今、注目を集める最新ジャンル「NYCガラージ」とは? ジャンルの牽引役Swami Soundに訊く


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近年ニューヨークのヒップホップシーンでは、イギリスから伝わったUKドリルが土着したことで、新たにNYドリル(あるいはNYCドリル)として独自に発展・進化。その過程ではPop SmokeやFivio Foreign、最近ではIce Spiceといった人気ラッパーを輩出したが、同じように現在、イギリスから伝わったUKガラージ(UKG)がニューヨークに伝わり、独自に発展・進化した「NYCガラージ(NYC Garage)」という新たなジャンルとしてにわかに注目を集めている。
先述したとおり、NYCガラージもNYドリル同様ルーツを辿ればアメリカに行き着く音楽ジャンルだが、なぜ今、このような大西洋を横断する音楽交流のサイクルから新たな音楽ジャンルが生まれているのだろうか?
その答えを探るべく、NYCガラージシーンの牽引役として注目を集めるSwami Soundにジャンルの成り立ちや現在の状況などについて、メールインタビューで話を訊いてみた。
ー現在、あなたはNYCガラージシーンの牽引役として活躍していますが、このジャンルはいつ頃誕生したのでしょうか?
Swami Sound:「NYCガラージ」("Garage"の発音は”ガレージ”ではなくイギリス式の発音である”ガラージ”)は、もともとは友人が言い出した造語なんだ。2022年の2月頃だったと思うけど、ちょうど僕がシンガー/アーティストのCVMILLEをフィーチャーしたシングル「Back In The Day」のプロモーションをTikTokでしていた頃だね。
僕の音楽を表現する方法としては賛否両論があったんだけど、ある意味、この名称は自分の意見を言い表しているように感じたこともあって、この1年間はこれまでのダンスミュージックにまつわる言説や歴史に触れることに時間を費やしてきたよ。
例えば、ニューヨークの伝説的なParadise Garageのようなクィア文化の中心地で生まれたガレージ・ミュージックがイギリスに持ち込まれて、自分たちが知っているUKガラージになったんだけど、僕はこの“NYCガラージ”という言葉を大西洋を横断する音楽交流における大きなサイクルのひとつとして、より広く認知、定着させていきたいと思っているんだ。
そういう意味ではNYCガラージは別に何もないところから突然生まれたというわけではなく、歴史の中で徐々に成長してきたものだと言えるし、たまたま僕はそのことを認識したことで今に至ったという感じだね。
ーNYCガラージを始める前から音楽制作やDJをしていましたか?
Swami Sound:Swami Sound名義では7年前から音楽制作をしているよ。僕の音楽は常にエレクトロニックで、その頃もダンスミュージックの領域にアプローチしていた。でも、当時は多くの音楽的な参考文献になるようなものは持ち合わせていなかった。
ただ、僕の音楽キャリアの初期は共に成長してきた音楽仲間たちによって支えられてきたし、今の自分のパフォーマンスは、これまでの絶え間ない努力、情熱、そしてテクニックの進化によって築かれているんだ。
ー基本的にどういった音楽がNYCガラージと定義されるのでしょうか? このジャンルを構成する上で重要な音楽的要素を教えてくれますか?
Swami Sound:そうだな。とにかくニューヨークの煌めきを放つ2ステップ、歌モノガラージ、ジャングル、ブラックミュージック、ポップミュージック、ドリル、ラップかな。ただ、まだこれっていう具体的な形はなく、NYCガラージは現在進行形で形成されているジャンルなんだよね。
ーNYCガラージのルーツとなる音楽について教えてください。またどういったきっかけでそのような音楽を聴き始めたのでしょうか?
Swami Sound:まずCOVID-19の大流行後のナイトライフの復活、そして90年代から2000年代初頭のエレクトロニック・ミュージックの復活と再発見。あとデジタルでは味わえなかったものや、その頃存在していたものを感じたいといった全体的な欲求がこのジャンルの根底にあるんだ。
それとそういう音楽を聴くようになったきっかけは、僕のコラボレーターがUKGと2ステップのプレイリストを作ってくれたことだね。それでそういった音楽の制作方法について学びながら模倣していくことを覚えたよ。そのおかげでこのジャンルを徹底的に楽しみつつ、DJをすることにも熱心に取り組むようになったし、プロデュースも自然にできるようになったという感じかな。
ー今年リリースしたデビューアルバム『Back In The Day』は、Bandcamp Dailyに特集されるなど、すでに音楽ファンの間で高く評価されています。このアルバムを制作することになったきっかけを教えてください。
Swami Sound:『Back In The Day』を作るのに一生を費やしたよ(笑)。リリースの1ヶ月前になってようやく完成したんだ。ちなみにNYCガラージの始まりは、僕がアルバムをリリースした結果だから、それは僕の誇りだね。人生や喪失、傷心、学びがこのアルバムを完成させるきっかけになったんだ。
ー『Back In The Day』を聴いているとどこか懐かしい雰囲気を感じます。あなたはbandcampでCDやCDRでも音楽を販売していますが、音楽のダウンロード販売やストリーミングが始まる前の音楽カルチャーやポップカルチャーに懐かしさを感じますか?(おそらくその頃、あなたはまだほんの子供だったと思いますが)
Swami Sound:CDを所有することは、フィギュアやトレーディングカードの収集と非常によく似ていると思うんだ。とても懐かしさを覚えるし、自分の趣味や個性を示す具体例になっているんじゃないかな。
それと僕のファンの多くは車を運転するんだけど、車中でよく僕のCDを流してくれているよ! 僕もコレクションしているCDを何枚か車に積んでいるけど、長時間のドライブだとCDを再生した方が便利(あるいは安全)なことが多いんだよね。
ー現在、NYCガラージシーンには他にどんなプロデューサー、アーティスト、DJがいるのでしょうか?
