block.fm

NEWS / ARTICLES

RADIO PROGRAMS

FOLLOW US

Copyright © 2011-2021 block.fm

SEARCH

ナビゲーターやDJ、番組名、記事タイトル、文中ワードで一括検索することができます。

注目のキーワード

Copyright © 2011-2021 block.fm

『THE RAVING SIMULATOR』レビュー : ノスタルジーを越え、”2020年代型レイヴ”の未来を提唱する日本生まれのコンピレーション

2023/12/12 19:30
Jun Fukunaga
img
国内UK Bass Musicシーンを牽引するレーベル<SPRAYBOX>からリリース。新しいUK RAVEのスタイルを提案するコンピレーション・アルバムをレビュー。

国内UK Bass Musicシーンを牽引するレーベル<SPRAYBOX>から、「仮想空間上でのUK RAVEパーティ」をイメージした新機軸のコンセプトアルバム『THE RAVING SIMULATOR』がリリースされた。

近未来の3DCG技術がさらに進化した仮想空間上で開催されるUK RAVEパーティーを想像し、それをビジュアルとサウンドの両面で表現する、全曲書き下ろしボーカルトラックで構成されたコンピレーションアルバムとなっている。


『THE RAVING SIMULATOR』 レビュー

Text: Jun Fukunaga

率直に言えば、非常に興味深いコンピレーションだ。

本作『THE RAVING SIMULATOR』は、国内UKベースミュージックシーンを牽引するレーベル「SPRAYBOX」が2023年11月30日にリリースしたコンピレーションアルバム。テーマとして掲げているのは"「仮想空間上でのUK RAVEパーティ」をイメージした新機軸のコンセプトアルバム"になっている。

参加メンバーは、Genick、Jacotanu、Nizikawa、Oblongar、That Fancy Iらレーベルの主要メンバーである4組のプロデューサーのほか、イギリスのプロデューサーMurloの別名義Shardaやアトモスフェリックな楽曲がブレイクコアシーンで高い評価を得ているDJ Kuroneko & Harmful Logic、ARANCK Collective所属の気鋭アーティストNUU$HI、TakaryuといったSPRAYBOXで交流のあるプロデューサー陣だ。さらに人気VTuberであり、近年はラッパーとしても活動するピーナッツくんを筆頭に嚩ᴴᴬᴷᵁやMEZZ、TORIENA、valknee、nyamuraといった国内の様々なシーンから第一線で活躍するアーティスト・クリエイター達も客演している。また、3DCGを中心に、VR/AR/MR、ビデオ、ゲーム、インスタレーション、サウンドアートなど、マルチ・メディアを通した作品を制作しているアーティストJACKSON kakiが手がけた本作のジャケットデザインも"近未来の3DCG技術がさらに進化した仮想空間上で開催されるUK RAVEパーティー"というコンセプトを体現する上で欠かせないピースとなっている。

SPRAYBOXは、日本で独自の盛り上がりを見せているUKベースミュージックシーンと、そこから影響を受けた国内クリエイターのトラックを海外に発信することを目的に2021年に設立された新興レーベルだ。しかしながら、コンピレーション「SPRAYDEPOT」シリーズに代表される各リリースは、すでにBBC Radio 1やBoiler Roomをはじめ、様々なラジオや現場でプレイされているほか、今年初頭にはイギリスのUKGレーベル「Steppers Club」とのコラボリリースが実現するなど、レーベルとしての歴史自体は浅いが、その背景にある本場イギリスのシーンとはすでに強固なつながりを築き上げている。

しかし、日本においてクラブミュージックはどちらかと言えばアンダーグラウンドな存在だ。もちろん、2010年代にはEDMの世界的な成功により、ダンスミュージックがメインストリームのポップスと結びつき、名声を得ることもあった。だが、そのブームが落ち着いた今、ダンスミュージック、あるいはそれをベースにした音楽がヒットチャートを賑わすことはなかなかないのが現状だ。

とはいえ、海外では近年、90年代レイヴミュージックにインスパイアされた若い世代のインディペンデントアーティストらを中心に新たな音楽トレンドが生まれている。このシーンは、Spotifyの人気プレイリスト「planet rave」やTikTokを起点にオールドスクールなレイヴカルチャーを汲み取り、DIY的なアプローチで制作されたポップなレイヴミュージックの担い手たちを輩出しているが、その中には今や世界的なポップスターとなったPinkPantheressを筆頭にpiriやNia Archivesといったヒットチャートや権威ある賞レースで結果を出しているアーティストも少なくない。

このようにインディペンデントはもちろんのこと今やメインストリームの音楽シーンまでをも席巻している90年代〜Y2Kのレイヴリバイバルムーブメントだが、日本国内においてそのムーブメントにいち早く共振してみせたのが本作である。

本作にはUK直系のジャッキン/ベースラインなトラックにラップとウィスパーな質感のボーカルが加わったエネルギッシュでダンサブルな「Raving In The Simulation」、ギャラクティックなシンセと疾走感のあるスピードガラージに2000年代のJ-R&Bのエッセンスを継承したボーカルを織り交ぜたパーティーチューン「New Connection」をはじめ、シルキーなボーカルの下で炸裂するオールドスクールなUKレイヴスタイルのブレイクビーツ曲「In Your Verse」、スペーシーでリキッドなジャングルとラップが陶酔感のあるテクスチャーを体現する「Till Dawn」、全速力で広大な銀河を突き抜けていくかのようなレイヴィーでトランシーな雰囲気漂う「powerlines」、儚げで澄んだ声とウォブルなベースラインが特徴的な「your winter」といったUKガラージ/スピードガラージ、ジャングル、トランスなどを取り入れた6曲が収録されている。

