『M3GAN/ミーガン』『スクリーム6』などホラー映画を陰で支える音楽家たち


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Text:バフィー吉川
6月9日から公開のブラムハウスとジェームズ・ワンが「インシディアス」シリーズ以来のタッグを組んだ『M3GAN/ミーガン』は、AI人形の暴走を描いたホラー映画だ。
NFL試合会場で行われたミーガンに扮したダンサーたちによるハーフタイムショーも話題になり、アメリカでは制作費は1,200万ドルに対して、初週の興行収入が3000万ドルを上回る大ヒット!
すでに続編が企画されているなど、ブラムハウス×ジェームズ・ワンの代表的作品として加わることとなった。
#chargers halftime show energy with my besties pic.twitter.com/exzWONrs9H
— M3GAN 2.0 (@meetM3GAN) January 2, 2023
ミーガンの声優を務めているジェナ・デイヴィスは歌手としても活躍する女優であり、ミーガンが作中でデヴィッド・ゲッタ「Titanium feat. Sia」を歌うシーンがある。
その曲の「You shoot me down, but I won’t fall I am titanium(あなたは私を撃つの、けれど私は倒れないわ。私はチタンのように硬いから)」という歌詞は、本来は何物にも屈しない強い心を表現している前向きなもののはずが、映画作曲家アンソニー・ウィリスが不安を掻き立てるようなサウンドを重ねることでミーガンの奥にある狂気性を表現しており、全く違う意味合いに聴こえてきてしまう。
またアンソニーは、『プロミシング・ヤング・ウーマン』(2020)のスコアも担当しており、そちらでもブリトニー・スピアーズの代表曲「Toxic」をサスペンスフルかつ大胆にアレンジしてみせたことで、物語のアクセントとして大きく機能していた。
映画にとって音楽というのは、欠かせないスパイスであるが、ホラー映画にとってもそれは同じである。というよりも、よりそれが必要となる映画ジャンルだといえるだろう。
■「ハロウィン」シリーズ/ジョン・カーペンター
DVDの発売が7月に決定しているシリーズ最新作にして、2018年からスタートしたデヴィッド・ゴードン・グリーン版としては完結編となる『ハロウィン THE END』(2022)も音楽が大きな役割を果たしている作品だ。
「ハロウィン」シリーズは1978年に第1作目が公開されたスラッシャー映画であり、その後、多くの作品に影響を与えてきた名作。そんな「ハロウィン」の生みの親でもあるホラー界の巨匠ジョン・カーペンターは、映画監督やプロデューサーであると同時に、優れた作曲家としても知られている。
「ハロウィン」という作品は、殺人鬼が暴れまわるスプラッターとは違っており、不安や恐怖によって、人間はどう変化するのかを描いた社会派な側面をもった作品でもあることから、肉体的ではなく精神的に突き刺さるような曲が多いように感じられる。
その中でもブギーマンことマイケル・マイヤーズ、あるいはザ・シェイプの恐怖をかきたてる「Halloween Theme」は、ホラーだけに留まらず映画史に残る名曲であり、「ハロウィン」シリーズといえばこの曲だろう。
デヴィッド・ゴードン・グリーン版シリーズでもアレンジを加えながら使い続けており、当然ながら『ハロウィン THE END』の中でも印象的に使われている。
それは路線の違ったロブ・ゾンビ版『ハロウィン』(2007)においてもそうであった。同シリーズでは、「ジョン・ウィック」シリーズのスコアでも知られているタイラー・ベイツが大きなアレンジを加えているが、やはりオリジナル版を尊重したものとなっている。
「ハロウィン」シリーズは一旦の区切りを迎えたものの、また何年後かに復活するだろうし、その際にも「Halloween Theme」は使用されているに違いない。
■「スクリーム」シリーズ/マルコ・ベルトラミ
近年、日本ではどうも往年ホラーシリーズの新作があまり興行的に上手くいっておらず、全米初登場1位を記録した作品であっても未公開になることが多くなっている。
アメリカで2023年4月に公開されたばかりの「死霊のはらわた」最新作『死霊のはらわた ライジング』も8月にソフトスルー、全米興行収入ランキング初登場1位を記録した『スクリーム6』も7月にソフトスルーが決定している。
日本ではそんな扱いになってしまっている「スクリーム」シリーズではあるが、音楽は4作目まで、Netflixの「フィアー・ストリート」や「クワイエット・プレイス」シリーズなどで知られるマルコ・ベルトラミが手掛けていた。
しかし5作目以降は『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023)や「ワイルド・スピード」シリーズなど、ジャンルに捉われない様々な映画音楽を手掛けてきたブライアン・タイラーがマルコの後を引き継ぎ、さらに『スクリーム6』ではスヴェン・ファルコナーが参加したことで、スタイリッシュなホラーシリーズというイメージがより強調された曲が多く加わったように感じられる。
「スクリーム」シリーズは5作目から主人公がネーヴ・キャンベルからメリッサ・バレラに代わることからも、マルコの曲をリスペクトしつつ、新たな章の幕開けとして音楽でも少し違ったアプローチを加えていることがその要因といえるだろう。
また『スクリーム6』においては、スコア盤ももちろんのこと、デミ・ロヴァートが歌う主題歌「Still Alive」にも注目してもらいたい。
■「オーメン」「グレムリン」シリーズ/ジェリー・ゴールドスミス
『オーメン』(1976)の代表的な音楽といえば、「Ave Satani」に他ならない。
この曲を聴くと『オーメン』を思い出すし、『オーメン』を観るとこの曲を思い出す。そんな印象深い曲であり、不気味なコーラスが悪魔の存在を演出している。
そんな「Ave Satani」を含め、「オーメン」シリーズの多くの楽曲を手掛けたジェリー・ゴールドスミスは、1960年代後半~2000年代前半にかけて『ランボー』(1982)の「It’s A Long Road」や『エイリアン』(1979)、『猿の惑星』(1968)など、ホラーに限らず多くの名作を彩ってきた作曲家であり、ジョン・ウィリアムズやエンニオ・モリコーネと並ぶ映画音楽の巨匠中の巨匠だ。
その中でも『オーメン』と並び、ジェリーが音楽を手掛けたホラーといえば『グレムリン』(1984)ではないだろうか。ホラーというよりアドベンチャーのような感じもするが、当初の構想通りであれば人間の首が転がるような作品で、ホラーとして進められていた企画なのだ。
ジェリーは「グレムリン」の名曲「The Gremlin Rag」、そして『グレムリン2 新・種・誕・生』(1990)ではファミリー向けのアドベンチャー要素が増したことで、アレンジを加えた「Gremlin Credits」も生み出した。
ほかにも「死霊館」や「インシディアス」などジェームズ・ワン作品で多くの音楽を制作しており、自身も幽霊の役などで出演しているジョゼフ・ビシャーラや、「13日の金曜日」シリーズの作曲家として知られるハリー・マンフレディーニなど、まだまだ多くの音楽家たちがホラー映画というジャンルを支えている。
これからホラー映画を観る際には、音楽にも注目してみると、より楽しみ方が広がるはずだ!!
■『M3GAN/ミーガン』作品情報

