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インドの女性ラッパーが急増中!MTVのラップバトル番組や映画業界がヒップホップシーンに与えた影響を考察

2023/02/09 18:00
Buffy Yoshikawa
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PHOTO: MTV HUSTLE
数年前にはほとんどいなかったインドの女性ラッパーの存在感が急速に増している。その背景にあるMTVや映画業界のムーブメント、注目の女性ラッパーを紹介。

Text:バフィー吉川

第92回アカデミー賞において国際長編映画賞のインド代表にも選出されたゾーヤー・アクタル監督作『ガリーボーイ』(2019)は、スラム街で育った青年がラッパーとして目覚めていく物語で、実在するアーティスト、ディヴィンとネイジーの体験がベースとして描かれている。

同作がインド国内だけに限らず世界的に注目を集めたことで、アンダーグラウンドな世界だったインドのヒップホップ文化が表舞台に出るきっかけになったが、実はそれまでもインド国内でヒップホップムーブメントは何度か起きていた。

北インドのボリウッド(ヒンディー語映画)や南インドのコリウッド(タミル語映画)では、2000年後半から2010年代にかけて、ミュージカルシーンに現代的要素を加えるためにヒップホップやラテン、テクノなどの多様な音楽ジャンルが積極的に取り入れられるようになっており、サウンドとしてのヒップホップムーブメントはすでにこの頃から始まっていたのだ。

インド映画音楽におけるヒップホップムーブメントがラップ業界に火を付けた!

そうしてインドでは、ヒップホップ専門ではないアーティストがヒップホップ調の曲を歌うことも多くなり、結果的にいつの間にかヒップホップ色の強いアーティストになるという逆パターンが多く発生。ジョティカ・タングリやZ世代のインドアーティスト特集でも紹介したニキタ・ガンディなどもそのパターンに当てはまると言える。

■世界基準のアーティストが続々登場。古めかしいイメージなどぶっ飛ぶインド音楽の“今”を知ろう!

そういった特殊なかたちでインド国内でもヒップホップアーティストが多く誕生したのだが、その中でも女性ラッパーはメジャーシーンにおいてほとんど現れなかった。唯一、ハードコアというアーティストがいたが、映画音楽に参加する際にラップを披露することはほとんどなかったのだ。

そもそもの大きな理由として、それまではインド映画音楽においてラップパートが入るような曲はほとんど使用されていなかった。しかしヒップホップ調の音楽を急に取り入れ始めたものだから、海外で活躍するインド系の女性ラッパーを連れてくる必要が出てきたのだ。そこで大きな功績を遺したのが、もともとアメリカのR&Bシンガー兼ラッパーとして活躍していたラジャ・クマリだ。

例えばラップパートのあるサルマン・カーン主演映画『レース3』(2018)の作中曲「Allah Duhai Hai」のラップパートは、アメリカを中心に活躍していたラジャ・クマリが書いており、それをニキタ・ガンディが歌うというスタイルをとっている。『ZERO』(2018)の「Husn Parcham」では、ラジャ本人がプレイバックシンガー(歌唱シーンにおいて俳優の吹替えをするアーティスト)としても参加しているが、どちらもがっつりしたラップパートがあるというわけではないため、それだけニッチな需要であったことがわかる。

また、宗教や生活環境によっても左右されるとはいえ、インドにおいて女性の立場は多くの場合が男性至上主義の目線から見られていたこともあり、女性が自己主張をする、ましてスラングを多用するなどという行為が一般的に認められない風潮にあったことも、女性ラッパーがインド国内に不在だった理由のひとつだ。女性がラップをしようものなら、家族や親せきから猛反発されることは言うまでもなかった。

そんな中でラジャ・クマリは『ガリーボーイ』の中でもラップバトルの審査員のひとつとしてカメオ出演している他、MTVインドのラップバトル・リアリティ番組「ハッスル」の初代審査員としても参加しており、インド国内においてもヒップホップ界に貢献した人物とされている。

