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『ソニックフロンティア』の電脳空間を駆け巡るドラムンベース。 サウンドディレクター・大谷智哉に訊く制作の裏側

2023/12/18 19:30
みやーんZZ
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ゲーム『ソニックフロンティア』内のステージ「電脳空間」で流れる印象的なドラムンベースについてフォーカス。サウンドディレクター大谷氏とドラムンベースとの出会いから、サウンドトラックの制作の裏側まで話を訊く。

2022年11月に発売されたゲーム『ソニックフロンティア』。本作のメインテーマ「I’m Here」に代表されるようなロックやポスト・ハードコアの音楽だけでなく、ドラムンベースやジャングルなど疾走感溢れるエレクトロニック・ミュージックが耳に残ったユーザーも多いのではないだろうか。

これらのエレクトロニック・ミュージックは主に「電脳空間」と呼ばれるステージで流れるのだが、ソニックの走りを聴覚からも拡張させるようなサントラが国内外のファンを中心に高い評価を得ている。

今回、『ソニックフロンティア』の無料大型アップデート第3弾「超・完全決戦」の配信と、アップデートコンテンツ用に制作されたリミックスなどを収録したサウンドトラックのエキスパンション版発売のタイミングで、block.fmで放送中の番組「immersiv」に『ソニックフロンティア』サウンドディレクターの大谷智哉氏がゲスト出演。ドラムンベースDJでゲーマーのJesterと、ドラムンベースDJ/ゲームのサウンドデザイナーとしても働くSarina Tokihiraが、「電脳空間」で流れるドラムンベース楽曲を中心に、その制作の裏側について話を聞いた。
immersiv
ラジオのアーカイブ視聴はこちら。
■immersiv 番組ページ:https://block.fm/radio/immersiv

***

ミクスチャーロックを入り口に、多ジャンルを深掘りした学生時代

Jester:まずは、大谷さんとドラムンベースとの出会いについて聞かせてください。

大谷:僕は学生の頃ミクスチャーロックバンドをやっていたんですが、ミクスチャーロックはファンク、ロック、ラップ、パンクなどいろんなジャンルの要素が混ざっているので、バンドをきっかけにそれぞれのジャンルのルーツを探求するようになっていったんです。それと同時にクラブにも遊びに行くようになり、ヒップホップ、ハウス、テクノにも興味を持つようになりました。

当時、バンドのオリジナル曲のデモを作るために機材を買い揃えて宅録みたいなことをしていたんですが、ハウスやヒップホップに興味を持つにつれ、打ち込みのトラックメイキングのほうに興味が出てきてしまって。その後、ヒップホップのビートは、バンドきっかけで深掘りしていたファンクやレア・グルーヴのドラムのブレイクをサンプリングして作られているんだということを知ったんですね。

それからはブレイクビーツがどんどん面白くなってきて、のめり込んでいきました。その頃はレゲエも好きだったんですが、CD屋さんに行ったらレゲエのコンピレーションコーナーの並びにジャングルのコンピが置いてあったんですね。それで初めてジャングルを聴いて「なんだ、このビートは?」と衝撃を受けて。ブレイクビーツにハマっていたので、ジャングルのビートがすごく新鮮で面白いものに感じて、ただ、どうやって作っているかが全く分からなかったんです。

Jester:その時すでに「これはどうやって作っているんだろう?」という視点だったんですね。

大谷:そうですね。その頃はもうとにかく打ち込みでビートを作るのに夢中で。今みたいにネットに作り方動画があるような時代でもないので、自分でずっと試行錯誤していました。ある時、レア・グルーヴの有名なドラムのブレイクをサンプリングして、サンプラーでエディットしたり、刻んで組み替えたりしていたら、たまたま操作をミスったのか早回しをして、ちょっと音が変わって聞こえたんですよね。それがジャングルとかドラムンベースで聞いているビートだということにハッと気づいて。「あっ、こんな単純な……」って。“単純”と言ったら語弊があるかもしれないんですが。

Jester:でも、仕組みとしては単純ですよね。

大谷:そう。その頃、ブレイクビーツはどう作られているかという視点でまず参考にしていたのがスクエアプッシャーで。入り口としてそれはどうなのかという感じではあるんですけど(笑)。ダンスミュージックというよりブレイクビーツ芸術、もうアートですよね。それが面白くて。それで自分でも、サンプラーの誤操作で早回しになったときに「同じ音になった」という気がしたんです。

それから徐々にブレイクビーツだけに固執しなくなり、ロニ・サイズとか、音楽として踊りやすいものを聴くようになって、ドラムンベースを探求し始めました。サンプリングミュージックにもハマっていたので、コラージュ的に、リズムトラック以外にもいろんなサンプルを組み合わせながら音楽ができていくという点も新鮮でしたね。

