アニメ『新星ギャルバース』のサウンドはこうして生まれた|大平彩華(監督)×☆Taku Takahashi(音楽)対談


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2025年6月25日、公式YouTubeチャンネルにて公開されたオリジナルアニメ『新星ギャルバース』は、従来のアニメ制作とはひと味違う、ファン参加型のプロジェクトとして注目されている。中心にいるのは、原作・総監督・キャラクター原案を務めるクリエイター・大平彩華。90〜00年代のノスタルジックなアニメ表現に、現代的な価値観をもってギャルカルチャーを再構築し、SFアニメ作品として昇華させた。

特徴的なのは、ストーリーだけではない。4,000人を超えるグローバルなファンコミュニティからの支援で制作資金を集め、制作過程はファンにも共有。惑星名や衣装デザイン、プロモーション施策に至るまで、コミュニティとともにアニメを作り上げる“参加型アニメ”として話題を呼んでいる。
そんな『新星ギャルバース』の世界を、音楽面から支えるのが☆Taku Takahashi(m-flo)だ。インディペンデントに立ち上がったこのプロジェクトが、どのように始まり、どんな想いで作られているのか。大平彩華と☆Taku Takahashiの対話から、その核心に迫る。

「宇宙×ギャル」という発想から始まった『新星ギャルバース』
ー『新星ギャルバース』というプロジェクトはどのように始まったのですか?
大平彩華(以下、彩華):このアニメは少しユニークな方法で始まりました。具体的には、アニメの資金をデジタルアートを販売する事によって調達したんです。このプロジェクトを立ち上げる際、ストーリーを考えているときに「ギャル」と「宇宙」というキーワードが浮かんできました。元々、私自身が10代のときに黒ギャルだったのと、私の作風も、これまでずっと“宇宙っぽい”アニメを作ってきたので、自然な流れで「宇宙とギャルでいこう」と決めました。それが3年くらい前なんですが、時代がギャルを求めてるような気もしたんです。音楽やファッションで少しずつ平成初期の文化がリバイバルしてきている流れもあったので、それで『ギャルバース』を立ち上げました。
☆Taku Takahashi(以下、☆Taku):なるほど。それで30分アニメを作ることになったんですね。
彩華:はい。今まではインディペンデントのフリーランスアニメーターとして、一人での仕事が長かったんですが、大きな規模でたくさんのスタッフさんと自分の作りたいアニメを作るのが夢だったので、その夢が今回叶いました。
☆Taku:通常は、アニメーターとして制作会社に入り、何年か経験を積んでから監督になるという流れが一般的ですが、いきなり監督になったんですね。
彩華:そうですね、異例の飛び級です。ただ、私のように美大も出ておらず、制作会社での経験もない“野生のアニメーター”が監督になるには、このくらいイレギュラーなことをして、常識を破っていかないと難しいと思います。今回は幸運なことにチームにも恵まれて、実現できました。もちろん最初は不安もありましたよ。私が監督を務めることで、スタッフの皆さんが本当についてきてくれるのか。
☆Taku:その部分、すごく気になったんですよ。最初に戸惑った部分もありましたか?
彩華:アニメ業界の専門用語すら全く知らない状態から、一つひとつ学びながら作品を作り上げました。周りのみなさんが監督にしてくれた部分も大きいと思います。関わってくれたみなさんには本当に感謝ですね。
メッセージを音楽で補強する。サウンドトラック制作の裏側
ーお二人の出会いや、『ギャルバース』に☆Takuさんが音楽で関わることになった経緯を教えてください。
☆Taku:彩華さんには以前、m-floのアニメーションを制作していただいて以来のご縁です。今回は彩華さんから『ギャルバース』の音楽のお誘いを受けて、「ぜひやりたいです」とすぐに返事しました。
ー楽曲制作はどのような流れで行ったのでしょうか?
☆Taku:アニメのサントラは何度か作った経験があるんですが、今回はすごくやりやすかったですねアフレコが終わり、動くコンテ映像(Vコン)が完成していたので、セリフやシーンにどう音楽を合わせていくかがイメージしやすかったんです。その中で、監督が伝えたいメッセージがどうすれば一番伝わるのかを考えて、彩華さんともディスカッションしながら作っていきました。
彩華:アニメのスタッフさんにも「これは豪華な作り方だよ」と言われました。通常は、絵コンテの段階、あるいはその前から楽曲を作り始めないと、制作スケジュールに間に合わないそうなんです。でも今回は、秒数なども決まった段階で☆Takuさんに送ることができたので、シーンにぴったりと合った音楽を作っていただけました。
☆Taku:このやり方が業界の普通になったら理想的ですね。

