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『Barbie The Album / バービー・ザ・アルバム』キラキラもカナシミも詰め込んだ、ピンク色のショウケース

2023/12/21 21:30
Takeshima Rui
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映画『バービー』のサウンドトラック『Barbie The Album / バービー・ザ・アルバム』。第66回グラミー賞にも複数部門ノミネートされるなど、2023年を代表する1枚を紐解く。

Text:竹島ルイ

2024年2月4日(現地時間)に、ロサンゼルスのクリプト・ドットコム・アリーナで開催される第66回グラミー賞。ノミニーには、9部門で最多ノミネートとなったSZAをはじめ、フィービー・ブリジャーズ、ヴィクトリア・モネ、テイラー・スウィフト、オリヴィア・ロドリゴ、マイリー・サイラスといった名前が並んでいる。今回のグラミーは、例年以上にフィメール・シンガーがステージを席巻することになりそうだ。

そして、映画『バービー』のサウンドトラック『Barbie The Album / バービー・ザ・アルバム』は、現行シーンを代表するフィメール・シンガーが一堂に会したアルバムという意味で、2023年という時代を象徴する一枚といっていいだろう。


新世代の『サタデー・ナイト・フィーバー』

本作には、リゾ、ビリー・アイリッシュ、ニッキー・ミナージュら、ウーマン・エンパワーメントの代表的ポップ・スターたちが数多く集結。最優秀レコード賞と最優秀楽曲賞にビリー・アイリッシュの「What Was I Made For? 」、最優秀楽曲賞にデュア・リパの「Dance the Night」、最優秀ラップ・ソング賞にニッキー・ミナージュ&アイス・スパイスの「Barbie World」、最優秀映像作品楽曲賞にデュア・リパの「Dance the Night」など、主要2部門を含む11部門でノミネートされている。

映画ファンはもちろん、音楽マニアも必聴のコンピレーション。グレタ・ガーウィグが監督、マーゴット・ロビーが主演を務めた『バービー』は、『ハリー・ポッターと死の秘宝 PART2』(2011年)を抜いて、ワーナー・ブラザース配給作品史上最も稼いだメガヒット作品となったが、70年代のクラシック・ムービー『サタデー・ナイト・フィーバー』(1977年)のように、サウンドトラックでも大きな旋風を巻き起こしている。バービーとケンたちがダンスパーティーで盛り上がるシークエンスが、あからさまに『サタデー・ナイト・フィーバー』を参照していることでも明らかなように、『バービー』がジョン・トラボルタを一躍スターダムへと押し上げたこの映画を、相当意識していることは間違いない。

ビージーズの「Stayin’ Alive」、「How Deep Is Your Love」、「Night Fever」をはじめ、クール・アンド・ザ・ギャングの「Open Sesame」、トランプスの「Disco Inferno」など、ノリノリのディスコ・チューンをコンパイルしたサントラは、24週連続1位、全世界で4000万枚を売り上げる大ヒットアルバムに。1979年のグラミー賞では、サウンドトラックとして初となる最優秀アルバム賞を受賞した。それから40年以上の時を経てリリースされた『バービー』は、ある意味で新世代の『サタデー・ナイト・フィーバー』なのである。

Y2Kサウンドを現代に召喚した、ニュー・ノスタルジックな音像

プロデューサーを務めているのは、マーク・ロンソン。シンガーソングライターとして自分名義のシングル/アルバムを発表する一方で、レディー・ガガ、リリー・アレン、クリスティーナ・アギレラ、エイミー・ワインハウス、アデルといったトップ・アーティストたちをプロデュースしてきた才人だ。彼は相棒のアンドリュー・ワットと共に、このビッグ・プロジェクトを強力に推進していく。

驚くべきは、全曲が書き下ろしの新曲であること(スパイス・ガールズの『Spice Up Your Life』、シンディ・ローパーの『Girls Just Want to Have Fun』など、映画で使われていた既存曲は収録されていない)。彼は監督のグレタ・ガーウィグと一緒に参加希望アーティストのリストを作成して、サウンドトラックとしての方向性を定めていったという。カラフルで、パワフルで、ガーリーなコンピレーション。とびっきりにキラキラなポップ・アンセムが出来上がった。

オープニングを飾るM-1「Pink」は、いかにもリゾらしいスーパー・ポジティヴなディスコ・ナンバー。アウトロでは「P=pretty(可愛い)、I=intelligent(アタマがいい)、N=never sad(全然悲しくない)、K=cool(クール)」と歌われ、バービーのイメージカラーであるPINKを全力で称揚する。…どうでもいいけど、イントロがマドンナの「Holiday」そっくりなのは意図的なんだろうか?確かにバービーやケンたちが住むバービーランドは、毎日がホリデイみたいなものだけど。

続くM-2は、ソロ名義としては約2年ぶりの新曲となるデュア・リパの「Dance The Night」。80年代的ニューウェイヴなサウンドに乗せて、「一晩中踊り明かそう!」とゴキゲンに語りかける。M-3のニッキー・ミナージュ&アイス・スパイス「Barbie World」は、レイヴ感の強いドラムンベースでアクアの「Barbie Girl」をサンプリング。そしてM-14のピンクパンサレス「Angel」は、2ステップの90’sリバイバルなビートに、軽快なフィドルの音色が重なる。

そう、この『Barbie The Album / バービー・ザ・アルバム』の特徴のひとつが、80年代/90年代のY2Kサウンドを現代に召喚した、ニュー・ノスタルジックな音像。バービーがネオンカラーのスポーツウェアに身を包んでいたり、ケン(ライアン・ゴスリング)がいつもローラースケートで移動していたり、バービーランドもまた80’sライクな意匠で構築されている。毎日がお祭り騒ぎ、夢のようなパラダイス。その虚構性をBGMとして補強するにあたって、マーク・ロンソンは確かに最適な人物だ。コンテンポラリーでありつつも、その端々に郷愁を呼び起こさせる手管に長けたアーティストなのだから。

ビリー・アイリッシュが問いかける、実存的問題

しかしこのサントラは、キラキラなポップ・アンセム一辺倒にあらず。バービーが死を意識した途端に、映画はダークサイドへとシフト・チェンジする。そんなメランコリック・モードを象徴する一曲が、11曲目に収録されているビリー・アイリッシュの「What Was I Made For? 」。このナンバーは、サウンドトラックに収録される最後の1曲として発表された。ほぼピアノと彼女の憂いを帯びたヴォーカルだけで作られたこのバラードは、アルバムのなかでも一際異彩を放っている。

「昔は浮いていたのに、今はただ落ちていく/昔は分かっていた、でも今はわからない/何のために作られたの?/私は何のために作られたの?」

自分は何者なのかという問いは、マテル社の人形として製造されたバービーの実存的な問題であると同時に、若くしてポップ・アイコンとなったビリー・アイリッシュ自身の問いかけでもあっただろう。それゆえにこの曲は聴く者の心に入り込んで、感情を大きく揺り動かし、その問いを脳内でリフレインさせるーー私は何のために作られたの?

ピンク色に塗りたくられた、『Barbie The Album / バービー・ザ・アルバム』という名のショウケース。そこにはキラキラもカナシミも、あらゆるエモーションが詰まっている。もう一度繰り返そう。現行シーンを代表するフィメール・シンガーが一堂に会したこのアルバムは、映画ファンはもちろん、音楽マニアも必聴のコンピレーションである。

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