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『オーバーウォッチ』『Need For Speed』『VALORANT』 …ゲームきっかけで世界に広がる日本の音楽

2023/03/23 20:30
はらう
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ゲーム内での多様性を表現する音楽と、それがもたらすユーザー、アーティスト双方が受けるメリットを考える。

今後日本の音楽は、ゲームをきっかけにして世界へと知られていくかもしれない。

現在、海外で知られている日本の音楽と言えばアニメをきっかけにした楽曲が多く、2022年にSpotifyが発表した「海外で最も再生された日本のアーティスト」では、『進撃の巨人』、『呪術廻戦』、『鬼滅の刃』などの昨今のアニメ主題歌がランキングに並び、海外におけるアニソンの人気を再確認できるものとなっていた。

このように、オタクカルチャーによって日本の音楽が世界に知られることはよくあるが、そういった動きも多様化されてきており、YouTubeなどの動画サイトから日本の70~80年代を彩ったシティーポップが海外で話題になったり、TikTokをきっかけに注目される日本の楽曲なども現れている。

ゲームから注目される国内アーティストの音楽

その中で、筆者が特に注目しているのが「ゲームをきっかけに広まる日本の音楽」だ。これまで、ゲームに使われる日本の音楽で世界的に有名なものと言えば、『ゼルダの伝説』や『FINAL FANTASY』などの所謂ゲームミュージックが多かった。しかし近年では、ゲームミュージック以外でも日本の音楽がゲームをきっかけに注目され始めている。

そのような流れで最近話題になったことといえば、2020年にリリースされたMFS「BOW」のバイラルヒットだろう。

この楽曲は2022年にリリースされた『オーバーウォッチ2』に起用されたことからネット上で大きく話題となり、Spotifyのバイラルチャートにおいて世界45の国、地域でチャートイン。そしてグローバル、アメリカ、イギリス、カナダ、ドイツ、フランス、オーストラリアでは1位を獲得という、日本人アーティストとして前例のない快挙を成し遂げた。

もちろん、この楽曲の中毒性のあるサウンドやインパクトあるリリックも人気の要因だが、起用された『オーバーウォッチ2』は、リリースから10日で全世界のプレイヤー数が2500万人を超えるほどゲーマーからの注目度が高かった作品。作品内に登場する日本人キャラクター「キリコ」のテーマソングとして、起動後のメニュー画面やYouTubeのトレーラーでも楽曲の一部が使用されたため、作品を触ったプレイヤーの多くが「BOW」を耳にすることとなり、そこからバイラルヒットに繋がったのだと考えられる。

『オーバーウォッチ2』に起用される前から、レッドブルの企画「RASEN」への出演や、国内最大級のヒップホップフェス「POP YOURS」への出演など日本のヒップホップシーンでは注目されていたMFSであったが、このバイラルヒットにより一気に世界に名を広めることとなったのである。

『Grand Theft Auto』シリーズのゲーム内ラジオのように、ゲーム内でライセンス楽曲が使われるというパターンは今や珍しいことではないが、今回のような形で日本人アーティストの楽曲が起用され、バイラルヒットにつながるという出来事は他に類を見ないだろう。しかし、こういったヒットが生まれる流れにはゲーム側にも背景があり、今後もこのようなことがさらに増えるだろうと筆者は予想する。

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エンタメカルチャーにおける「多様性の尊重」の浸透

その理由として、「多様性を尊重する」という視点がゲームカルチャーの中でも深まっていることを挙げたい。エンタメにおける多様性の尊重は、ここ近年最も重要視されていることのひとつ。2018年のアカデミー賞で主演女優賞を受賞したフランシス・マクドーマンドがスピーチしたことで話題となった「インクルージョン・ライダー」は、2020年代になりさらに積極的に取り入れられるようになっている。

「インクルージョン・ライダー」とは、映画やドラマにおいて俳優や撮影クルーの多様性を約束するためのもので、女性、少数民族、LGBTQ、障害を持った人などマイノリティの人たちを雇用し、格差をなくすための条件を指す。元は映画やドラマの業界用語であったが、前述したアカデミー賞のスピーチ以後、広く使われるようになった言葉である。

その影響もあり、2020年のアカデミー賞では作品賞にノミネートされるための条件としてこの「インクルージョン・ライダー」が取り入れられることになった。そして、この基準は映画業界だけでなく音楽業界にも影響を与え、グラミー賞を主催するレコーディング・アカデミーは、「2022年のグラミー賞は、インクルージョン・ライダーに取り組んだ初めてのメジャーな音楽賞となった」と発表した。

このようにエンタメにおける多様性の尊重はここ近年最も重視されるべき視点となっており、それはもちろんゲームの世界でも広まりつつある。2018年のアカデミー賞のスピーチ後、ワーナーブラザーズ・エンターテインメントは、「テレビ、映画、ビデオゲームなどのすべてのデジタルプロダクションにてインクルージョン・ライダーに取り組む」という声明を発表し、大手ゲーム会社として初めてインクルージョン・ライダーに取り組んだことが大きな話題を集めた。

そして現在では、多様性を反映したゲーム作品が数多くリリースされている。任天堂『スプラトゥーン3』『ポケットモンスター スカーレット/バイオレット』などでは、主人公を「男の子」「女の子」で決めるのではなく、複数のボティタイプやイメージから選択できるなど多種多様なキャラメイクを採用している。他にも、2012年に最もプレイヤー数が多いPCゲームとしてギネスにも認定された『リーグ・オブ・レジェンド』では多様な人種・性的指向のキャラクターが存在。現在日本でも高い人気を誇るオンラインFPS『APEX Legends』では、様々な人種、性的指向を持つキャラクターに加え、義手義足などの身体的障害を持ったキャラクターや、ADHDなどの精神的障害を持ったキャラクターが登場するなど、映画・音楽と同等、もしくはそれ以上に、多様性に対して積極的に取り組んでいる姿勢が見受けられる。

