『トランスフォーマー/ビースト覚醒』『バービー』など、おもちゃを原作にした映画が今熱い!!


この記事をシェア
Text:バフィー吉川
現在公開中のハリウッド映画『トランスフォーマー/ビースト覚醒』と『バービー』。この2作品が共通するのは、原作がおもちゃということ。
ハリウッドでは特に2000年以降、ネタ切れ状態問題が勃発。続編、リメイク、コミックとゲームの映画の企画が連発されるなかで、おもちゃの映画化企画というのも大量に企画されていた。
スティーヴン・スピルバーグが製作総指揮、マイケル・ベイが監督を務めた実写シリーズの第1作目『トランスフォーマー』(2007)の成功が拍車をかけたと言っても過言ではないだろう。
また同年には、日本では未公開となっているが、バービーのライバルとも言われた人気ファッションドール・シリーズの映画化『ブラッツ』(2007)も注目を集めた。
そこに『G.I.ジョー』(2009)や『バトルシップ』(2012)なども後に続き、『LEGO® ムービー』(2014)、『プレイモービル マーラとチャーリーの大冒険』(2019)、日本ではほとんど知名度がない『マックス・スティール』(2016)といった作品が今までに制作されている。
今年公開された『ダンジョンズ&ドラゴンズ/アウトローたちの誇り』もゲームやアニメ化もされていて、おもちゃを元に映画化しているとは言い切れないが、もともとはテーブルトーク・RPGが元となっている。
今後も「ホットウィール」「爆丸」「ベイブレード」「ファービー」「ベアブリック」といったおもちゃが映画化を控えており、先日も、2007年から企画があったものの実現に至らなかった「モノポリー」の映画化企画が本格的に動き出すという発表があった。今、おもちゃの映画化というのは映画業界内において、ひとつのトレンドともなっていることは間違いない!!
■『トランスフォーマー』の成功がもたらしたハリウッド内でのおもちゃ&ロボット映画化ムーブメント! しかし障害も?!
トランスフォーマーの場合は、おもちゃの映画化というだけではなく、ロボットアニメ、コミックの映画化企画も多く影響をもたらしており、「ロボテック」(日本では『時空要塞マクロス』や『機甲創世記モスピーダ』)、「ボルトロン」(『百獣王ゴライオン』や『機甲艦隊ダイラガーXV』)、『機動戦士ガンダム』、『フルメタル・パニック!』などの映画化企画も進めることとなった。
ちなみに『新世紀エヴァンゲリオン』も「ロード・オブ・ザ・リング」や「アバター」シリーズのデザインを手掛けるウェタがコンセプトアートを実際に作成していたが、結局実現しなかった。
話をおもちゃの映画化に戻すと、例えば日本でも社会現象を巻き起こし、定期的に新作が発売されるなど今でもコアなファンを抱える「ファービー」の場合は、2016年11月に開催されたアメリカン・フィルム・マーケットの中で 「ディメンション・フィルムズ」レーベルの新作企画として具体的に発表されており、『パディントン』(2014)のように実写とCGIを融合させた作品となる予定だったが、ハーヴェイ・ワインスタインの性加害に対する告発事件影響で、ワインスタインの傘下でもあった「ディメンション・フィルムズ」自体が危うい状態となってしまったため、企画が譲渡されずに消滅した可能性はある。
また現在、ハリウッドでは全米脚本家組合と俳優組合が64年ぶりとなる同時ストを行っている。これによって撮影等が中止になっている作品もあるが、消滅する企画もいくつか出てくる可能性もありそうだ。
予想できないようなイレギュラーな事態による企画消滅もあるのだが、何度も会議を重ねた結果として、実現化が不可能という決断からの消滅、保留というのも大量に存在しているだけに、企画が発表されたからといって、最後まで油断ならないのも、おもちゃの映画化企画の特徴だ。
©2023 PARAMOUNT PICTURES. HASBRO, TRANSFORMERS AND ALL RELATED CHARACTERS ARE TRADEMARKS OF HASBRO.©2023 HASBRO
最近では新たな試みとして、マーベルとDCなどの、いわゆる「ユニバース」化も取り入れようと、ハズブロは「トランスフォーマー」と同じく自社の作品である「G.I.ジョー」「ROM」「マイクロノーツ(日本では『ミクロマン』)」といった作品の世界観を共有するプロジェクトを企画しているが、その1弾となる予定であった『G.I.ジョー:漆黒のスネークアイズ』(2021)が全く「ハズブロ・ユニバース」には触れない内容となっていたことからも企画倒れになっていたかと思われていたが、『トランスフォーマー/ビースト覚醒』のなかで、それを連想させるようなシーンがサプライズとして盛り込まれていた。
「トランスフォーマー」と「G.I.ジョー」は、コミックでは何度も共演しているだけに待望のクロスオーバーともいえるだろうが、実現するかはわからない……。
■『バービー』のアプローチは圧倒的に可能性を広げる?!
