ラップを題材にした漫画『スーパースターを唄って。』作者の薄場圭さんと編集担当の西尾さんがSUMMITimesに登場。薄場さんが19歳ではじめて漫画を持ち込んだときのこと、編集者が新人と会うときに見ていることなどを話していました。

ラップを題材にした漫画『スーパースターを唄って。』作者の薄場圭さんと編集担当の西尾さんがSUMMITimesに登場。漫画づくりのプロセスについて話していました。

漫画『スーパースターを唄って。』の作者・薄場圭さんがblock.fm『SUMMITimes』に出演。小学館の担当編集・西尾さんと連載漫画の原稿づくりの流れについて、SUMMIT増田さん、平林さんに話していました。
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平林：ちょっと、素朴な疑問で。どこまで聞いていいかわかんないですけど。連載が始まる時って、何話ぐらい描き終わっているものなんですか？
西尾：始まる時ですか？
平林：「1話が始まりますよ」っていう時に……要は2話、3話、4話とか、もう描かれているものが納品されてるもんなんですか？
西尾：結構ケースバイケースなんですけど。だいたい、どれぐらいですかね？　3話分ぐらい、ストックがあるのかな？
増田：ああ、週刊じゃなくて月刊だからか。
薄場：でも、そのストックっていうのもネームのストックで。
増田：作画はしていない？
薄場：だからネームだけある状態で。自分の場合は……。
増田：レンくん、ネームってわかるか？　知らんやろ？　俺はもう『まんが道』を読んでるから知ってるけど……（笑）。
薄場・西尾：フフフ（笑）。
平林：ちょっと、説明してください。
増田：説明しよう！　でも、俺が説明するのも変やね。小学館の編集者さんがいるのに。
薄場：それはそうですね（笑）。
増田：どういう段階を経て、印刷まで行くのか、みたいな。
西尾：連載の漫画で言うと、打ち合わせをして、内容の話をして。
増田：その前に「初めまして」っていうのがまず、あるよね？
西尾：そうですね。名刺を渡したりとか。それで打ち合わせがあって。打ち合わせの後……これも作家さんによるんですけど。プロットに起こす方もいれば、ネームを描く方もいて。
増田：プロットっていうのは、テキストの？
西尾：そうですね。で、薄場くんの場合は打ち合わせを結構しっかりして。その後にネームっていう。
増田：それはもう、お二人でするんですか？
西尾：そうですね。基本的には2人で……でも今、実は自分がスピリッツの編集部から、スペリオールっていう編集部に異動になって。『スーパースターを唄って。』だけは後輩と一緒に……。
薄場：引き継ぎに今、時間がかかってるみたいな感じで。
西尾：そうですね。いろいろやらせてもらってるっていう感じです。それで……。
増田：プロット・ネームがあって。
西尾：で、ネームっていうのはいわゆる絵コンテ的な、コマ割りって言って、コマが割られていて。そこにセリフとか簡単な絵が入ってる感じの……なんて言うんでしょう？　ベースというか、仮のもの。それがネームっていうもので。
増田：デモビート、プリプロみたいな。
平林：うんうん。まさに。
西尾：そこから原稿へっていう。
増田：その変更が効くのはネームの時っていう感じなのかな？　そのストーリーの変化とか……そういうので変更が効くのはそこっていう感じ？
薄場：そうですね。自分の場合だとネームの段階でざっくりと、どういう風に進んで、どういうキャラの感情があって……とかはあるんですけど。原稿で表情とかを描いてると、話がちょっとだけ変わっちゃったりもするので。
増田：そこでも変わることがあるんすね。
薄場：作家さんによると思うんですけど。自分の場合は、そうですね。一番最後に変更が効くのは、単行本の校了の時です（笑）。
増田：それをこの間、飲んだ時にも聞いたんですけど。連載の時と、単行本の時って大きくは変わらないと思うんですけど。多少、描き込みが変わったりすることもあるらしいって。そういうのって俺、初めて知って。
平林：ギリで……本当にもう「泣きの」っていう感じで。「ちょっとここだけ変えさせてください」みたいな。その一番後ろって、どのぐらいまで間に合うんですか？
西尾：その原稿が載るっていうのが、連載の掲載のタイミングと。あと、最後に本当のギリギリのギリギリで修正できるのが単行本になるタイミング。連載の時はやっぱり校了日っていうのがあるんで。結構、なんていうんでしょう？　本当に、どれぐらいと言うのはムズいんですけども。基本的には締め切りがあって。単行本の時は、もう連載の原稿自体は上がってるんで。割と手直しが効くっていう言い方もあれですけど。で、そこで加筆されるとか、セリフが修正されるとか。っていうことは結構、よくあることですね。逆にページを足したりとか……実はもうちょっとここに演出がほしかったっていうところで、ページを足される作家さんとかもいたりとか。