【ストーリー】
9歳の少女ケイディはタブレットで操作できるオモチャ“ペッツ”に夢中。その日も、両親の運転する車の中でペッツと遊んでいた。だが視界の悪い雪道で一家の車は除雪車と衝突。両親は帰らぬ人になってしまう。一命をとりとめたケイディは、おもちゃメーカー、ファンキ社に勤務する、ペッツの開発者で叔母のジェマに引き取られることになった。しかし、ライバル会社に売り上げを抜かれたため、上司にペッツの簡素化を命じられたジェマは忙しさから、心の傷が癒えないケイディと向き合う時間を取れずにいた。そこで彼女は“M3GAN(ミーガン)”という、開発の中断を余儀なくされたAI搭載の人形を実験的にあたえてみる。ケイディを守るようプログラムされ、優れた学習能力を持つミーガンは、ともに過ごせば過ごすほど持ち主のことを理解する画期的なお友達人形。話しかけ、一緒に遊んでいるうちに、閉ざしがちだったケイディの心もほぐれていった。その様子を目にしたジェマの上司デビッドは、ミーガンの商品化に乗り気になる。役員へのプレゼンも好評のうちに終わり、ミーガンは大々的に売り出されることが決定した。ミーガンのおかげで、ケイディは笑顔を取り戻していったが、ジェマは姪がミーガンに依存し過ぎていることが少々心配だった。また、この頃から周囲で、奇妙な出来事が起こり出す。ケイディを噛んだ隣家の飼い犬の失踪。小学校の体験入学キャンプでケイディをいじめていた男の子の交通事故死。不仲だった隣人の女性が惨殺されるに至り、ジェマはミーガンの危険性を察知し、強制シャットダウンする。しかし、事件はこれで終わらなかった。ペッツに変わる新商品ミーガンを売り出すファンキ社の発表会会場では、想像を絶する惨劇が起ころうとしていた……。


【クレジット】
原題:M3GAN
キャスト:アリソン・ウィリアムズ、ヴァイオレット・マッグロウ、ロニー・チェン他
監督:ジェラルド・ジョンストン
脚本:アケラ・クーパー
製作:ジェイソン・ブラム、ジェームズ・ワン
配給:東宝東和
© 2023UNIVERSAL STUDIOS. ALL RIGHTS RESERVED.
レイティング:PG12
公式サイト:https://m3gan.jp/
