Doul インタビュー|完全自己プロデュースSSWのこれまでとこれからを紐解く“3枚のアルバム”

昨年、音楽シーンに彗星の如く現れたシンガー・ソングライター、Doulの過去から現在を“3枚のアルバム”というお題で深堀り。
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2021.08.30 09:00

2020年、音楽シーンに彗星の如く現れたシンガーソングライター、Doul(ダウル)。2000年代生まれの彼女は、同年9月のデビュー曲「16yrs」がいきなり世界90ヵ国以上で再生されるなど、早耳リスナーの間ではかねてから注目を集めていた存在だ。


Doulの魅力は、自身でプロデュースするジャンルレスで多彩な楽曲やライブパフォーマンスだけでなく、アートワークやSNSで公開する写真など複合的に“Doul”という人物を楽しめるところにある。


そんなDoulの魅力を深掘るべく、“Doulを紐解く3枚のアルバム”というお題で彼女にインタビューを行った。


音楽を始めたきっかけや完全自己プロデュースのアーティストというスタンス、そして名刺代わりの1枚となったEP『One BeyonD』に込められたメッセージについて話を聞いた。



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Linkin Park『Hybrid Theory』


自身のアーティスト名は、高校時代に韓国人の友人に自身の表情が"Like a doll(人形みたいだね)"と言われたことがきっかけでつけたと語るDoul。


「ちょっと表情がスンとしていたというか、普段からあまり笑わない感じが『人形っぽいね』とよく言われていたんですよ。自分ではしっくり来てなかったんですが、韓国語にも"Doul"という単語があると教えてもらって。"DAUL"という発音なんですが、意味を聞いてみたら"ユニークな名前"だと言われて、それなら良いなぁと。それを文字って今の"DOUL"になりました。だから自分のInstagramのIDも"@douldoll_"にしています。」


そんなDoulが人生で最初に聴いたアルバムは、Linkin Parkが2000年にリリースしたデビューアルバム『Hybrid Theory』。これまでの人生で聴かなかった日は1日もないと語るほど、彼女にとっては思い入れがあるバンドの1枚だ。


「Linkin Parkは、生まれた頃から馴染みがあって、1番尊敬しているバンドです。彼らの音楽は全部好きなんですけど、このアルバムはバンドの最終形態というか、本当に全てが詰まっているんです。」


「自分が生まれた2000年代に世に出てきたバンドで、ターンテーブリストやラッパーもメンバーにいるし、当時としてはすごく新しいことをしていたバンド」と語るDoul。「Crawling」のライブ映像は今でも毎日見るほどお気に入りで、尊敬するボーカルのChester Benningtonの声や歌には自分が音楽作る上でも大きな影響を受けているという。



クリスマスプレゼントとしてアコースティックギターを自分で購入したことをきっかけに、12歳でギターを始めたDoulだが、最初に弾いてみようと思ったのはEric Claptonの「Tears In Heaven」だったという。ただ、その頃は誰かギターを習っていたわけではなく、実際にやってみると難しすぎてあえなく挫折。しかし、その後あることをきっかけに再びギターを手にすることになった。


「1年くらいギターを自分の部屋の隅に追いやっていたんですが、ある時、ギターがかわいそうだと思ったことがあって。それでギターを引っ張り出してきて、もう1回「Tears In Heaven」の練習を始めました。ギターが弾けるようになったことで弾き語りの良さに目覚めたというか、その気持ちよさをびっくりするくらい味わってしまって。そういう体験があったからこそ、今でも弾き語りを続けているんだと思います。」


その後、福岡のストリートでライブパフォーマンスの腕を磨いてきたDoulは、今でもその時の経験が自分の活動に活かされていると振り返る。


「14歳の頃から週に何度もストリートライブをするような生活を2〜3年続けてきました。最初は本当にギター1本だけでやっていたし、すごく下手くそだったんですよ。でも、アンプを買ってギターをつなげて、マイクもスピーカーに繋げて、という感じでやっていたら、自然と観客が勝手に集まってくるようになりました。その時に外で歌う気持ち良さを知りましたね。」


ストリートライブデビュー後は、見にきてくれるファンとの交流を大切にしていたというが、そのスタンスに魅せられたファンはそのうち何百人と集まるようになった。Doul曰く、当時ストリートライブをしていた警固公園界隈では誰よりも人を集めていたようだ。





