韓国のヒップホップシーンに新風を吹き込む、Lil Cherryとは?グローバルな感性を持つラッパーの素顔


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大胆でユニーク、そしてどこかミステリアス──韓国のヒップホップシーンに突如現れたLil Cherryは、既存の枠に収まらないアーティストだ。自由な表現スタイルとグローバルな感性を武器に、国内外で注目を集めている。彼女の音楽性や背景について、☆Taku Takahashi(m-flo)が直撃インタビュー。Lil Cherryの魅力に迫る。
■Little Cherryという名前の由来は?
Little Cherry:最初は「Little Onesies(リトル・ワンジーズ)」という名前にするつもりだったんです。生涯ずっと「ワンジー(ゆったりとしたつなぎ服)」だけを着ようと思ってたんですよね。頭から足まで、全身コーディネートを揃えるのが大好きで。でも、ワンジーを買いに行ったら、衣装にできるほど十分な種類のワンジーが見つからなかったんですよ。それで「Little Onesies」は諦めました。
その名前を捨てた瞬間に、空から「Little Cherry」という名前が降ってきた感じがしました。兄のGOLDBUUDAと母と一緒にグアムを旅行していたときです。車に乗っているときに、いろいろな果物の名前を試したんです。「リトル・グレープフルーツ」とか「リトル・アップル」とか。でも「Little Cherry」がしっくりきて。それが5〜6年前のことですね。
https://youtu.be/hxO5_-R50Pg?si=CvNQgNVwpqGnJo-W
■どうやってラップのスキルを磨きましたか?
Little Cherry:難しい質問ですね、どうやって磨いたのか…。最初は大学でポエトリー・スラム(詩の朗読競技)から始めました。実際には、高校の時にポエトリー・スラムに出会ったんです。全員に課される必須課題だったんですよ。私が通っていたのはキリスト教系の高校で、生徒の多くがとても控えめでシャイな感じでした。そんな中で、ポエトリー・スラムを通じて自分の仲間を見つけることができたんです。すごく夢中になって、大学で専攻しようと決めました。それでも、大学3年生になるまでは、自分が音楽をやるなんて思ってもいなかったんですけど。
冬休みに実家に帰った時、兄が音楽プロデュースの仕事をしていて、「このビートに即興でラップしてみて」と言われました。そこで、学校で書いていた詩を取り出して、それにメロディを付けてみたんです。そのことが私のラップスキルを発展させるきっかけになりました。「音楽がない音楽」のようなもので、私にとっては、ポエトリー・スラムがすべての始まりだったと思っています。
☆Taku:詩を書くこととラップの歌詞を書くことには、共通点もありますが、全く違うところもありますよね?最初にやってみたときはどうだったんですか?
Little Cherry:そうですね。その時は、ただ自然に出てきた感じでした。メロディーが自然に浮かんできて、言葉がつながる感じ。普段の私は、どちらかというとシャイで控えめなタイプなので、詩を書くことやラップの歌詞を書くことが、自分を表現する方法でした。自分の内面的な思いや感情を伝えるための手段ですね。最初から自分の中にあったものだからこそ、一番自然にできることなんです。

■韓国のヒップホップシーンは今、盛り上がっていますか?
Little Cherry:才能ある韓国のアーティストやラッパーはたくさんいます。ただ、シーンが「盛り上がっている」かというと、正直言って、4、5年前と比べるとライブの数が少なくなっているように感じます。だから、みんなが「盛り上がっている」とは言いづらいですね。個人的な意見としては、もっとライブやフェスティバル、アーティストが活躍できる場が必要だと思います。
最近は独立して活動することが徐々にトレンドになってきている感じもしています。それは素晴らしいことだと思うけれど、同時に、みんなが自分自身の音楽を発信するプラットフォームを作る段階にあるということだとも思います。
数年前と比べると、今は「どんなチャンスを自分で作るか」が重要になっていて、「誰がチャンスを与えてくれるか」という時代ではなくなってきている気がします。 だから「盛り上がっている」と言うのは難しいですね。自分次第で今のシーンをどう感じるか、どう作るかによると思います。
■韓国のアーティストは海外での活躍が目立つと感じますか?
Little Cherry:そうですね。自分自身も今こうして日本に来ていますし。K-POPの影響力は世界中に広がっていて、間違いなく、グローバルからの「ラブコール」は増えていますね。ありがたいことだと思います。
☆Taku:あなたの出身はどちらかというとアンダーグラウンドでエッジの効いた場所ですよね?特に当時は多くの人がポップシーンを嫌っていましたが、あなたはもっと謙虚というか、彼らがやっていることをリスペクトしつつ、自分のスタイルを貫いているように見えるんですよね。それってすごくクールなことだと思います。
Little Cherry:自分は韓国のサブカルチャーを代表する存在だと思っていますが、同時にサブカルチャーとポップシーンをつなげる役割を常に意識しているんです。 例えば、K-POPアーティストのCLやB.Iとコラボしたりだとか。そういうコラボはかなり限定的な分野ですが、自分としてはその両方を行き来している感じがあります。
■日本のカルチャーで興味を持っていることはありますか?
Little Cherry:言語自体ですね。いわゆる典型的なフレーズ、例えば「かわいい」とか、そういうものしか知らないんですが、もっと知りたいです。歌詞には入れられないような表現とかも面白いかも。クールなスラングって何かありますか?
☆Taku:そうですね…、「ブチ上がり」とかどう?意味は、すごく盛り上がっている感じ。いわゆる「lit」と似てるけど、それに少し日本っぽいニュアンスを加えたような感じですね。
Little Cherry:面白いですね。 じゃあ次のシングルは「ブチ上がり」にしようかな。これはヒットしそう(笑)。
☆Taku:良さそう!その曲がヒットしたら、あなたのコンサートに無料で招待してくださいね。
Little Cherry:もちろんです!

