTaylor Swift(テイラー・スウィフト)のニューアルバムがリリースされるまでの“1週間”であり、Drakeによる最初のディス曲「Push Ups」でも言われているように、Kendrick Lamarは過去にTaylor Swiftとコラボしているため、上司(Taylor Swift)を待たないといけないんだろ?という意味でのリリックだ。
「Like That」のディス以降、音沙汰のないKendrick Lamarに痺れを切らしているDrakeは「今回は最後まで続けるんだ」と、2013年にBig Sean(ビッグ・ショーン)の楽曲「Control」に参加したKendrick Lamarが、Drakeを含む複数のラッパーをディスしたことにも触れている。
AIボイスの使用はアリ? 大御所からの警鐘も
「Taylor Made Freestyle」に関してはビーフだディスだの前に、AIボイス、しかもレジェンドの声を使った曲は倫理的にどうなのか?という点で注目されている。これまでにDrake自身もAIによって勝手に声を使用され、Ice Spice(アイス・スパイス)の楽曲「Munch」のカバーなどがオンライン上でリーク。それに対して「AIに耐する我慢の限界」と懸念を示す立場であったのに、だ。
AIだとしても声を使用することは、2Pacの遺産管理団体やSnoop Dogg本人に許可をとっていないはずなので、楽曲としてはアウト。しかしビーフのやり方としては巧いなと個人的に思ってしまった。これもまたビーフ慣れしているDrakeの計画の内であり、AIボイスの使用によって否定的な意見が出ることくらいわかっているだろう。
この件で口を開いたのが、デス・ロウ・レコードの設立者であり元CEOのSuge Knight(シュグ・ナイト)だ。ヒップホップ界でも悪名高い彼は現在、2018年に実刑判決を受けて服役中の身ながら、相変わらずその発言が注目されている。Suge Knightは「2Pacの死に関係しているSnoop Doggを一緒に使っているのはよろしくない」と、AIの使用ではなく、人間関係についてコメント。続けて「ロサンゼルスのギャングは喜ばないだろうな」とDrakeを警告した。
また、2Pacの兄はDrakeに対し「誰かをディスするために2Pacの声を使うことは不適切だ」とコメントしている。
2Pacの遺産管理団体が法的措置を示唆。Drakeは楽曲を削除
Drakeのイレギュラーな一手と思えた「Taylor Made Freestyle」だが、公開から数日後、2Pacの遺産管理団体はDrakeに対し訴えを起こす旨のコメントを発表した。内容としては「曲には失望した。権利の侵害だけでなく、彼のレガシーに対する冒涜だ」というもの。
遺産管理団体は楽曲を24時間以内に撤去しなければ法的措置を取ると警告。その後、「Taylor Made Freestyle」の投稿がDrakeのSNSから削除されたのは、この警告を受けてのことだろう。
ちなみに一方のSnoop Doggは、実に彼らしい反応を示している。
「何をしたって?いつ?どうやって?本当に?」「みんなが俺の電話を鳴らしてくる、すごいことになってる。何が起きてるの?もう寝るわ、おやすみ」