「バーフバリ」のS.S.ラージャマウリ監督による最新作『RRR』が日本上陸。世界中でバズった作中曲「ナートゥ・ナートゥ」(ナチョ・ナチョ)とは何だ?


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Text:バフィー吉川
『ムトゥ 踊るマハラジャ』(1998)、『きっと、うまくいく』(2009)、「バーフバリ」2部作と、日本におけるインド映画イメージを一変させる分岐点作品はいくつかある中で、「バーフバリ」のS.S.ラージャマウリ監督作品は、インド映画だからというよりも作家性が評価されているだけあって、全体的にインド映画アウェーな日本市場において独特の存在だといえるだろう。
そんなラージャマウリ監督の最新作にして、インド映画史上最高額制作費97億円のビッグバジェットな娯楽超大作『RRR』がついに日本上陸! 10月21日から全国公開されている。
破壊力バツグンの作中歌「ナートゥ・ナートゥ」
今作がアメリカで公開された際には、『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』や『アンチャーテッド』といった競合がひしめき合う中で初登場3位を記録。その後もNetflixの英語以外の言語映画ランキング上位に15週以上入り続けるなど世界中で話題となっており、今も新たなファンを作り続けている。そして、そんな世界的ヒットに繋がった背景には作中曲の「ナートゥ・ナートゥ」の存在も大きい。
https://www.youtube.com/watch?v=OsU0CGZoV8E
作中で唯一のダンスシーン「ナートゥ・ナートゥ」の破壊力は絶大。ダンス動画やリアクション動画が世界中でバズっていたこともあり、日本で映画が公開される前からこの曲とダンスだけは知っているという人もいたはずだ。ダンサーとしても能力の高いNTR.Jrとラーム・チャランの主演ふたりが、地元や野生的な踊り、つまりインド人であることを尊重し決して恥じないといった意味も兼ね備えた「ナートゥ・ナートゥ」にあわせて、野性的であり、個性的なダンスを披露するシーンは圧巻である。
何度でも観て、何度でも聴きたくなる中毒性と破壊力は、インド音楽界においても見事なクオリティであり、歴史に残る名曲、そしてダンスシーンになったことは間違いない。
「歌って踊る」だけではない、ストーリー重視のインド映画
インパクトの強い「ナートゥ・ナートゥ」のダンスシーンだが、ラージャマウリ監督のポリシーとして、作品に関係しない、いわゆるアイテムソングといったダンスシーンは『マガディーラ 勇者転生』(2009)の頃から極力入れないようにしている。極端な話、必要性があるなら10シーンでも入れるが、必要がないものや作品から分離するようなダンスシーンであれば0でも良いという考え方なのだ。
近年はNetflixなどの動画配信サービスの普及や、SNSなどで世界の情報と常にリンクができるほどにデジタル化が進んだことで、インド国内での映画に対する考え方が変わりつつある。いわゆる「歌って、踊る」というもの自体が無くなってきているのだ。そういった背景もあって、曲を入れないといけないという概念も無くなりつつあるが、それを先駆けて行おうとしてきたのがラージャマウリ監督なのだ。
実際に今作『RRR』でもダンスシーンは、イギリス人の邸宅に招かれた主人公ふたりが、嫌味なイギリス人男性陣とダンスで対決する際に挿入される「ナートゥ・ナートゥ」と、エンディングの「エッタラ・ジェンダ」のみ。(サウンドトラックとして使用される曲は別として)エンディングに関しては映画の締めくくりとしてのイベント的なものではあるが、「ナートゥ・ナートゥ」に関してはストーリー上で非常に大きな役割りを果たしている。

ここでそもそもの疑問として、インド映画にはミュージカルシーンやダンスシーンが多いのかというと所説があり、インド国内においても暗黙のルールのような部分がある。さらに作品によっても理由が異なってくるため明確に説明できることではないのだが、一番大きな理由としては、製作としてソニー・ミュージックやジー・ミュージック・カンパニー、サレガマのような音楽レーベルや、T-Seriesのように音楽レーベル兼映画製作会社が入っているケースが多いからである。
逆にそういった大手映画会社が製作していないような中規模の作品やインディペンデント系作品、若手クリエイターによる低予算映画などには曲を入れる必要性がないため、ミュージカルシーンなどが存在しない作品が圧倒的に多いのだ。
『RRR』の製作には「バーフバリ」に続きT-Seriesも入っていることから、実際に1曲も入れないというのは現実的に難しいだろう。しかし音楽でのプロモーションをする必要がありながらも、作中にミュージカルシーン、ダンスシーンを増やすなどの要求をしないことから察するに、音楽レーベルとしても“ストーリーを解体する危険を冒してまで曲を入れるべきではない”という意識に変わってきている証拠。実際にT-SeriesはNetflix作品なども多く製作しているが、あくまで映画としてのディテールを大切にしているように感じられる。