平林：それはでも、ファンにとっては楽しいことですね。両方、報われるっていうか。「連載からずっと俺は見てるぜ」みたいな感じの。
増田：まさにそうやと思うんですよ。音楽でもね、ありますから。配信の方が締め切りというか……CDの方が締め切りが早かったりとかしたけども。最近はCDって、後で出すことが多いんですけど。昔はCDを先に出してたんで。CDで出したマスタリング音源がその時はいいと思っていたけど、配信で後で出す時に「ちょっとここだけ修正したい」とかは、少しやけど。そういうケースもあったりするんで。
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平林：あとは、ちょっと違うかもしれないですけど。時間が経ってリマスターしたいとか。アルバムのミックス……マスタリングの技術ってここ数年でめちゃめちゃ上がっていて。昔、出したやつを今の音で再現したりとか。そういうのとかも、漫画の世界でも、もしかしたらあるのかなって。
西尾：まさに同じ形で、重版がかかる、増刷がかかるタイミングでも一応、原稿の修正は可能で。
増田：だから初版本と価格が違ったりするんや。
西尾：変わったりすることもあるんですけども。基本的にはやっぱり初版のままの形が多いかもしれないですね。それこそ初版を出して、ちょっと誤字があったりとか。『スーパースター』の場合は本当に単行本で直す時が多いんですけど。ピアスとか、キャラクターのそれぞれを……。
薄場：描き忘れちゃったりとか。あとはリリーっていうキャラクターがいるんですけども。そのタトゥーを「ここは見えてるはずなのに、見えていない」とかがあったり。
平林：ピッコロの指が4本みたいなね（笑）。
増田：ああ、そんなん、あったや（笑）。
平林：あったんですよ。
増田：でも重版の時もそういう加筆・修正する可能性があるというのは初めて知りましたね。
平林：面白いな。めちゃくちゃ修正をしたくなる時、ないですか？
西尾：でも、幸いなことに薄場くんの場合はアナログ原稿。手描きの原稿なんで。つまり、原稿を修正する時にはいちいち、原画が必要になるんですよ。なので、連載もそうなんですけども。もらったら、もう本当に古風なやり方なんですけど。その原稿を取ったら、もう描けないよっていう。でもデジタル原稿の場合だと作家さんのもとにマスターがあるんで。本当になんぼでも直せたりとかするんですけど。薄場くんの場合は幸いにも、もうぶん取って。「もう無理です」って。で、直すには返して、直してもらってっていうような過程を踏みますね。
増田：ちなみに作家さんのトレンド的には、テクノロジー的にはアナログで紙に描くっていうスタイルは何%ぐらいというか。何割ぐらいのものなんですか？　トレンド的に。
西尾：いや、でも結構、媒体によるところとかが……。
増田：西尾さんが担当されてる方々とかは？
西尾：僕が担当しているのはちょっと特殊で。割とアナログ原稿の作家さんを担当することも多いので。
増田：『ひらやすみ』の？
西尾：そうですね。真造圭伍さんとかもアナログ原稿だったり。
増田：『ひらやすみ』っていう漫画がありまして。その漫画の担当もされていて。自分は西尾さんとか薄場くんに会う前に『ひらやすみ』を買って読んでいたんですよ。すごい好きで。めっちゃいいんですよ。平熱やけど、その中に生まれるその人の感情の機微みたいな。なんとも言えない雰囲気なんですけど。そこがだから、薄場くんと知り合った時に西尾さんが一緒だったっていうのも自分的にはシンパシーがすごいあって。
薄場：それ、すごい嬉しいですね。
増田：それ、最初に会った時に言ったかもしれない。「えっ！」って思って。
薄場：そうですね。
西尾：本当に真造さんも大好きで。薄場くんとは実はもう自分が新入社員の頃からの関係性で。
■『スーパースターを唄って。』薄場圭 
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番組情報
「SUMMITimes」 
放送日：毎月第2木曜日 21:00 ~ 22:00 
番組URL : <a href="https://block.fm/radio/SUMMITimes">https://block.fm/radio/SUMMITimes</a>
日本のヒップホップレーベル SUMMITが毎回テーマを変えてお送りする神出鬼没の番組。
written by みやーんZZ
