マイリー・サイラス 新アルバムリリース記念! ディズニー・チャンネル黄金期を支えたドラマ『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』を再評価


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3月10日に新アルバム『Endless Summer Vacation』(日本盤は3月29日)がリリースされたマイリー・サイラス(Miley Cyrus)。
最近はドラマや映画への出演がほとんどなく、ドラマは『ブラック・ミラー』の1エピソード、映画は『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)のキャラクター吹替えが最後。女優業としては成功したとは言えないが、マイリー・サイラスというアーティストの根底にあるのは、間違いなくディズニー・チャンネルドラマの『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』だ。
マイリーが女優としてデビューしたのは、実の父親でもあるカントリー歌手で俳優のビリー・レイ・サイラス主演医療ドラマ『Doc』である。つまり歌手より女優としての経歴の方が古い。
そして運命を変えたのが、2006年にディズニー・チャンネルで放送開始された『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』だったというわけだ。
同作で世界的に知られる存在になり、日本でも彼女のことを多くの人が知るきっかけとなった。
日本におけるディズニー・チャンネルの知名度を上昇させた立役者
ディズニー・チャンネルが日本に上陸したのは2003年。開局から数年はチャンネルの知名度が伸び悩んでいた時期であり、この頃に放送されていたヒラリー・ダフ主演ドラマ『リジー&Lizzie』やレイブン・シモーヌの『レイブン 見えちゃってチョー大変!』など、アメリカでは人気があっても日本ではいまいち波に乗れなかった作品も多かった。
そんな中で2006年になってテレビ映画『ハイスクール・ミュージカル』が話題となり、メディアや地上波でも取り上げられ、ザック・エフロンやヴァネッサ・ハジェンズなども来日するまでの人気となった。
このムーブメントによって、日本におけるディズニー・チャンネルの知名度が一気に上昇。その温まった空気感の中で放送開始されたのが『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』だったのだ。同作は若い世代を中心にカルト的人気となった。
海外ドラマの映画化作品は劇場公開自体が難しい中(特にティーンドラマの場合は)、劇場版『ハンナ・モンタナ ザ・ムービー』(2009)だけではなく、コンサートツアーを収録した『ハンナ・モンタナ ザ・コンサート 3D』(2008)も公開されるまでに至たり、一部のシーズンではあったもののテレビ東京系列の地上波でも放送された。ディズニー・チャンネルのドラマが地上波で放送されること自体が、当時としては異例であった。
『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』という作品は、主人公が普通の中学生でありながら、実は世界的トップスターという少女漫画のようであり、シットコムやティーンドラマとしても王道的。正直言って、ストーリーはそこまでスバ抜けておもしろいとは言えないものだった。だとしたら何をそこまで視聴者を魅了したのか……。
それは間違いなく主演のマイリー・サイラスのアイドル性に加えて、使用楽曲がどれもキャッチーなものばかりだったことだ。シーズン1の頃はまだまだ手探り状態ということもあってドラマ要素の方が強いが、シーズン2からは音楽要素を本格的に取り入れていった。
ディズニー・チャンネルのドラマには、音楽シーンが入るミュージカル要素の強い作品がそれまでにもいくつかあったものの、どれもイベント的に挿入されることが多く、『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』のように頻繁に歌唱シーンが挿入されるドラマ自体が珍しかったといえるだろう。
この試みは、後番組でもあり、ゼンデイヤとベラ・ソーンを一躍有名にしたドラマ『シェキラ!』にノウハウとして受け継がれている。
フィクションとリアルによるメディアミックスの成功
