block.fm

NEWS / ARTICLES

RADIO PROGRAMS

FOLLOW US

Copyright © 2011-2021 block.fm

SEARCH

ナビゲーターやDJ、番組名、記事タイトル、文中ワードで一括検索することができます。

注目のキーワード

Copyright © 2011-2021 block.fm

ディズニーアップデートの背景から誕生した黒人アリエル。圧巻の歌唱力を披露したR&Bシンガー、ハリー・ベイリーとは

2023/06/28 19:30
Buffy Yoshikawa
img
PHOTO: © 2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.
黒人プリンセスが誕生した背景を紐解きながら、アリエルを演じたハリー・ベイリーの実力を紹介。

Text:バフィー吉川

6月9日から公開中の『リトル・マーメイド』は、ディズニーのアニメ映画低迷期を救った『美女と野獣』『アラジン』などといった、「ディズニー・ルネサンス」と呼ばれる黄金期の第1作目となった1989年の同名作品を実写化したものだ。

『シカゴ』(2002)や『NINE』(2009)、『イントゥ・ザ・ウッズ』(2014)といった、傑作ミュージカル映画を多く手掛けてきたロブ・マーシャルが監督を務めていることもあって、ミュージカル演出の数々は素晴らしく魅力的なものが多い。また『パイレーツ・オブ・カリビアン/生命の泉』(2011)も手掛けているだけあって、水の表現もお手の物だ。

出演者もR&Bシンガーのハリー・ベイリーにジョナ・ハウアー=キング、スペハビエル・バルデム、メリッサ・マッカーシー、ジェイコブ・トレンブレイなど個性豊かな面々が集結した。

■アップデートの中で葛藤するディズニー

THE LITTLE MERMAID(L-R): Scuttle (voiced by Awkwafina), Flounder (voiced by Jacob Tremblay), and Halle Bailey as Ariel in Disney’s live-action THE LITTLE MERMAID. Photo courtesy of Disney. © 2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

ディズニーは近年、原作となる童話などの著作権がフリーになっていることで、他社によって「シンデレラ」や「美女と野獣」、今回の「人魚姫」を下敷きした作品が世界中で大量に制作されている事情をふまえて、そういった作品のイメージの分散を避け、世界中に再び“ディズニー”のイメージを強く残すために、大量に実写化やリメイク企画を実現させてきている。

ただ問題となってくるのは、作品の内容が当時だからこその価値観や概念といったものが強く反映されており、多様性がうたわれる現代に合っていないものが多いこと。

ディズニーの近年の作品観ても、昔ながらの王子様などの男性優位構造は崩壊しつつあり、『アナと雪の女王』(2013)や『モアナと伝説の海』(2016)、『ラーヤと龍の王国』(2021)、『ミラベルと魔法だらけの家』(2021)など、もはや男性よりも女性の強さを描く作品が増加。今作の中でもエリックの役割はアニメ版と比べてかなり変化している。

ところがLGBTQに関しては頭を悩ませているようだ。というのも国によっては、そのような要素を含ませると上映ができないという事態に発展してしまうからだ。

『美女と野獣』(2017)の中でもガストンとル・フウの関係性が同性愛を連想させると評価され、実際にル・フウも同性愛者という裏設定になっていたことから、宗教上の都合などで同性愛に対して保守的な態度をとる国によっては、上映が禁止されてしまった。

この点に関しても将来的な解決方法を探っているといった印象を受けるが、直ちにというのはやはり難しいよう。その分、人種の尊重や女性主体の作品に力を入れており、ヒロインのリイマジンを常に行い、人種が白人だけに偏らないようにローテーションを繰り返していることから、ラテン系やアジア系のヒロインも多く誕生してきている。

それに加え、ディズニーとしては『プリンセスと魔法のキス』(2009)以降、黒人プリンセスが1人しかいないこともネックになっていた。

実は2019年のリメイク版『ライオン・キング』でもそれを行っており、主要キャラクターはドナルド・グローヴァーやビヨンセ、キウェテル・イジョフォーなど黒人俳優がキャスティングされていたのだが、あくまで動物のアニメキャラクターを通してであったため伝わりづらい部分があった。だからこそ、今作では思い切ってアリエルが黒人という設定になったわけだ。

また、例えば『ムーラン』や『アラジン』の場合、作品の舞台や設定上、人種がある程度固定されてしまっている。「白雪姫」の実写版「スノー・ホワイト」はラテン系のレイチェル・ゼグラーが主演を務めるし、今後制作予定の『ヘラクレス』もおそらくラテン系になるはずだ。となると、特に実写作品としては黒人プリンセスを出すタイミングが今作しかないというのもあったのだろう。

ちなみに、ウォルト・ディズニー・カンパニー創立100周年記念作として2023年12月15日に公開される『ウィッシュ』も主人公が黒人の設定である。

ただ一方、そういった多様性に配慮したリイマジンを良しとしない層も一定数いるのは紛れもない事実で、キャスティングが発表になると当然のように人種論争が巻き起こった。それはやはり主人公のアリエルを演じるのが、黒人のR&Bシンガーのハリー・ベイリーだったからだ。

ディズニーが長年発信し続けてきてしまったステレオタイプなイメージに、ディズニー自身が本当の意味で向き合った作品が今作だと言えるだろう。また、ディズニープリンセスの中でも歌姫というイメージの強いアリエルにはソウルフルなシンガーをキャスティングしたいというのは、映画化企画が発表される前から決まっていたようにも感じられる。

■主演のハリー・ベイリーって誰?

