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『マーベルズ』MCU史上最年少の女性監督 ニア・ダコスタが描く、“等身大”のキャプテン・マーベル

2023/12/08 18:30
Buffy Yoshikawa
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PHOTO: © 2023 MARVEL.
最強ヒーローという立ち位置のキャプテン・マーベルを身近な存在へと引き戻す、MCUにとっても重要な役割を持つ最新作を深掘り。

Text:バフィー吉川
© 2023 MARVEL.

11月10日から公開されているMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の最新作にして、2019年に公開された『キャプテン・マーベル』の続編にあたる『マーベルズ』だが、作品が多すぎて追い切れずMCU離れするユーザーの影響もあってか、全米でのオープニング成績がMCUの中では過去最低となってしまった。

確かにアクション超大作というには物足りないボリューム感であり、『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019)や『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』(2023)といった複数のキャラクターが入り混じるスケールの作品ではない。今作はそもそもアクション映画、SF映画として観てはいけない構造になっている。

MCUにおいて最強ヒーローという立ち位置となってしまったがために、良くも悪くも他のヒーローたちとは距離感をもたせてしまったキャプテン・マーベルというキャラクターを深堀する作品であり、見失ってしまっていたキャプテン・マーベルを身近な存在として引き戻す、つまり今後のMCUにとっても重要な役割をもった作品であるのだ。

そんな重要な作品を手掛けたニア・ダコスタの作家性や、日本ではまだあまり注目されていないが「ミズ・マーベル」から引き続き出演しているインド映画・ドラマ界の名バイプレイヤーの存在を知ってもらうことで今作の見方を変えてほしい!

■監督ニア・ダコスタの作家性

© 2023 MARVEL.

MCUはフェーズ4から実験的に多くの監督を起用してきた。『エターナルズ』(2021)のクロエ・ジャオや『ブラック・ウィドウ』(2021)のケイト・ショートランド、『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)のデスティン・ダニエル・クレットン、『ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス』(2022)では、ホラー色を強調するためにトビー・マグワイア主演版「スパイダーマン」シリーズというよりも「死霊のはらわた」シリーズの色を入れるためサム・ライミを起用するなど、がっつりなアクション監督ではなく、逆にアクション畑ではないような監督を起用している。

『マーベルズ』の監督を務めたニア・ダコスタは、若干34歳の女性監督であり、MCUにおいては最年少監督であるが、その才能はすでに映画界では注目されている。

長編初監督作品の『ヘヴィ・ドライヴ』(2018)では貧困層が抱える負の連鎖を描き高い評価を得ただけではなく、90年代のカルトホラー『キャンディマン』のリブートであり続編ともなる『キャンディマン』(2021)では、もともと「キャンディマン」というシリーズが持っていた人種問題の側面を強調することでBLM(ブラック・ライブズ・マター)を連想させ、実社会とリンクさせた人種差別ホラー(ソーシャルホラー)にすることで、一作目が時代的にオブラートに包むことでしか描けなかった部分、つまり作品の本質を描いてみせたのだ。

そんなニアがマーベルの超大作を制作するということ自体に驚きもあるのだが、今作には白人、黒人、パキスタン(イスラム教徒) といった異なる人種による3人の主人公が存在している。それに加えて「梨泰院クラス」で知られるパク・ソジュンも出演するなど多人種の俳優が揃っていることからも、宇宙という広い視野から見れば人種間の衝突で躓いているよりも、今こそ共に協力し合って取り組まないといけない重要な問題がたくさんあるのではないか、というメッセージ性も感じられる。

直接的ではなくても、人種問題や資源戦争を描いていることなど、社会問題を盛り込んでいる感じはするものの、そこは大衆映画ということもあって自由もそこまでなかったのだろう。ニア独自の色というのはそこまで表現できていなかったのは残念ではあり、どちらかというと長尺のドラマシリーズを任せた方がニアの作家性を出せて良かったと思えなくもない。

だからといって『エターナルズ』のように、クロエ・ジャオの色を出し過ぎた作品が良かったかと言われれば別の話になってくるだけに、そこのバランスは非常に難しい部分だが、ニアは引き続きMCUにはなんらかの形で関わって欲しいと思える監督であることは間違いない。

■超人化し過ぎたキャプテン・マーベルを等身大女性に引き戻す

© 2023 MARVEL.

『キャプテン・マーベル』で初登場したキャプテン・マーベルことキャロル・ダンヴァースだが、その後MCU内において最強ヒーローというポジションにされてしまったことからも、今後の展開やパワーバランスも考えて、どうしても他のキャラクターと距離感があり、『アベンジャーズ/エンドゲーム』でも常に行動を共にするわけではなく緊急時にのみ現れるという立ち位置をとっていた。

ところが今作では、キャロルが1作目で地球を去った後、何を感じたか、そして孤独とどう向き合っていたかなど、今まで描かれなかった人間的な内情部分を描き、そこにカマラがヒーローオタク、特にキャプテン・マーベルファンである設定とノリを活かすことで、多少強引な部分もあるがキャロルを等身大女性に引き戻したのだ。

地球を去った後、キャロルの言葉を信じ帰還を待っていたモニカとのわだかまりも、変に重苦しいものにならず比較的カジュアルに解決されている。その点に関してもカマラがいることで上手く中和された結果といえるだろう。

宇宙という壮大なスケールの中で展開されるユルさという点では「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズに共通する部分もあるが、今作はそこにティーンムービーのような女子トーク感も加わることで、また違ったギャップとユルさが作品を彩っていることからも、改めて今作におけるカマラの存在がいかに大きなものかと実感するばかりだ。

■もうそろそろ覚悟するべきこと…

© 2023 MARVEL.

