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楽曲の盗作騒動にも発展、「タイプビート」とは何か。その可能性と問題点

2024/02/19 21:30
BsideNews
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PHOTO: BeatStars
SNSを中心に話題となった楽曲の盗作疑惑騒動。同様の出来事が、全米1位最長記録を樹立したLil Nas Xの楽曲でも起こっていた。「タイプビート」とは何か、そしてタイプビートが持つ可能性と現在の問題点を考える。

2024年1月下旬、SNSを中心に話題となった、日本のロックバンド・Novelbrightの楽曲が盗作されたという騒動。若手ラッパーのLil Diva、Mintoの楽曲に、Novelbrightの楽曲のメロディと歌詞がピッチを変えるなど手を加えられたうえで使用されており、それに対してNovelbrightのボーカル・竹中雄大が「これは盗作だ」と怒りのコメントをSNSに投稿したというのが事のあらましだ。

この盗作疑惑騒動、双方のSNSでの発言をよく読むと、

Novelbrightの楽曲をサンプリングしたタイプビートがYouTubeにアップされていた
↓
そのタイプビートをラッパー側が見つけ、タイプビートの制作者から独占権とビートを購入
↓
購入したビートにラップを乗せ楽曲を制作、配信リリース

という流れで起こったことがわかる。

サンプリングとは、既存の音源の一部分を引用し、再構築して新しい曲を作る音楽制作の手法で、ヒップホップやロック、エレクトロ・ミュージックやポップスに至るまで広く使用されている。よって、「サンプリング=盗作」ではない。今回問題になったのは、YouTubeにアップされていたビートが「許諾を得ずにNovelbrightの楽曲をサンプリングしていた」ことから起こったものだと考えられる。

タイプビートとは

ヒップホップシーンでは当たり前の存在となっている「タイプビート」だが、それ以外のシーンにはまだあまり浸透していない文化かもしれない。

試しにYouTubeで「タイプビート」と検索すると、世界中のビートメイカーによって作られた「〇〇 Type Beat」という様々なタイトルのトラックを見つけることができるだろう。「〇〇 Type Beat」は「〇〇っぽいビート」という意味を持つ。例えば、「Drake Type Beat」は「Drakeっぽいビート」。つまりDrake(ドレイク)が楽曲で使いそうな雰囲気のビートという意味だ。

これらのタイプビートはビート販売サイトなどを通して簡単に購入することができる。しかし購入したとしても、そのビートの著作権を手に入れることができるわけではなく、あくまで「使用権のリース」であることを頭に入れておきたい。「お金を払ってタイプビートを買ったから何をしてもいい」ではないということだ。

ビート販売サイトでは複数のライセンスオプションが用意されており、その範囲内であれば、購入者はストリーミングサービスなどで楽曲を配信することが可能となる。

beatstars2Photo:BeatStars(※世界最大手のタイプビート販売プラットフォーム。ここから好きなビートを購入することができる)

Novelbrightの盗作騒動に話を戻すと、今回ラッパー側は気に入ったビートを購入し、購入したライセンスの範囲内で配信リリースを行った。しかし、購入したビート自体が無許可のサンプリングをしており、Novelbright側に対して著作権侵害を行っていた、というのが正確なところだろう。

全米1位の楽曲でも同様の問題が

日本でこういった騒動は珍しく、だからこそ今回の件も大きな話題となったのだが、実は2018年にリリースされたLil Nas X(リル・ナズ・X)の「Old Town Road」もまた同様の問題で話題となっていた。

「Old Town Road」に使用されているビートは、Lil Nas Xがビート販売サイトのBeatStarsで「Future Type Beat」と検索して発見し、30ドルで購入したタイプビートだった。しかしこのビート、実はNine Inch Nails(ナイン・インチ・ネイルズ)の「34 Ghosts IV」という楽曲から、バンジョーの音をサンプリングして作られたビートだったのだ。

この「34 Ghosts IV」はNine Inch Nailsが2008年に発表したアルバム『Ghosts I-IV』の収録曲。非営利であれば誰でも二次創作に利用することができる「クリエイティブ・コモンズ・ライセンス」が付けられている作品だった。しかし、「Old Town Road」に使用されたビートはBeatStarsで“販売”されており、さらにLil Nas Xはこのビートが「34 Ghosts IV」からサンプリングした音を使用しているということを“知らなかった”という。

