Spotifyは声明ですでに音楽配信から得た収益の70％近くをアーティストやソングライターに支払っていると反論している。

ストリーミングのロイヤリティ問題を調査した結果に基づき、問題解決のための提案も行われている。

イギリスで、アーティストがストリーミングから得るロイヤリティの問題に関する報告書が政府に提出された。
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<h2>アーティストらは「哀れなほど低い利益」しか得られていない</h2>

昨年10月に始まったストリーミングサービスが音楽業界に与える経済的な問題点に関する<a href="https://committees.parliament.uk/committee/378/digital-culture-media-and-sport">イギリス下院デジタル・文化・メディア・スポーツ特別委員会（Digital, Culture, Media and Sport Committee＝DCMS特別委員会）</a>による調査をまとめた報告書では、ミュージシャンやソングライターが現在のストリーミングのロイヤリティ支払いモデルから「哀れなほど低い利益」しか得られていないことが指摘されている。また、イギリスの音楽シーンが「10年以内に」変貌してしまうのを防ぐには、アーティストに正当な報酬を与える必要があり、いくつかの根本的かつ抜本的な変更が必要であると結論づけられている。
報告書では、音楽ストリーミングからわずかな収益しか得られないことは、業界のクリエイティブなエコシステム全体にも影響を与えているとの主張がある。「成功を収め、高い評価を受けているプロの演奏家たちは、リスニング体験の主流となっているストリーミングからわずかな収益しか得ていないだけでなく、ストリーミングサービスにフィーチャーされていない演奏家は完全に排除されている状況で、音楽スキルを持つこと自体が有効なキャリアであるはずなのに、このようなシステムが新しい才能のための重要なパイプラインにも影響を与えている」と述べられている。 <module-adv></module-adv>
<h2>レーベルがストリーミングで得た収益の16％しかアーティストには支払われていない</h2>
DCMS特別委員会の調査結果ではストリーミングによって得られるアーティスト、ソングライターらのロイヤリティの少なさが指摘されるほか、ワーナー、ソニー、ユニバーサルなどの3大メジャーレーベルなどレコード会社への懸念も示されている。 
BBCによると現在、イギリスのレコードレーベルはストリーミングから7億3650万ポンドの収益を得ているとのことだが、アーティストが得るのはそのうちの約16%でソングライター/コンポーザーの場合はさらに少なくない。
また、報告書はストリーミングによる収益の55％が音源の権利者（レーベルのほか、レーべル契約アーティスト、ディストリビューターを使うインディーズアーティストなど）に分配される一方で、出版・作詞・作曲の権利者（パブリッシャ―、ソングライターなど）に分配される収益は15%に過ぎないため、収益獲得の割合が音源の権利者側に偏りすぎていることも指摘している。

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また、ストリーミングサービスのプレイリストに関して、メジャー3社がインディペンデントレーベルやインディペンデントアーティストよりも曲をピックアップされるのに有利な立場にいるとする指摘も見受けられる。
ガーディアン誌によると元SpotifyのチーフエコノミストであるWill Pageが提出した証拠では、2015年から2019年にかけて、大手メジャーレーベルがストリーミングの出現により、その収益が21％増加したことが示唆されている。しかし、Will Pageは「ストリーミングは、音楽ビジネスの規模は大きくしただけでなく、レコードレーベルにとっては収益性の高いものになった。しかし、アーティストはそれに比例した利益を得ていない」と述べている。 <module-adv></module-adv>
<h3>YouTubeも批判の対象に</h3>
調査結果から、報告書は、CMA（競争市場局）に対し、「メジャーレーベルの支配がもたらす経済的影響」に関する調査を開始するよう提言している。また、ストリーミングプラットフォームの中では、YouTubeの問題も指摘されている。調査中の証拠によると、YouTubeは 「年間の音楽ストリーミングの51％を占めているが、全収益の7％しかアーティストに還元していない」との指摘がある。
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<h3>ストリーミングのロイヤリティ支払いモデルを完全にリセットすることを議員が提言</h3>
&nbsp;イギリスでのストリーミングの支払いモデルの変更に関する議論は、ミュージシャンのTom Grayが関わる「#BrokenRecord」や「#KeepMusicAlive」キャンペーンを受けてのものだという。キャンペーン開始以降、多くのミュージシャンが自身がストリーミングで得ている少ない報酬について発言を続けている。

