『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』『ミズ・マーベル』…アメコミ映画・ドラマから脚光を浴びる名曲たち


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Text:バフィー吉川
https://www.youtube.com/watch?v=AEJo-kf8Sww
ジェームズ・ガンが新たに設立された「DCスタジオ」の共同会長兼CEOに就任したこともあり、シリーズ3作目にしてガンが関わるものとしては完結編となる『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:VOLUME 3』が、5月3日より公開中だ。
映画「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズは、『悪魔の毒々モンスター』(1984)や『キラーコンドーム』(1996)といったゲテモノ映画を量産している「トロマ・エンターテインメント」出身のガン特有と言うべきか、独特の空気感やB級コメディ要素も強いことから、MCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)の中でも高い人気を誇っているだけではなく、地球上をメイン舞台としていたMCUにおいて、宇宙という概念を持ち込み、世界観を大幅に拡張させた作品でもある。
そんなジェームズ・ガン版「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」の最大の特徴のひとつとして、既存の曲を効果的に使用していることが挙げられるだろう。
主人公ピーター・クイルは9歳の頃に地球から連れ去られ、その時に持っていた母親の形見であるウォークマンと母親の作った、主に60~70年代の名曲が詰まったカセットテープを宝物として持っているという設定で、作中でその年代の楽曲が効果的に流れる仕組みになっている。
その選曲もエモーショナルなものばかりで、ミックスアルバムとしても高い評価を受け、既存の楽曲だけで構成されたサウンドトラックとして全米アルバム・チャートで1位を記録した初めての作品にもなった。特に若い世代の人は、映画を通じて60~70年代の名曲を知ったという人も少なくはない。
さらにクイルは80年代のドラマや映画も愛していることから、舞台は宇宙なのにポップカルチャーネタがふんだんに盛り込まれるという奇抜さも加わり、MCUの中でも少し毛色の違ったシリーズとして独自の成長を遂げていった。
前作『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』(2017)でそのウォークマンが破壊されてしまい、ピーターを誘拐した張本人でありながらも父親代わりでもあるヨンドゥから新たに「ZUNE」(マイクロソフトが開発し販売した日本未発売の携帯音楽プレーヤー)を譲り受ける。その流れを受け今作の中では、90年代~2010年代の曲が追加されることになるのだ。
それによって、日本人アーティストEHAMIC(エハミック)による「小犬のカーニバル~小犬のワルツより~」が使用されるなど、選曲の幅が圧倒的に広がった。
今回は、あくまでジェームズ・ガンが関わるものとしては完結というだけで、「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」というチーム自体が解体されたわけではないため、ロケット・ラクーンやグルートといったキャラクターたちは、今後も違ったかたちでMCUに登場してくるはずであり、メンバーが音楽好きという要素は今後のシリーズにも遺されることとなった。
■MCUフェーズ2以降の音楽使用の変化
「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」シリーズ以外のMCUにおいても既存の曲を使用した作品が無かったわけではない。
例えば「アイアンマン」シリーズでは、AC/DCがアイアンマンのテーマソング的に扱われ、『アイアンマン2』(2008)では、AC/DCの曲で作品自体が構成されていると言っても過言ではない。
またMCUフェーズ1の最終作『アベンジャーズ』(2012)ではSoundgardenやPapa Roach、Buckcherryといったロックバンドを中心にサントラが構築されていることから、フェーズ1は全体的にロックミュージックを大切にしていたことがわかる。
ところが『アベンジャーズ』を境に、フェーズ2からはスコア盤ばかりで、既存のアーティストが集まったコンピレーション的なサントラをあまり出さなくなってしまい、既存の曲を使用するという点では落ち着いてしまったように思える。だからこそ「ガーディアン・オブ・ギャラクシー」などの多くの既存音楽を使用した作品は貴重だったともいえるのだろう。
