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ディズニー100周年記念作『ウィッシュ』|圧倒的歌唱力で作品を牽引、主人公・アーシャを演じるアリアナ・デボーズの実力

2023/12/29 21:00
Buffy Yoshikawa
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PHOTO: © 2023 Disney. All Rights Reserved.
ヒロインを演じたアリアナ・デボーズが築き上げてきた功績や実力を紹介。『ウィッシュ』から感じるディズニーの今後の決意表明とは。

Text:バフィー吉川

日本でも12月15日から公開中の、ディズニー100周年記念作品として制作された『ウィッシュ』。ディズニーのかかげる「願いは叶う、星に願いを」という、今までのディズニー作品に共通するテーマ性をストレートに描いた作品となっているため、ストーリーはシンプルで王道。あくまで子どもが楽しめることを前提として制作されている。

所々に過去作品のオマージュも含まれているがストーリーの邪魔にならない程度で、あくまでひとつの独立した作品となっているため、100周年のアニバーサリー作品ということは言われないと気づかないかもしれない。

しかしその一方で、仕方ないとされている、それが普通だとされてしまっている、世の中に蔓延る社会悪に“おかしい”と言える世界にしていこうという、社会派なメッセージも確かに感じられる。ディズニー自身の自己分析的なものと、今後のディズニーが目指すものなども感じられ、ディズニーの決意表明という部分では他の作品よりも色濃くなっているのではないだろうか。

■作品の完成度を高めたアリアナ・デボーズの圧倒的歌唱力

セレーナ・ゴメスやデミ・ロヴァート、ブリトニー・スピアーズといったディズニー出身アーティストの楽曲を手掛けてきたジュリア・マイケルズが手掛けた、作品の核ともいうべき作中曲「This Wish」は、ディズニー史に残る名曲のひとつとなった。

日本語吹替え版では生田絵梨花が歌唱し、ほかにも福山雅治やゲスト声優としてディズニー作品に参加経験のある松たか子、上戸彩など多数参加しているのも魅力のひとつではあるのだが、やはり注目してもらいたいのは英語版の声優を務めたアリアナ・デボーズの圧倒的歌唱力だ。

アリアナといえば、スティーヴン・スピルバーグによって現代的解釈を加えた再映画化で注目された『ウエスト・サイド・ストーリー』(2021)において、アニータ役を見事に演じ、第94回アカデミー賞助演女優賞ほか、多数の映画賞を受賞したことで日本でも知られるようになった女優である。

アリアナ・グランデの代役として出演したNetflixのミュージカル映画『ザ・プロム』(2020)やドラマ「シュミガドーン!」シリーズの先生役としても見事な歌声を披露しているが、アリアナ・デボーズはもともと本格的なミュージカル女優。

ジョン・ウォーターズの同名カルト映画をミュージカル化した「ヘアスプレー」や『チアーズ!』(2000)をミュージカル化した「ブリング・イット・オン!」、アメリカで最もチケットがとれないミュージカルとしても知られる「ハミルトン」などのビッグタイトルに出演したのち、ドナ・サマーの半生をトリプルキャストで描いた「SUMMER: The Donna Summer Musical」では、主人公のひとりを演じトニー賞にもノミネートされている実力者で、2023年のトニー賞受賞式ではホストも務めた。

そんなアリアナによる「This Wish」は、『ウィッシュ』という作品そのものを牽引するほどの存在感を持つ曲となっており、おそらく来年のアカデミー賞歌曲賞へのノミネート有力候補だろう。

また今作は、ディズニーのなかでも『アナと雪の女王』(2013)や『モアナと伝説の海』(2016)のように、歌自体がキャラクターたちの活力に繋がるという、歌ありきの物語構成となっている。そのため曲に与えられた役割が非常に大きく、本場ミュージカル界から起用されているわけだが、ディズニーがミュージカルの本場ブロードウェイからキャスティングをおこなった作品は他にもある。

例えば日本でも社会現象を巻き起こした『アナと雪の女王』では「レント」のモーリーン役や「ウィキッド」のエルファバ役として知られるイディナ・メンゼルをエルサ役に起用することで、「レット・イット・ゴー」を歴史に残る名曲に仕上げた。

近年でいえば、『ミラベルと魔法だらけの家』(2021)では、『イン・ザ・ハイツ』(2021)などにも出演するステファニー・ベアトリスを起用したことで、ラテンビートを感じさせる見事な作品が完成。

このようにミュージカルの実力者を積極的に起用することで、アニメという枠を飛び越えて、ひとつのミュージカル映画としてのクオリティをかなり高めている。つまり見ているものはアニメだとしても、そのバックには本場ブロードウェイが広がっているように感じられるほどの臨場感を与えてくれるのだ。