■ステージでのハプニング、「やらかした!」と思うような瞬間を経験したことがありますか?
Little Cherry:いくつかあります。パッと思い浮かんだのは、息切れしちゃうことですね。私の曲はBPMがすごく速いので、2曲目や3曲目に入る頃には完全に息切れしてるんです。それで、写真を撮られるときに、鼻の穴が大きく開いてる瞬間をよく捉えられるんですよね(笑)。だから気をつけなきゃと思っています。
☆Taku:でも、それでもカッコいいですよ!
Little Cherry:ありがとう。でも自分の基準だと、「もう少し鼻の穴を小さくしなきゃ」って思うんですよね(笑)。 他には…ステージで歌詞を忘れるタイプじゃないので、それはあまりないです。あとは何があったかな…汗をかきすぎて、メイクが顔中に流れちゃって、ショーの前より可愛く見えなくなるとか、それくらいです(笑)。
☆Taku:ステージで転んだりしたことは?
Little Cherry:ないと思います。これからも転ばないように、ゲン担ぎしておきます(笑)。

■初めて好きになったアーティストは?
Little Cherry:Chae Yeonですね。「韓国のブリトニー・スピアーズ」と呼ばれている人です。私が中学生くらいのとき、2000年代初頭にすごく人気があったんです。自分が初めて夢中になったアーティストだと思います。
彼女は、韓国で初めてと言っていいくらい、自分らしさをはっきりと表現した女性アーティストの一人だと思います。言葉でうまく言えないんですが、彼女は自分の「性的な感覚」を受け入れて、それを表現する勇気を持っていたんです。それは、当時の韓国ではあまり許されていなかったので、すごく勇敢なことでした。それが今の自分にもつながっているんじゃないかと感じます。
■韓国語と英語、夢を見るときにはどちらの言葉ですか?
Little Cherry:どちらも話していると思います。ただ、韓国語で夢を見るようになったのはここ数年のことです。それまでは韓国語がそこまで自然に使えなかったんですが、今ではかなり慣れてきて、逆に英語では表現できないことが韓国語でしか言えなくなったりしています。
☆Taku:僕も日本語と英語を話しますが、その感覚はすごく分かります。言葉によって表現できることが違いますよね。普段は英語で考えるんですか?それとも韓国語?両方ですか?
Little Cherry:ほとんどの場合は英語で考えます。でも、怒ったときは韓国語です(笑)。
☆Taku:どうして?
Little Cherry:英語もかなり攻撃的になれるし、韓国語もそうですが、たぶん、私が音楽ビジネスを通じて韓国語を学んだからかも。英語だと、今ほどビジネスで自由に話せないかもしれないです。音楽業界ではイライラすることがたくさんあるから、それが韓国語で出てきちゃうのかな(笑)。

■自分のすべてを注ぎ込む気持ちを込めた新曲「FUEGO O NADA」
Little Cherry:タイトルの意味は「火」か「無」か、です。間はありません。私は中途半端なものは望んでおらず、すべてが「燃えている」か、全く何もないか、です。 それが今の私の生き方です。自分の全てを注ぎ込む時期にいて、それがこの曲のテーマにもつながっています。
☆Taku:以前からそういう考え方だったのですか?それとも最近変わったのでしょうか?
Little Cherry:そう言われてみると、最近変わったのかもしれません。今年から私は独立したんです。それが炎にさらに油を注いだというか、「全てを注ぐ」か「何もしない」か、という気持ちが強まったんだと思います。
☆Taku:「자린고비(ジャリンゴビ)」というフレーズについても聞かせてください。どういう意味で、なぜ歌詞に入れたのですか?
Little Cherry:これは「FUEGO O NADA」の韓国語タイトルなんです。一見すると「火」とは関係がないように思えますが、これは韓国の歴史に根付いた言葉です。昔、韓国ではとても質素な生活を強いられていた時期がありました。その時の象徴的な言葉で、「ただの白ご飯を食べながら、天井から吊るされた魚を見ているだけ」という状況を表しています。実際には食べられなくても、それを見てご飯を食べる。そういうゼロから始まる精神性を表しています。だから「FUEGO O NADA」は「ゼロから100へ」というテーマを持っているんです。
☆Taku:この曲について何か伝えたいことはありますか?
Little Cherry:この曲に参加してくれた全ての韓国アーティストやお兄さん(オッパ)たちに心から感謝しています。この曲は何年ぶりかの「アンセム」のようなトラックで、7分間の大作です。たくさんの愛と情熱を込めました。ぜひみんなに聴いてもらって、一緒に楽しんでもらえたら嬉しいです。夏っぽい雰囲気の曲なので、冬に少しでも熱を届けられたらいいなと思います。
■アーティストを目指す人にとって、注目を集めるためには何が必要だと思いますか?
Little Cherry:ありのままの自分でいることが一番だと思います。誰もあなたを真似することはできないし、あなたの持つ「色」を再現することもできないので。 簡単に言うよりも難しいことですが、自分の内面を掘り下げて、自分が誰であるかを知り、そのままの自分でいることが一番の答えだと思います。
☆Taku:つまり、近道はないんですね?
Little Cherry:ないですね。運が良い瞬間もあるかもしれませんが、本質的には近道なんてないと思います。

Photo:ARISAK
Hairmake:Juna Uehara
【Lil Cherry】
Instagram:@lilcherryontop
TikTok:@lilcherryontop

