オーディション番組出身、インドの実力派若手アーティストに注目!


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Text:バフィー吉川
https://www.youtube.com/watch?v=Ej5PnAbqFDY
日本におけるインド音楽のイメージというのが、どうしても未だにドメスティックで民族色の強い古典音楽や民謡を想像するのだが、日本の若い世代が民謡や演歌を聴いているという光景がそれほどないのと同じで、インドも若い世代がそういった音楽を聴いているわけもなく、ビルボードに入るような海外アーティストだったり、それを意識した国内アーティストの楽曲を聴いている率の方が圧倒的に多い。
以前の記事「世界基準のアーティストが続々登場。古めかしいイメージなどぶっ飛ぶインド音楽の“今”を知ろう!」では、Z世代アーティストのリスペクトが国内アーティストから国外アーティストになったことで、音楽性の変化について紹介した。
1月にドナ・サマーの名曲「ホットスタッフ」をサンプリングした「Hooked (Hot Stuff)」を発表したRIKAもリスペクトするのはホイットニー・ヒューストンやセリーヌ・ディオンと、海外アーティストをリスペクトしたZ世代アーティストは続出しており、そんなアーティストを追っていくだけでもインド音楽の変化を観察しているようで興味深いのだが、今回はインドにおけるオーディション文化というものについて触れていきたい。
何度も紹介しているMTV「ハッスル」や「アメリカン・アイドル」の姉妹番組「インディアン・アイドル」「テルグ・インディアン・アイドル」、「インディアン・アイドル・マラーティー」、「ブリテンズ・ゴッド・タレント」の姉妹番組「インディアズ・ゴッド・タレント」、「ザ・ステージ」、「ビッグ・ボス」。
ほかにもジャンルをヒンドゥースターニ(北インド古典音楽)に絞った「Dil Hai Hindustani」やダンス系の「スーパーダンサー」や「ダンス・インディア・ダンス」など、かなり多くのオーディション、タレント発掘番組が開催されている。
テレビでは放送はされていなくても「NEXA Music」のようにネット限定などもあるため、それらも含めれば膨大な数であり、インドはオーディション大国と言っても過言ではないだろう。
現在のインド映画音楽で基盤として活躍するブーミ・トリヴェディやアンタラ・マイトラ、ネハ・カッカーといったアーティストたちもオーディション番組の出身者であることから、インドにおいて、特に2000年以降はオーディション番組がエンタメ業界に与えてきた影響は大きいのだ。
一方、変わったところでいうと、日本の「テラスハウス」やMTVの「ザ・ヒルズ」のようなリアリティ番組も多く制作されている。
例えば「ソーシャル・カレンシー: インフルエンサー、ゼロから始める?!」は、インドのインフルエンサーが現在の知名度を捨てた場合、どこまでタレントとして通用するカリスマ性があるのかを実験した画期的なリアリティショーであり、こちらは日本のNetflixでも配信されている。
インフルエンサー、TikToker、YouTuberがテレビ番組に出演するという流れは、どこの国も同じなのだとわかる。
インドは家系主義だと言われ続け、窓口が狭かったエンタメ業界ではあるが、現在は窓口がかなり開かれていて、新たな才能をインドエンタメ界は常に欲している状況であることか感じ取れる。
■ボリウッド女優兼アーティスト、シャーリー・サティアの場合
Netflix映画『マスカ ~夢と幸せの味~』(2020)に出演し、『Nikamma』(2022)で劇場用ボリウッド映画デビューを果たしたシャーリー・サティアも本格的なデビューのきっかけはオーディションだ。
シャーリーは、生まれはインドではあるものの、7歳でニュージーランドに居住。ニュージーランドからボリウッド映画の曲やダンスのカバーなどをあげていたYouTuber兼アーティストであった。
その後、映画製作会社兼音楽レーベルのT-Seriesが主催したタレント発掘企画に応募し、そこでパジャマ姿で踊る姿が注目され“パジャマ・ガール”と話題になったことがきっかけで、シッダールト・マルホートラ、ジャクリーン・フェルナンデス主演映画『A Gentlemen』(2017)の「Disco Disco」でプレイバックシンガー(映画内の歌唱シーンを吹き替える歌手)デビューを果たし、のちにボリウッド女優になるという夢を叶えた異例の経歴の持主である。
かなり珍しいパターンに思えるかもしれないが、実はそうでもなく、ボリウッドだけに限らず、インド映画に出たいとアプローチして、それに見合う才能やカリスマ性があれば他国からのアプローチでも実現可能な窓口が増えてきているのだ。
ちなみにサルマン・カーン主演映画『『Radhe: Your Most Wanted Bhai』』にも出演した俳優兼アーティストのアルジュン・カナンゴとコラボした新曲「Sach Bata Mujhe」では、ミュージックビデオを東京で撮影を行った。東京タワーや浅草が映っており、最近日本にも来日していたことがわかる。
■1位じゃなくてもチャンスはある! シャンムカ・プリヤの場合
「インディアン・アイドル」シーズン12で圧倒的な存在感を放っていたのは、優勝者のパワンディープ・ラジャンでも、準優勝者のアルニタ・カンジラでもなく、惜しくもトップ5で敗退してしまったシャンムカ・プリヤだ。
