『スーパースターを唄って。』作者の薄場圭 連載漫画の原稿づくりを語る

この記事をシェア
漫画『スーパースターを唄って。』の作者・薄場圭さんがblock.fm『SUMMITimes』に出演。小学館の担当編集・西尾さんと連載漫画の原稿づくりの流れについて、SUMMIT増田さん、平林さんに話していました。
アーカイブ視聴はこちら。
平林:ちょっと、素朴な疑問で。どこまで聞いていいかわかんないですけど。連載が始まる時って、何話ぐらい描き終わっているものなんですか?
西尾:始まる時ですか?
平林:「1話が始まりますよ」っていう時に……要は2話、3話、4話とか、もう描かれているものが納品されてるもんなんですか?
西尾:結構ケースバイケースなんですけど。だいたい、どれぐらいですかね? 3話分ぐらい、ストックがあるのかな?
増田:ああ、週刊じゃなくて月刊だからか。
薄場:でも、そのストックっていうのもネームのストックで。
増田:作画はしていない?
薄場:だからネームだけある状態で。自分の場合は……。
増田:レンくん、ネームってわかるか? 知らんやろ? 俺はもう『まんが道』を読んでるから知ってるけど……(笑)。
薄場・西尾:フフフ(笑)。
平林:ちょっと、説明してください。
増田:説明しよう! でも、俺が説明するのも変やね。小学館の編集者さんがいるのに。
薄場:それはそうですね(笑)。
増田:どういう段階を経て、印刷まで行くのか、みたいな。
西尾:連載の漫画で言うと、打ち合わせをして、内容の話をして。
増田:その前に「初めまして」っていうのがまず、あるよね?
西尾:そうですね。名刺を渡したりとか。それで打ち合わせがあって。打ち合わせの後……これも作家さんによるんですけど。プロットに起こす方もいれば、ネームを描く方もいて。
増田:プロットっていうのは、テキストの?
西尾:そうですね。で、薄場くんの場合は打ち合わせを結構しっかりして。その後にネームっていう。
増田:それはもう、お二人でするんですか?
西尾:そうですね。基本的には2人で……でも今、実は自分がスピリッツの編集部から、スペリオールっていう編集部に異動になって。『スーパースターを唄って。』だけは後輩と一緒に……。
薄場:引き継ぎに今、時間がかかってるみたいな感じで。
西尾:そうですね。いろいろやらせてもらってるっていう感じです。それで……。
増田:プロット・ネームがあって。
西尾:で、ネームっていうのはいわゆる絵コンテ的な、コマ割りって言って、コマが割られていて。そこにセリフとか簡単な絵が入ってる感じの……なんて言うんでしょう? ベースというか、仮のもの。それがネームっていうもので。
増田:デモビート、プリプロみたいな。
平林:うんうん。まさに。
西尾:そこから原稿へっていう。
増田:その変更が効くのはネームの時っていう感じなのかな? そのストーリーの変化とか……そういうので変更が効くのはそこっていう感じ?
薄場:そうですね。自分の場合だとネームの段階でざっくりと、どういう風に進んで、どういうキャラの感情があって……とかはあるんですけど。原稿で表情とかを描いてると、話がちょっとだけ変わっちゃったりもするので。
増田:そこでも変わることがあるんすね。
薄場:作家さんによると思うんですけど。自分の場合は、そうですね。一番最後に変更が効くのは、単行本の校了の時です(笑)。
増田:それをこの間、飲んだ時にも聞いたんですけど。連載の時と、単行本の時って大きくは変わらないと思うんですけど。多少、描き込みが変わったりすることもあるらしいって。そういうのって俺、初めて知って。
平林:ギリで……本当にもう「泣きの」っていう感じで。「ちょっとここだけ変えさせてください」みたいな。その一番後ろって、どのぐらいまで間に合うんですか?
