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世界基準のアーティストが続々登場。古めかしいイメージなどぶっ飛ぶインド音楽の“今”を知ろう!

2022/11/10 17:30
Buffy Yoshikawa
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PHOTO: Sejal Kumar YouTube
全英語歌詞の楽曲、ラテンやヒップホップとのフュージョンなど、インドのZ世代によるハイクオリティな楽曲を紹介。

Text:バフィー吉川

「インド音楽」というとどんなものを想像するだろうか?古めかしい民謡やカレー屋のBGM的なものを想像する人も多いだろう。日本で民謡や演歌など古くからの音楽とともに、ロックやポップス、ヒップホップ、テクノなど多種多彩の音楽が存在しているのと同様に、インドにおいても古い民謡のようなジャンルはごくごく一部にすぎない。

なんの情報もなしに曲だけを聴いたら欧米のアーティストの曲と錯覚するような楽曲も多くなってきている。未だに女性蔑視や宗教観念が強い保守的な地域がありながらも、LGBTQやジェンダーについての意識が高まり、他国の文化に対してオープンになっている中で、インド国内でも新たなアーティストが続々と生まれてきているのだ。

▼1995年生まれ、YouTuber/ブロガーとしても多くのフォロワーを抱えるアーティスト、セジャル・クマールによる「runaway」
https://www.youtube.com/watch?v=g5m9GhZy8yw

デジタル化とクラブブームがもたらした大きな音楽性の変化

インドで世界基準のアーティストが生まれている背景として考えられる要因のひとつに、インド国内のデジタル化が挙げられる。インドもデジタル化に伴って誰もがスマホやタブレットを持つ時代となり、気軽に世界中のコンテンツへアクセスできる時代になった。例えば、南インド・ケーララ州最奥のジャングルにある村を舞台にした映画『ジャッリカットゥ 牛の怒り』(2019)の中でもスマホを使用するシーンがあったり、2025年までには光ファイバー回線が田舎の地方にまで行きわたるとされている。

そういったインターネットやスマホの普及により、インド国外の音楽を聴く人も増加。インドのiTunesランキングを見ても、アメリカやイギリス、韓国などのヒット曲がランクインするようになっている。
インドTOP100
※2022年11月9日のApple Music「トップ100:インド」のチャート。全英、全米1位を獲得したサム・スミス「Unholy」や、リリースされたばかりのドレイク&21サヴェージによるアルバム楽曲もTOP10内にランクインしている。

同時に、デジタル化に伴いSNS等で幅広い価値観に触れたり、どこにいても自分の考えや作品を発信、共有できる時代になったことも重要なポイントだろう。マイノリティ同士で考えが共有できるようになったことで、保守的な意見に左右されず、自分のリベラルな意見を堂々と主張できる場面も増加。実際にYouTubeに投稿した「歌ってみた」動画がバズったことで、音楽業界の関係者から発掘されたアーティストも少なくないし、フェミニズムやLGBTQに対して自分の意見を発信する活動家も増えている。

また音楽業界においては、2000年代のインド都心部においてクラブブーム(インドではあえて“ディスコ”とまだ呼んでいる)が起こった。その影響かインドにおけるポップソングは、例えばジェニファー・ロペスやシャキーラ、ビヨンセ、ピットブルなど当時世界中のクラブでかかっていたヒット曲の要素を感じることも多い。また、そういったアーティストの作品を聴いて育った若い世代は、伝統的なインド音楽よりも海外要素の強い音楽を好む傾向にあるようだ。

▼双子の姉妹であるスークリティ・カッカーとプーラクリティ・カッカーによる「Sudhar Ja」。プーラクリティはホイットニー・ヒューストンやビヨンセといったUSのR&Bシンガーから影響を受けていると発言。また彼女らはデュア・リパ「Levitating」のRemixでデュアと共演している。

さらに近年はネットを通して常に最新のリリース楽曲に触れられることもあって、オリヴィア・ロドリゴやカミラ・カベロなど若手アーティストからの影響も強くなっている。冒頭の動画のセジャル・クマールが典型的な例だ。

英語の壁はすでに崩壊している

インドという国は、貧富の差または地域によって若干違いはあるものの、英語教育に積極的である。ヒンディー語はもちろん、タミル、テルグ、カンナダなど常用されている言語だけでも20以上ある多言語国家において、同じインド人であっても会話ができない状態もあり得ることから、共通語として英語がスムーズに取り入れられた背景もあり、そこまで英語への抵抗がない。

今の30、40代はそんな英語教育に悪戦苦闘してきた世代であり、英語の中に訛りが強くみられる場合もあるが、それより下の世代は小さい頃から英語で育ってきた者も多く、逆に母国語の方が使う機会がないし、何なら使うことが恥ずかしいと思っている若い世代もいるほど、ネイティブのように英語を使いこなす者も少なくない。

英語を抵抗なく使う環境とデジタル化によって、日常的に世界ヒットの音楽に触れるなど欧米のカルチャーが身近になり、欧米アーティストに近い、もしくは同等のクオリティの楽曲がインドアーティストから生み出されるようになっていったのだ。

インド音楽は新たな次元へ

双子デュオ、カッカー姉妹やジョニタ・ガンディといった若手アーティストの中には、ヒンディー語と英語、タミル語と英語のように、言語と音楽性をフュージョンさせた楽曲も多いが、それより更に若いアーティストになってくるともはや英語のみの作品も多く、iTunesなどで配信されていてもインドの歌手だと聴き分けることが困難な状態となっている。