アリエルが黒人であることへの論争が足を引っ張ったものの、歌唱シーンのクオリティの高さには、多くの観客が心を動かされたのではないだろうか。

それもそのはず。アリエル役に抜擢されたハリー・ベイリーは、日本ではあまり馴染みのないアーティストかもしれない。

もともと子役として活躍していたハリーは、姉のクロイと共に出場したラジオディズニーのオーディション番組NBT(The Next Big Thing)シーズン5の優勝者として話題となり、ビヨンセのレーベル「パークウッド・エンターテイメント」からプロデビューを果たした姉妹デュオ「クロイ&ハリー」として活躍している、グラミー賞にも5回もノミネートされた経験をもつ、注目の若手アーティストである。

そのため歌唱力に対しての不安などは全くなく、ハリーがアリエル役に抜擢されたと聞いただけで、ソウルフルなミュージカルシーンが完成することは必然であった。

また、スティーヴン・スピルバーグによって制作されたアリス・ウォーカー原作の『カラーパープル』(1985)のミュージカル版で、今年公開予定の『The Color Purple』にもH.E.R.やファンテイジア、シアラといったアーティストと共に出演するなど、今後の活躍にも期待できる女優/アーティストだ。

ちなみに「クロイ&ハリー」として共に活動する姉のクロイ・ベイリーもピーコックで4月に配信された映画『Praise This』(日本未配信)では、主演を務めている他、ドラマ「キラー・ビー」(2023)や『ジョイフル♪ノイズ』(2012)といった作品で幅広い役を演じている。

2021年からはソロ活動も行っており、黒人女性が抱える繊細な問題を伝える歌詞も話題となっている。それぞれ違った道に進みつつあるクロイとハリーだが、姉妹揃って目が離せない存在であることは間違いない。

■『リトル・マーメイド』を支えるアーティストたち

オリジナル版『リトル・マーメイド』の作中曲「アンダー・ザ・シー」といえば、第62回アカデミー賞において歌曲賞を受賞し、ディズニーアニメとしても、ミュージカルとしても歴史に残る名曲だ。

そんな「アンダー・ザ・シー」を含め、オリジナル版の音楽の数々を手掛けたアラン・メイケンの音楽に新たな命を吹き込んだのは、映画化もされた「イン・ザ・ハイツ」や「ハミルトン」、ディズニー作品としては『ミラベルと魔法だらけの家』や『モアナと伝説の海』も手掛けてきたリン=マニュエル・ミランダである。

リンといえばブロードウェイミュージカルのヒットメイカーでありながら、近年は「RENT」の劇作家ジョナサン・ラーソンの自伝的作品『Tick, tick… BOOM! : チック、チック…ブーン!』(2021)の映画化を手掛けるなど、その才能を映画界でも惜しみなく発揮。

古典はもちろん、ラテンポップ、ヒップホップなど、多ジャンルを取り入れることが得意なリンが参加していることで、ソフルフルでありながらも、どこかラテンの風味が漂う独特のミュージカルシーンが完成したのだ。

また、出演者にも注目してもらいたい。ハリー・ベイリーは間違いない歌唱力であるが、今までの作品の中であまり歌うシーンがなかった俳優たちが起用されていることもあって心配な部分はあったものの、エリック役のジョナ・ハウアー=キングも、アースラ役のメリッサ・マッカーシーも歌唱シーンでは見事な歌声を披露している。

ただ残念なのは、トリトン王役のハビエル・バルデムは渋い歌声の持主だというのに、今作にはハビエルの歌唱シーンが用意されていないということ。

ちなみにハビエルの歌唱シーンが観たい場合は、3月に日本でも公開された『シング・フォー・ミー、ライル』がおすすめ。

■『リトル・マーメイド』作品情報

Halle Bailey as Ariel in Disney’s live-action THE LITTLE MERMAID. Photo courtesy of Disney. © 2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

【ストーリー】
美しい歌声をもち、人間の世界に憧れている人魚アリエル。掟によって禁じられているにも関わらず、ある日彼女は人間の世界に近づき、嵐に遭った王子エリックを救う。この運命の出会いによって、人間の世界に飛び出したいというアリエルの思いは、もはや抑えきれなくなる。そんな彼女に海の魔女アースラが近づき、恐ろしい取引を申し出る。それは、3日間だけ人間の姿になれる代わりに、世界で最も美しい声をアースラに差し出すことだった……。

【作品情報】
原題:The Little Mermaid
監督:ロブ・マーシャル
音楽:アラン・メンケン&リン=マニュエル・ミランダ
出演:ハリー・ベイリー、メリッサ・マッカーシー、ジョナ・ハウアー=キング ハビエル・バルデムほか
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
© 2023 Disney Enterprises, Inc. All Rights Reserved.

この記事をシェア

合わせて読みたい