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圧倒的カオスな世界観で展開される『オオカミの家』と狂気的ストップモーション・アニメーションの魅力

2023/09/12 18:30
Buffy Yoshikawa
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PHOTO: © Diluvio & Globo Rojo Films, 2018
チリのクリエイター、クリストバル・レオンとホアキン・コシーニャが制作したアニメ映画『オオカミたちの家』。『ミッドサマー』などで知られるアリ・アスターも影響を受けるなど、世界中にインパクトを与えているストップモーション・アニメの魅力に迫る。

Text:バフィー吉川

8月19日から順次公開されており、日本でも「ヤバい映画」として話題となっているのは、チリのクリエイター、クリストバル・レオンとホアキン・コシーニャが制作したアニメ映画『オオカミたちの家』。さらに短編作品『骨』も同時上映されており、どちらの作品も観たこともないようなビジュアルに満ち溢れた狂気的な世界観が展開されている!!

狂気的でありながらもアート性が強く、どこか美しささえ感じさせる部分もある今品は、世界中のクリエイターたちにとっても常識を覆される圧倒的なインパクトを与えている。なかでも『ヘレディタリー/継承』(2018)や『ミッドサマー』(2019)などで知られる映画監督のアリ・アスターは、ふたりの作り出す世界観に衝撃を受け、『骨』では製作として参加しているほど。

そんな『オオカミたちの家』はストップモーション・アニメーションという手法を使用している作品である。

『ジュラシック・パーク』(1993)でアカデミー賞視覚効果賞を受賞したことでも知られる巨匠フィル・ティペットが30年かけて少しずつ地道に制作した『マッドゴッド』も、2022年12月に日本でも公開され、狂気的な世界観が話題となった。

『マッドゴッド』の場合も、ストップモーションアニメという以前に、グロテスクなキャラクターや演出によってカオスな世界を作り上げており、こちらも革命的作品といえるだろう。

■ストップモーションアニメの魅力

Mad God: Behind the Scenes(Director Phil Tippett)

ストップモーションアニメというのは、簡単に言うと、静止している物体を少しずつ動かしながら1コマ、1コマずつ撮ることで、動いているように見せるアニメ作品のことを指している。デジタル化が進んだことで多少はスムーズにはなったものの、まだまだ時間と根気が必要ということもあって、長年かけて制作される作品も少なくない。

ストップモーションアニメ独特の、なめらかでありながら少しカクカクしているような絶妙な動きは、不安や恐怖感を煽ることにもうってつけで、ホラー色の強い作品で多様される手法ではあるが、一方で子ども向けの「PUI PUI モルカー」などにも幅広く使用されている手法のひとつである。

ストップモーションアニメの作品といえば、古くは多くの映画やアニメ作家に影響を与えたレイ・ハリーハウゼンの「シンドバット」シリーズや『恐竜グワンジ』(1969)などを思い浮かべるだろう。あるいはティム・バートンが監督を務め、今も高い人気を誇るディズニー映画『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』(1993)も有名だ。

最近でいえばダーク・ファンタジーを得意とする作家ニール・ゲイマンの作品を映画化した『コララインとボタンの魔女』(2009)や『ウェンデルとワイルド』(2022)のヘンリー・セリック、『KUBO/クボ 二本の弦の秘密』(2016)や『ミッシング・リンク 英国紳士と秘密の相棒』(2018)のトラヴィス・ナイトの作品も有名。

映画としても評価されているフランスの『ファンタスティック・プラネット』(1973)もストップモーションアニメだ。

日本でも先日続編「JUNK WORLD」の制作が発表された『JUNK HEAD』(2017)や「妖怪シェアハウス」の妖怪を紹介するシーンなどで使用されているアニメパートを担当した監督、宇治茶の場合は、ストップモーションアニメにも見えるかもしれないが、古くは「妖怪伝 猫目小僧」で使用されていた「ゲキメーション(劇メーション)」というストップモーションアニメを別の角度から利用した手法を使用している。

他にも伝説的コメディ番組「空飛ぶモンティ・パイソン」のなかのアニメや、風刺アニメとして世界中を炎上させ続けている「サウスパーク」などのように切り絵スタイルのものもあったりと、ストップモーションアニメといっても、どれもが人形劇のようになっているかというとそうではなく、ビジュアルも様々なのだ。

■『オオカミの家』は何が狂気的なのか?!