Swami Sound:そうだな。アメリカのダンスミュージックシーン全体から僕が楽しみながら刺激を受けつつ、一緒にパフォーマンスしたいと思うプロデューサーやDJの名前を挙げるのがより理にかなっていると思う。
例えば、Introspekt、Physical Therapy、INVT、Bored Lord、Bianca Oblivion、Nikki Nair、Gum.mp3、Dazegxd、Black Rave Culture、Kush Jones、DJ Swisha、AceMo & Moma ReadyといったプロデューサーやDJたちもいれば、僕らをサポートしてくれる「Mi Sabor Cafe」などのスペースを運営するLike That Recordsの仲間達もいるよ。
それにマイアミ出身の74.97は、大のガラージ好きで、最近Conducta(UKのUKGプロデューサー)のイベントのオープニングアクトを務めたばっかりだし、デビューアルバムをリリースしたばかりのフィラデルフィアのJEWELSSEAは僕のアルバムの制作も手伝ってくれた。
あとcry$cross、Stonie Blue、Bojaq、KOOXLAたちもこのサウンドの熱心なサポーターで、街中やThe Lot Radioといったプラットフォームで僕のエディットやほかの素晴らしいトラックを流してくれているよ。ほかにもTREKKIE TRAXのSeimeiだったり、CHEDIAK、Soulecta、Camoufly、Muddyoushなど、インターネットで繋がった海外の音楽仲間のこともリスペクトしているよ。
私の毎月の番組「Two Step Verification」は今夜dublabで放送されます。
東京から来た私の新しい友人SeimeiによるゲストDJミックスをフィーチャーしています。
ミックスは、ハウス、テクノ、ツーステップの曲を特徴としています。
私たちはニューヨークの私の家でミックスを録音しました。 pic.twitter.com/2LMN4jwXae
— swami sound (@swamisound) May 29, 2023
ーあなたのSNSを見ているとたまに"Eldia"や"Eldia Summit"というワードを見かけます。これはどういったものなのでしょうか?
Swami Sound:「Eldia」は、インターネット上のプラットフォームで、グローバルなプロデューサーコレクティブなんだ。僕はその最も新しいメンバーのひとりなんだけど、そのコレクティブに所属するDazegxd、gum.mp3と僕を含めたアメリカ人主要メンバー3人が主催するパーティーシリーズが「Eldia Summit」だよ。その名前には、到達すべき音楽の頂点があるという意味が込められているんだけど、パーティーに来てもらえたら僕たちに出会えるよ。
ー音楽制作をする時はどんな機材やサンプルパックを使っていますか?
Swami Sound:主にお気に入りのプロデューサーのBlankfor.msとMonte Bookerのサンプルパックを使用しているよ。僕が作る音楽のほとんどはサンプルベースなんだけど、使っている音楽制作ソフトはAbleton Liveだね。アルバム制作時にはハードウェア機材にも手を出してみたけど、僕の場合、圧倒的にソフトウェアで制作する方が作業が速いね。
ーあなたのSNSを見ていると日本のアニメや2000年代に流行した日本のEvisといったファッションブランドに興味を持っているように思います。日本のポップカルチャーや音楽からどういった影響を受けていますか?
Swami Sound:僕の兄弟は、アメリカのテレビで日本のアニメを観て育ってきたようなものなんだ。それに以前、従兄弟と僕は、宇多田ヒカルやUVERworldなどのJ-POPやJ-ROCKに夢中になっていたから、その影響はあると思うよ。
ー最近のニューヨークのクラブシーンについて教えてください。NYCガラージのほかにどんな新しい音楽が注目を集めているのでしょうか?
Swami Sound:ニューヨークのクラブシーンについては、まだまだ勉強中なんだ。新参者である僕は、ブルックリンのあちこちで居場所を見つけているって感じかな。例えば、さっきも名前を挙げたMi Sabor Cafeはドミニカ料理のレストランだけど、週末にはナイトクラブ営業もやっているし、Nowadaysはお気に入りのダンスフロアのひとつで、近々そこでプレイするから楽しみにしているんだ。クラブごとにサウンドシステムにも細かいこだわりがあることを感じられるところがいいね。
あと、普段ナイトクラブに行けないような若い人たちが集まるDIYレイヴもとてもエネルギッシュだよ。ただ、キッズが楽しめるスポットがもっとあってもいいんだけどね。とはいえ、ニューヨークのクラブシーンでは、新しいサウンドや体験を友人と楽しむことができる可能性が無限に広がっているよ。
ー最近のDJセットで必ずプレイする曲はありますか?
Swami Sound:最近だとこの5曲をプレイしているよ。
FiFi Zhang – Replay – Trance Mix (feat. Swami Sound)
Lovestation – Teardrops
Soul Divine – Secret Love (Shane D Remix)
Swami Sound – I Said (O.J.C. Remix)
CFCF – 12_25_99 (y2k bug mix)
ー近々、日本でギグをする予定はありますか?
Swami Sound:実は、6月2日に東京で行われるアートコレクティブ「FELT Zine」のイベントに出演するよ。
— swami sound (@swamisound) May 15, 2023
ー日本でも『Back In The Day』は耳の早い音楽リスナーの間ですでに話題になっています。最後に日本のファンにメッセージをお願いします。
Swami Sound:日本で僕の音楽が話題になっているという話は、にわかには信じられないし、なんというか非現実的な出来事だね(笑)。
でも、そのこと自体はとてもハッピーだし、日本のファンのみんなに会うのがとても楽しみだよ。


