働くDJたち必見!Ken IshiiとRISA TANIGUCHIが「仕事と音楽の両立」を語る

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DJカルチャーにフォーカスし、DJの魅力を深堀りする番組「IN DJs WE TRUST」。
Ken IshiiとRISA TANIGUCHIが登場し、テクノシーンの現在地や、自身のDJとしてのトラブル&海外体験談を振り返った第7回。後半では社会人経験のある2人が、働きながらDJをしていた時代の体験談や、社会人DJとして続けていくコツを伝授してくれた。
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TJO:Kenさんは大学生の頃にデビューされましたが、卒業してからお仕事もされてましたよね。
Ken Ishii:レーベルと契約したのが大学4年生くらいなんですけど、最初のレコードが出たのは社会人になった後の4月頃でした。その間に就職活動をしてましたね。<R&S Records>の最初の契約も、それほど大きな金額じゃなかったんですよ。様子見みたいなディールだったから。これだったらまず仕事をして、生活を安定させた上で好きな音楽を作るのがいいなと思って、会社員を2年間くらい続けました。
TJO:新入社員だったことですし、結構忙しかったと思うんですけど、DJと両立できたんですか?
Ken Ishii:頑張ってました。土日だけで曲を作ったり、DJしたり。月曜日から金曜日まで働いて、土曜日は地方に呼ばれてプレイして、日曜に帰ってきて、月曜の朝出社とかもやってました。たまに先輩から怒られてましたけど。
最初に有休を使って休んで、R&Sの周年のイベントでヨーロッパに行ったんですよ。「Love Parade」に出た時も1週間休んで行ったら、それで先輩に怒られました。「新入社員が有休使えると思ってるんじゃねえよ」みたいな(笑)。
RISA TANIGUCHI:怖い。
Ken Ishii:本当に怖くて、「すみません」って。
TJO:令和じゃ考えられないですね(笑)。
Ken Ishii:大体3年目ぐらいまで有休なんて使っちゃいけないムードが…。
RISA TANIGUCHI:ひどい!
TJO:厳しい!
Ken Ishii:忙しい会社だったので。毎朝9時に出社して、大体夜の23時ぐらいまで仕事してました。まだギリギリ、タクシー券があった時代だから。夜中の1時ぐらいまでいたり、たまに3時とか4時までいたこともありました。でも次の日の朝は必ず9時にいなきゃいけないんですよ。
RISA TANIGUCHI:すごすぎる。
Ken Ishii:よく頑張りましたね。まあ若かったんで。
TJO:それはさすがに平日は帰ってきてもうヘトヘトで、曲作るなんて絶対無理ですよね。
Ken Ishii:無理でしたね。
TJO:でもリリースをし始めてるから、地方からもオファーはすごいだろうし、海外からお誘いもあるじゃないですか。全部に出られるわけじゃないから、その選別はどうやってたんですか?
Ken Ishii:わからない。あんまり記憶がないんですよね、忙しすぎて。
TJO:基本的には土日にDJ、プラス、できる限り曲作りも頑張る、みたいな?
Ken Ishii:そうですね。当時はテクノシーンが日本で始まったばかりだったから、そんなにどこでもやれる場所があるわけではなかったです。せいぜい五大都市とか。しかも毎月あるわけじゃない。そういう意味では土日に制作か、地方や東京でプレイしたり。どっちかをやるみたいな感じでした。
TJO:音楽で食べていけるなと思った時期が、その2年後くらいってことですよね。何がきっかけでそういう風に?
Ken Ishii:『Jelly Tones』というアルバムをリリースした時です。それで少し名前を知ってもらえるようになったんだけれども、その前に「Extra」という曲があって。
アルバムリリースの1年ぐらい前に、その曲をベルギーのライブでプレイした時に、当時のレーベルの社長がやってきて「お前、あの曲はなんだ」と。「あの曲でお前をスターにしてやる」って言われたんですよ。その後に1年かけてアルバムを作って。そうしたら、そのアルバムが全世界発売で、会社としてもフルプッシュするという話になり、それなら音楽で食べていけるかなと思ったんです。
でも会社は会社で忙しいし。どっちかというと、たくさん曲を作りたいのに作る時間がないというストレスがすごかったから。プラス、それだけ残業もしたし、使う時間もないからそれなりに貯金もあった。だから貯まったお金で、1年くらいならなんとか食いつなげるかなと思って会社を辞めて、それで音楽に集中したんですよね。
TJO:すごいですね。さすがにそこまで名が知られてたら、会社の中で「Ken Ishiiだろ」って言われたことはなかったですか?
Ken Ishii:一度ありました。僕、取材はあんまり受けないようにしていたんですよ。まだ音楽だけでやっていけると思っていなかったから。ただ、だんだん「これは出たいな」って思うようなダンスミュージックの雑誌とか…、当時だったら『Remix』とかあったりする中で、顔は映さないで、横顔とか後ろ姿だけで取材を受けてたんですよ。当時、『Focus』っていう写真誌があって、そこから依頼が来た時に「顔を写させてくれ」と。デカいメディアだし、これやっちゃおうかなと思って。
一同:(笑)。
Ken Ishii:その時は「もうそろそろやめてもいいかな」となんとなく思ってたのもあって、出てみたらやっぱり誰かが見つけて。日本全国の支社中の掲示板に顔を貼られて。何々局にいる石井がメディアに出ました、みたいな。
広告代理店だったんですけど、やっぱりメディアに出ると認めてくれたみたいで、それまですごく怖かった先輩が「なんかヨーロッパでやってるらしいじゃない」みたいな感じで、急に優しくなって。最後の半年間ぐらいは結構居心地が良かったですね。それまで怒られてばっかりだったのに。
一同:(笑)。
RISA TANIGUCHI:手のひら返すように。
Ken Ishii:本当にそう。
TJO:じゃあみんなで掲示板貼ったのも、どちらかというと「すごい!」みたいなテンションで。
RISA TANIGUCHI:賞賛の意味でってことですね。
TJO:面白い。仕事と音楽の両立って、多分みんなが知りたいところだと思うんですけど、RISAちゃんはどうですか?
RISA TANIGUCHI:私の場合、まさに今、平日仕事して、土日も仕事が入ることも多いので、週末も仕事しながら、夜DJして、起きて曲作って、みたいな。今、まさにその真っ只中なので、Kenさんの話を聞いて頑張ろうって思いました。今が頑張り時だな。
Ken Ishii:最初に蓄えがあると、だいぶ気分が楽になりますよ。
RISA TANIGUCHI:大事ですよね。間違いないです。
Ken Ishii:本当に大事。
【番組情報】
IN DJs WE TRUST
40年前に誕生した「DJ」という表現。機材やプレイスタイルが進化する中で、DJたちはどんなことを考え、何を感じているのでしょうか?
この番組では、時代を築いてきたDJたちの思考とプレイの裏側に迫ります。
MC:TJO
配信日時:金曜日21:00~
番組ページ:https://block.fm/radio/idjwt