DCMS特別委員会の議長を務めるJulian Knight下院議員は、「ストリーミングが音楽業界に多大な利益をもたらしている一方で、その背後にいる才能豊かな演奏家、作詞家、作曲家が損失を被っている。現行のストリーミングのロイヤリティ支払いモデルを完全にリセットして、収益の公正な分配に対する彼らの権利を法律に明記する必要がある」と述べている。
報告書では調査の結果を受けて、以下のような提言が行われている。
・音楽制作者が一定期間後にレーベルから作品の権利を取り戻すことを可能にする措置の導入。&nbsp;
・自分の作品が受け取る報酬以上に成功した場合、アーティストに契約を調整する権利を与える。&nbsp;
・政府はYouTubeなどのUGC（ユーザー生成コンテンツ）ホスティングサービスのライセンス契約を正常化するために、法的強制力のある義務を導入すべき。&nbsp;
・政府は音楽パブリッシャーや著作権管理団体に対し、ロイヤリティ・チェーン情報を公開することを義務づけ、支払いシステムにどれだけの資金が流れているかについて、アーティストに透明性を提供すべき
イギリス政府は今後、DCMS特別委員会からの提言について議論することになるという。
最近ではミュージシャンの収益性を高めるものとして、NFTが注目されるほか、従来のストリーミングによる収益の支払いモデルに変わる新たな方法として、Deezerが提唱するUCPSやSoundCloudが今年4月から導入したFan-powerdのような支払いモデルに関する議論も行われている。
今回の報告書の内容は、アーティスト側を支援する内容である一方、レーベル側にとってはビジネスに関わる内容も含まれるため、今後の議論に音楽業界関係者からの注目が集まりそうだ。
＊7/22 追記：DCMS特別委員会、ストリーミング収益の分配の内訳について誤りがあり加筆・修正を行いました。
written by Jun Fukunaga
source:
<a href="https://mixmag.net/read/mps-streaming-services-musicians-royalites-spotify-youtube-apple-news">https://mixmag.net/read/mps-streaming-services-musicians-royalites-spotify-youtube-apple-news</a>
<a href="https://djmag.com/news/streaming-model-needs-total-reset-and-musicians-receive-pitiful-returns-uk-govt-report-concludes">https://djmag.com/news/streaming-model-needs-total-reset-and-musicians-receive-pitiful-returns-uk-govt-report-concludes</a>
<a href="https://www.bbc.co.uk/news/entertainment-arts-57838473">https://www.bbc.co.uk/news/entertainment-arts-57838473</a> <a href="https://www.musically.jp/news-articles/2021/imcj-streaming-economics-aim">https://www.musically.jp/news-articles/2021/imcj-streaming-economics-aim</a>
<a href="https://publications.parliament.uk/pa/cm5802/cmselect/cmcumeds/50/5005.htm#footnote-577">https://publications.parliament.uk/pa/cm5802/cmselect/cmcumeds/50/5005.htm#footnote-577</a>
photo: <a href="https://pixabay.com/images/id-1518679/">pixabay</a>