ーm-floでの音楽制作と劇伴の制作にはどういった違いがありますか?
☆Taku:サントラ制作では、監督やチームの皆さんが自信を持って世に出せる作品にするために、どんな音楽を作るべきかを考えます。そこがm-floのときとはだいぶ違いますね。サントラの場合は特に、“作品のストーリーがより伝わるための音楽”をゴールとして作ります。
ギャル=愛。“うちらが最強!”のマインドが支える世界観
ー『ギャルバース』はどういったテーマの作品ですか?
彩華:「ノスタルジック×フィーチャリスティック」、そして伝えたいテーマは“愛”です。
☆Taku:それも、いろいろな辛い思いや憎しみを超えた愛ですよね。本当に辛い状況の中でも愛が生まれることは可能なのか、ということを考えさせられる作品でした。「やっぱり、ギャルって愛だよね」という気持ちになります。
彩華:ギャルは愛ですね。他者への愛もそうですし、自己愛も。どんな時でも自分を愛して、他人も愛する。それがギャルなんじゃないかなと思います。
☆Taku:こうやって話していると、彩華さんが主人公のZEROに見える瞬間があります。ポジティブなところとか(笑)。
彩華:ありがとうございます。ZEROは自分で生み出したキャラクターなので、まるで自分の子どものように感じています。

☆Taku:自分でも似てるなと感じますか?
彩華:似てるというよりも、私の憧れが反映されているかもしれません。私よりも天真爛漫で、無鉄砲で、このくらいポジティブに生きたいなっていう気持ちが反映されているキャラクターだと思います。
ーそういった作品のストーリーやメッセージなどは、どのように彩華さんから☆Takuさんに伝えましたか?
彩華:最初はアフレコスタジオに来ていただいてミーティングしました。私はあまり音楽の知識がないので、イメージと文章、あとはリファレンスになる音楽を集めて、☆Takuさんに聴いてもらったんです。でもさすがベテラン、少しお伝えしただけで、すべてを理解してくださっていました。その時点で、☆Takuさんの中ではすでに音のイメージが完成していたように思います。
☆Taku:彩華さんやスタッフのみなさんと話したことで、すごく作品のイメージが入ってきましたし、セリフの入ったVコンのお陰で、よりわかりやすかったですね。彩華さんはギャルですが僕はオタクなので、絵コンテを見ると、作画が凝っているところとかがわかるんですよ。オタク的な視点からVコン(コンテ映像)を観て、そこからイメージを広げていきました。レファレンスについては、どのくらいそのレファレンスに近づけたいか、どのくらい離したいかということは丁寧に確認しましたね。彩華さんには「思い切って、レファレンスから離れてもらって大丈夫です」と言っていただきましたが、とはいえ、レファレンスがあるということは意図があるはずです。僕はその意図を一番大事にしたいと思っていて。でも、お互いの観てきたアニメがすごく近かったので、イメージは掴みやすかったですね。『攻殻機動隊』とか。
彩華:『機動警察パトレイバー』とか。
☆Taku:あとは、感情面の話をたくさんしてもらいました。このキャラはこのシーンでどう感じていて、アニメを観ている人たちはどう感じるのか、など。
彩華:☆Takuさんから聞かれて初めて、感情面を伝える大切さに気づきました。実際にアニメに音楽を当ててみると、あるのとないのとでは、感情の湧き上がり方がまったく違うんです。プレビューではスタッフも泣いてしまうくらいでした。改めて音楽の力ってすごいなと思いました。
感情を支える劇伴と、個性を引き出すED曲
ー『ギャルバース』のサウンドトラックは近年のアニメと比べても、独特な雰囲気があるように感じます。
彩華:未来的な要素を入れてほしいとお願いしたんですが、☆Takuさんの音楽自体、もともとそうした未来感が強いですよね。だから、絵は90年代風でノスタルジックなのに、楽曲が未来的で、今までになかったような雰囲気になったと思います。
☆Taku:音楽に新しさを感じるアニメといえば、例えば『カウボーイ・ビバップ』ではジャズが入っていたり、『エウレカセブン』ではテクノが入っていたりします。僕自身が手掛けたものとしては、『パンティ&ストッキングwithガーターベルト』でダンスミュージックを入れているんですが、今回の『ギャルバース』では、「はい、ダンスミュージック入れましたよ」といった露骨な感じにはしたくなかったんです。自分の経験やノウハウを入れつつも、普段ならオーケストラが使われるような場面を、どうやって電子音楽に置き換えられるかを意識して作りました。僕の中でもフレッシュに感じたいなと思っていたので、みなさんがそう言ってくれるのは嬉しいですね。
彩華:今回このアニメを作ったことで、劇伴の大切さをすごく痛感しました。今までは音楽よりもどちらかというと作画やカメラアングルなどに注目して映像作品を観るタイプだったので。☆Takuさんの中で、「この作品の劇伴はすごい!」みたいなものがあれば、ぜひ教えてほしいです。
☆Taku:極端な話ですが、音ってライティングと同じような役割だと思うんです。
彩華:ちょっとわかります。照明って一番大事ですよね。
☆Taku:そう、すごく大事。感情やメッセージを伝えるところとかは、照明ひとつでだいぶ違ってくる。それに加えて音が入ることで、また感情を変える。要するに、音楽だけじゃ映画は成り立たないし、照明だけで感情を動かすのも難しい。そういう意味で、音楽の使い方がすごく上手いなと思ったのは、TVドラマシリーズの『ミスター・ロボット』。ハッカーの話なんですが、電子音をかなり使っている作品で、僕も影響を受けてます。電子音ばっかり流れてると思ったら、すごく古い音楽をかけたりとかが上手いんですよね。