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『スーパースターを唄って。』作者の薄場圭　連載漫画の原稿づくりを語る

増田 “takeyan” 岳哉

Ren “Reny” Hirabayashi

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SUMMITimes

漫画『スーパースターを唄って。』の作者・薄場圭さんがblock.fm『SUMMITimes』に出演。小学館にはじめて原稿を持ち込んだ際の模様について、小学館の担当編集・西尾さんとともに振り返っていました。
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増田：じゃあ、出会いのところを……。薄場くんって年齢とか言ったりはしている？
薄場：大丈夫です。今は25歳で。
平林：若いなー！　いいっすねー！　25歳。今年、26っていうことですか？
薄場：そうっすね。
平林：無限ですよ。26は。
増田：俺らはもう有限か？
平林：有限……（笑）。それは自分次第っす。人から見た無限みたいなのはめっちゃ感じますね。
増田：まあね。70歳、80歳まで生きるって思ったらね。25歳で。で、西尾さんと会ったのは何歳ぐらい？
薄場：19ぐらいで。
西尾：たぶん6年ぐらい前ですよね。
薄場：初めて描いた漫画から見ていただいてるので。
西尾：それこそたしか、自分も新入社員で。
増田：それは、持ち込みですか？
西尾：そうですね。小学館に電話がかかってきて。「持ち込みの電話です」っていうので。「じゃあ、受けるんで。この日に来てください」って。
増田：そんな、星の数ほどあるのに。やっぱりちゃんと読むものなんですか？
西尾：もちろん、もちろん。それで薄場くんに小学館に来てもらって。そこが「はじめまして」で。で、最初に持ってきてくださった原稿も、すごい自分的にはかなり好きで。絵柄の方向性だったりとか。そこで、もう名刺を渡して。「まずは漫画賞を目指して、一緒にやり取りを……ネームのやり取りをしましょう」ってスタートしたという。
増田：音楽だとデモ作りというか。
西尾：デモ作りですね。
平林：なんか、近いですね。THE OTOGIBANASHI'Sと増田さんみたいな。
増田：ああ、たしかに。BIMさん、18歳やったし。その時、「新人賞を狙う！」とか言ってなかったけど（笑）。たぶん自分が関わってもなにができるとかは名言できなくて。フワフワフワフワして。でも、そういう感じで知り合って。で、連載が始まった時は24歳？　25歳？
薄場：連載が決まったのが24ですね。
増田：だから5年間。それこそ、僕がさっき言った読み切りのこととか、その間にいろいろ入って。
薄場：そうですね。
平林：それまでの5年間って、プライベートでも遊んだり、お茶したりとかは？
西尾：一切ないですね。
増田：薄場さんが当時、まだ大阪に住まれていた感じですよね？
薄場：いや、18なんで東京に……。
増田：ああ、大学や。
薄場：そう。辞めちゃったんですけど、大学に行っていて。その時に……っていう感じでした。
平林：初めて漫画を描かれたのはいくつの時なんですか？
薄場：それが19歳の時でした。
平林：絵は描いていたけれども、漫画を描くみたいなことじゃなかったっていう？
薄場：そうですね。なんかざっくり漫画家になりたいとか、映画監督になりたいとか、小説家になりたいとかはあったんですけど。がっつりは描いてなかったですね。
平林：じゃあ昔、幼少の時から絵を描くのはすごい好きで、みたいな？
薄場：そうですね。そんなでもないかもしれないです。
平林：どっちかっていうと、活字のものを読んだりすることが多かったみたいな？
薄場：そうですね。授業中に端っこで何か、考えてるやついるじゃないですか。あれでした。授業中、ずっと落描きしてるやつっていうよりは……。
増田：ああ、あいつかー。
薄場：俺、あいつなんですよ（笑）。
増田：でも、俺も隅っこで描いていたかも（笑）。なるほどね。
平林：その、実際に狙い撃ちで電話したって感じだったんですか？　他のところとかも、電話したり？
薄場：そうですね。他のところにも連絡はしてたんですけど。スピリッツは好きでしたね。『ピンポン』が好きだったし。あと、なくなっちゃったんすけど「IKKI」っていう雑誌があって。それがものすごく好きだったのと。あと、他に好きな雑誌がジャンプぐらいだったんですけど。絶対ジャンプではないので。だからスピリッツか、スペリオールか、みたいな感じではありました。
平林：そういう思いみたいなところも一緒にお伝えした上で、みたいな？
薄場：その時はでも、そんなに言ってなかったですね。