ラジャ・クマリの存在やMTVの「ハッスル」、『ガリーボーイ』のヒット、そして北南インド映画がヒップホップを取り入れ始めたことなど、様々な要素が重なったことで、2018年頃には一気にヒップホップという音楽ジャンルが表舞台に飛び出したのだ。

そこにデジタル化、ジェンダーレス化の波も加わったことで、都市部はもちろん、地方からもSNSやYouTubeなどを通じてメッセージを伝えようという女性ラッパーが次々と誕生していった。

ベストタイミングというべきか、『ガリーボーイ』のラップバトルシーンに本人役で登場したDeeMCが、そんなムーブメントを体現したかのような女性ラッパーでもあり、特にラップに興味をもったZ世代にとってはかなり大きな存在だ。その証拠に現在放送中の「ハッスル」シーズン2からは審査員として参加している。

さらにそんな「ハッスル」では、現在もQKやKhanZaabi、StarNickといった多くの女性ラッパーが注目を集めはじめている。

中でも圧倒的な存在感を放っているのがスラシュティ・タワデだ。スラシュティは、2021年に出場したタレント発掘番組「スポットライト」で優勝したのちに「ハッスル」に出演し、ニュースで取り上げられるなど、インド国内で今一番注目される女性ラッパーと言えるだろう。

インド映画にも本格的なラップソングが採用され始めている

スラシュティ・タワデは、インドの動画配信サービスZee5のオリジナル映画『Blurr』の主題歌「Nishaana」に抜擢されたことでも話題になっているが、実はここ数年で、インド映画業界においてもラップ需要の在り方が大きく変化した。

歌と踊りが主体ではなくなってきたことで、歌がBGM処理されることやオープニングとエンディングだけに挿入される他国と同じようなスタイルの作品が多くなってきた。音楽レーベルが製作にがっつり入った劇場公開用の商業的映画もそういったスタンスなのだから、曲を使って大きくプロモーションをかけない配信系作品は特に音楽を主体とする必要がかなり薄くなってきている。

『Blurr』の場合もスリラー映画であることから、世界観を表現する主題歌としてラップソングが取り入れられたわけだが、もともと東インドのベンガル語映画の場合のように、そもそも歌と踊りよりも社会派やミステリー、ホラー作品の割合の方が多いインドの映画業界もあって、そこでもラップソングが採用され始めている。

東インドの西ベンガル州を中心に1月20日から公開中のベンガル語映画『Doctor Bakshi』の主題歌には、東インドやバングラデシュのベンガル語圏で活躍する女性ラッパーのKDivaが採用されるなど、東西南北インドがヒップホップに注目しており、その中で女性ラッパーたちも活躍の場を見出していっている真っ最中といったところだ。

女性ラッパーが次々と誕生している動きは、インド国内だけに限らず、スリランカやパキスタンなど南アジア全般において活発化している。

例えばスリランカのYouTuberから歌手デビューを果たしたヨハニは、小柄でまだ幼さが残るビジュアルを逆に活かしたギャップのあるラップソングが多くの人の目を惹き、ボリウッドに見いだされ『Shiddat』の主題歌アーティストとして採用されたことがきっかけで、『Thanks God』(2022)の「Manike」や『An Action Hero』(2022)の「Jehda Nasha」など、インド国内で若手プレイバックシンガーとして注目を集めている。

残念ながらボリウッドではその透き通った歌声から、ラップソングではなくポップソングやバラードを歌うシンガーという立ち位置にいるヨハニではあるが、知名度を増してくれば、今後ラップソングが採用されることも遠い未来ではないはずだ。

注目のインド女性ラッパー

KDiva

Mrunal Shankar

KQ

KhanZaadi

Starnick

インド国内で活躍する女性ラッパーを紹介してきたが、プリヤ・ラグーやバンビ・ベインズのように、活動拠点はヨーロッパであってもインドの伝統的なサウンドを取り込んだアーティストとして活躍するインド系の女性ラッパーもいたりと、インド系女性ラッパーは世界中でその存在感をますます強めているのだ!

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