今作に登場するモニカ・ランボーは「ワンダヴィジョン」、カマラ・カーンは「ミズ・マーベル」といったように、ドラマシリーズのキャラクター(ドラマシリーズで能力を得たキャラクター)が登場し、物語としては「ミズ・マーベル」の最終話ラストと期間を空けずそのまま直結しており、カマラの家族はそのまま宇宙までついてきてしまう。

つまり今作は、劇場版「ミズ・マーベル」としての側面をもった作品でもあるのだ。そのことからもドラマを観ていないユーザーを置いていっているという意見が一定数あるのだが、これに関しては、そろそろ覚悟すべきことである。

そもそもDisney+という配信サービス自体が、映画内では描き切れないものをドラマや配信映画として制作することで世界観を拡張させることを目的として作られたものである。つまりこの状態こそがディズニーが望んだ完成形である。

アメコミ自体(特にマーベルやDCの場合)、同じ出版社の複数作品内で同時に物語が進行し、のちに繋げて時系列を完成させるというのが通常スタイルであり、そのスタイルを映像の方にも持ち込みたかったのだ。それこそ正真正銘のコミックの映像化というべきだろう。

一方でライバルのDCもディズニーと同じ考えであり、大量のドラマ企画をHBO Maxを通じて配信するつもりでいたが、企業合併で経営者が変わったこともあって、ドラマ企画を白紙に戻し劇場作品に集中するという姿勢に方向展開した。どちらが良いかというのは正直好みが別れる部分があるのも事実であり、質の低下を危険視する声が多いのも事実だが、現時点でマーベルが出した回答はこのスタイルとなる。

日本でもドラマシリーズを観ていなくても映画版はある程度理解できるように制作されているのと同じで、今作も最低限のアシストは作中でされている。キャラクターや設定をより深く楽しみたいのであれば、ドラマシリーズを観ることは避けられないだろうし、今後もドラマとのリンク、直接的な繋がりが描かれていくだけに、MCUはドラマありきだと覚悟しておいた方がいいだろう。

■日本ではスルー…?実はすごい俳優

© 2023 MARVEL.

『マーベルズ』には、モハン・カプールが、ミズ・マーベルことカマラ・カーンの父親ユセフ役としてドラマ版から引き続き出演しているのだが、パンフレットには名前が少し載っているだけ。公開にあわせて発売された「ミズ・マーベル」のパンフレットには1回しか登場していないキャラクターすら載っているというのに、モハン・カプールが紹介すらされていない。

しかしこのモハン・カプールという俳優、「ミズ・マーベル」や今作においてはコメディリリーフとなっているものの、実はインド映画・ドラマ界では渋い演技の名バイプレイヤーとして知られているベテラン俳優なのだ。

プリヤンカー・チョープラーやアクシャイ・クマール、サルマン・カーンといった錚々たるボリウッドスターたちの主演作にも出演しており、ジャッキー・チェン主演のハリウッド映画『ベスト・キッド』(2010)に少しだけ出演しているが、本格的なハリウッドメジャー作への出演は今作が初となる。

日本では配信されていないが、Disney+Hotstarで配信されている「School of Lies」や「Crime Next Door」といったドラマシリーズではメインキャラクターとして出演している。

「ミズ・マーベル」においてファルハーン・アクタルがゲスト出演したことも話題となっていたが、レギュラーキャラクターとしてインドの俳優が出演し、映画にも引き続き登場するというのは、マーベル作品に出演したいと思っている多くのインド俳優の刺激になっていることは間違いない。

■『マーベルズ』作品情報

© 2023 MARVEL.

【ストーリー】
アベンジャーズ最強ヒーロー、キャプテン・マーベルの新たな物語。キャプテン・マーベルの“ある過去”を憎み、復讐を誓う謎の敵が現れる。その狙いは、地球をはじめ彼女が守ってきたすべてを滅ぼすことだった。最凶最悪の敵サノスを圧倒する力でも救えない危機が迫るなか、彼女を家族のように慕う敏腕エージェント〈モニカ・ランボー〉、彼女に憧れるアベンジャーズオタクの高校生ヒーロー〈ミズ・マーベル〉と、3 人が入れ替わる謎の現象が発生。これまで一人で戦ってきたキャプテン・マーベルは仲間との運命的な繋がりからチームを結成し、新たな“強さ”に目覚めていく。

【作品詳細】
■監督:ニア・ダコスタ
■製作:ケヴィン・ファイギ
■出演:ブリー・ラーソン、イマン・ヴェラーニ、テヨナ・パリス、サミュエル・L・ジャクソン、パク・ソジュン、モハン・カプールほか
■配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
©Marvel Studios 2023
11 月 10 日(金)全国劇場公開

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