西尾：そうですね。その時は特に……やっぱり、原稿を持ってきてもらうんで。それについての……「好きな漫画はなんですか？」とか、「今、何をしてるんですか？」っていう話はするんですけど。やっぱりそこまで、そんなに深く掘り下げてなかなか話せる感じでもなかったですかね。
薄場：俺からしたら、そのでっかいビルの中から出てきて……。
増田：いわゆる「大人」っていうことですよね。「自分の漫画の良さなんか、わかるわけないんじゃないか」みたいなところもあった？　ちょっとひねくれた感じとか。そういうのはあんまりなかったの？
薄場：ああ、そういうのはあんまりなかったかもしれないっすね。逆に「拾ってくれるんだ」ぐらいの気持ちではありました。本当に、今見てもめちゃくちゃ拙かったので。
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増田：薄場さんから見た西尾さんの第一印象はどんな感じだったんですか？
薄場：なんか「文系の頭がいい兄ちゃん」っていう感じで……。
西尾：そうだったんだ（笑）。
薄場：そうっす。西尾さんも若かったので。
西尾：僕も本当に新入社員だったんで23、4歳とか。
増田：じゃあ4つ違いぐらいで。
西尾：5個違いか。
薄場：こっちは19のクソガキだから。「勉強をいっぱいしてきたんだな」みたいな感じでしたね。
増田：西尾さんは印象的にはどうやったんですか？
西尾：やっぱり持ち込みの電話って、年齢もわからないし。声で「男性なんだろうな」っていうのはわかるんですけど。本当に、もう名前と電話番号しかわかんないみたいな感じなんで。「どんな人が来るんだろう？」っていう感じだったんすけど……「若い男の子が来た。やった！」みたいな。当時、スピリッツだったんですけど、スピリッツって青年誌なんで、結構持ち込みに来る方も20代、30代……本当に40代、50代の方とかもすごい多くて。やっぱりそのジャンプとかに比べると持ち込みの数もそこまで多くないんですよね。なんで、1年目が電話を取るっていう係で。それで電話を取って薄場くんが来て。で、漫画を見た時に本当に「担当したいな」っていうのをかなりストレートに思いました。
平林：へー！　めっちゃいい話ですね。
増田：でも、やっぱり若いっていうことがアドバンテージなんや。「若くて、この内容を描けるんだ」っていうことですよね？
西尾：そうですね。内容的な部分というよりも、やっぱり描きたいものがすごいあるんだろうなっていう。「まだこの漫画では表現しきれてないんだけど、すごい絵のこだわりとか、薄場くんしか描けない何かがきっとあるだろうな」って。
増田：たしかに。絵柄は独特ですよね。キャラクターはかわいいのに、タッチは劇画っていう。劇画調というか、描き込みが結構細かいじゃないですか。
西尾：だから、本当にいわゆる、言い方はあれですけど。「スピリッツっぽい」っていうか。自分が好きだった作品とかにすごい近いかも、みたいなのは思っていて。そういうのもあって。
増田：フィットするというか。
西尾：そうですね。
平林：ご自身もスピリッツを結構読まれていて、入社されたんですか？
西尾：そうですね。あんまり「漫画の編集になりたい」とかって、思ってなかったんですけど。本当に就活するタイミングで……っていう感じはあるんですけど。スピリッツは元々、すごい好きで。配属されるんだったらスピリッツがいいなっていうのは思ってました。読んでましたね。
平林：なるほど。じゃあ、共通の話題もありつつみたいな感じで。すごいな。
増田：漫画家さんのどういうところを見ますか？　やっぱり自分もそこは同じ目線な部分もあるかもしれない。
西尾：なるほど。自分の場合は、特に新人作家さんの持ち込みだったり、賞だったりも見ることが多いんですけど。その時に気にしてるのは、完成度は全く求めてなくて。もう本当に何かひとつでも、ほとばしるものというか。「これは絶対、譲れないんだ！」とか、「これが描きたくてしょうがないんだ！」みたいなのがひとつでもあればいいなっていう風に思っています。
増田：実は俺、これは前に聞いててん（笑）。先月も飲んだんで。だから自分もちょっとアホなふりをして聞いて。でも、そこは結構、自分も近いんですよね。うまさとか、整い方とかじゃなくて。なんか「俺はこれです！」的なのが好きなタイプではあるんで。
西尾：そうですね。でも、それには理由があって。（新人賞や持ち込みって）特に指定がないっていうか、何を描いてもいいものじゃないですか。
増田：そうですよね。何も背負わされてるものがない状態で描くからね。
