コーチェラにも出演決定、The Japanese House来日インタビュー|日本でのライブ、最新アルバムで表現した「人生の矛盾」、The 1975メンバーから受けた刺激


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インタビューを申し込んでいた東京公演2日目となる1月18日の日中、取材場所に到着して間もなく、Amber Bainが雑踏の中からふらりと現れた。どうやらライブの合間に東京の街を散策していたらしい。
取材が始まる前にも、ファンからのプレゼントを開けて愛犬用の洋服を見つけ「最高にかわいい〜!」と喜んでいる姿は、想像していた以上にナチュラルで飾らない佇まいだ。
The 1975やBeabadoobee、Rina Sawayamaなど日本でも人気が高いアーティストが多数所属するレーベル「Dirty Hit」のシンガーソングライター、Amber Bainによるプロジェクト・The Japanese House。2023年にリリースした新作アルバム『In the End It Always Does』を引っ提げて、東京・大阪で約5年ぶりの来日ツアーが実現した。
Photo credit : Daiki Tabata
ーー久しぶりの来日公演、日本のオーディエンスの感触はどうでしたか?
The Japanese House:すごく良かったです。でも、ちょっと変わった感じだなと思うこともあって。普段のライブでは、曲と曲の間にお客さんがみんなすごく喋るんです。でも、日本ではそうならないというか、そういう時、大体シーンと静かになるのにまだ慣れていなくて。
もちろん、そういう日本のオーディエンスの態度から、自分のライブがすごく注目されていると感じます。それは嬉しいことではあるんですけど、その分、失敗すると気付かれてしまうかもしれないという心配もあって…。そこはやっぱりイギリスやアメリカのオーディエンスとの違いを感じる部分ですね。
ーー今回のライブでの注目ポイントはありますか?
The Japanese House:前回の来日ツアー時よりもバンドメンバーが増えているので、みんなで歌うパートもあります。だから、まずはそのハーモニーに注目してほしいですね。あと今回は5年前にはなかった新しい曲を沢山やります。私自身も新しい曲を演奏することが大好きですし、今回はその部分での前回との違いを楽しんでもらえると思います。それとこれまでにたくさんライブも重ねてきたので、その頃よりも演奏中のミスは少ないはずです(笑)。
Photo credit : Kazumichi Kokei
The Japanese Houseの東京公演2日目は、『In the End It Always Does』収録曲を中心としたセットリストで展開された。当日は、ギター、ベース、ドラム、キーボード兼サックスのバンドメンバーを引き連れ、ステージに姿を現したThe Japanese Houseだが、ライブ序盤から『In the End It Always Does』収録の人気曲「Touching Yourself」や2020年のEP『Chewing Cotton Wool』収録曲「Something Has to Change」など、エモーショナルなメロディーが胸を打つ楽曲を披露。またライブ中盤ではデビューアルバム『Good at Falling』収録の「i saw you in a dream」や「You Seemed so Happy」、バウンシーなビートが印象的な「Friends」など過去の楽曲も織り交ぜつつ、会場を大いに盛り上げた。
Photo credit : Kazumichi Kokei
さらにライブ終盤では、バラードの「Chewing Cotton Wool」や『In the End It Always Does』にも参加しているJustin Vernonとのコラボ曲「Dionne」を披露したほか、アンコールでは、キーボード弾き語りスタイルで『In the End It Always Does』のラストを飾る「One for sorrow, two for Joni Jones」も披露。そして、最後は『In the End It Always Does』屈指の人気曲「Sunshine Baby」で、大盛況のライブを締め括った。
ライブでも観客を多いに沸かせた新作アルバム『In the End It Always Does』は、“矛盾の中に生きること”を表現した作品だという。
矛盾とは、謂わば“サイクル”のようなもの

ーー『In the End It Always Does』では、始まりと終わり、執着と平凡、恋に落ち、恋によって引き裂かれるといった矛盾の中に生きることを表現されていますが、そうした矛盾をテーマにすることにしたきっかけは?