ご存知の通り、「Old Town Road」の大ヒットによってLil Nas Xは一躍メジャーアーティストの地位を獲得したわけだが、この楽曲はLil Nas Xがソニーと契約する前に発表した楽曲。「Nine Inch Nailsを無許可でサンプリング」、この責任は誰が取ったのだろうか。

Rolling Stone誌が「Lil Nas X本人、もしくはソニーのどちらかが、Nine Inch Nailsに多額のロイヤルティを支払った可能性が高い」と報じているように、この問題はなんらかの形で解決しており、「Old Town Road」にはNine Inch NailsのTrent Reznor(トレント・レズナー)とAtticus Ross(アッティカス・ロス)の名前も作曲者としてクレジットされている。

のちにTrent Reznorはこの「Old Town Road」についてインタビューで訊かれた際、次のように話している。

「自分がこの曲を作ったときに何を考えていたか覚えているから、(サンプリングされて)別の曲になったものを聞いたとき、最初はやっぱり違和感を覚えるよ。」「でも、彼はこの音を使って良い仕事をしたと思う。」

「マネジメントから『許諾を得なければいけなかったのに、クリアされていなかった。その曲が今、Spotifyでバイラルヒットしている』という電話を受けたとき、僕はこう言った。『彼らはサンプリングしなかったと言っているわけじゃない。だから、ただ解決してほしい。ただし彼らの障害にはならないように』」

「僕はそのとき、まだその曲を聞いていなかったんだ。その数週間後、こう言ったよ。『えぇ、嘘だろ!』」

※Rolling Stoneより

「Old Town Road」はBillboard Hot 100で19週に渡って1位を獲得、連続1位の最長記録を樹立している。

タイプビートの持つ可能性と問題点

Lil Nas Xは(後から莫大な支払いがあったかもしれないが)30ドルのコストで全米1位のアーティストになっており、同じくJack Harlow(ジャック・ハーロウ)のようにタイプビートから全米1位へとのし上がるラッパー、プロデューサーも増えつつある。

BeatStarsをはじめとするタイプビート販売サイトには世界中のビートメイカーからのビートが日々アップされ、大手レーベルも次なるヒットメーカーを探すために使用するなど、タイプビートは便利なツールというだけでなく、ラッパー/ビートメイカー双方に大きなチャンスを与える可能性を持っていることは明らかだ。

一方で冒頭に述べたように、タイプビートを購入しても著作権を得られるわけではなく、購入ライセンスに応じた使用が定められており、条件を破ると訴えを起こされるなどの可能性もあるだろう。そしてタイプビートが無許可のサンプリングによって著作権侵害を行っているケースもあり、タイプビート販売サイトはその著作権侵害について責任を負わないという点に関しても注意が必要だ。

Drakeをはじめとした音楽業界の多くのクリアランス依頼を扱ってきたDMG Clearances社の担当は、Rolling Stone誌が行ったタイプビートと著作権に関する取材に対して以下のように話している。

「『SoundCloudにアップするだけで販売しないなら、どうして著作権をクリアにする必要があるのか?』という考えの人もいます。ストリーミング収益があって元の権利者が損失を被るならクリアにする必要がある。アーティストとしての自分をプロモーションするために、何かをサンプリングして新しいものを作り出しているんですよね。プロモーションは無料ではありません。」

「サンプリングされたアーティストが拒否しない限り、私たちは許諾が取れるように努力します。それが音楽業界です。合意の上で何かを起こすことができる場所です。」

※Rolling Stoneより

タイプビート販売サイトのような新しいツールやその進化によって、今は誰でも気軽に思い描く音楽が作れるようになっている。また、大手レーベルに所属していないアーティストが個人でも楽曲をリリースできるようになるなど、音楽アーティストとして活動することへの障壁は以前よりはるかに低くなっているだろう。

だからこそ、全てのアーティストにとって著作権についての基本となる知識や意識の向上が不可欠であるとともに、タイプビート販売サイトやストリーミングサイトといったプラットフォーム側が技術的に著作権を保護するシステムを構築することや、サンプリングの許諾を取るためのプロセスがより簡単になるといった、仕組みのアップデートも求められている。

サンプリングによって新しい音楽が生み出されるだけでなく、過去の楽曲にも再び光が当たり、双方のアーティストに収益がもたらされるようなポジティブな循環を作ることが、さらなるカルチャーの発展に寄与するはずだ。

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