おもちゃに設定された世界観を拡張させる映画化やオリジナルビデオ作品というのは多く制作されてきたが、あくまで“おもちゃ”という立場をメタ的な視点を取り入れながら描いた作品としては、『LEGO®ムービー』(2014)が有名といえるだろう。
レゴの場合も、「バイオニクル」や「ニンジャゴー」のように設定の世界観を拡張させたアニメシリーズなども制作されているし、映画やコミックヒーローといった版権キャラコラボ作品『LEGO®ジュラシック・ワールド:秘密の展示品』、『LEGO®スクービー・ドゥー:モンスターズ・ハリウッド』といったものも多く制作されている。
ところが『LEGO®ムービー』というのは「レゴ」そのもの扱うということで、決まった世界観を持ったシリーズを映画化するわけではないため、一から世界観を構築する必要が出てきてしまう。
そこで心配されるのが、映画化することによって世界観を崩してしまうのではないかということだ。
レゴの場合は世界観が無数に存在するため、逆にあって無いようなものでもあるからこそ良かったのもかもしれないが、ひとつの決まった世界観を持った作品の映画化で、メタ的な要素を盛り込むのはかなりリスクが高いといえるだろう。
企業の代表するおもちゃであれば尚更。失敗してしまうと、今後の商品ラインにも影響が出てしまう……。
それを考えるとマテル社の代表的なおもちゃであって、60年代以降のマテル社を支えていると言っても過言ではない、世界で一番有名なファッションドールの「バービー」の映画化は簡単ではなかったはずだ。
そのままおもちゃの世界感を発展させた、おしゃれなガールズ・ムービーとしてであれば、それほど映画化が難しい作品とは思えない。
例えば「バービー」と同じくファッションドールの映画化でいうと、『ブラッツ』(日本未公開)や『ハニー・ガールズ ~夢への扉~』(2021)、パラマウントプラス配信用映画『モンスター・ハイ』(日本未公開)なども実写化されている。『モンスター・ハイ』に関しては、もともとの設定が日常的なものではないため除外するが、『ブラッツ』や『ハニー・ガールズ ~夢への扉~』は、なかなかストレートでディズニー・チャンネルの香り漂うティーンムービーであった。
あるいは、リンジー・ローハン主演の『スーパードール/パパが人形に恋をした』(2000)のように、人形が人間になってしまう物語という選択肢もあったはず。
実際に『バービーのくるみ割り人形』や『バービーと伝説の馬』といった長編アニメがいくつも制作されている。近年もNetflix映画として定期的に新作がリリースされており、「バービー」を映画という媒体に落とし込むこと自体はそれほど難しくないように思える。
ところが、そもそもの問題として、一部の年齢層をターゲットにしたような無難な作品を作るとなると、そもそも「バービー」を改めて実写映画化する意味がなくなってしまう……。
90年~2000年代であれば、そういったストレートな作品であっても良かったかもしれないが、近年は多様化に伴い金髪のアメリカ人女性が主人公のガールズ・ムービーとなると、どうも皮肉的な目で見られてしまう傾向にある。
「バービー」自体も時代のニーズや価値観にあったスタイルに変わってきたものであって、2016年の「ファッショニスタ」シリーズでは、様々な人種のバービーが多く発売され話題になったほか、車椅子のバービーやダウン症のバービーなど、単に女の子向けのファッションドールというだけではなく、常に価値観の変化を見つめてきたからこそ、ガールズ・ムービーにすることには抵抗もあったのではないだろうか。
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.
ちなみに日本でもテレビ東京系列で放送されている「バービードリームハウスアドベンチャー」もクローゼットの中に宇宙服が入っているなど、人形であることを認識しているかのような、多少のメタ的な視点も含まれていたりして、ストレートなものをあえて避けようとしているのが伝わってくる。
そんな間で葛藤していたからこそ、企画から完成までに14年以上もかかっているのだろう。
今回の映画版『バービー』の監督として抜擢されたのも、いわゆるガールズ・ムービー、ティーン・ムービーを得意とするマーク・ウォーターズやロバート・ルケティック、ケニー・オルテガではなく、『レディ・バード』(2017)や『ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語』(2019)といったフェミニズム色の強い作品を手掛けてきたグレタ・ガーウィグ。グレタが監督務めるという時点で、すでにとがった作品になっていることは間違いなかったが、実際にそれを上回る作品となっている。
極端にフェミニズムが行き過ぎた世界を「バービーワールド」、一方で極端にマスキュリズムが行き過ぎた世界を「人間の世界」とすることで、真の男女平等というもののバランスをとることがいかに難しく、権力をもった側の独裁政治に傾くという皮肉も含んだ内容となっており、グレタが今まで作品を通して伝えてきたものを一旦俯瞰的に見ることで、自問自答しているような作品でもあるのだ。
今作を良かれと思って「フェミニズム映画」と書くメディアも多くあるが、フェミニズムとは何かを改めて問う作品だけに、「フェミニズム映画」というのはグレタ監督の趣旨に反しているような気がしてならない。
『バービー』は特殊な例かもしれないが、配給会社のワーナーにとって『ダークナイト』(2008)を抜いて、歴代全米興収1位という成績を残し、おもちゃ原作の映画であっても自由な世界観を取り込んでも成功できるという前例を作ったことには大きな意味がある。
全米俳優・脚本家組合のストライキの動向次第とはなるものの、今後、間違いなくおもちゃ原作映画企画が続々と挙がってくるに違いないだろう!!
©2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved.