The Japanese House:今回のアルバムの制作にあたり、いろいろ考えたことのひとつが、人間は正反対のものを経験しているということです。例えば愛もそうだし、失うこともそう。始まりがあるからこそ終わりがある。メンタルヘルスに関しても幸せな時があるからこそ、悲しいときもある。そして、そのふたつは全然違うものだけど同時に起こっている。自分でもまだ理解が完璧ではないので、うまく説明できない部分はあるんですけど、恋愛関係など“正反対だけど同時に存在しているもの”を考え始めると、なんとなく説明がつく気がします。今回はそういうことをいっぱい考えた上で、その気持ちを曲にしてみました。
ーーちなみに最近、日常生活の中で最も矛盾を感じたのはどんなことでしょうか?
The Japanese House:何かひとつ出来事があるというよりは、アルバムに関するテーマもそうなんですけど、矛盾とは謂わば"サイクル"のようなものだと考えています。
例えば人間関係や恋愛関係もそうですし、それ以外もそう。ステージみたいなものがあって、そこから何かがやってきて、そのうち出て行くけどまた戻ってくるというか。そういうことを繰り返している。自分自身の人生に関してもそうだなと言えますね。
The 1975メンバーとの楽曲制作によって刺激されたこと
ーー新作アルバム『In the End It Always Does』は前作と比べて、よりフォークトロニカ的アプローチが強くなった印象があります。またアルバムのサウンドが全体的によりソフトになったように感じました。
The Japanese House:自分でもアルバムのサウンドが全体的によりソフトになったと思います。ただ、良い意味でどのジャンルにもフィットしなかったことで何か特定のジャンルの枠に縛られないものになったとも思っていますね。
サウンドがソフトになったのは、前作よりもアコースティックギターを多用したからかもしれません。ただ、それに関しても意識的にやってみたというよりは、もしかしたら周りでそういう音楽が流行っていたり、無意識にそれを目や耳にしたりしたことで、そういったサウンドになった可能性もあります。正直、そこは自分でもあまりよくわからない部分ですね。とにかく今回はアコースティックギターを多用した。そんな感じです。
Photo credit : Daiki Tabata
ーー『In the End It Always Does』では、The 1975のGeorge Daniel、Chloe Kraemerとの共同プロデュース作品となりました。この2人との共同プロデュースによってアルバムのクリエイティビティはどのように広がったと思いますか?
The Japanese House:GeorgeとChloeは本当に沢山のものを今作にもたらしてくれたと思っています。2人ともすごく才能のあるプロデューサーですが、特にChloeは素晴らしいエンジニアなんです。彼女と意気投合したことでスタジオでの作業がすごくクリエイティブなものになりましたね。
それにChloeはクィアで女性だということを考えると、この業界ではレアな人材です。初めてそういった人と一緒に作業ができたこともすごく良かったことのひとつですね。あと、この2人はものすごくハードワーカーなんですよ。私はどちらかといえば、ポンと出てくるアイデアに従って作業するタイプだから、他のことが頭に浮かぶと気が散ってしまいがちです。でもGeorgeとChloeは私とは逆に、あるアイデアがあったとしたら、それを結構追求するタイプというか。そういうところにもすごく刺激されました。
The Japanese Houseが考える“良いメロディー”
ーーThe Japanese Houseの音楽はいつもメロディーが素晴らしく、仮に英語がわからない日本人にも街で一聴すれば一瞬で心を奪われると思います。もちろん、歌詞にもメッセージ性があり、それが曲の深みになっていることは間違いないのですが、音楽、特にポップミュージックにはやはりメロディーの存在も重要です。いつもどんな方法でメロディーを考えているのでしょうか?
The Japanese House:基本的にメロディーが良い音楽に惹かれやすいので、その大切さはよくわかります。それと曲を作る上で、歌詞はメロディーと比べるとあんまりチョイスがないというか、個人的にはメロディーを作る時の方がもっと実験的になれるんですよね。
ただ、良いメロディーの作り方を教えてほしいというのはなかなか難しい質問だと思います。なぜなら良いメロディーというのは、絵と同じで客観的なものなので…。だから答えとして言えるのは、「聴く人が良いメロディーだと思うものを作る」ということですね。それが重要だと思います。
ーーちなみに『In the End It Always Does』の収録曲で最も実験的なアプローチでメロディーを制作した曲はどの曲ですか?
