意外と盲点だった?! 音楽のクオリティで選ぶクリスマス映画4選


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Text:バフィー吉川
ホリデーシーズンといえば、『クリスマス・キャロル』の何百回目かわからない再映像化作品や、サンタクロースを主人公としたファミリー向けの作品が多くリリースされる時期である。特に今は配信系もあって、求められてはいるけれど、数が多すぎるという事態に。つまり需要と供給のバランスが完全に崩壊状態なのだ。
似たような作品がいくつもあって、どれを観ていいかわからないという人も多いのではないだろうか。だからといって、片っ端から観るようなジャンルでもないから、結局同じ作品ばかり観てしまう……。
それなら今年は、作品内で使用されている楽曲のクオリティの高さという視点からクリスマス映画を選んでみるのもいいかもしれない。
『RENT/レント』(2005)
監督:クリス・コロンバス
脚本:スティーヴン・チョボスキー
出演:ロザリオ・ドーソン、アンソニー・ラップ、アダム・パスカル、イディナ・メンゼル、ジェシー・L・マーティンほか
今作の代表曲「Seasons of Love」は、ミュージカルソングの定番中の定番。作品は観たことがなくても曲だけは知っているという人も多いのではないだろうか。
ジャコモ・プッチーニのオペラ『ラ・ボエーム』を下敷きに、35歳という若さでこの世を去ったジョナサン・ラーソンが全身全霊を賭けて手掛けた最後のミュージカル作品にして最高傑作を、『ホーム・アローン』(1990)、『ハリー・ポッターと賢者の石』(2001)のクリス・コロンバスが映画化。
ミミ役のロザリオ・ドーソンとジョアンヌ役のトレイシー・トムズ以外のメインキャラクターは、舞台版の役者をそのまま起用していることで、舞台感を大切にしながら映画ならではの奥行のある演出で絶妙なバランスに構築されている。ちなみにトレイシーは本作の後、2008年に舞台版の方にも出演を果たした。
世間はクリスマスや新年で浮かれているが、そんな時期でも家賃も払えないほど苦しい生活の中で創作活動をしなれければならない芸術家たちの姿を描いている。だからといって、決して暗い内容ではない。そして本作に説得力があるのは、作者のジョナサン・ラーソンの実体験や周りにいた仲間たちがモデルになっているからなのだ。
自伝的作品としてはNetflix映画として制作され、主演のアンドリュー・ガーフィールドが第94回アカデミー賞にノミネートされた『Tick, tick… BOOM! : チック、チック…ブーン!』(2021)もあるが、本作の場合は自伝的要素をあえて薄め、芸術家たちの物語として視点を分散させ、エンタメ要素が強調されたことで、ポップでありながらも重厚感のあるストーリーと楽曲が、多くの人の心を揺さぶる作品になっている。
「Seasons of Love」は冒頭とラストの2回使用されているが、これは時間の大切さ、価値観が本作を観る前と観た後で少し違って感じるからである。
『ジングル・ジャングル ~魔法のクリスマスギフト~』(2020)
監督・脚本:デヴィッド・E・タルバート
出演:マダレン・ミルズ、フォレスト・ウィテカー、キーガン=マイケル・キー、アニカ・ノニ・ローズ、リッキー・マーティンほか
ファンタジー要素も強く、衣装も鮮やかで全体的に子供向けの内容に思えるかもしれないし、実際にもそうなのだが、使用されている楽曲の中にR&Bやソウルを感じる不思議な作品だ。
音楽は『グレイテスト・ショーマン』(2017)の音楽を手掛けたジョン・デブニーによるもの。冒頭の曲「This Day」は、正に『グレイテスト・ショーマン』を感じさせるサウンドになっている。
また主人公の母を演じるアニカ・ノニ・ローズによる「Make It Work」では、アニカの歌唱力の高さに驚かされるが、それもそのはずで、彼女は『ドリームガールズ』(2006)の中でビヨンセ、ジェニファー・ハドソンとともにザ・ドリームズのメンバーを演じている。キャラクターの役割的には他の二人に比べて霞んでしまっていたかもしれないが、2004年に出演した舞台『Caroline, or Change』ではトニー賞ミュージカル女優賞を受賞した実力派だ。
彼女はまた、『プリンセスと魔法のキス』(2009)でディズニー初の黒人プリンセスとなった主役のティアナ役に抜擢されている。実は、当初の候補にあったのは、『ドリームガールズ』で共演したビヨンセだった。しかしスケジュールの都合で断念され、アニカに決まったのだ。つまりビヨンセの代役を務められる、匹敵する歌唱力の持主ということなのだ。
主要キャラクターが黒人俳優で構成されていることから、全体的にブラックスプロイテーション(黒人ユーザー向けに作られた映画のこと)の香りが漂うかもしれないが、監督・脚本を務めたデヴィッド・E・タルバートが、その系譜を受け継いだ『30日の婚活トラベル』(2013)や『スイートホーム・クリスマス』(2016)といった作品を手掛けている監督だけに、決して気のせいではない。
