『ペルソナ3 リロード』レビュー|これぞ“再装填”。オリジナル未プレイ・世代じゃないけどドハマりした『P3R』の魅力


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あなたは、ゲーム体験になにを求めるだろう?
冒険を巡るスリル? 深い物語に没入する感動? それとも、日常を離れて別の自分になりきることの楽しさ? ゲームは私たちに無限の可能性を提供してくれるが、2006年にリリースされた傑作を2024年に蘇らせた最新作『ペルソナ3 リロード』は、それら全てを包み込むような体験を提供してくれる。
全世界累計販売本数が2200万本に到達するなど、世界的に評価を得る「ペルソナ」シリーズ。このシリーズの特徴として、現代の学生として生活するシステムや、副島成記氏のアートスタイル、ファッショナブルなUIなどが挙げられるが、そのどれもが『ペルソナ3(以下、P3)』から始まっている。「ペルソナ」過去作含め、既存のRPGとは違った『P3』のスタイルは以後の作品にも継承。このゲームがなければシリーズの世界的な人気も無かったかもしれない。
そんなシリーズの流れを変えた『P3』だが、恥ずかしながら筆者は2006年に発売されたオリジナル版をプレイしていなかった。筆者は現在20代なかばであり、『P3』の発売当時かつ舞台となった2000年代はまだ小学生。プレイするタイミング的にも舞台の年代的にも、『P3』は筆者より少し上の年代の作品だ。なのでプレイすることにどこか敷居を感じてしまい、そのまま今の今まで来たのである。
だから『P3R』をプレイしてみようと思ったとき、すでに大人となってしまった自分が、世代の違う2000年代の高校生の物語に入り込めるのだろうか……という一抹の不安はあった。しかし、ゲームを始めてみると不安はあっという間に解消され、物語の世界にのめり込んでいった。高校生特有のどこか物事を楽観視し、意気揚々と楽しむ冒険。その一方で隣り合わせにある現実的な死の緊張感、冷たさ。明るいのにどこか影のあるキャラクターたちと送る不思議な高校生活は、筆者の心を掴んで離さなかった。
違う世代の作品であるのに、本作にここまで夢中になったプレイヤーは、筆者だけではないはずだ。『P3R』はリメイク作品ながら、発売から1週間で全世界累計100万本のセールスを突破。このセールスは開発元であるアトラスの歴代タイトルの中で世界最速の記録となっている。また、海外からの評価もかなり高く、海外ゲームメディアIGNのレビューにて10点満点中9点を獲得。Steamでのユーザー評価も97%が好評の「圧倒的に好評」を獲得しているのだ。
\アトラス史上最速✨/
『ペルソナ3 リロード』が、全世界累計販売本数100万本を突破したぜ!!
これも応援してくれたミンナのおかげだな、ありがとな!
これからも #P3R とアトラスをよろしく頼むぜ!https://t.co/LrJ1OuiajS pic.twitter.com/Bm5utEQUjp— モルガナ_ペルソナ広報 (@p_kouhou) February 8, 2024
昨今、『FF7』や『スーパーマリオRPG』をはじめ、名作ゲームのリメイク作品が多く登場している。いまや、若年層はもちろん50代まで多くの世代がゲームに触れるようになった。リメイク作品のリリースは、オリジナル作品のユーザーを魅了した世界を現代の技術でもう一度描き、オリジナルのファンに改めて購入してもらおうという意図もあるだろう。しかし『P3R』は、筆者をはじめとしたオリジナル作品を知らない世代のユーザー、そして国も違う海外のユーザーにもしっかりと受け入れられている。
それはオリジナル版、そして2000年代という時代の持つ「懐かしさ」と、リメイクの際に作り上げた「新しさ」が上手にブレンドされているからだと筆者は考える。
丁寧に描かれる美しくリアルな“平成”
『P3』のシナリオ・キャラクターはリリース当時のまま、グラフィックの改善やアニメーションの追加など丁寧なリメイクが施されている『P3R』。ゲーム内の時代設定はオリジナル版と同様、2009年に設定されている。スマホではなくガラケー、音楽を聴くときは音楽プレイヤーと携帯ヘッドフォン。学生たちは通学バッグにでかいキーホルダーをぶらさげ、友人との交流はとりあえずメアド交換。「見たいテレビの時間だから帰るね!」でお別れするなど、『P3R』でも2000年代の学生像がそのままに反映されている。美しくなったアニメーションやグラフィックによって蘇ったリアルな平成の景色は、青春時代を過ごしたプレイヤーの心を一気にその当時に引き戻す。

