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感じたのはポップスの中で機能するクラブミュージックの魅力。宇多田ヒカル「Gold ~また逢う日まで~」☆Taku Takahashiリミックスレビュー

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ジャージークラブを取り入れた話題の宇多田ヒカル最新曲のリミックスを、クラブミュージックファンの視点でレビュー。その魅力に迫る。
2023/09/01 18:30
Jun Fukunaga
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宇多田ヒカルが7月28日にリリースした最新曲「Gold ~また逢う日まで~」。人気漫画が原作となった映画『キングダム 運命の炎』主題歌としても話題の同曲を、m-floの☆Taku Takahashiがリミックスした。block. fmやm-floのファンのみならず、日本のクラブミュージック/ダンスミュージックファンにとっては、なんとも朗報と言えるニュースじゃないか!

宇多田ヒカルといえば、近年はJ-POPファンのみならず、クラブミュージック/ダンスミュージックファンからも注目を集める存在だ。記憶に新しいところでは、2022年にリリースされた8thアルバム『BADモード』で、クラブシーンにおいて独自の存在感を放ち続けてきたUKのプロデューサーFloating Pointsを起用し、ここ日本でも大きな話題になった。

また『BADモード』には、これまでもコラボしてきたSkrillex、A. G. Cookという、ポップミュージック/ダンスミュージックの両サイドで成功を収めた名プロデューサーによるクラブテイストの楽曲も収録されていることはすでに多くの人が知るところだが、実は、同作には彼らとのコラボ曲以外にもそういった楽曲が収録されている。

例えばそのひとつが「Find Love」だ。同曲はMoodymannやGlenn Undergroundといったデトロイト/シカゴのディープハウスプロデューサーの影響を受けて制作されたと本人がBillboard誌のインタビューで語るディープハウスなのだが、この制作秘話が明かされたことで宇多田ヒカルの"クラブモード"に興味を持ったダンスミュージックファンは決して少なくないだろう。

このように今や"ポップミュージック周辺でダンスミュージックを取り入れたアーティスト"としての側面も目立つようになった宇多田ヒカル。その最新曲「Gold ~また逢う日まで~」では、先述したA. G. Cookを再び共同プロデューサーに起用しており、曲の後半では前半の壮大なバラードパートと打って変わって、ピアノStabが印象的なハウシーな4/4ダンスビートが鳴り響く。またこのハウスビートのテクスチャー、特にビート/パーカッションはA. G. Cook率いるPC Musicを感じるものになっており、宇多田ヒカルファンのみならずPC Music系の音楽のファンからしても、非常に"らしい"ヴァイブスを感じる仕上がりだと言えるだろう。

ちなみに「One Last Kiss」、「君に夢中」に続くA. G. Cookとの3曲目のコラボとなる同曲について、宇多田ヒカルはSpotifyのポッドキャスト番組『New Music Wednesday [Music+Talk Edition]』で、A. G. Cookと一緒に仕事をするようになったきっかけを語っている。

その中で宇多田ヒカルは、A. G. Cookの代表的なコラボレーターであるCharli XCXの名前を挙げ、「ちょっと共通点も感じる部分はあるかも」と述べている。とはいえ、ここで語られる共通点は音楽性というよりアーティストとしてのパーソナリティーやスタンス的なものだが、ダンスミュージックファンの筆者からすると、先述した近年の宇多田ヒカルの"ポップミュージック周辺でダンスミュージックを取り入れたアーティスト"という面は、Charli XCXの音楽性とリンクする。そう考えると番組中で語られるA. G. Cookに対する「信頼が増していくから、音楽的に打ち解けていく」という言葉の説得力も増すというものだ。つまり、宇多田ヒカルとA. G. Cookは相性が良い。端的に言えば、その言葉に尽きる。

さて、ここで本稿の本題に入ろう。☆Taku Takahashiによる「Gold ~また逢う日まで~(Taku's Twice Upon a Time Remix)」の話だ。"ノリのいい多幸感あふれるクラブ仕様のトラック"という印象を受けるこのリミックスでは、昨年以来人気急上昇中の「ジャージークラブ」のテイストが取り入れられている。

ジャージークラブは昨年人気ラッパーのLil Uzi Vertが「Just Wanna Rock」で取り入れたことから、メインストリームでも大きくスケールしたダンスミュージックのサブジャンル。90年代にアメリカ・ニュージャージー州のニューアークで生まれたジャージークラブは、同じく90年代にボルチモアで生まれたボルチモアブレイクス(またはボルチモアクラブ)シーンのDJらとニューアークのローカルDJシーンとの交流で生まれたジャンルだ。

ジャージークラブは、BPM130-140付近のテンポで速く“弾む”グルーヴや重い3連キックパターンを特徴とする音楽。またボルチモアブレイクスと同様、定番ブレイクビーツ「Think (About It)」のビート、ヒップホップやR&Bなどの曲をチョップ&フリップ(分解と再構築)したサンプル使いもジャンルの特徴のひとつに挙げられる。加えて、ベッドが軋む音(Bed Squeak)のサンプルもこのジャンルの定番的な要素になっている。

そんなジャージークラブを取り入れた「Gold ~また逢う日まで~」リミックスでは、先述した定番要素だけでなく、中盤のブレイクではトラップとUKドリルのスライドするベース的なギミック感のあるベースラインが取り入れられているところが印象的だ。また個人的なハイライトは、曲の終盤のピアノStabが絡むパート。オリジナルでもピアノStabは楽曲において存在感を放つパートと言えるが、リミックスのピアノStabをあえてわかりやすく表現するなら、それは"☆Taku Takahashi"印。m-floの人気曲「Lotta Love」を彷彿とさせる多幸感あふれるこのフレーズは、クラブアンセム感があり、非常にレイヴィーだ。