フェーズ2以降、特にフェーズ3からは登場キャラクターの中でも急速に多様性が進み、その上でMCUにおける音楽使用の在り方がどう変化したかというと、他国の環境や文化の違いといったものを表現する際に多く取り入れられているようにも感じられる。
例えば『ブラックパンサー』(2018)では、黒人社会やカルチャーなどをワカンダという架空の国として反映させたストーリーということもあり、Kendrick Lamarを中心としたブラックミュージックやヒップホップの曲がふんだんに使用されている。
またその一方で、続編となる『ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー』(2022)では、ブラックパンサーことティ・チャラを演じていたチャドウィック・ボーズマンが大腸癌によって43歳という若さで亡くなったことがメタ的に反映され、作中でも主役の死を悼む空気感が全面に漂っていたことからも、1作目のようなアップテンポなヒップホップの曲は使用されず、しっとりと落ち着いた曲が多く使用されていることで、より主人公不在の哀しみを演出していたといえる。
Rihannaが歌った主題歌の「Lift Me Up」が第95回アカデミー賞の歌曲賞にノミネートされたことも記憶に新しいのではないだろうか。
■インド映画音楽が効果的に使用されていた『ミズ・マーベル』
『ブラックパンサー』や『シャン・チー/テン・リングスの伝説』(2021)もそうだが、環境やマイノリティ、物語の世界観やキャラクターの奥行を想像させるものとして音楽が効果的に使われてきたが、それが近年で一番際立っていたといえるのが、Disney+で配信されているドラマ『ミズ・マーベル』だろう。
主人公のカマラ・カーンがパキスタン系アメリカ人でイスラム教徒という設定であるため、Eva Bやハサン・ラヒーム、シェイ・ギルといったパキスタンで若者を中心に人気があるアーティストの楽曲を多く使用している。
またパキスタンではインドの映画や音楽が共通娯楽として普及していることから、作中のセリフの中にも「キング・オブ・ボリウッド」ことシャー・ルク・カーンの名前も出てくるほか、ラーニー・ムケルジー主演で『アメリカン・ピーチパイ』(2006)をヒンディーリメイクした映画『Dil Bole Hadippa!』(2009)の作中曲「Hadippa」が結婚式のダンスシーンで使用されている。
ほかにもナジア・ハッサンの名曲で、インド映画『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え!No.1!!』(2012)の「The Disco Song」の中でもサンプリングされていた「Disco Deewane」、アミターブ・バッチャン主演映画『ドン』(1978)の「Yeh Mera Dil Yaar Ka Diwana」、サルマン・カーン主演映画『Hum Aapke Hain Koun..!』(1994)の「Joote De Do Paise Le Lo」といった映画音楽が多く使用されている。
インドに限らずMCUの中で映画音楽を使用した作品は他になかったはずだが、映画と音楽が密接に繋がっているインド音楽を取り入れた結果としてそうなったのだろう。
■日本において洋楽普及に貢献してきたアメコミ映画たち
MCUではないアメコミ映画でいうと、『バットマン』(1989)のサントラはPrinceの曲によって構築されているし、MetallicaやMarilyn Mansonなどが参加した『スポーン』(1997)のサントラも話題となるなど、アメコミ映画を通して洋楽アーティストを知った日本人も多いのではないだろうか。
ソニー・ピクチャーズが手掛けた『スパイダーマン』(2002)では、Sum 41やNickelbackのチャド・クルーガーなどといった錚々たるアーティストがサントラに参加しただけではなく、Aerosmithが1967年から1970年にかけてアメリカで放送されたテレビアニメ版『スパイダーマン』のテーマソング「スパイダーマンのテーマ」をカバーしたことも話題となった。また同曲を『スパイダーマン2』(2004)では、ポップ・ジャズシンガーのMichael Bubléがカバーしたことでもさらに話題となった。
ヒットした作品だけに限らず、例えば『デアデビル』(2003)は、映画自体が日本ではあまりヒットしたとは言えないが、音楽性は高く評価され、今作の挿入歌として起用された「Bring Me To Life」を聴いて、日本では全く知名度がなかったはずのゴシック系バンド、Evanescenceのファンになったという人も多かった。
2010年以降も『スコット・ピルグリム VS. 邪悪な元カレ軍団』(2010)や『キック・アス』(2010)は、日本公開までにはタイムラグがあったことから、映画よりも先に曲が注目されるなど、時代、時代でアメコミ映画は日本においての洋楽の普及に貢献してきたことは間違いないだろうし、今後もその役割は果たしてくれるはずだ!!