その後、2010年代に入って歌モノのドラムンベースを聴くようになりました。特にすごく好みを変えたというわけではなかったんですが、自然とこういう音が気持ち良いなと感じるようになったんですよね。アンセム感がある、みんなで盛り上がりやすい楽曲。EDM全盛期の少し前なので、よりわかりやすい作りの楽曲というか。この路線はしばらく続いていて、今の『ソニックフロンティア』に繋がっていきます。

Jester:僕のイベントにはゲーム好きの人がたくさん来てくれるんですが、こういったアンセム感のある楽曲をかけると盛り上がるんですよ。おそらくその人たちがこの曲自体を知っているわけではないんですが。

Sarina:きっとゲームやどこかで聞いたことがあるんですよね。

Jester:そうだと思います。僕、前作の『ソニックフォース』をプレイした時に、「これはちゃんと今のシーンのドラムンベースを聴いている人のお仕事だ」と感じて。女性ボーカルやキーの感じ、後ろのピアノの鳴り方なんかも、「ダニー・バードを知っている人が作っているんじゃないか?」って(笑)。

大谷:バレましたね(笑)。例えばこの「Aqua Road」がリキッドファンク的な感じになっているのは、水が流れるステージだったので。それだけのわかりやすいキーワードなんです。あとは透明感のある上モノや女性ボーカルでも、水の雰囲気を表現しています。

Sarina:実際に曲を作られる際は、ステージの雰囲気を見てから制作に入るんですか?

大谷:そうですね。ステージの背景や、どういう場所なのか、そういう情報も汲み取りながら音楽に昇華していきます。ステージのコンセプトが最優先です。

ひとつのコンセプトを元に、クリエイターそれぞれが自由に生み出した「電脳空間」の楽曲

Jester:『ソニックフロンティア』の楽曲「Cyber Space 1-2: Flowing」はブックレットにも「Aqua Road」の流れを汲んで作ったということが書かれていましたね。

大谷:『ソニックフロンティア』の中にある、コースクリア型のアクションゲームを遊ぶ電脳空間の音楽は、エレクトリックミュージックをコンセプトに作っています。ソニックは基本的にハイスピードアクションゲームなので、エレクトリックミュージックの中でもより疾走感のあるビートといえば、当然ドラムンベースになってくるんですよね。

大谷:本編には全30ステージあったんですが、制作初期の頃は「電脳空間といえばこういう感じ」という、柱になるような曲をいくつか作りました。それで最初にできたのがこの「Flowing」。ゲームが発売される少し前にこの曲が公開されてから、オランダの〈Liquicity〉というリキッドファンク/ドラムンベースのレーベルオーナーから、突然Facebookでメッセージが届いたんです。「『ソニックフロンティア』の曲を聴いたんだけど、『Flowing』は僕らが好きだった2010年代のドラムンベースの感じがある。僕ら、こういう曲を今でも探していたんだよ!」って。

僕は最初、英語の文面を読んでいて「つまり『古い』ってことなのかな??」と勘違いしたのですが、実はすごくポジティブな意味だったんですよね。この電脳空間は、ゲームの中で過去のアーカイブが全て記録されている場所という設定なんです。そのコンセプトを頭の片隅に置きながら作っていたので、どこかノスタルジーな雰囲気がドラムンベースのトラックを作る上でも自然と入っていたのかもしれません。ゲーム全体の音楽のコンセプトが“ミステリアス”、“物悲しさ”というものもあるので、それも相まって、ノスタルジックな10年代のドラムンベースの雰囲気、と受け止められたのかな。面白い展開だなと思いましたね。

Jester:〈Liquicity〉はオランダのレコードレーベルで、毎日数千人が参加するドラムンベースの大型フェスも主催しているんですが、そのオーナーから大谷さんに連絡があったという、すごい話ですね。

大谷:「自分たちのYouTubeチャンネルでもこの曲を紹介したい」と言ってくれて、動画も作ってくれたんです。その道の本職というか、ドラムンベースをずっと聴き続けてきた人からお墨付きをいただけるとは思わなかったので、驚きました。動画で使われている絵は、〈Liquicity〉側がオリジナルで起こしてくれたものです。

Jester:続いて「Cyber Space 2-5: Déjà vu」という曲について、ブックレットには大谷さんのコメントで「90年代ハウスを彷彿とさせる雰囲気のドラムンベース」とありますが、僕らからすると、このオルガンベースにめちゃくちゃ馴染みがあって…。

Sarina:Nu:Logic、Nu:Tone!