『ドリームガールズ』(2006)や9月に日本でも公開される『私たちの声』にも出演する女優兼アーティストのジェニファー・ハドソンも「アメリカン・アイドル」では、優勝ではないが、今では優勝者のファンテイジアよりも活躍しているように、優勝した出場者の方が決まって1番人気になるわけでもないというのは、インドでも同じなのである。
シャンムカは、子どもの頃から何度もオーディション番組に挑戦を続けていた。初めて出場したのは、子ども向けオーディション番組「Sa Re Ga Ma Pa L’il Champs 2008」。その後も「スーパー・シンガー」や「The Voice India Kids」などのいくつものオーディション番組に出場し続け、2010年のテルグ語映画『Tejam』では、プレイバックシンガーとしてデビューも果たしている。
そんな中でも、シャンムカが大きく注目されるようになったきっかけは、やはり「インディアン・アイドル」のファイナリストになったことが大きいといえるだろう。もともと南インド古典音楽のカーナティックを得意としていることもあり、よく響く声量の持主で、それをポップやロック、ジャズに活かすかたちで独特の歌唱力を披露した。
同番組内では惜しくも敗退となったものの多くのファンを獲得した結果、『Dharmasthali』や『Liger』といった映画のプレイバックシンガーとしても起用されることとなり、2022年だけで4本の映画音楽に参加することになった。
また同年に、映画音楽ではない独立したシングル「Naacho Saare」をリリースしたことも話題となった。
■次世代プレイバックシンガーの代表的存在、シャーヴィ・ヤダフの場合
SNSやYouTubeを中心に人気を博した『グッドバイ』(2022)の作中曲「The Hic Song」やドラマ『フォー・モア・ショット・プリーズ!』の「On My Own」、あるいはディズニー映画『アナと雪の女王2』(2019)のヒンディー語吹替え版のアナ役などで知られるシャーヴィ・ヤダフもオーディションがきっかけで歌手デビューを果たしたひとりだ。
シャーヴィが出場したのは、「The Stage」のシーズン2。『ドリームガールズ』の中でビヨンセが歌った「Listen」やクリスティーナ・アギレラ、ピンクらによる『ムーラン・ルージュ』の主題歌「Lady Marmalade」を見事な歌唱力で披露し、審査員を驚かせ、見事に優勝を勝ち取った。
2018年には、カリーナ・カプール主演映画『Veere Di Wedding』の「Veere Veere」でプレイバックシンガーとしてデビューを果たし、その後も多くの映画の作中曲に参加している。
シャーヴィは次世代の映画音楽アーティストとして、今後も多くの作品で歌声を聴くことができるだろうし、インド以外ではイギリスなどでもライブを行っているなど、グローバル・アーティストとしても注目されている。
■まだまだいる! オーディションで話題になったアーティストたち
〇ミダ・サヒ
ムンバイとゴアを拠点に活躍するシンガーソングライター。
2000年代のポップソング、オールドロック、ジャズなどに影響を受けているアーティストであることから、テイストとしてはノラ・ジョーンズに近いかもしれないが、シュレヤ・ゴシャルなどのインドのシンガーへのリスペクトもあったりと完全に洋楽ナイズされていないのも特徴的といえる。
「NEXA Music」シーズン2ではトップ24に選ばれたが、トップ4にはなることができなかった。
しかしミダといえば、ドラマ『フォー・モア・ショット・プリーズ』の中で「Hold On」や「I Don’t Do Love Anymore」、「Sixteen」といった、複数の楽曲がサウンドトラックに収録されおり、どれもドラマを彩るメロディアスなものばかりで、すでに知名度がそれなりにあるアーティストということもあり、まち違ったかたちで活躍してくれそうだ。
〇シムラン・ラジ
14歳のときに出場した「Dil Hai Hindustani」のファイナリストとして注目され、その後も「Voice of Punjab」などにも出場したシムラン・ラジ。
パンジャブ語とヒンディー語音楽のアーティストであり、何よりシムランの歌うヒンドゥースターニは、まだ幼さが残るビジュアルと比例しないほどに、かなりこぶしが効いていて、若手アーティストとは思えないほどの貫禄は放っている。日本流に分かりやすく言うと、若手演歌歌手といったところだろうか。
インスタグラマーとしても有名であり、彼女のライフスタイルやファッションセンスは若い世代に注目されている。映画音楽業界への進出するのではとも噂されており、今後の活躍に注目だ。
〇カマクシ・カンナ
9月1日から日本でも公開される、シャー・ルク・カーン主演映画『パターン』の「Pathaan’s Theme」のバックコーラスとしても参加し、ドラマ『モダン・ラブ:ムンバイ』の「Yaadein Song」などでも知られるカマクシ・カンナだが、「ザ・ステージ」のトップ6まで残った出場者としても知られている。
2016年にインドのトップレコードレーベルのひとつであるタイムズミュージックからデビューアルバム「Cakewalk」をリリースし、ローリング・ストーンズ・インディアなどの音楽メディアでも話題となった。
翌年の2017年には、ニューヨーク、オースティン、ロサンゼルスなどの都市を巡る初のソロ米国ツアーを行い、現在も定期的に行っているグローバル・アーティストだ。