「音楽ストリーミングのロイヤリティ支払いモデルにはリセットが必要」、イギリス政府に報告書が提出される

これにより"平均月5セント以下、月200回程度の再生回数しかない楽曲"は収益化の対象から外れることになる。

Music Business Worldwide（MBW）が、先月噂されていたSpotifyのアーティストへのロイヤリティ支払い条件の変更を確認したと報じている。
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<h3>2024年から年間再生回数1000回以上の楽曲のみにロイヤリティが支払われる</h3>
MBWがSpotifyと音楽権利者に近い情報筋に確認したところ、この変更は2024年第一四半期に行われ、それ以降Spotifyでは年間再生回数が1000回以上の楽曲のみにロイヤリティが支払われることになるという。
MBWの情報筋によると、ロイヤリティ支払い条件の変更は、Spotifyで配信される楽曲の約0.5％にあたる&quot;平均月5セント以下、月200回程度の再生回数しかない楽曲&quot;を&quot;消滅&quot;させることを目的としている。Spotifyは、ロイヤリティ支払いに最低条件を設けることで、再生回数の規模が小さい楽曲や不正行為によるロイヤリティ支払いを減らすことができ、それによって生まれる余剰分の4000万ドルをロイヤリティをプラットフォーム上で楽曲配信するほかの99.5％のアーティストに新たに分配ことができると予測している。
先月、この変更の可能性が報じられた際、MBWは変更後のSpotifyのロイヤリティ支払いシステムは、現在SoundCloudやTidal、Deezerが導入している「ファン主体型」のロイヤリティ支払いモデル「ユーザーセントリック方式（UCPS）」との類似点が見られると指摘していた。
MBWは、ロイヤリティ支払い条件の変更は小額のロイヤリティ支払いが銀行口座で&quot;休眠&quot;状態になっていることが一因となっていると報じている。MBWの情報筋は、これらの少額の支払いの多くは、支払い対象となる人間に届いてすらいないと指摘。その理由として、インディーズアーティストが配信のために利用するアグリゲーターの多くが、定められた最低限の規定額に達するまでアーティストに配信によって発生したロイヤリティの引き出しを許可していないことを挙げている。
<h3>新たなサブスクリプションプラン導入などほかにも変更を予定？</h3>
ここ最近Spotifyは、ロイヤリティの支払い条件以外にサービスに関するいくつかの変更を予定していると報じられている。
そのひとつが新たなサブスクリプションプラン「Super Premium」の導入だ。リーク情報によると月額19.99ドルで提供されるこのプランでは、ユーザーにロスレスオーディオでのリスニング、オーディオブックの再生可能回数拡大、AIによるプレイリスト作成といった機能が提供されるという。また先月は音楽配信事業者のアップロードした楽曲の不正行為が検出された場合、金銭的なペナルティを科すほか、音楽以外の&quot;ノイズ&quot;が入った楽曲がロイヤリティを得るために最低限必要な再生時間を導入する予定であることも報じられていた。
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Spotify、2024年よりロイヤリティ支払いの最低条件導入。年間再生回数1000回以上の楽曲のみが対象に

ウルグアイでアーティストへの「公平な報酬」を求める法案が可決されたことを受けて、Spotifyが同国でのサービス終了を発表した。
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<h3>法案の可決により2024年2月までにウルグアイでのサービス停止を発表</h3>
今年初めにウルグアイ実演家協会（SUDEI）によって提出された「Rendición de Cuentas」という法案では、ウルグアイ著作権法第284条と第285条の改正を提案したという。その修正案が先月ウルグアイ議会によって承認されたことで、ウルグアイでは、アーティストの録音素材に関して「公正かつ公平な報酬」の要件を導入することになった。
この法案では「SNSとインターネット」が「楽曲が複製された場合、実演家が金銭的報酬を得る権利を有するフォーマット」として扱うという要件が導入されていることから、Spotifyは今年7月に法案が最初に提出されたタイミングで初めてサービス終了を示唆。提案されている改正法案は「明確性に欠け」、「音楽サービスに対する追加の支払い義務がある」と主張。また、Spotifyの広報担当者はウルグアイの教育大臣に送った書簡の中で、「改正法案が現在の形で成立すれば、ウルグアイでのSpotifyのビジネスは実行不可能となり、ウルグアイの音楽とそのファンに不利益が生じる可能性がある」と指摘し、改正案によって、ロイヤリティの&quot;2倍&quot;の支払いを強いられると訴えていた。
今月20日に出されたウルグアイでのサービス終了を宣言する声明の中でSpotifyの広報担当者は次のように述べている。
「2023年のRendición de Cuentas法に含まれる音楽著作権法の変更（追加費用は権利者の責任であることを確認すること）が明確にならない限り、Spotifyは残念ながら2024年1月1日よりウルグアイでのサービスを段階的に停止し始め、2月までに完全にサービスを停止します」
<h3>音楽配信から得た収益の70％近くをアーティストやソングライターに支払っていると反論</h3>
またSpotifyはすでに音楽配信から得た収益の70％近くを音楽の権利を所有し、アーティストや作曲家を代表して支払いを行うレコードレーベルや出版社に支払っているとし、それ以上の支払いが発生することで同社のビジネスが維持できなくなるとした上で、「当社はこれまでに400億ドル以上をアーティストらに支払っており、その最大の収益源であることを誇りに思っています。またストリーミングのおかげで、ウルグアイの音楽産業は2022年だけでも20%成長しています」と修正案の可決に反発している。
Spotifyに限らず、音楽配信サービスによる収益分配モデルに疑問を呈し改善を求める声は根強く、2021年にはイギリスでも議会の特別委員会が現行のストリーミングによるロイヤリティ分配モデルのリセットを主張している。果たしてSpotifyは本当に宣言どおり、ウルグアイから撤退することになるのだろうか？ 気になるところだ。
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