■変化するディズニーの描く女性像の変化と、多様性への模索

ディズニーといえば、「シンデレラ」や「白雪姫」といったおとぎ話をベースに数々の名作を生み出し、そのなかで「ディズニー・プリンセス」というブランドも確立してきた。その一方で、「女性は男性に守られるもの」というステレオタイプな概念を世界に発信し続けてきたという問題も同時に抱えている。

また多様性の観点からも、ディズニーの実写作品やピクサーの場合は、短編映画『殻を破る』(2020)や『バズ・ライトイヤー』(2022)など多様な表現へと踏み切るものも多いなかで、ディズニーのホームともいえるアニメ映画に関しては、まだまだ保守的な部分がある。

『アナと雪の女王』では、エルサの覚醒がレズビアン、もしくはバイセクシャルとしてのカミングアウトのメタファーだと捉えられたことから、エルサのガールフレンドを登場させることを望むファンの声が話題にもなったが、『アナと雪の女王2』には、そういったキャラクターは登場しなかった。

そこには、ディズニー作品というものが世界に普及しすぎているがゆえの重圧もあるのだろう。多様性を描き過ぎると、国によっては上映できない場合もあるからだ。

例えば同性愛が宗教上禁止されている国では、同性愛を連想させるものは上映できなかったりする。ディズニーとしては、より多くの世界の子どもたちに作品を届けたいという願いがあるため、まずは観てもらうことが大前提となるため、市場を考えると、どうしても大きな冒険ができず一歩を踏み出せないという裏事情がある。

そのためアニメ映画で同性愛を描くことは、まだしばらく難しい状況にあるのかもしれないが、現代的にアップデートされた価値観をどう描くかの模索は常に行っていると感じる。男性よりも女性の主人公の割合を多くすることで、独立した女性=自由な世界というメッセージを発信し続けているのも打開策のひとつといえるだろう。

実際に近年のディズニーアニメ映画を観ていれば、恋愛要素もなければ、いわゆる“王子様”的な立ち位置のキャラクターがほとんど登場せず、独立した女性の強さを描くものが圧倒的に多くなっていることがわかるはずだ。

今作『ウィッシュ』の場合も、主人公アーシャは権力に屈しない強い意思をもった女性として描かれており、サブキャラクターも含めて女性キャラクターの方がやや強めに描かれていることをとっても、時代の変化を感じずにはいられない。

■ディズニー映画を影で支えるアラン・テュディックって知ってる?

俳優アラン・テュディックをご存じだろうか?

アランといえば、『ドッジボール』(2004)や『無ケーカクの命中男/ノックトアップ』(2007)、『タッカーとデイル 史上最悪にツイてないヤツら』(2010)などの悪ノリ気味なコメディ映画で、コミカルな役柄を演じることが多い個性派俳優なのだが、実は近年のディズニーアニメ映画には欠かせない俳優のひとりとなっている。

実際に『シュガー・ラッシュ』(2012)にキャンディ大王役で出演して以降、全ての作品に出演しているのだ。

今作『ウィッシュ』においては、アーシャの相棒として登場する子ヤギのバレンティノを演じており、セリフも多いメインキャラクターのひとり。彼の演じる役の幅は様々で、『モアナと伝説の海』ではニワトリのヘイヘイや『ミラベルと魔法だらけの家』ではオオハシのピコ、ほとんどアジア系で固められた『ラーヤと龍の王国』(2021)においても、トゥクトゥクの役といった、ほとんどセリフの無い役にもキャスティングされている。

アランが何の役で出演しているかを探すのもディズニー映画の醍醐味のひとつ。これからディズニー映画を観る際には、アランを探すという楽しみをひとつ加えてもらいたい!!

■『ウィッシュ』作品情報

【ストーリー】
物語の舞台は、どんな願いも叶うという魔法の王国ロサス。この国で暮らす少女アーシャは、ある出来事をきっかけに王国に隠された恐ろしい真実を知ってしまう。彼女が立ち向かうのは、ディズニー史上最も恐ろしいヴィラン(悪役)であるマグニフィコ王。様々な試練を乗り越えた彼女が王国にもたらす“奇跡”とは?

【クレジット】
公開日:2023年12月15日(金)
監督:クリス・バック、ファウン・ヴィーラスンソーン
脚本:ジェニファー・リー
音楽:ジュリア・マイケルズ
製作:ピーター・デル・ヴェッコ、フアン・パブロ・レイジェス
〈声優キャスト〉
出演:アリアナ・デボーズ、アラン・テュディック、クリス・パインほか
〈日本版声優キャスト〉
出演:生田絵梨花、福山雅治、山寺宏一ほか
原題:WISH
全米公開:2023年11月22日
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 2023 Disney. All Rights Reserved.

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