西尾:その原稿が載るっていうのが、連載の掲載のタイミングと。あと、最後に本当のギリギリのギリギリで修正できるのが単行本になるタイミング。連載の時はやっぱり校了日っていうのがあるんで。結構、なんていうんでしょう? 本当に、どれぐらいと言うのはムズいんですけども。基本的には締め切りがあって。単行本の時は、もう連載の原稿自体は上がってるんで。割と手直しが効くっていう言い方もあれですけど。で、そこで加筆されるとか、セリフが修正されるとか。っていうことは結構、よくあることですね。逆にページを足したりとか……実はもうちょっとここに演出がほしかったっていうところで、ページを足される作家さんとかもいたりとか。
平林:それはでも、ファンにとっては楽しいことですね。両方、報われるっていうか。「連載からずっと俺は見てるぜ」みたいな感じの。
増田:まさにそうやと思うんですよ。音楽でもね、ありますから。配信の方が締め切りというか……CDの方が締め切りが早かったりとかしたけども。最近はCDって、後で出すことが多いんですけど。昔はCDを先に出してたんで。CDで出したマスタリング音源がその時はいいと思っていたけど、配信で後で出す時に「ちょっとここだけ修正したい」とかは、少しやけど。そういうケースもあったりするんで。
平林:あとは、ちょっと違うかもしれないですけど。時間が経ってリマスターしたいとか。アルバムのミックス……マスタリングの技術ってここ数年でめちゃめちゃ上がっていて。昔、出したやつを今の音で再現したりとか。そういうのとかも、漫画の世界でも、もしかしたらあるのかなって。
西尾:まさに同じ形で、重版がかかる、増刷がかかるタイミングでも一応、原稿の修正は可能で。
増田:だから初版本と価格が違ったりするんや。
西尾:変わったりすることもあるんですけども。基本的にはやっぱり初版のままの形が多いかもしれないですね。それこそ初版を出して、ちょっと誤字があったりとか。『スーパースター』の場合は本当に単行本で直す時が多いんですけど。ピアスとか、キャラクターのそれぞれを……。
薄場:描き忘れちゃったりとか。あとはリリーっていうキャラクターがいるんですけども。そのタトゥーを「ここは見えてるはずなのに、見えていない」とかがあったり。
平林:ピッコロの指が4本みたいなね(笑)。
増田:ああ、そんなん、あったや(笑)。
平林:あったんですよ。
増田:でも重版の時もそういう加筆・修正する可能性があるというのは初めて知りましたね。
平林:面白いな。めちゃくちゃ修正をしたくなる時、ないですか?
西尾:でも、幸いなことに薄場くんの場合はアナログ原稿。手描きの原稿なんで。つまり、原稿を修正する時にはいちいち、原画が必要になるんですよ。なので、連載もそうなんですけども。もらったら、もう本当に古風なやり方なんですけど。その原稿を取ったら、もう描けないよっていう。でもデジタル原稿の場合だと作家さんのもとにマスターがあるんで。本当になんぼでも直せたりとかするんですけど。薄場くんの場合は幸いにも、もうぶん取って。「もう無理です」って。で、直すには返して、直してもらってっていうような過程を踏みますね。
増田:ちなみに作家さんのトレンド的には、テクノロジー的にはアナログで紙に描くっていうスタイルは何%ぐらいというか。何割ぐらいのものなんですか? トレンド的に。
西尾:いや、でも結構、媒体によるところとかが……。
増田:西尾さんが担当されてる方々とかは?
西尾:僕が担当しているのはちょっと特殊で。割とアナログ原稿の作家さんを担当することも多いので。
増田:『ひらやすみ』の?
西尾:そうですね。真造圭伍さんとかもアナログ原稿だったり。
増田:『ひらやすみ』っていう漫画がありまして。その漫画の担当もされていて。自分は西尾さんとか薄場くんに会う前に『ひらやすみ』を買って読んでいたんですよ。すごい好きで。めっちゃいいんですよ。平熱やけど、その中に生まれるその人の感情の機微みたいな。なんとも言えない雰囲気なんですけど。そこがだから、薄場くんと知り合った時に西尾さんが一緒だったっていうのも自分的にはシンパシーがすごいあって。
薄場:それ、すごい嬉しいですね。
増田:それ、最初に会った時に言ったかもしれない。「えっ!」って思って。
薄場:そうですね。
西尾:本当に真造さんも大好きで。薄場くんとは実はもう自分が新入社員の頃からの関係性で。
■『スーパースターを唄って。』薄場圭
ビッグコミックBROS.net:https://bigcomicbros.net/work/77857/
番組情報
「SUMMITimes」
放送日:毎月第2木曜日 21:00 ~ 22:00
番組URL : https://block.fm/radio/SUMMITimes
日本のヒップホップレーベル SUMMITが毎回テーマを変えてお送りする神出鬼没の番組。
written by みやーんZZ