XG「Nothin’」ヒップホップ愛に溢れたサイファー動画を徹底解説!

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7人組HIPHOP / R&BガールズグループのXGが、デビュー前より公開を続けているラップパフォーマンス動画シリーズ『XG TAPE』の最新作を公開した。
今回ビートジャックした曲はN.O.R.E.(ノリ)による2002年リリースの代表曲「Nothin’」で、先日開催された88rising(88ライジング)主催のフェス「Head In The Coulds New York Music & Arts Festival」で初披露されたことでも注目されていた。
リリック、MVに散りばめられたヒップホップネタ
今回ビートジャックした「Nothin’」ではトラックはそのまま、フロウもオリジナルに沿っている中で、リリックには知る人ぞ知る小ネタが多く散りばめられているので、細かく解説していこう。
まずフックで使われている「God's favorite like a N.O.R.E」というフレーズは、オリジナルを歌うN.O.R.E.へのリスペクト。『God’s Favorite』は2002年にリリースされたN.O.R.E.のサードアルバムのタイトルで、「Nothin'」も収録されている作品だ。
続くバースに入って聴こえてくるのは「zero-two flow like bootlegged mixtapes」というリリック。2002年を指す“zero-two”は「Nothin'」のリリース年であり、さらに2000年代初頭に主なプロモーションアイテムであった“ブートレグ・ミックステープ”についてもシャウトしている。
同じバースの中盤では「Wildin' out without carryin' a canon」というフレーズが使われている。これは俳優でありラッパーのNick Cannon(ニック・キャノン)がホストを務める人気番組『Wild 'n Out』を使い、さらに“carryin'”はNick Cannonの元奥さんであるMariah Carey(マライア・キャリー)という見事な言葉遊びがここでも成立。
そのまま続けて聴くと「Makin' chess moves, step to the Neptune」というリリックも。これは「Nothin'」のプロデューサーでもあるThe Neptunes(ザ・ネプチューンズ)へのリスペクト。そしてその直後に続く「Chillin' wit my b-boy stance then lean back」ではベテランFat Joe(ファット・ジョー)率いるTerror Squad(テラー・スクワッド)によるNYアンセム「Lean Back」をお馴染みのダンスムーブとともにラップ。ちなみにこちらのMVにはN.O.R.E.もカメオ出演している。
最後は「True playa for real」と始まるフレーズをキックしている。このフレーズはR&BシンガーUsher(アッシャー)の代表曲「U Don't Have to Call」でも使われていて、同曲のプロデューサーは「Nothin'」と同じくThe Neptunesだ。
まだまだネタが隠されたセカンドバース
それではセカンドバースを聴いてみよう。最初の一節から「I spit trilingual, that's a special delivery」とスピットしていて思わずニヤついてしまう。「Special Delivery」とはラッパーのG-Dep(G・デップ)の代表曲で、この曲もNYではヒップホップクラシックとして今もなお愛されている曲だ。最近ではLil Wayne(リル・ウェイン)がSwizz Beatz(スウィズ・ビーツ)プロデュースによる「Uproar」でもサンプリングしていた。
中盤で登場する「Asian wit a attitude」は、ドキュメンタリーも公開されている西海岸の伝説のグループN.W.A(エヌ・ダブリュ・エー)の正称でもある“Ni**** Wit Attitudes”をサンプリング。続けて「Yeah, we gon' act a fool」とここではサウスの重鎮Ludacris(リュダクリス)の代表曲のタイトルを使用。ちなみにオリジナル「Nothin'」のリリックでは『Fast and Furious』というフレーズが出てくるが「Act A Fool」は『ワイルド・スピードX2』のサントラにも収録されている流れもあってのリリックだ。(『ワイルド・スピード』の原題は『The Fast and the Furious』)
その後「Guerrilla mode with the bathin' ape camo」とラップする場面ではMVで「A BATHING APE®」の衣装をアピール。創業者のNIGO®はThe NeptunesのPharrell Williams(ファレル・ウィリアムス)と旧知の仲であることを知る人も多いだろう。
同時に大谷翔平選手のユニフォームも目を引くが、これがMLB公式のカルチャー専門アカウントMLB Lifeの公式ツイッターで紹介され、ワールドワイドなプロモーションに一役買っている。
XG member Cocona is wearing a Shohei Ohtani jersey in the video for her and Jurin's new song "Nothin'"@XGOfficial_ #XG #JURIN #COCONA pic.twitter.com/MqhNo2LXAJ
— MLB Life (@MLBLife) June 2, 2023
そして終盤の「On them two letters then follow like Simon Says」ではこちらもNYアンセムであり映画『ゴジラ』のサントラをサンプリングしたことでも話題となっていたPharoahe Monch(ファロア・モンチ)の曲「Simon Says」からサンプリング。ここにはXGの総合プロデューサーであるSimon Jakopsの意味もかかっているはずだ。
そして最後は「Music makes me like」と締めくくるがこちらはNYクイーンズ地区を代表するLost Boyz(ロスト・ボーイズ)「Music Makes Me High」からサンプリング。
リリックに撒かれたヒップホップ愛、特にNYヒップホップへのリスペクトを感じるビートジャックとなっているが、披露されたのがNYで行われた88risingのフェスだったというのも流石の一言。
特徴のないカバーであれば話題にもならないところ、XGのJURIN、COCONAという2人のスキルによって見事現代でも受け入れられる仕上がりに。MVでは後ろのサインにN.O.R.E. Nothin’と書かれているのも含め全てにリスペクトを感じる。
ちなみに「Nothin'」はラッパーのArmani White(アルマーニ・ホワイト)が「BILLIE EILISH.」という曲でもサンプリング。TikTokをきっかけに世界中でヒットしていた。
『XG TAPE』では「Nothin'」と同時に、Cordae(コーデー)とAnderson .Paak(アンダーソン・パーク)の「Two Tens」をHARVEY、MAYAがカバーする動画も公開されており、Lo-Fiでメロウなビートを巧みなフロウで乗りこなす様があわせて話題となっている。
「Nothin'」の「XG 'bout to break ya idol stereotypes」のリリックが示す通り、我々がイメージする「アイドル」という固定概念を常に打ち破ってくるXG発のコンテンツ。彼女たちが国境、世代を越えて世間を席巻する日もそう遠くなさそうだ。