英Guardian誌が「ゲームは若者にとって音楽以上に重要なカルチャーとなっている」と報じたように、ゲームは今を生きる人たちにとって、巨大な経済力とそれに伴う影響力を持つカルチャーのひとつだ。さらに映画や音楽との一番の違いは、ゲームは能動的に楽しむことができるエンタメであるという点にある。操作するキャラクターに自分自身を投影してもいいし、自分とは全く異なる人種・性別のキャラクターを作ってもいい。能動的に楽しむものだからこそ、選択肢が多ければ多いほどいいのである。

そして何より、多様性を大切にすることでゲームの世界はさらに広がっていく。自分とは異なる人種・性別をゲームの世界で体感することで、今まで触れられていなかった異なる文化や考えを知ることができるのだ。それは、ゲームにおいて多様性が表現されることでユーザーが得られる最大のメリットだと筆者は考える。

音楽を通じて表現される多様性

近年のゲーム作品では、キャラクター以外でも、音楽を通して多様性を表現するという試みが行われていることもしばしばだ。

ストリートを舞台としたレースゲーム『Need For Speed』シリーズの最新作『Need for Speed Unbound』では、世界中のヒップホップカルチャーを網羅した70曲以上のグローバルなサウンドトラックがゲーム内で流れる。本作の音楽演出を担当したチェイス・ストレート氏は、「サウンドトラックの半分近くは英語を使用しておらず、各地域で注目を集めているアートやアーティストにスポットライトを当て、グローバルなプラットフォームとなることを目指した。」と語っている。日本からはTohji、Loota、JP THE WAVY、なかむらみなみ、といったアーティストの楽曲が選曲されており、日本の最新ヒップホップカルチャーを汲み取っていることがよくわかるだろう。


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このように音楽で多様性を表現することにより、日本の音楽を含む世界各国の音楽がゲーマーの耳に触れることとなり、そこからさらなる広がりを見せるのだ。先述した「BOW」のバイラルヒットも、さまざまな人種・キャラクターを登場させてきた『オーバーウォッチ』が、パワフルな日本人女性である「キリコ」のエネルギッシュな部分を表現するために、MFSの楽曲を起用したからこそ、多くのゲーマーの心を打ったのではないだろうか。

オリジナル楽曲からMV、プレイリストまでこだわる『VALORANT』

『リーグ・オブ・レジェンド』の開発元であるRiot Gamesが2020年にリリースした『VALORANT』は、女性キャラはもちろんのこと、様々な人種・性的指向のキャラクターが登場する、現代ゲームの最先端を行く作品のひとつだ。特に『VALORANT』が素晴らしいのは、さまざまな国籍のキャラクターの人物像を、キャラクターと同じ国籍のアーティストが手掛けるオリジナル楽曲で表現しているところにある。

日本人キャラクターである「ヨル」がゲームに追加された際には、AK-69がプロデュースしたオリジナル楽曲「YORU/ヨル/夜瑠 Intro Mix feat. AK-69, MASAYUKI KOJO, HANABI」を公開。和楽器をメインとしたビートに、日本のヒップホップシーンを色濃く表現したリリックは、ヨルのキャラクターをイメージし作られている。

それぞれのキャラクターを登場させる際には、インクルージョン・ライダーに則ったクリエイターのキャスティングがされており、その国の文化などを色濃く反映させていることから、キャラクターへの理解度もさらに高まるのだ。

さらに『VALORANT』はオリジナル楽曲を制作するだけでなく、MVやプレイリストもこだわりを感じものとなっている。

ヨルの日常を描いた動画「ヨル/YORU – MY TYPICAL DAY -」では、漫画家である三輪士郎がイラストを担当。音楽はビートメイカーであるPuckafallプロデュースのもと、Sound’s Deliが担当した。この動画に関わっているメインのクリエイターは全員日本人なのである。

さらに、『VALORANT』には公式のSpotifyページがあり、そこでは各キャラクターをイメージしたプレイリストが用意されている。ヨルのプレイリストには、JP THE WAVY、舐達麻、Dos Monos、YDIZZYなど、日本でも知名度が高いラッパーからコアなアーティストまで選曲されており、日本のヒップホップシーンを熟知していなければ作れないようなプレイリストとなっている。

このように、取り扱う国の文化を深く理解したキャスティングやプレイリストの選曲は、ゲームのキャラクターを超えてその国のカルチャーに触れられる貴重な機会を創出しており、世界中で遊ばれる作品としてこの上ない丁寧な多様性の表現と言えるだろう。

ゲームを通じて世界中の人がリスナーに

『Need For Speed』『オーバーウォッチ』『VALORANT』のような音楽を用いた多様性の表現は、今後のゲーム業界でもポピュラーなものになっていくことが予測される。そして今以上に、自身と現在地が遠い音楽にも気兼ねなく触れ合うことができるはずだ。ゲーム同様、そもそも音楽も国境や性別を超えて皆が一緒になって楽しめるものであり、日本のアーティストが世界とつながる新しい扉が開いたと言えよう。

そして、今までガラパゴス的な環境に置かれていたアーティストが世界で話題になる可能性がさらに高まった。MFSの「BOW」のように世界中で聴かれることになる日本の楽曲は、もしかしたらゲームを通じてもっと発見されるかもしれない。もちろん我々日本人であってもゲームにスポットライトを当てれば、まだ知らなかった国内アーティストを知ることができるかもしれないし、新しく発見したどこかの国のアーティストにハマるかもしれない。ゲームが多様性を表現することにより、我々リスナーのアンテナも世界中に広がっていくのである。

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