『オオカミの家』はタイトルの通り、家が舞台になっていることもあり、家自体をキャンバスとしている。壁、床、天井、家具をフル活用して、ストーリーが展開されていくのだが、その使い方というのが予想を超えてくるものとなっている。

カルト(暗黒時代のチリ植民地のメタファー)から逃げた主人公マリアの恐怖や不安といった精神状態を表現した映像の数々が、とにかく不気味でトラウマになりそうではあるものの、同時に見たことのないアート性を感じさせるのも事実で、様々な視点から中毒になりそうな映像が展開される。

サイケデリックなアニメでいうと、リチャード・リンクレーターの『ウェイキング・ライフ』(2001)や『スキャナー・ダークリー』(2006)といったドラッグトリップを疑似体験するような作品もあるが、今作はそういったトリップ感覚ではなく、精神的に追い詰められていくような、ある種のサブリミナルに感じる部分も。ある程度、体調を整えて観ることをおすすめしたい。

今でこそCGアニメというと当たり前だし、海外アニメの場合はその割合の方が圧倒的に多くなっているわけだが、まだCGに慣れていなかった頃の1995年に初めて世間にお披露目された『トイ・ストーリー』は革命的であった。そういった一般化なものとして普及するものではないし、時代と逆境するような限られたジャンルの作品群にはなってしまう。そのためクリエイターが「好き」でなければできない手法ともいえる。

ただ言い方を変えれば、それだけクリエイターの努力や根気、癖などが明確に反映される、つまり作家性がより際立つともいえるのだ!!

■『オオカミの家』作品情報

【ストーリー】
美しい山々に囲まれたチリ南部のドイツ人集落。“助け合って幸せに”をモットーとするその集落に、動物が大好きなマリアという美しい娘が暮らしていた。ある日、ブタを逃がしてしまったマリアは、きびしい罰に耐えられず集落から脱走してしまう。逃げ込んだ一軒家で出会った 2 匹の子ブタに「ペドロ」「アナ」と名付け、世話をすることにしたマリア。だが、安心したのも束の間、森の奥から彼女を探すオオカミの声が聞こえはじめる。怯えるマリアに呼応するように、子ブタは恐ろしい姿に形を変え、家は悪夢のような禍々しい世界と化していく……。

【クレジット】
監督:クリストバル・レオン、ホアキン・コシーニャ
脚本:ホアキン・コシーニャ、クリストバル・レオン、アレハンドラ・モファット
声の出演:アマリア・カッサイ(マリア、アナ、ペドロ)、ライナー・クラウゼ(オオカミ)
2018 年 / チリ / スペイン語・ドイツ語 / 74 分 / カラー / 1.50:1 / 5.1ch 原題:La Casa Lobo(英題:The Wolf House)
字幕翻訳:草刈かおり/映倫 G
© Diluvio & Globo Rojo Films, 2018
8/19(土)より、シアター・イメージフォーラムほか全国順次ロードショー

■『マッドゴッド』作品情報

【ストーリー】
「天国よりも地獄に惹かれる」と語る天才ティペットの潜在意識から溢れ出したのは、かつて誰も見たことのないダークファンタジー。孤高の戦士アサシンが荒廃した地下世界に潜り、拷問された魂、老朽化した地下壕、蠢く不気味なクリーチャーたちのあいだを巡っていく。グロテスクなその質感の全てに生命力と共感が宿っていることに、驚きを禁じ得ない。地獄の向こう側の狂気に到達した時、あなたは何を目撃するのか。脳がゲシュタルト崩壊する、未踏の84分間を全身で体感せよ!

【クレジット】
監督:フィル・ティペット
出演:アレックス・コックス
2021年/アメリカ/84分/1.78:1/カラー/5.1ch/原題:MAD GOD
日本語字幕:高橋彩/PG12
©2021 Tippett Studio
提供:キングレコード、ロングライド配給:ロングライドhttps://longride.jp/mad-god/

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