The Japanese House:ひとつは「Sunshine Baby」です。この曲は特にコーラスのメロディーが変わったものになっています。もうひとつは「Touching Yourself」ですね。個人的にひとつの曲の中に音程の差があるものが好きなんです。そういう曲は仮に音程の差が大きくても、自分にとっては耳障りにならず聴き心地良く感じます。
来日中にはアメリカ・カリフォルニア州で開催される世界的人気音楽フェス、コーチェラ2024への出演も明らかになり、日本のファンにとってはその喜びをアーティスト本人といち早くシェアできる絶好の機会となった。
ーー今回のツアーの東京公演のチケットは両日とも完売してしまったため、あなたのライブを見たくても見られなかった日本のファンも多いと思います。ちょうどコーチェラ2024の出演が発表されましたが、いずれ日本の音楽フェスへの出演も期待しています。
The Japanese House:こればかりは自分ではどうにもならないことですが、もし、日本の音楽フェスからオファーをもらえたらぜひとも出演したいと思っています。
ーーちなみにいつも音楽フェスに出演するときはどんなことを楽しみにしているのでしょうか?
The Japanese House:ひとつはオーディエンスの規模が大きいことですね。あとは会場にあるハンモックでゆっくりしたり、無料で配布されているものをもらったりもしますよ(笑)。そんな感じで会場を歩き回って、自分でもフェスの雰囲気を楽しむようにしています。
Photo credit : Daiki Tabata
インタビューの最後に、「これからミュージシャンを目指す人に向けて、何かアドバイスを」とお願いすると、少し考えた上で、まっすぐにこちらを見ながらこう答えてくれた。
The Japanese House:ミュージシャンとして成功するかどうかは運も大事だと思うので、アドバイスするのは、なかなか難しいところもあります。でも間違いなく言えるのは、自分が好きなものを作り続けるということですね。やっぱりお金になるからといって、自分が好きではないものを作ったところでハッピーにはなれないと思います。
だから、まずは成功するとかしないとか、売れてお金を稼ぎたいとか、そういうことはあまり考えずに自分が好きなものを作ってみる。それがミュージシャンを目指す上で一番大切なことだと思います。
【アルバム情報】
アーティスト名:The Japanese House (ザ・ジャパニーズ・ハウス)
タイトル: In the End It Always Does(イン・ジ・エンド・イット・オールウェイズ・ダズ)
発売日:2023年6月30日(金) 世界同時発売
レーベル:Dirty Hit
品番 : POCS-23034
価格 : ¥2,750 (税込)
<トラックリスト>
1. Spot Dog
2. Touching Yourself
3. Sad to Breathe
4. Over There
5. Morning Pages
6. Boyhood
7. Indexical reminder of a morning well spent
8. Friends
9. Sunshine Baby
10. Baby goes again
11. You always get what you want
12. One for sorrow, two for Joni Jones
13. Super Trouper (ABBAのカヴァー / 日本盤ボーナストラック)
日本盤はボーナストラック1曲、解説、歌詞対訳付
ストリーミングリンク : https://lnkfi.re/BCwl0p7v
日本オフィシャルHP : https://www.virginmusic.jp/the-japanese-house/
Photo:Jay Seba
【ショート・バイオ】
ザ・ジャパニーズ・ハウスことイギリス出身のシンガーソングライター、アンバー・べイン。The 1975やリナ・サワヤマ、ビーバドゥービー等が所属するUK気鋭レーベル、Dirty Hitと契約し、2015年にEP「Pools to Bathe In」を発表。その後も「Clean」 (2015)、「Swim Against the Tide」(2016)、「Saw You in a Dream」(2017)と次々とEPを発表。活躍が期待される新人アーティストを選出するBBCの名物企画<BBC Sound of 2017>にノミネートされ一気に注目を集めた。2019年にデビュー・アルバム『Good at Falling』をリリースし待望の初日本ツアー(東京、大阪)を行った。2020年にはEP『Chewing Cotton Wool」をリリース。長い沈黙を破り、2023年3月に新シングル「Boyhood」をリリースし、6月には2ndアルバム『In the End It Always Does』をリリースした。


