「今や音楽は無料だと思われている」James Blakeが現在の音楽ストリーミングを主流とするビジネスモデルを批判

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James Blakeが現在の音楽ストリーミングを主流とするビジネスモデルについて、自身の考えをXに投稿した。
"世界中のアーティストに影響を与えていることについて話しているんだ"
James Blakeは、「TikTokでバイラルヒットしたFrank Oceanの『Godspeed』のカバー動画がプラットフォーム上では"オリジナルサウンド"として扱われていたため、1セントも稼げなかった」という投稿に反応した。
「Godspeed」はJames Blakeがアレンジを手がけた曲だ。また、James Blakeは2020年に同曲のカバーを正式なカバー音源としてリリースしている。にも関わらず、上述したカバー動画ではJames Blakeがクレジットされていなかったというわけだ。
そのような背景からJames Blakeは、「これはTikTokが音楽に与える幅広い影響について話し合うための投稿で、僕が使ったのは一例に過ぎない。この部分を見ただけでは、自己中心的のように見えるかもしれないが、僕は世界中のアーティストに影響を与えていることについて話しているんだ」と引用ポストした。
It’s worth noting this is just an example I used in a post talking about the wider effect of TikTok on music. Just seeing this part makes it seem navel gazing but I’m speaking on a thing that’s affecting artists all over the world. https://t.co/4pd2iRuNlB
— James Blake (@jamesblake) March 3, 2024
その後、James Blakeは別のツイートを投稿。
「良質な音楽を求めるなら、誰かが対価を支払わなければならない。音楽ストリーミングサービスは適切な報酬を払わないし、レーベルはこれまで以上に大きな分け前を欲しがり、ただ座ってバイラルヒットが生まれるのを待つだけ、TikTokは適切な報酬を払わない。それにほとんどのアーティストにとって、ツアーには法外な費用がかかるようになっている」
If we want quality music somebody is gonna have to pay for it. Streaming services don’t pay properly, labels want a bigger cut than ever and just sit and wait for you to go viral, TikTok doesn’t pay properly, and touring is getting prohibitively expensive for most artists.
— James Blake (@jamesblake) March 3, 2024
つまり、現在の音楽業界が、消費者が音楽を商品として評価しない風潮を作り出していると主張している。
「洗脳が功を奏し、今や人々は音楽を無料だと思っている」と投稿
また「洗脳が功を奏し、今や人々は音楽を無料だと思っている」と投稿した上で皮肉まじりに、一部のミュージシャンたちの間で危惧されているAI生成音楽の話題を絡めながら、現在の音楽ビジネスモデルに苦言を呈している。
「ちなみにそのビジネスモデルを活かすには、手っ取り早く制作できる合成音楽を毎週ストリーミングサービスでリリースするほうが安上がりなんだ。そしてそのビジネスモデルが、ミュージシャンに一切報酬を払わないAI生成音楽へとどのように君たちを向かわせているのか見てほしい」
The brainwashing worked and now people think music is free.
— James Blake (@jamesblake) March 3, 2024
And by the way, since it’s cheaper to produce fast, synthetic music to drop on streaming every week to capitalize on the strengths of the model, watch how the model is preparing you for AI generated music that pays musicians nothing at all.
— James Blake (@jamesblake) March 3, 2024
Instagramでは「業界はめちゃくちゃで、ミュージシャンは誰よりも大変な目に遭っている」と発言
Xでの投稿の後James Blakeは、InstagramでラッパーのFrench Montanaが自身のミックステープから6つの異なるバージョンをリリースしたことについて、「複数のバージョンがあることは素晴らしいことではない」と発言。また「TikTok/Instagram Reel」が音楽の核となるソングライティングやアレンジに与える影響も指摘した。
さらにTikTokのバイラルヒットを通じて曲を発見したファンは、投稿でフィーチャーされた曲の一部分しか知らないため、ライブでその曲が披露されたとしても、曲の残りの部分には反応をしないという現象についても言及している。
James Blakeは、SNSを使ってファンとのつながりを維持することや、音楽が彼の人生の目的であると宣言。「給料を払わずにアーティストを搾取するレーベルやテック企業によって、自分の目的が損なわれることはない」とし、最後には業界の現状とミュージシャンが直面している困難な状況についての見解を述べている。
「業界は混乱しており、ミュージシャンは非常に困難な状況にある。ストリーミングが主流となる前、不透明な取引が行われる前にこの業界に入れたことは幸運だった」
今回のJames Blakeの主張は、アーティストである彼の立場を考えるともっともな意見だと思う。しかし、最近のバイラルヒット曲がヒットするまでの経緯を分析した記事を見ていると、結局のところ、世の中には主流となっているものがあるということに気づく。そして、そういうものがある限り、そこをうまく"活用する方法"を考えるクリエイターはいる。
もし、それを良しとしないのであれば、ゼロからイチを創り出す"アーティスト"は、そういった風潮を刷新し得る、音楽の新しい価値を生み出すしかないのではないだろうか?、とも思う。どちらかといえば、筆者自身は前者のタイプだと思うので、何かを大きく変える力を持つアーティストマインドを持つ人が羨ましいと思う気持ちが強い。
James Blakeは、アンダーグラウンドなベースミュージックのサブジャンル、ポスト・ダブステップにシンガーソングライター的なアプローチを取り入れるという革新的な音楽性を打ち出したことで、ジャンル自体の発展に貢献。さらにアーティストとしても成功した。それだけに彼が問題視する昨今の風潮を払拭するような新しい音楽の価値を今後、生み出してくれることに期待したい。