西尾：そうです、そうです。だから本当にある種、本人のらしさというか。最初の原石みたいな原稿なんで。それがなにかひとつでも出てるっていうのが……自分はそう思っていたんですけど。これも自分が担当していた高橋のぼる先生っていう、『土竜の唄』の作家さん。生田斗真さん主演で映画化された作品の作家さんを当時、1年目から3年目まで担当していて。その時、高橋のぼる先生に言われたのが「新人さんの原稿を見る時に大事なのは、漫画ではない。西尾くんの目の前にある漫画じゃなくて、その人の目を見るんだよ。その人の目に何か宿るものがないか？っていうのを見るんだよ」って教えてもらったことがあって。それもたぶん近いのかなっていう。究極はそこなんだろうなって。その人が何を目指してるのか。何を見据えてるか。そういうのを見た方がいいよっていうのをアドバイスしてくださって。
増田：それはやっぱり、薄場くんからも感じて？
西尾：そうですね。
増田：あんまり自己アピールでいろいろしゃべるっていうタイプじゃないもんね。薄場くんは。
薄場：そうですね（笑）。
増田：でも、静かなんやけど、飲みに行ったらめっちゃしゃべるはしゃべるんですよ。
薄場：酒が入ったらしゃべれるので。
増田：テンションは別にそんな変わんないんですけど。しゃべるはしゃべるかな。
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（中略）
増田：でもさっき、西尾さんがおっしゃった先輩の漫画家さんに言われた「目を見るんだよ」っていうのに俺、ちょっと近いなと思ったのが、自分がアーティストさん。それこそ、言ったらまだ値段がついてない新人さんというか。そういう方の音源とかを聞いたりして「いいな」と思った時に、その方々に言ったりするのが、俺は言葉がちょっと汚いかもしれないけど。「その人の膿がどれぐらい出てるかな？」みたいな。なんか、そういう風にちょっと思うんですよ。
薄場：へー！
増田：やっぱり報われなかったこととか、自分1人でクリエイトしていく時に思う、いろんな……全体主義的な、社会とかもあるじゃないですか。その中での自分が少数派って思ったりするから、詩とか絵とかをやっていくと思うんで。その人目線でしか出てこない膿みたいなものがどれぐらい、表現できてるかなみたいなところとか。もしくは表現できてなくても、本人と会った時にそういう膿みたいなものがどれぐらい溜まっているのかな、っていうのは結構気にするというか。それが世間的にはネガティブに取られることもあるかもしれないけど。
それこそが、その人の目線というか。視座、視点というか。そういうもので世界を見てることが、同じような境遇だったり、違う世代でも同じように物事を見てる人からしたら、それが応援じゃないけど。すごい後押しされることにもなり得るもんやって自分は思ってるから。その人が10代とか20代とかまでにどういう膿の溜め方をしてきたのかな、みたいなのをすごい見るんですよ。だからそれはちょっと近いなって自分は思って。だから、その曲だけを聞いてこの曲がどうこうだけじゃなくて、その後ろにある感じみたいなのは結構、会って話す時に見る部分っていうのはめっちゃあるかなって。
西尾：ああ、でも本当にそうですね。
平林：まあ好みもありますけども。「重たっ！」みたいな感じの時もありますもんね。単純にその膿がちょっと……色みたいなところが。なんか変な話、そういうオリジナルな色してる膿なのか、そういう色に自分がしたい感じの膿になっているのか。
増田：ああ、なるほどね。キャラクターとか。
平林：いろいろあるじゃないですか。手段みたいなところもあるし。だから、そこらへんが結構、最初に聞いた時のインパクトで、より時間が経ってきて僕は何となく研ぎ澄まされてきてる感じはあるっていうか。自分で聞いた時の好みがすごい、昔よりも一聴した時のイメージと、その後に聞いていっても、持続して聞いていけるみたいなところが。
増田：強度みたいなことですかね。
平林：そうですね。それが繋がってきたっていう感じはしていて。そこらへんの塩梅が、日本のヒップホップは特によく感じるところというか。そういうのありますよね。
増田：なんか良くも悪くも……「悪くも」はないか。やっぱり、ヒップホップに限らずかもしれないけど。なんとなく、ヒップホップは特にその自分の考えとか生い立ちやったり、あとはアイデンティティというか、イデオロギーみたいな部分をやっぱり切り売りしていく部分っていうのがすごいあると思うんで。で、この『スーパースターを唄って。』を読んでいて、それをすごく感じるんで。
薄場：ありがとうございます。
増田：表現方法は音楽っていうツールを使って自己実現していく物語やと思うけど。なんか、人によってはそれが労働やったり、言ったら恋愛やったり。なんか、いろんなものに自分をかけて表現していくもんやと思うんで。
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