音楽性という視点からは、その要素は間違いなく入っており、そのクオリティの高さから人種に関係なく楽しめる作品となっている。ちなみに今作はNetflixオリジナル作品である。
『トロールズ みんなのハッピーホリデー!』(2017)
監督:ジョエル・クロフォード
脚本:ジョシュ・バイセル/ジョナサン・フェナー
出演:アナ・ケンドリック、ジャスティン・ティンバーレイク、ズーイー・デシャネル、ジェームズ・コーデン、クナル・ネイヤーほか
トロールズなんて子供向けのアニメだと思うかもしれないが、実は大人にこそ観てほしい作品である。だだし英語音声で観てもらわないと意味がない。
「シュレック」や「ボス・ベイビー」シリーズなどで知られるドリームワークスは、毎年のように代表作品のホリデー・スペシャルとして短編を制作して続けており、その中の一本となるのが今作だ。
一応、『トロールズ』(2016)の直接的な続編となっており、『トロールズ ミュージック★パワー』(2020)との中間を繋ぐ物語でもあることから、映画とも直結している。
映画版と比較しても半分ぐらいのボリュームではあるが、トロールズの魅力は、何といっても声優の歌唱力が間違いないということだ。
主人公のポピーの声優には『ピッチパーフェクト』(2012)や『ラスト5イヤーズ』(2014)、『イントゥ・ザ・ウッズ』(2014)などで歌の上手さが証明されている女優のアナ・ケンドリック。そんなアナのデビューは、実は映画ではなく、ブロードウェイの方が先。そもそもミュージカル舞台の人なのだ。
そして元イン・シンクと言っても最近はピンとこなくなってしまったジャスティン・ティンバーレイクがボーイフレンドのブランチの声優を務めている。
あくまで子供向けというていの作品ではあるが、本作ではマドンナの「Holiday」やオージェイズの「Love Train」など、なかなか渋い選曲をしてきたり、実は社会派な内容を含んでいたりと油断ならないシリーズなのだ。
クリスマス映画ではないが、続編となる『トロールズ ミュージック★パワー』では、オジー・オズボーンやケリー・クラークソン、K-POPグループのRed Velvetまでもが参加して、ちょっとしたミュージック・フェス状態になっている。
可愛らしいアニメのビジュアルはもちろんのこと、アーティスト同士のコラボを楽しむことこそが今作の醍醐味といえるだろう。第3作も制作中ということで、今からどんなアーティストが参加するのか気になるところだ。
『グリンチ』(2000)
監督:ロン・ハワード
脚本:ジェフリー・プライス、ピーター・S・シーマン
出演:ジム・キャリー、テイラー・モムセン、クリスティーン・バランスキー、アンソニー・ホプキンス、モリー・シャノンほか
世界的に有名な絵本作家のドクター・スースによって1957年に発表された『いじわるグリンチのクリスマス』は、今までにも何度か映像化されており、近年にも「ミニオンズ」シリーズで知られるイルミネーションによって制作され、ベネディクト・カンバーバッチが声優を務めた『グリンチ』(2018)が記憶に新しいが、今回紹介するのは2000年のジム・キャリー版だ。
独特のビジュアルから実写化不可能といわれていた中でも、実写化の企画はいくつか存在しており、交渉が常に行われていたが映像技術の限界と適した役者が見つからず、難航状態。
そんなときにドクター・スースの妻であり、1991年にスースが亡くなって以降、作品の権利を所有していたオードリー・ガイゼルが『マン・オン・ザ・ムーン』(1999)の撮影場所を訪れ、メイクもしていないジム・キャリーによるグリンチのモノマネを気に入ったことから、本格的に制作が開始されることになった。
つまりジム・キャリーは、表情そのものがグリンチに似ているのだ。
ジム・キャリーがミュージカル映画に出演したのは、後にも先にも本作のみという点も貴重なのだが、よく通る歌声が魅力的で、特に1966年のアニメ『グリンチのクリスマス』の楽曲をカバーした「You’re a Mean One, Mr Grinch」は素晴らしいクオリティ。このシーンだけでも何度も観たくなる中毒性を秘めている。
また、最近は歌手活動が大人しくなってしまったが、全盛期のフェイス・ヒルによる「Where Are You Christmas」やベン・フォールズの「Lonely Christmas Eve」など、ミュージカルシーン以外のサウンドトラックも魅力的だ。
ちなみに日本には輸入されてきていないが、「Glee」のマシュー・モリソンがグリンチを演じたNBCのライブ番組『Dr. Seuss’ the Grinch Musical』(2020)もおすすめだ。