ー彩華さんが初めて☆Takuさんの楽曲を聴いた時の印象を教えてください。
彩華:イメージ通りというか、もうイメージ以上のものだったので、思わずニヤけてしまいました。音楽だけでもかっこいいですし、実際に映像に合わせて観るとさらに感情が乗るので、少しウルッときちゃいましたね。本当に心が動かされました。
ーEDテーマにはKAMIYAさんが参加していますが、どのような経緯でお願いすることになったのですか?
彩華:まずは、アニメ主題歌になかったようなテンションの歌モノを作りたいという考えがあって。ギャルといえばユーロビート、ですよね。でも普通のユーロビートでは面白くないと思って、「ネオユーロビートでお願いします」と☆Takuさんにお願いしました。
☆Taku:そこでリファレンスとしてもらったのがKAMIYAさんの音楽で、「それならKAMIYAさんにお願いしちゃいますか」ということで。すぐに電話してましたよね。
彩華:はい。次の日にはOKが出て、とんとん拍子に作っていただけました。めちゃめちゃお気に入りの曲で、本当に毎日のように聴いてます。
☆Taku:歌詞がすごくぶっ飛んでるんですよ。
彩華:ギャルですよね。これこそイメージしていたものでした。KAMIYAさんとミーティングしたときに、☆Takuさんが「歌詞を書くとき、アニメにあまり引っ張られなくていいよ」とおっしゃっていたんです。「アニメの世界観で曲を作っちゃうと身近に感じられないから、KAMIYAさんの等身大で作って」と。それで実際にできた曲が、リアルな女の子のギャルマインドを歌っている感じで、それが『ギャルバース』にハマっていて、すごく良いEDになったと思っています。
☆Taku:トップライン(歌の主旋律)はおかもとえみさんが作ってくれました。
彩華:こちらもすごいスピードでできましたよね。
☆Taku:そう、依頼した翌日に来た。えみそんは元々ギャルサーに入っていたくらいだから、それで1日でできたのかも(笑)。ユーロビートでパラパラ踊ってたらしいし、これはえみそんに頼めばバッチリかなと思ったら、まさかの翌日納品というスピード感でした。
彩華:すごい。じゃあもう血に刻まれてるんですね。最高のトップラインが来たので、すごく感動しました。
世界に“ギャルマインド”を届けるには?
ー日本のギャルカルチャーについて、海外の人にはあまり知られていないことだと思うんですが、そういった人たちにもわかるように、なにか意識したことはありますか?
彩華:海外の人がギャルカルチャーを知らないということ自体、あまり意識していなかったかもしれません(笑)。
☆Taku:作品を作るという行為自体が、自分が思っていることや自分の好きなことが相手にどうやったら伝わるか、ということを常に考えることだと思うので、だから無意識なんじゃないですか?
彩華:確かにそうかもしれません。改めて考えてみると、一番意識したのはギャルのマインドですね。“ギャル”のイメージって、ファッションが派手な女の子だと思うんですけど、彼女たちはそれを他人にモテたいからやってるわけじゃなくて、自分がしたくてやってるんですよね。「他人受け」よりも「自分受け」。そういう強いマインドは絶対に伝えたいと思って作っていました。「なんとかなるっしょ!」とか「うちらが最強!」みたいな。しかも“I”ではなく“We”、つまり“うちら”なんですよね。ギャルって。「みんなで最強になろうぜ!」という。そのマインドは、『ギャルバース』以前から私が表現してきたことなので、だから自然とそうなったのかもしれません。☆Takuさんは、音楽面で海外を意識したときに変わるようなことはありますか?
☆Taku:感情が伝わるというところは気をつけます。
彩華:劇伴以外でも一緒ですか?
☆Taku:目指すゴール自体は少し違いますが、「伝えたいことをどう伝えるか」が共通して大事だと思っています。肝心なのは「何を伝えたいか」。今回の劇伴に関していうと、僕はギャルとかをあまり意識してなくて。唯一ギャルを意識したのはKAMIYAさんとやった曲だけ。その中でも、“現代の”ギャルとはなにか、ということを考えました。あとは、『ギャルバース』は愛だというメッセージが強かったので、そこを伝えられるように意識してました。
常識を破り、ゼロから創る
☆Taku:アニメ大好きな人たちからすると、アニメ監督になるのはひとつの大きな夢だと思うんですよ。ましてや女性のアニメ監督がすごく少ない中、彩華さんの達成したことは、作り手側にもすごく希望を与えているんじゃないかなと思うんですよね。
彩華:むしろ私は、本来ならどういう流れで監督になるのかを知らないので。ひとつ言えるとしたら、私のようなインディペンデントなクリエイターは普通のやり方じゃダメだと思っています。常に常識を破って、新しいクリエーションの形を模索すること。今回のプロジェクトでいうと、自分で資金調達して、自分でディレクションして、自分の好きなアニメを作る。既存のやり方にとらわれないことだと思います。