これらのジャンルは現在、先述した『planet rave』のようにそのエッセンスを取り入れながらポップスとして再解釈されたことで非クラブリスナーの間にも広がりを見せているが、近年はクラブミュージックシーンにおいてもその人気が再燃。特にUKガラージやジャングルはイギリスを中心に再評価が著しく、多方面でその人気が復活が取り沙汰されているが、本作ではShardaの参加に見られるようにSPRAYBOXのこれまでの活動を反映したUKベースミュージックの現行トレンドとリンクする音楽性がその土台を支えている。一見すると『planet rave』のようなキャッチーな歌モノであっても、本作の収録曲にはれっきとしたクラブ文脈の息遣いが感じ取れる。

また『planet rave』をもう一階層下に掘り進めてみるとその音楽性とも共振する、アメリカのプロデューサーたちが中心となり、設立したグローバルなオンラインプロデューサーコレクティブ「Eldia」やその牽引役となっているNYCガラージにも突き当たる。このシーンの中には、"ビデオゲーム・ジャングル"やプレイステーション・ジャングル"、"ロウポリミュージック"などと呼ばれるY2Kの日本のビデオゲーム音楽の影響を感じさせるアーティストも多いが、興味深いことに本作の参加アーティストの中にもクラブミュージックだけでなく、ゲーム音楽のキャリアも持つ者は少なくない。このように"ポップスの最前線"に限らず、注目が集まるクラブミュージックやオンラインのムーブメントなど複雑に絡み合ったグローバルな音楽トレンドに対して、日本の新興レーベルやその周辺の新世代アーティストたちがいち早くアプローチしている点にトレンドに対する嗅覚の鋭さを感じさせる。

さらにポップなレイヴミュージックである『planet rave』に対する日本からの回答という点で捉えれば、各トラックが書き下ろしのボーカルトラックで構成されている点にも注目したい。しかもボーカルトラックのほとんどは日本語のリリックを基調としたものになっており、日本人特有の切なさや儚さがリリックやメロディーから感じ取れる点は、本作が世界に打って出るジャパンメイドの新たなレイヴミュージックであることを強く印象付ける。

プレスリリースでは、"日本のシーンの色を絶妙に取り入れつつUK RAVE Musicを融合させた、新しいUK RAVEのスタイルを提案する渾身の一作"と本作は説明されているが、参加アーティストのクロスオーバーなキャリアも相まって、SPRAYBOXが謳う"日本のシーンの色"も非常にカラフルだが、その重なり方も実に重層的で興味深い。

オリジナルであるUKレイヴミュージックへの深い愛情とリスペクトを感じさせながらも単純に再構築するのではなく、そこにそれぞれの参加アーティストのカラーが多分に練り込まれることで、現行シーンの少し先の在り方を予見させる内容となった『THE RAVING SIMULATOR』。ノスタルジーを越えた先にある2020年代型レイヴミュージックの新たなムーブメントは、この日本生まれの1枚から始まることになるだろう。

【リリース情報】

THERAVINGSIMULATOR_Jacket
Title:THE RAVING SIMULATOR
リリース日:2023/11/30
収録内容:

  1. Genick, Jacotanu, ピーナッツくん & 嚩HAKU – Raving In The Simulation
  2. Sharda, That Fancy I & MEZZ – New Connection
  3. Nizikawa, Oblongar & TORIENA – In Your Verse
  4. NUU$HI & valknee – Till Dawn
  5. DJ Kuroneko, Harmful Logic & dyspony – powerlines
  6. Takaryu & nyamura – your winter

レーベル:SPRAYBOX

LINK:https://fanlink.to/spb025

SPRAYBOXlogo_icon

SPRAYBOX
日本で独自の盛り上がりを見せているUKベースミュージックシーンと、そこから影響を受けた国内クリエイターのトラックを海外に発信することを目的とし、2021年11月にGenick、Jacotanu、Nizikawa、Oblongarの4名によって創設されたダンスミュージックレーベル。 コンピレーション「SPRAYDEPOT」シリーズに代表される各リリースは、BBC Radio 1やBoiler Roomをはじめ、 様々なラジオや現場でプレイされている。 2023年初頭には英国のUKGレーベル「Steppers Club」とのコラボリリースを実現。 国内ダンスミュージックシーンを牽引するレーベルのひとつとして、その存在感を増し続けている。

SNS LINK:https://linktr.ee/spraybox

この記事をシェア

合わせて読みたい

関連する番組はこちら

img

全世界のリアルタイムなUK Garageを紹介

UKG RISING

  • hara,
  • Genick,
  • kyo

都内を中心にDJ/オーガナイザーとして活動するharaによるUK Garage & Basslineプログラム。ナビゲーターにGenickとkyoを迎え、全世界のリアルタイムなUKGトラックを紹介します。
PROMOとDEMOの送り先はこちら

img

世界中から集めた最新チューンをどこよりも早く紹介

TCY Radio

  • ☆Taku Takahashi,
  • TJO

☆Taku Takahashi & TJO が世界中から集めたまだ発売されていないエクスクルーシヴチューンや、これからのクラブフロアを賑わすであろう最新キラーチューン等を紹介、また注目のDJ/アーティスト達によるここでしか聴けないインタビュー等も数多くフィーチャーしているプログラム。