主人公の持つ音楽プレイヤー、通称「香水瓶」は作品を象徴するアイテムだ。
本作で見せられた2000年代の景色に筆者は懐かしさを覚えた。「そういや、面白いテレビの次の日とか結構クラスで話題になったよな」、「この携帯ヘッドフォンめっちゃ音漏れするんだよなぁ」など、小学生の頃の記憶がおぼろげに蘇る。そして本作を遊びながら、2000年代の生活ってけっこう楽しいだろうなぁと改めて感じたのだ。スマホやサブスクは確かに生活を圧倒的に便利にしたけれど、友達から映画やゲームを借りた瞬間、そこから生まれるコミュニケーションの愛おしさは何物にも代えがたかったはずだ。本作にはそれを思い起こさせるほど平成をリアルに描いている。

でもさすがに小学生と遊ぶ高校生はまずいと思う
ゲームへの没入感を増幅させる「新しさ」
ここまでは『P3R』の魅せた懐かしい要素について語ったが、ここからは現代にもう一度『P3』をリリースするために施された「新しい」部分について語っていこう。『P3R』は物語をテンポよく楽しませるためオリジナル版から変更されているところがいくつかある。例えば、曜日限定のイベントが開催された時は、その該当施設からメルマガ(これも懐かしい響き)が送られてくる。それを確認すればいちいち移動しなくても、すぐにその施設までひとっ飛び。こういった要素が本作にはたくさん用意されており、そのおかげで、ノンストレスでゲームを楽しむことができるのだ。
このように現代のゲームスタイルに準じたテンポ良いプレイができる部分も評価できるが、『P3R』がさらに素晴らしいと感じるのが、そこから生まれた時間をキャラクターイベントに割いているということ。オリジナル版にはなかった男性キャラクターとの交流ができる「リンクエピソード」や、主人公に立ちはだかる敵集団「ストレガ」との新たなエピソードなど、オリジナル版のシナリオに更に深みを持たす要素が追加されているのだ。筆者の思う「ペルソナ」シリーズの魅力は、一癖も二癖もある人間らしいキャラクター造形。オリジナル版以上にイベントを増やし、丁寧にキャラクターを深堀りさせることにより、キャラクターの解像度とシナリオの理解度を高めてくれる。
またこういったイベントの追加によって、学生生活パートに彩りが加えられていることも本作の魅力だ。特に筆者が好きなのはテスト前に寮内で発生する勉強会。一人で勉強するよりも学力を上げられるというメリットももちろんあるが、勉強会の中で出る会話が等身大の学生そのもの。勉強と筋トレを同時にこなそうとする先輩や、真面目にやりたいのにいちいちふざける同級生など、思わず「こんなやついたわ~」と学生時代ならではの“勉強会”という特別なイベントに思いを馳せてしまった。

また、「ペルソナ」シリーズといえば、メニュー画面をはじめとするUI(ユーザーインターフェイス)の作りも注目ポイント。『P3R』のUIは、オリジナル版にあったスタイリッシュな部分を拡張。ファミ通のインタビューではUIのテーマとして、主人公の心の海を表現していると語っている。