Nirvana『In Utero』


「Nirvanaのアルバムの中では、今でもずっとリピートして聴いているのが『In Utero』。1番好きな曲は「All Apologies」です。自分でカバーしたものをYouTubeでも公開していますが、Nirvanaの曲はアコースティックバージョンにしても良い曲だと感じるから"本物"だと思います。Kurt Cobainの声もメロディの乗せ方もすごく尊敬していますし、もしアコースティックで弾き語りをする曲を作るとしたら、この曲にインスパイアされた曲を作るはずです。」



Doulは楽曲のリリース以外にも、TikTokやYouTubeへコンスタントに投稿されるカバー動画やライブ配信でもファンから注目を集めている。SNSを駆使することについて聞いてみたところ、こんな答えが返ってきた。


「SNSだとストリートライブのように面と向かって話すことはできませんが、例えば『今日〇〇を歌うよ!』とか、動画を見ている人に話しかけるスタイルでやると見ている人も私を身近に感じられるし、楽しんでもらえると思っています。海外のファンのように実際には会うことが難しい人ともオンラインで気軽に繋がることができますよね。SNSはみんなが日常的に使っているし、スクロールするだけでいろんな発信をしているアーティストを見られるので、そういう意味では1番アーティストを身近に感じることができる場所なのかもしれません」



Twenty One Pilots『Blurryface』


Doulは完全自己プロデュースアーティストとして、楽曲だけでなくアート/ヴィジュアルワークも手掛けている。そのスタイルに大きな影響を与えたのがTwenty One Pilotsだ。


「ボーカルのTyler(Joseph)の声や、バンドだけどEminemみたいにスキルフルなラップをするところに影響を受けています。2ピースのバンドで、生演奏だけではなくうまくオケも使いながらライブをするところに自分のスタイルとの近さを感じています。」


アートワーク面での彼らからの影響も大きい。


「中学生の時にTwenty One Pilotsのことを知って、初めて聴いたのがこのアルバムに収録されている「Stressed Out」でした。まずはアルバムのジャケ写のかっこよさにびっくりしたんですよね。Twenty One Pilotsのジャケ写は、アルバムもシングルもデザインがすごくまとまっていますし、ロゴひとつとってもこだわりを感じます。それとTwenty One PilotsはMVでの表現にも相当なこだわりを持っています。彼らの表現には全てにストーリーがあって、そのストーリーがちゃんと繋がっているんですよ。その影響から音楽だけでなくアートワークもセルフプロデュースするようになりました。」



今年Doulは「YouTube Music Foundry Class of 2021」に選出されたが、その際には「自分の音楽を世界と共有して、音楽、歌詞、ファッション、メイクなどの表現で、感動を届けたいと思っています」とコメントしている。これはDoulのトータルプロデュースに対するこだわりが感じられる象徴的な発言だ。


Doulにとって初のEPとなる『One BeyonD』には、90ヶ国以上で聴き続けられているデビュー曲「16yrs」や世界中の人気TikTokerたちが使用し始めているリード曲「Bada Bing Bada Boom feat. Zag」も収録されている。本作の反響を聞いたところ、これまではMVに対するコメントが多かったが、最近ではMVをきっかけにアート/ヴィジュアルワークを公開しているInstagramにコメントしてくれるファンも増えたという。


「YouTubeで公開しているMVを気に入ってくれた人が、Instagramまで見にきてくれることが増えました。海外のファンがすごく増えたのですが、彼らはInstagramで公開しているアート/ヴィジュアルワークにも「すごく良かった」とかコメントをくれるんですよね。ただ曲を聴くだけではなく、アート/ヴィジュアルワークまで含めて注目してくれていることが伝わってきます。そうやってトータルで評価してくれる人たちが増えて、自分でこだわってきて良かったなと改めて感じています。」


また、世界と同じ土俵で闘う上で自身の武器となるのは、日本人としての誇りは持ちつつもそれにあまり固執しすぎないことだと語る。


「世界と同じ土俵で戦いたいなと思っているのでグローバルに通用する英語で歌いたいし、USロック、UKロックとかJ-POP、K-POPみたいに国籍でカテゴライズすることを気にせずに音楽を作っています。そういうところが海外の人からするとおもしろいとか、好意的に捉えてもらっている部分なんだと思っています。」



そんなスタンスで制作されたEP『One BeyonD』で最も伝えたかったのは、どんなメッセージだったのだろうか?