「ナートゥ・ナートゥ」だけじゃない、別言語バージョンにも注目
そんなナートゥダンスの振り付けを担当したのはプレム・ラクシス。名前だけ聞いてもピンとこないかもしれないが、「バーフバリ」シリーズやラーム・チャラン主演映画『Racha』(2012)でも振付を担当した、テルグ映画(インド映画のうち、テルグ語で制作された作品)界では大ベテランの振付師だ。
「ナートゥ・ナートゥ」はテルグ語のオリジナル版においての曲名であるが、世界的にはNetflixがヒンディー語版の方をプロモーションとして使っている背景もあって、ヒンディー語版の「ナチョ・ナチョ」の方が多く聴かれていたりもする。
▼ヒンディー語版
ここでテルグ語版、ヒンディー語版といった複数の言語バージョンがなぜ存在しているのかについて触れておく必要がある。インドという国は多言語国家であり、多く使われる言語だけでも20以上が混在している。中でもインド映画が多く制作されている言語は、北インドのヒンディー語、南インドのテルグ、タミル、マラヤーラム、カンナダ語である。“ボリウッド”と呼ばれているのはヒンディー語映画であり、今作はテルグ語映画、“トリウッド”なのだ。
つまりテルグ語がオリジナル版。吹替えとしてヒンディー、タミル、マラヤーラム、カンナダ語版が展開されている。日本ではオリジナルのテルグ語版が上映されているが、公開国によってはヒンディー語版だったりもする。このように同時に様々な言語バージョンを公開し、上映母数を増やすことで興行的な成功を目指す戦略の作品を「汎インド映画」とも言う。
そのため「ナートゥ・ナートゥ」も5つの言語のバージョンが存在しており、他の使用曲も同じだ。先ほども触れた「ナチョ・ナチョ」はヒンディー語版。タミル語版は「ナートゥ・クーチュ」、カンナダ語は「ハーリ・ナートゥ」となっているが、リードヴォーカルは『Padi Padi Leche Manasu』(2018)や『Kanmani Rambo Khatija』(2022)などのテルグ、タミル映画に楽曲を多く提供する、プレイバックシンガーとしても知られるラフール・シップリグンジがマラヤーラム語版以外の全てを担当している。
▼タミル語版
https://youtu.be/-LEY8JS6Fjw
そこにサブとして、それぞれの言語圏においてポピュラーなシンガーが加わる。例えばヒンディー語版「ナチョ・ナチョ」の場合は、パリニーティ・チョープラ主演映画『Jabariya Jodi』(2019)や『タイム・トゥ・ダンス』(2021)にも曲を提供しているヴィシャール・ミシュラが参加することでポップ感が増している一方で、タミル語版「ナートゥ・クーチュ」では、世界的アーティストの「YAZIN」としても知られるヤジン・ニザール(ちなみにマラヤーラム語版も)が参加しており、少し民族音楽色が強くなっているからなのか、渋みが増している感じもする。このように様々なバージョンを聴き比べて楽しんでみるのも今作の醍醐味のひとつだ。
▼マラヤーラム語版
https://youtu.be/u9X4Uj-wxWM
今回は音楽を中心に紹介してきたが、何よりストーリーの良さがあってヒットしているのが大前提ということを忘れてはいけない。イギリス植民地時代のインドを舞台に、実在する革命家ではあるが、実際には出会ったことのない2人の男が「もしも出会っていたら~」という歴史活劇。
時代的な背景もあって難しいと感じるかもしれないが、基本的には娯楽作品。実際に1世紀も前のことであり、インドの若者やアメリカの観客が時代背景を知っているかというとそうではないだろうから、知識が必要な堅苦しい歴史ものではない。
作品自体もそうだが、何より「ナートゥ・ナートゥ」の圧倒的な迫力、破壊力は、是非映画館のスクリーンで体感してほしい!!
『RRR』作品情報
【ストーリー】
舞台は1920年、英国植民地時代のインド。英国軍にさらわれた幼い少女を救うため、立ち上がるビーム(NTR Jr.)。大義のため英国政府の警察となるラーマ(ラーム・チャラン)。熱い思いを胸に秘めた男たちが”運命”に導かれて出会い、唯一無二の親友となる。しかし、ある事件をきっかけに、それぞれの”宿命”に切り裂かれる2人はやがて究極の選択を迫られることに……。
公式サイト:https://rrr-movie.jp/
【クレジット】
監督・脚本:S.S.ラージャマウリ
原案:V・ビジャエーンドラ・プラサード
出演:N・T・ラーマ・ラオ・Jr.、ラーム・チャラン、アーリヤー・バット、アジャイ・デーヴガン、オリヴィア・モリス、レイ・スティーヴンソン、アリソン・ドゥーディほか
音楽:M.M.キーラヴァーニ
応援:インド大使館
配給:TWIN
製作年:2021年
製作国:インド
公式Twitter:@RRR_twinmovie
公式HP:rrr-movie.jp
ハッシュタグ#RRR
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10 月 21 日(金)全国公開