ここまでアートを感じさせるUIでありながら、情報が整理されきっているというのも筆者的には評価したいポイント。細部まで世界観を表現しながらも複雑な項目が理解できるUIづくりには、『P3』以降このスタイルで何作品も作ってきた開発チームの職人技を感じてしまう。特にゲーム序盤はおしゃれな演出に毎回驚いてスクショを撮りまくっていた。
このように本作はリメイクするうえで、現代の基準を持って余計な要素を取り除きつつ、キャラクター造形やUIへのこだわりなど、「ペルソナ」として大切にしている要素の補填に力をかけているのがわかる。懐かしさを丁寧に残しつつ、細部までアップデート要素を入れ込む。これによって『P3』の描いた話を深く、新たな視点で楽しむことができるのだ。
物語の「光」と「闇」を表現するサントラ
「ペルソナ」シリーズの代名詞といえば、ジャズ、R&B、ロックなどさまざまなジャンルを横断した、目黒将司が手掛ける楽曲群。この独特なサントラが採用されたのも『P3』からだ。ロックのテイスト強めで、どこか明るい楽曲が特徴的な『ペルソナ4』や、都会的な雰囲気をアシッドジャズによって表現した『ペルソナ5』と、『P3』のサントラを比べてみると、どこか粗削りに感じる部分もある。しかし、ロックとHIP HOPがミックスされた楽曲の中に、本作が持つ暗い側面が見え隠れする。これこそが『P3』のサントラが持つカッコよさの所以だと感じるのだ。
『P3』のオープニングで流れる「Burn My Dread」はまさしくそれを体現したような楽曲。おしゃれなイントロの中にあるギターの切なさ、静かなメロディから突然「Burn My Dread(恐怖を燃やせ)」という歌詞と共に重たいバンドサウンドへ。死の恐怖を断ち切って戦い続ける主人公たちの姿を映し出した歌詞、冷たさと熱さを持つサウンドはプレイヤーを一気にゲームの世界へと没入させる。
また、放課後の探索パートにて流れるBGM「When The Moon’s Reaching Out Stars」も本作の雰囲気をより強調させる楽曲だ。都会的な印象を抱くブレイクビーツは清涼感がある反面、失恋をテーマにした歌詞は切なさを誘う。この明るさの中にある悲しみが、生と死をテーマとする本作らしいギャップを生み出している。また、放課後の時間に大人っぽい雰囲気のこの曲が流れるのも、高校生のちょっとした「背伸び感」を感じさせる。もしかしたら、学校が終わり寮へと戻る間の、自分だけの特別な時間を楽曲で表現しているのかもしれない。
『P3R』ではサントラもアップデート。オリジナル版でボーカルを務めていた川村ゆみに代わり、DREAMS COME TRUEなどメジャーアーティストのコーラスなどを務める実力派シンガー、高橋あず美を起用。殆どの楽曲がオリジナル版からアレンジが加えられた「リロード版」となり、歌詞の書き直しや音色のアレンジまで今の時代にあわせ手が加えられている。
先述した「When The Moon’s Reaching Out Stars」も、新録バージョンでは高橋あず美の落ち着いた声も相まってさらに大人っぽい仕上がりに。新たなパートも追加され、ひとつの楽曲としてさらにまとまりがあるものへとなっていた。
そして、『P3R』で新たに追加されることとなった楽曲も、本作の特徴を掴みつつ新たな味わいを与えている。「Burn My Dread」に代わってオープニングで流れる「Full Moon Full Life」は、死の恐怖を乗り越えて戦うというテーマを残しつつ、それによって生きることがより美しくなるという生の肯定を感じられるような楽曲となっている。また、「Burn My Dread」、「Memento Mori」など、オリジナル版への目配せも忘れない歌詞を入れ込んでいるのも、流石といったところだろう。
リメイクではなくリロード(再装填)された『ペルソナ3』
年齢を重ねたときに新たな発見ができることが、名作ゲームであるひとつの理由だと思う。例えば『ドラクエ5』で、「あの時はビアンカ一択だったけど、年齢を重ねるとフローラも素敵に思えるなぁ……」といった、年齢を重ねることでキャラクターへの理解が深まる現象。あれはまさに、自分の選択が物語を作る「ゲーム」という媒体だからこそ生まれやすい現象なのではないだろうか。
筆者の思う「ペルソナ」シリーズの魅力は、一癖も二癖もある、人間らしいキャラクターだ。だから「高校生の時はこいつがお気に入りだったけど、今はこのキャラクターの悩みがめっちゃわかるなぁ……」ってことがよく起こる。そして好きだったキャラクターの、今思うと少し嫌なところが見えてモヤモヤしたりする。自分の物の見方、考え方の変化を実感したり、その感覚が人によって全く違うのが「ペルソナ」のいいところだと思う。
そんなことを考えた時、『P3R』はそれをゲーム全体で表していると感じた。発売当時の世界観を現代にもう一度作り直すことで生まれる懐かしさは、まさしく世代によって感じ方が変わってくる。筆者やそれより上の世代であれば当時の貴重な思い出が蘇るし、全く体験したことのない世代は、当時の文化そのものが新鮮に映るだろう。その世界を羨ましいと思うか、そうでないかはその人次第だ。ちなみに筆者はこの時代をすごく羨ましく感じてしまった。クラスメイトと昨日のテレビの話で盛り上がりたいし、友達とCD交換し合いたい。
そんな感覚を覚えることができたのも、オリジナル版の世界観を残しつつシリーズのノウハウを活かして、ストレスなく、より深く楽しめるように開発してくれたおかげだろう。オリジナル版のグラフィックをただ一新したものでも、ストーリーを大きくアレンジしたものでもないところから、タイトルに込められた「リロード(再装填)」という意味が伝わる。世代は少し違えど、筆者はこのゲームを通して学生時代の「あの時にしかない特別な時間」をもう一度思い出すことができた。
2月9日には本作に追加されるDLCが入った「エキスパンションパス」が発表。その最後にはオリジナル版の後日談である『ペルソナ3 フェス』のエピソードをリメイクした『エピソードアイギス -The Answer-』が追加される。オリジナル版で描ききれなかった部分を補填する物語なのだが、リロード版ではさらなる仕掛けを加えてくるはずだ。そして、筆者としてはこの物語がまだ続くということが嬉しくて仕方がない。4月には『P3R』のサントラも発売されるし、まだまだ「ペルソナ」の世界を楽しめそうだ。
■ペルソナ3 リロード 公式サイト:https://p3re.jp/