「これまではシングルリリースを重ねてきましたが、今回は1st EPだからこそ今までとはまた違った自分を集めて、ひとつのまとまった作品を通じて改めてもう1度自分のことを知ってもらう場所にしたかったんです。EPのタイトルにあるように、自分がみんなの一歩先を行くから、今それについてきてくれる人は一緒にがんばろうというメッセージを込めた作品です。」


"ついてきてくれる人は"というと、上から目線ではなく、どこか肩肘張らない聴き手に判断を委ねている印象がある。そのメッセージの秘密は『One BeyonD』でDoulが歌うリリックにあった。


「やってみたいことがあるけれど周りに無理だと言われるからスタートできていない人って、自分の同世代にもたくさんいると思うんですよ。その一方、同世代で活躍している人がたくさんいるからこそ、周りと自分を比べて焦りを覚えてしまう人もいる。でも今、18歳で音楽シーンに足を踏み入れた新しいアーティストの1人だからこそ、今回の作品では「周りと比べて焦りを感じなくてもいいんだよ!」というメッセージを入れたかったんです。」


「今、悩みを抱えている同世代の人も何かしら好きなことや、やりたいことがあると思うし、一緒にがんばろうという意味で、私自身が自分らしさや自分のことについて歌うことで共感してくれたり、逆に違うって思ってくれたり、いろいろな意見が生まれるんじゃないかなと思っています。だから今作ではあえて他人ではなく自分のことを見つめ直して、ギュッとひとつにまとめた作品にしてみました。」



Doulの同世代のアーティストには国内外問わず10代でデビューし、グローバルに活躍する人物も少なくない。Doul本人は同世代のアーティストたちの活躍に敏感になるタイプではないと前置きしつつも、「新しい表現や文化を作りたいという同世代の人たちとはこれから何か一緒にやっていけたら」という想いも持っている。また、"完璧すぎるアーティスト像"を追求するよりも、自分自身が生き辛さを感じることなく、周りとも適度な距離感を保ちつつ良い作品を作れるようになることが今後の目標だという。





最後に今、世間にある「何か新しいものを取り入れようとする」風潮が強すぎることに疑問を持つことも大切だとDoulはファンに向けて語る。


「今は日本に限らず世界的にも何か新しいものを取り入れようとする風潮が強すぎるから、若者だけでなく困惑している人は多いと思います。でもみんなと一緒にがんばっていく立場としては、そういう風潮がある世の中に対して常に疑問を持って過ごすことを忘れないでほしいと伝えたいです。何かに疑問を持った若い世代が立ち上がって発言することは素敵なことだと思いますし、なにより世の中にはいろいろな考え方があるはずなので。自分も悩むことはありますが、そこは胸を張って戦ってほしいですね」



最後まで自身の音楽活動やそれに込めたメッセージについて熱く語ってくれたDoul。世界を見据えながらも様々な制約に捉われることなく、独自に道を切り開いていく彼女のスタンスは、今後、若者に限らず、今を懸命に生きる多くの人にとってひとつの指針になることだろう。





【リリース情報】


Doul 1st EP『One BeyonD』


収録曲

1.Bada Bing Bada Boom feat. Zag

2.Howl

3.Heart is Breaking

4.From The Bottom

5.16yrs


配信リンク:https://lnk.to/doul


【プロフィール】


福岡出身18歳のアーティスト”Doul(ダウル)”

数々のヒットアーティストを輩出したSpotify[RADAR:Early Noise 2021]に大抜擢された完全自己プロデュースアーティスト。Nike Japanとアンバサダー契約を結ぶなど、音楽はもちろんファッションでも世界中の同世代から注目を浴びている。

2020年9月のデビュー曲[16yrs]がいきなり世界90ヵ国以上で再生され、米国の超ビッグプレイリストを始め、9,000以上にリスト入りしている。しかもデビュー日にあの"Diplo"にInstagramをフォローされるなど、話題が尽きない。12月配信の[Howl]ではSpotify[VIRAL 50(Japan)]の6位にチャートインするなど、メディア露出がほぼ無い中でもその声と楽曲、世界観で世界中の同世代からの夢中を引き寄せている。

アジアだからこそ生まれた、この時代だからこそ育った、ボーダレス/混血の才能。

そしてYoutube、サブスク世代の彼女は60年代~2021年の音楽・ファッション・アートを自由に、無意識に飛び回わり、年代・ジャンル・国境・性別を軽やかに飛び越える。

彼女から生み出される楽曲・アート/ヴィジュアルワークは懐かしくも新しい違和感を含んでいる。

実は最大の魅力であるパフォーマンス力など、まだまだ巨大な才能の全貌を露わにしていない、世界照準の彼女にご注目を。


Doul SNS:https://linktr.ee/Doul



Written by Jun Fukunaga





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