☆Taku:もう、ZEROそのものですね、彩華さんは。
作品基本情報

作品タイトル
『新星ギャルバース』
現在アニメはGalverse公式YouTubeチャンネルで無料公開中です。
URL: https://www.youtube.com/watch?v=Ix6oxwuc-rw
あらすじ
かつて銀河は聖なる星”マザープラネット”によって調和が保たれていた。
しかし、マザーは謎の力によって大規模な爆発を起こし消滅してしまう。
銀河は争いの絶えない混沌とした世界に変わってしまった。
マザーの破片は銀河のさまざまな星に辿りつき思念体”ギャルバース"として新生した。
ギャルバースは再び銀河の平和を取り戻すべく、並外れた能力と持ち前のギャルマインドで悪の組織"宇宙終末協会"と戦いながら、この銀河の真実に迫っていく。
CAST
ZERO:堀江由衣
D.D.:ファイルーズあい
RING:田村睦心
我美明日香:三石琴乃
DEX: 大塚明夫
UVO: 関智一
爛々:大谷育江
LUCA: 田村ゆかり
UNO: 田中理恵
VEGA STARFALL:金元寿子
TABIA:中田クルミ
IZA:小林ゆう
M-Lezi: 能登麻美子
MOMO:Lynn
STAFF
原作 / 総監督:大平彩華
共同監督:高村雄太
脚本:高橋ナツコ 、大久保昌弘
キャラクターデザイン:石野聡
サブキャラクターデザイン:永山もも
プロップデザイン:ヒラタリョウ
美術:劉洋(小倉工房)
色彩設計:一瀬美代子
撮影監督:蔡伯崙(テラエフェクト)
編集:坪根健太郎
音響監督 :明田川仁
音楽プロデューサー:☆Taku Takahashi
音響効果:上野励
制作プロデュース:ARCH
制作:S.o.K
MUSIC
オープニング主題歌『Fall Mouth So Far 』
作詞・作曲・編曲:ermhoi
エンディング主題歌『KYOMEI VERSE♡』
プロデュース・編曲:☆Taku Takahashi
作詞・歌:KAMIYA
トップライン制作:おかもとえみ
『新星ギャルバース』サウンドトラック
配信:https://linkco.re/4dPsqmUR
★公式Webサイト、SNS★
公式HP:https://www.galverse.art/
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