Jester:そう。〈Hospital Records〉というドラムンベースレーベル所属のアーティストが作った「Everlasting Days」という楽曲が、まさにこのオルガンベースを使った楽曲なんです。

Jester:「Déjà vu」はNu:Logic、Nu:Toneっぽさを感じつつも、ソニックの音楽としてちゃんとマイナーチェンジされていることにすごく感動したんですよ。

大谷:そうなんですね。僕はハウスのフォーマットみたいなものをドラムンベースに置き換えて…、という感じでアプローチしていったんですよね。

Jester:「Cyber Space 3-5: BMB」はセガの音ゲー『maimai でらっくす』シリーズのサウンドリーダーである相馬琳太郎さんが手がけた楽曲ですね。

大谷:先程お話したように、電脳空間の楽曲はコンセプトと共に、柱になる楽曲を最初にいくつか作っていて。「みんなだったら、ここからどう膨らませる?」という感じでメンバーに下ろしていったんです。相馬くんは、ドラムンベースの曲からBPM160ぐらいにしてジュークっぽいアプローチはどうか?というのが彼からの提案でした。ドラムンベースからどう膨らませるかと考えたときの回答として、すごくいいなと思いましたね。

Jester:これに関しては、ジャンルの聴き込みがすごいなと思ったんです。男性ボイスのサンプリングの入れ方とか、チキチキしたハイハットや、中盤に入っている「カチャッ、バーン!」というコッキングガンショットの音。そういった音の入れ方に関してもすごく聴き込んでいるんだなと。ジューク/フットワークってすごくディグが難しいジャンルだと思うんですが、Bandcampとかで個人のリリースを聴き漁っている人の作り方だなと感じたんですよね。

Sarina:〈TEKLIFE〉(※編集部注:ジューク/フットワークのジャンルを築いたレーベル)からリリースされていそうな雰囲気ですね。

Jester:そして同じく相馬さんが手掛けた楽曲「Cyber Space 4-3: Rumble Rave」、この曲も大好きなんですが。ブックレットには「レイヴ、ブレイクコア、近代ネット音楽のバイブスを強火で煮込んで完成!何ですか、この曲は。」とあります(笑)。

大谷:M1ピアノの音色を使ったところなんか、僕もすごく好きですね。こうやって振り返ると、『ソニックフロンティア』の電脳空間の音楽はすごく自由に作っているんですよ。『ソニックフォース』では水の流れるステージだからリキッド系の…というお話をしたんですが、『ソニックフロンティア』の電脳空間の音楽は「このステージはこういう背景だから」という一対一のキーワードを一切取り入れてないんです。つまり、コンピレーションアルバムを作るかのように、一つのテーマを元にそれぞれが曲を作った。他のチームメンバーの曲を聴きながら「じゃあ、僕はこういうバリエーションにしようかな」という風に考えながら作ったので、制作自体が楽しかったですね。なかなかこういう作り方をすることもないので。

チーム内の相互作用とユーザーの声から生まれる、膨大な楽曲の数々

Jester:『ソニックフロンティア』のアップデートコンテンツ「超・完全決戦」の配信に続いて、アップデートコンテンツ用に新たに制作された楽曲やリミックスを収録したエキスパンション サウンドトラックがリリースされました。本編だけでも全150曲ある上で、さらに40曲も追加楽曲を制作されるのは本当にすごいことですよね。

大谷:『ソニックフロンティア』のアップデートコンテンツには電脳空間のステージも新たに入り、そのレベルデザインも変わるので、音楽の方もリミックスすることになったんですね。ただ、セルフリミックスでは面白くないかなと思って、他の人が作った曲をリミックスするというコンセプトで割り振っていきました。例えば僕がリミックスした「Cyber Space 4-E: Dropaholic Remix」の原曲は本編の方でもかなり人気のある曲で、しかも僕としては後輩の曲なので下手なことはできないというか。ちょっと頑張らないと、って(笑)。「あの原曲からこうアプローチするか」と感じていただけるようなリミックスにできたかなと思います。


Sarina:実際にリミックスされる際は、原曲を作った本人にも聴いてもらうんですか?

大谷:はい、ある程度聞ける形になったら、みんなに共有しますね。この曲も原曲を作った本人に聴いてもらって。ダブステップっぽい要素に関しては僕よりも彼らの方が強いので、ちょっと意見を聞いたりしながら完成させました。

Jester:ちなみに、リミックスする曲はどのように選びましたか?

大谷:曲を選んだというよりも、どのステージがアップデートコンテンツに実装されるかが先に決まりました。ステージが決まった後、そのステージで使われている曲をリミックスするという流れですね。もし、「曲から選んでいいよ」と言われたら選曲も変わったかもしれません。

Jester:今後また別の機会に、今回選曲されなかった曲のリミックス盤が出たら嬉しいですね!

