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MUTEK.JP 2021レポート:電子音楽と交わるパフォーミングアート & VRパフォーマンスの可能性

2021/12/16 19:00
Jun Fukunaga
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12月10日(金)に渋谷ストリーム ホールで行われた「Nocturne 1」では、国内新鋭アーティストによる2つのライブパフォーマンスが目を引いた。

電子音楽&デジタルアートの祭典「MUTEK.JP 2021」が、12月8日(水)~12日(日)の5日間に渡り、開催された。

渋谷ストリーム ホールでの「Nocturne 1」に潜入!

昨年のMUTEK.JPは、コロナ禍の影響により、これまでのリアル開催という形ではなく、リアルとオンラインのハイブリッドイベントとして開催されたが、今年は例年と同じく、再び全会場において有観客で実施された。

また、今年のラインナップは昨年同様、日本のローカルアーティストにフォーカスしつつも、新鋭気鋭のアーティストが一挙集結。フレッシュなラインナップならではの新しい発想と表現を追求する音楽、デジタルアート、メディア芸術、オーディオビジュアルライブ、ワークショップといった"革新的コンテンツプログラム"が届けられた。

5日の開催のうち、今年筆者が足を運んだのは、12月10日(金)に渋谷ストリーム ホールを舞台に大音量&スタンディングでライブパフォーマンスをフィジカルに楽しめるプログラム「Nocturne 1」。

この日のラインナップで目を引いたのは、ライブアクトとして国内外クラブのレフトフィールドなテクノパーティや野外フェスティバルへ出演しながら、インスタレーションをオーガナイズし空間ディレクションと音楽制作を手掛けるSaskiaが、舞踏家のKana Kitty、Yumi Sagara、照明のHitoshi Satoとチームを組んだパフォーミングアート作品『ロウ』と、若手クリエーターを集うMUTEK.JPオープンコールから選出された、マルチメディアを通した表現を行うJACKSON kakiによる自作VRゲームをプレイしながら音楽を創造するライブパフォーマンスだ。

電子音楽と舞踏、照明によるパフォーミングアート『ロウ』

パフォーミングアート作品『ロウ』は、"潮の満ち引きのように境界が揺らぐ世界を音、光、身体表現を通じて作り出す"ことをコンセプトにしたコンテンポラリーな表現で、前衛芸術・暗黒舞踏の流れを汲んだもの。

MUTEKというと"電子音楽&デジタルアートの祭典"を謳うだけに、普段からメディアアートとして最先端のオーディオビジュアルライブを行うアーティストや、そうでなくともその界隈の映像クリエイターとタッグを組んでパフォーマンスを行うアーティストも多く、テッキーなオーディオビジュアルライブが披露されるイメージが個人的には強い。しかし、Saskiaらによる『ロウ』では大掛かりなディスプレイなどはなく、代わりに薄暗い舞台に立つ舞踏家、ソリッドなスポットライト、そして会場を包み込むような電子音のみとミニマムなセットアップで行われたため、のっけからいつものMUTEK.JPとは違う異質な空気を感じたのも事実だ。


photo: Shigeo Gomi

そんなムードの中で始まったパフォーマンスは、サンプリングされたと思われる虫の鳴く音やローの効いた低音の高速ビートが鳴り響くシーンもあれば、グリッチな音の粒にあわせて舞踏家が身体を動かすようなシーンも。また、スポットライトによって表現された光の柱のようなものを舞踏家が両手で掬うようなシーンは、神秘的ですらあった。全体的にはアブストラクトなムードが強かったものの、電子音楽とフィジカルな舞踏、照明が三位一体となることで示されるパフォーミングアートの可能性を感じさせてくれる好内容のパフォーマンスだった。


photo: Shigeo Gomi

新感覚のVRゲームを使った音楽パフォーマンスに注目

コロナ禍以降、音楽シーンでもVR、ARを取り入れたバーチャルライブは注目を集めている。また、『フォートナイト』のような3DCGを駆使したオープンワールド型のオンラインゲームは、従来のゲームとして楽しむだけのものではなく、仮想空間上で音楽ライブも楽しめるメタバース的なプラットフォームとして、今では音楽ファンの間でも認知が高まっている。

その意味では、仮想世界と現実世界をテーマに、ポスト・インターネットの社会と世界の関連性を見出したマルチメディア作品をこれまでに手掛けてきたJACKSON kakiのパフォーマンスは、完全に"今"な感じがするパフォーマンスだった。

自作VRゲームを使ったそのパフォーマンスでは、JACKSON kaki本人がVRデバイスを装着し、自身のアバターを動かしながら、迷路のようなVR空間を歩き回る姿が舞台上に設置されたスクリーンに映し出された。なにやらコンテンポラリーなナレーションが一定の間隔で行われたり、時にVR空間上に出現するモンスターをアバターが武器を持ち倒していく様子などゲームらしいシーンが見られたが、パフォーマンスの後半は渋谷ストリーム ホールをVR上に再現した空間も登場するなど、デジタルツインな表現も目を引いた。


photo: Shigeo Gomi

また音楽的な面では、VR空間内にある奇妙なオブジェや椅子などを持ち上げ、それを地面に打ちつける形で音を鳴らすという、一風変わったものになっていた。現在VRの音楽コンテンツでは、VRDJソフトやVRシンセなども存在するだけに、今後はVR空間を活用した音楽パフォーマンスも広く親しまわれるようになる可能性も高い。その意味ではこのVRパフォーマンスはその先例のひとつになったのではないだろうか? パフォーマンスのアップデートを含め、今後のこの界隈の動きに期待が高まる内容だった。


photo: Shigeo Gomi

渋谷川では参加無料のアートインスタレーションも

また、この日より3日間は会場となる渋谷ストリーム前の渋谷川にて、プロジェクションマッピングで没入体験できるアートインスタレーションも鑑賞無料で公開となっていたのでそちらも拝見。

2022年夏に日本橋三井ホールで公開予定の、視界一面に映し出された名画の世界に没入する新しいタイプの美術館「IMMERSIVE MUSEUM」より、印象派の名画のダイジェスト映像と、「Alive Painting」シリーズを手がける画家の中山晃子が池袋西口公園「Global Ring」のために制作した作品を改変した特別編集版の2作品で、どちらもアンビエントな音楽に合わせて動くイマーシヴな映像を楽しむことができた。


photo: Shigeo Gomi


photo: Shigeo Gomi

今回は「Nocturne 1」のみの参加となったため、MUTEK.JP 2021の全てを堪能できたわけではないが、ライブパフォーマンスではフォーマットは違えど、MUTEK.JPらしい最先端の電子音楽とデジタルアートを体験することができた。

来年はコロナ禍以前のように海外アーティストがラインナップに加わることに期待する一方で、今回のように日本の新鋭アーティストによる新たな表現も引き続きフィーチャーされることにも期待したい。

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