例えば上記でも少し触れたセジャル・クマールの場合、YouTuberでインフルエンサー、さらには女優としても活躍している典型的なZ世代。そんな彼女も世界市場に曲を配信する場合は“セジャル”とだけ名乗っているように、ガンディやクマール、カプールなどのインド的な名前をあえて隠して、先入観が入らないようにしているアーティストも多い。

そもそもインドという国の音楽や映画、エンタメ全般のルーツに外国文化が強く影響している。これをパクりだと言う人も多いかもしれないが実はそうではなくて、例えば日本のアニメ発展におけるルーツとしても知られる漫画家・手塚治虫の着想元がディズニーや海外SFだったり、2000年代の『冬のソナタ』や『天国の階段』といった韓国ドラマのルーツが日本の80年代から90年代の王道的トレンディドラマにあるように、どこの国も他国の文化やエンタメに影響され、吸収し、独自のものに変換してきたからこそ今があるのだ。

そしてそれは現在進行形である。これからもどんどん実力のあるアーティストが現れてくるに違いない。2023年には中国の人口を越えて世界一となるとされているインドの中から、圧倒的母数のアーティストと楽曲が世界に放たれる時代もそれほど遠い話ではない。

これから世界的に活躍しそうなインドの逸材アーティストたち

Saachi

もともと歌手を目指していた彼女だが、学生時代にバークレー音楽大学に留学した経験が音楽性に大きな変化をもたらした。インディーズとして活躍していながらも、その才能を認められ、シャギーやザ・ヴァンプスといった国際的アーティストの前座を務めることもあった。

Amazonプライムビデオで配信のインドドラマ『Four More Shots Please!』(日本未配信)に挿入歌「Falling In Love With My Body」「Show You Who I Am」「Back Together」などのアーティストとして抜擢。Saachiは、もはやインド色を全く感じさせないR&Bやポップなサウンドで、今すぐにでも世界で通用するアーティストだ。

ニキタ・ガンディ

ニキタ・ガンディは、インド映画のプレイバックシンガー(インド映画やドラマの歌唱シーンの吹替えをするアーティストのこと)としても活躍しながら、インド国内でも幅広い言語・ジャンルを歌い上げるインドのトップアーティスト。先日開催されたインド音楽の祭典“Mirchi Music Awards 2022”でもゲストパフォーマーとして参加するなど、その活躍は世界も注目している。

カナダの女優兼歌手であるCARYSが2019年にリリースし人気を博した楽曲「Princesses Don’t Cry」を本人とコラボ&カヴァーした新バージョンもリリースされ、こちらも話題を集めている。

もともとはしっとりとしたバラードを中心に歌っていたニキタだが、2018年ごろから積極的に海外音楽やダンスミュージックの要素を取り入れるようになった。デュア・リパの「One Kiss」のカヴァーや、インドの人気俳優タイガー・シュロフ主演映画『シャウト・アウト』の劇中曲「Dus Bahane 2.0」のカヴァー、また積極的にコラボなども行っている。

ニキータ

2021年9月にリリースした「FAREWELL」のミュージック・ビデオでは、植物と自分自身を融合させたビジュアルでも目を惹いたニキータ。それもそのはず、彼女はロサンゼルスで近代アートを学んでおり、ビジュアルとサウンドをどちらも手掛けるアーティストだからこそ表現できる世界なのだ。

インディーズ・レーベルからデビューしていることもあって、インドでもまだそれほど知名度が高くはないが、確かな美的センスとキャッチーな曲の数々は一流アーティストの風格が漂い、メジャーデビューも遠くないように感じられる。

ポップとR&Bを南アジアのサウンドスケープと組み合わせたものとして、ニキータは自身の音楽を「Goddess Pop」と呼んでいる。ルーツやとインド古典音楽の繋がりから脱却するのではなく、そこにロサンゼルスで学んだ海外の音楽要素を融合させたことで、唯一無二のアーティストが誕生した。

アナーニャ・ビルラ

インディアン・ポップの若手歌手として忘れてはいけないのがアナーニャ・ビルラ。人気ラッパーのIKKAとコラボした新曲「Beymaniyaan」も今年の5月にリリースされた。

2020 東京オリンピックでは、インドの応援ソングとして、A・R・ラフマーンとのコラボ曲「Hindustani Way」を発表。他にも今年の3月にリリースされたDisney+HOTSTARオリジナルドラマ『Rudra』(日本未配信)の主題歌「Inaam」が話題となった。2019年にリリースした「Day Goes By」では、ショーン・キングストンとコラボするなど、 世界中のアーティストがコラボを望むほど注目をあびるグローバル歌手でもある。

アナーニャの父親はインドでは知らない人はいないほどの有名人。インドのコングロマリット企業のトップに君臨するアディティア・ビルラ・グループの会長で有名な億万長者クマール・マンガラム・ビルラの娘であることから超セレブ。さらにアナーニャ自身もオックスフォード大学を卒業するなど、華麗なる一族の系譜を受け継ぎながら、音楽の才能も持ち合わせているという最強のアーティストなのだ。

このようにインドにはいつ世界的に活躍してもおかしくない、もしくはすでに活躍している逸材が大渋滞状態だ。しかし現状、日本にはほとんど情報が入ってきていないという悲しい現状もある。

紹介したアーティストや楽曲はiTunesやSpotifyなどでも簡単に聴くことができるので、ぜひ一度インドの新しい世代による音楽にも触れてみてもらいたい。必ず新たな発見ができるはずだ。

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