しかしドラマや映画版だけでは、社会現象にまではならなかっただろう。では何がそうさせたのかというと、ハンナ・モンタナという存在がドラマから抜け出し、実際にコンサートツアーを行うことでメタ的なアイドルとしても活躍していたからだ。
これはディズニーが『ハイスクール・ミュージカル』や『キャンプ・ロック』のツアー公演などの経験で培ってきた、フィクションとリアルとのメディアミックスが下敷きとしてあったからである。ちなみに当時はディズニーではなかったが『Glee』もコンサートツアーなどにも影響を与えたといえるだろう。
また2007年にはマイリー・サイラス名義での初アルバム『Meet Miley Cyrus』もリリース。2008年に『Breakout』、2010年には『Can’t Be Tamed』……とドラマと並行して、マイリー名義の歌手活動も行っていたことで、幅広い層に知られ、絶大な人気を誇るアーティストになって行った結果、20歳以下で、5枚のアルバムで全米1位を獲得した唯一の女性アーティストとなった。
2009年にリリースされたミニアルバム『Time Of Our Lives』の中の楽曲「Party In The U.S.A.」も世界中から注目されるヒットソングとなった。
マイリーがハンナ・モンタナから脱皮
そして2009~10年にかけてはハンナ・モンタナからマイリーが完全に脱皮する期間だったといえるだろう。2010年頃まではまだディズニーアイドルの余韻を持ったポップシンガーといった印象が大きかった。
それもそのはずでマイリーのアルバムをリリースしていたのは、ディズニー傘下の音楽レーベル「ハリウッド・レコード」だったからだ。ディズニー色が強いのは必然ともいえるだろう。
2010年に『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』がフィナーレを迎えたこともあって、ハリウッド・レコードから2013年に「RCAレコード」に移籍。そこからリリースされた『Bangerz』はディズニー色が完全に消え、新たなアーティストとして出発することになった。
ロングヘアーをばっさり切ったのもそんな心情と音楽性の変化によるものだったのではないだろうか。
だからといってマイリーにとって、ディズニーアイドル時代は決して黒歴史ではない。過去にハンナ・モンタナを演じたことで自分を見失ったと発言したこともあるが、デミ・ロバートやセレーナ・ゴメス、ヒラリー・ダフなどもそれは同様である。
デミのように人気になり過ぎてしまったがゆえに、そのプレッシャーからドラッグ依存になってしまう者もいた。実際にマイリーも一時期はドラッグ依存者であった。ハンナ・モンタナが終了したのもドラッグが原因だと騒がれたほどだ。
『キャンプ・ロック』や『シークレット・アイドル ハンナ・モンタナ』が成功した影で、撮影とツアー、ファンサービスでプライベートは一切なし、ディズニーアイドルという商品として消費されるモデルケースとなっていたのも事実で、今思えばなかなかブラックな稼働状況であっただけに、人気絶頂=順風満帆ではなかったのだと、つくづく理解できる。
ディズニー・チャンネルも最近は大規模なメディアミックスをあまりしなくなってきたのは、そういった問題が明るみになったからだろう。
それでも良くも悪くも今のマイリー・サイラスというアーティストを作ったのはディズニーアイドル時代の経験があってこそだというのは間違いない。
ハンナ・モンタナの続編に出演して欲しいと言われたとしたら、きっとマイリーは断るとは思うが、現在のところディズニーとは決して悪い関係性ではない。それを示すかのようにDisney+では新アルバム『Endless Summer Vacation』のリリースにあわせて、プロモーション的なドキュメンタリー『エンドレス・サマー・バケーション(バックヤード・セッションズ)』が配信されており、さらにその中で『ハンナ・モンタナ ザ・ムービー』(2009)の楽曲「The Climb」を披露しているのだ。
この楽曲は映画の中でハンナ・モンタナ(マイリー)が新たな道に進むことを表した曲でもあることから、ハンナ・モンタナの存在に対して、心境の変化もあったのではないだろうか。
とはいえ、表向きはそうでも本当のところはマイリー本人にしかわからないが……。
【リリース情報】

Miley Cyrus | マイリー・サイラス
最新アルバム『ENDLESS SUMMER VACATION』|『エンドレス・サマー・バケーション