大谷:またさらに?(笑)。検討します(笑)。

Sarina:期待してます! ちなみに、今回の本編のサントラとリミックス盤で特に気に入っている曲はありますか?

大谷:「Cyber Space 2-4: Hype Street」という曲ですね。僕が最初に電脳空間の軸となる楽曲を作りつつも、若いチームメンバーが上げてくる曲に僕自身が影響を受けた部分もすごくありました。先程話に出たジュークの「BMB」もそうなんですが、BPMが160くらいの曲を僕は1曲も作っていなかったので、「160ぐらいだったら僕はこういう曲を作ろうかな?」と思って作った曲がこの「Hype Street」。電脳空間の音楽チーム内でのやり取りから生まれたアプローチです。彼らの参加がなかったら、僕もそういう発想はなかったかもしれないし。そういった背景があって気に入っています。

Jester:『Paths Revisited』収録の「Hype Street」リミックスは相馬さんによるものですよね。

大谷:はい。リミックスって往々にしてアッパーな方向に行かせるためにBPMは上げていくと思うんですが、これはBPMを下げてリミックスしてきたという。BPMを下げて、違うグルーヴにしてくるのはいいアプローチだなと思いましたね。

Sarina:ガレージハウスチックな感じになっていますね。

大谷:ちゃんとグルーヴを作れないとBPMを下げるという判断にはならない。盛り下がっているように聞こえるわけにはいかないじゃないですか。だからそこはニクいなと思いましたね。

Jester:もう一曲原曲とリミックスを聴き比べてみたいんですが。「Ephemeral」、この曲も大谷さんの楽曲ですね。シンプルなベースラインの疾走感と、この浮遊感のある感じ。すごくシンプルながら、説得力があるドラムンベースだなと感じました。

Jester:そしてリミックスを手掛けたのがこちらも相馬さん。スピードガラージというジャンルですね。

Sarina:きれいなリミックスで聴き入っちゃいますね。

Jester:「超・完全決戦」に入っているコースで聴けるんですが、コースの難易度がめちゃめちゃ高くなっていて。クリアできないうちはずっとこの曲を聴いていられるので、僕としては嬉しいんですけど(笑)。

大谷:作曲する上でその点が難しいんですよ。難易度が高い遊びに対して、曲がシンプルに気持ち良い方がいいのか、ちょっと曲も難解というか、凝ったアプローチがいいのか。どちらも正解な側面もあると思うんですが、いまだに悩みます。

Jester:そういった部分ではユーザーの反応を見て判断することもあるんですか?

大谷:そうですね。本編をリリースした後、国内外のファンがSNS上で電脳空間の曲だったらどの曲が好きかをランク付けされていて、僕らもそれを恐る恐るチェックしていました。面白いことに同じ回答って全然ないんですよね。そういったファンの声をクリエイター全員で確認した上で、リミックスを作りました。追加コンテンツの曲ということで、本編の楽曲を作って出して終わりではなく、リリースからの期間でリサーチができたのも面白かったですね。

ゲームを通して新しい楽曲に出会う

Jester:今日は主にドラムンベースの楽曲を中心にお話を聞いてきたんですが、『ソニックフロンティア』の楽曲も、そのジャンルについて深掘りした上でさらにゲームに合わせてマイナーチェンジされているということが改めてよくわかりました。音楽のおかげでゲーム体験はさらに楽しくなるし、その楽曲がクラブのフロア映えもするクオリティーだというのが本当にすごいなと。クラブシーンのドラムンベースだけを追っていたら拾いきれない楽曲と、ゲームを通して出会えるって素晴らしいことだと思います。

大谷:そう言っていただけて嬉しいです。僕もダンスミュージック全般、今回であればドラムンベースとか、そういう音楽の様式は大好きなんですが、その様式を完成させることばかりに注力していると、それはそれでつまらなくなってしまう。ひとつ作品の中で、様式/コンセプトを形にするフェーズと、そこからどんどん逸脱していくフェーズ、その両方が重要だということを再認識しました。

【ソニックフロンティア】
ソニックフロンティア
公式サイト : https://sonic.sega.jp/SonicFrontiers

【Sonic Frontiers Original Soundtrack Stillness & Motion】
ソニックフロンティア
音楽配信サイトリンク:https://lnk.to/sonicfrontiers_j

【Sonic Frontiers Expansion Soundtrack Paths Revisited】
ソニックフロンティア
音楽配信サイトリンク:https://segajp.lnk.to/sonicfrontiers_ex_j

【レーベル公式サイト】
http://www.wave-master.com/

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