ロシアでヒップホップ規制、プーチン大統領が声明を発表。ラッパーの逮捕者も! なぜ?

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現在、発祥の国、アメリカだけでなく、ヒップホップは日本はもちろんのこと、世界各国で最も人気のある音楽ジャンルのひとつになっているが、最近、ロシアではヒップホップに対する規制が行われていたことがTIMEなど複数のメディアによる報道で明らかになった。
止めることが不可能なのであれば、それを正しい方向に導くことが重要になってくる
ヒップホップの規制については、今年1月に起きた中国での規制が記憶に新しい。今回のロシアでのヒップホップ規制に関しては同国の最高指導者であるプーチン大統領も、ヒップホップを「止めることが不可能なのであれば、それを正しい方向に導くことが重要になってくる」と声明を発表している。
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ロシアンラッパーたちのライヴがキャンセルされる事態が相次ぐ
同国にはYouTube上で600万人以上の視聴者を獲得したHuskyというラッパーが存在するなど、ヒップホップ人気は高い。しかし、そのHuskyは、報じられていることによると先月、ロシア南部の都市、クラスノダールにて当初、ライヴが予定されていたものの、その歌詞が貧困や、警察の残虐性、腐敗に焦点をあてたもので、過激主義を主張していることを理由に地元検察が彼が出演する予定だったヴェニューに警告したため、中止に。その後、Huskyは路上で即興パフォーマンスを行い、大勢のファンに囲まれる中、逮捕されることになった。また彼は逮捕される直前に「もっと正直に自分の音楽を表現したい」と主張していたそうだ。
この騒動後、ロシア国内では、別のラッパーGone.Fluddが2つのライヴをキャンセル。その理由が政府からの圧力であったことをほのめかす発言を行い、また別のラッパーのAlljも暴力による脅しがあったことでライヴをキャンセルさせられたとのこと。
ロシアのヒップホップシーンについては、日本ではあまり知られていないイメージあるが、近年、海外カルチャーメディアのnoisey、Highsnobietyなどが特集を組み、同国で活躍するラッパーやシーンを紹介。先述のHuskyもHighsnobietyの特集で紹介されているほか、noiseyの特集では、ロシアにもアメリカのように「エモトラップ」や「エモラップ」と呼ばれるサブジャンルが存在することや、エモトラップシーンのカリスマであった故Lil PeepがKurt Cobainのイメージを取り入れていたように、そのイメージを踏襲する”ロシアン・エモラップ”の王と呼ばれるPharaohというラッパーの存在にも言及している。
ヒップホップはセックス、ドラッグ、抗議行動の3つの柱に基づいている
ではなぜ、そんな若者間で人気のヒップホップが規制されることになったのだろうか? その理由について、プーチン大統領は、ヒップホップがセックス、ドラッグ、抗議行動の3つの柱に基づいていると声明で発表。その中で彼は特に最近のSoundCloudラップなどでもポピュラーなトピックになっているドラッグについて、ロシアという国家が劣化する道筋だと懸念を表明してる。そのため、彼はヒップホップを管理統制したいという意向を示し、そうすることで逆にヒップホップの人気が健全に高まるだろうと語っている。
近年、本場アメリカのヒップホップシーンでも若い世代のラッパーとそのファンたちの間では、ドラッグの蔓延が問題になっており、Lil Peep、Mac Millerなど若手の有望株が命を落としている。またJ.Coleのようなラッパーが今年リリースしたアルバム『KOD』でそういった現状に対し警鐘を鳴らしている。
ロシアのヒップホップの今後はどうなる?
そういったことを考えるとドラッグの蔓延は確かに問題だ。しかし、そういった要素が現在のロシアンヒップホップの中に少なからずあったとしても、今回の規制はいささかやりすぎなのでは? という印象を少なからず受ける。
今後、ロシアのヒップホップシーンはこのような規制の中でどのように発展、継続していくのだろうか? これからのシーンの動向が気になるところだ。
written by Jun Fukunaga
source:
http://time.com/5480876/putin-control-rap-music-russia/
https://noisey.vice.com/en_ca/article/3k73yb/from-moscow-with-flow-how-rap-became-russias-most-important-genre
https://www.highsnobiety.com/2017/11/07/8-russian-rappers-to-know/
photo: pixabay