特にジャージークラブのルーツであるボルチモアブレイクスは、90年代のUKレイヴの影響を受けて生まれたジャンルでもあることを考えると、クラブミュージックの文脈に沿ったクラブミュージック純度が非常に高いリミックスに仕上げられていると捉えることもできる。その点で見ても、非常にクラブフレンドリーなリミックスだと言えるだろう。

また☆Taku Takahashiは、以前、宇多田ヒカル「Distance (m-flo Remix)」も手がけているが、昨年末行われた宇多田ヒカルのPOP UPイベントでは、宇多田ヒカル楽曲を自身で全曲リミックスしたDJ Mixを披露している。このことからも宇多田ヒカル楽曲をクラブフレンドリーにリミックスするにはうってつけの人材だと言える。しかも☆Taku Takahashiはm-floとしてデビュー以来、日本の音楽シーンにおいて、常にポップミュージック周辺でダンスミュージックを取り入れた音楽性を打ち出してきた。その点を踏まえて考えると、今回のリミックスは宇多田ヒカルの近年の音楽性と☆Taku Takahashiの音楽性が共鳴するからこそ成立した作品でもあるのだ。

海外の音楽シーンではこのように大胆にクラブミュージック/ダンスミュージックを取り入れたポップミュージックがヒットすることは決して少なくない。もちろん、そういった音楽は日本にも存在するが、筆者のようなダンスミュージックファンからするとまだまだその数は少なく感じる。しかし、今回のリミックスがすでに話題を呼んでいることを考えると、日本のメインストリームにおいてもまだまだこういったスタイルの楽曲が普及していく可能性は十分にある。今後、このような楽曲がドメスティックでどんどん作られ国内外でヒットすることに、いちダンスミュージックファンとして期待したい。

【リリース情報】


宇多田ヒカル
「Gold ~また逢う日まで~」(映画『キングダム 運命の炎』主題歌)
https://erj.lnk.to/UtadaGold

「Gold ~また逢う日まで~ (Taku's Twice Upon a Time Remix)」
https://erj.lnk.to/zUr9CD

映画『キングダム 運命の炎』

ストーリー:
500年にわたり、七つの国が争い続ける中国春秋戦国時代。戦災孤児として育った信は、亡き親友と瓜二つの秦の国王・嬴政と出会う。運命に導かれるように若き王と共に中華統一を目指すことになった信は、「天下の大将軍になる」という夢に向けて突き進んでいた。

そんな彼らを脅威が襲う。秦国に積年の恨みを抱く隣国・趙の大軍勢が、突如、秦への侵攻を開始。残忍な趙軍に対抗すべく、嬴政は、長らく戦から離れていた伝説の大将軍・王騎を総大将に任命する。決戦の地は馬陽。これは奇しくも王騎にとって因縁の地だった…。

出撃を前に、王騎から王としての覚悟を問われた嬴政が明かしたのは、かつて趙の人質として深い闇の中にいた自分に、光をもたらしてくれた恩人・紫夏との記憶。その壮絶な過去を知り、信は想いを新たに戦地に向かう。100人の兵士を率いる隊長になった信に、王騎は『飛信隊』という名を授け、彼らに2万の軍勢を率いる敵将を討てという無謀な特殊任務を言い渡す。失敗は許されない。秦国滅亡の危機を救うため、立ち上がれ飛信隊!

運命に導かれ、時は来た。キングダム史上最大の戦いがいま始まるー

作品概要
作品タイトル:『キングダム 運命の炎』
公開:2023年7月28日(金)
監督:佐藤信介
脚本:黒岩勉・原泰久
音楽:やまだ豊
出演:
山﨑賢人
吉沢 亮 橋本環奈 清野菜名
満島真之介 岡山天音 三浦貴大
杏 山田裕貴
髙嶋政宏 要 潤 加藤雅也 高橋光臣 平山祐介
片岡愛之助 山本耕史 長澤まさみ
玉木 宏 佐藤浩市
大沢たかお
原作:原泰久「キングダム」(集英社「週刊ヤングジャンプ」連載)
クレジット表記:ⓒ原泰久/集英社 ⓒ2023映画「キングダム」製作委員会

公式サイト:http://kingdom-the-movie.jp
公式Twitter:https://twitter.com/kingdomthemovie
公式Instagram:https://www.instagram.com/kingdom_movie/
公式TikTok: https://www.tiktok.com/@kingdom_movie

宇多田ヒカル
1983年1月19日生まれ

1998年12月9日にリリースされたデビューシングル「Automatic/time will tell」はダブルミリオンセールスを記録、15歳にして一躍トップアーティストの仲間入りを果たす。そのわずか数か月後にリリースされたファーストアルバム「First Love」はCDセールス日本記録を樹立。いまだその記録は破られていない。

以降、アルバムはすべてチャート1位を獲得。2022年に発表した8枚目のオリジナルアルバム「BADモード」は国内外から高い評価を受け、海外音楽メディアPitchforkにて年間ベストアルバム入りを果たす。宇多田ヒカルの楽曲にインスパイアを受けて制作されたNetflixシリーズ「First Love 初恋」が日本・アジアを中心に大ヒット。2023年1月19日(木)にはネットイベント「40代はいろいろ♫」を開催した。7月28日(金)新曲「Gold ~また逢う日まで~」(映画『キングダム 運命の炎』主題歌)をリリース。

Official Website: https://www.utadahikaru.jp
Twitter: https://twitter.com/utadahikaru
Instagram: https://www.instagram.com/kuma_power/

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