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ハンドメイド楽器開発者 早雲健悟インタビュー「マニアックすぎる要望、誰も出来ねえ」からFORMA VUメーターを完成させた「企画倒れ」しないモノづくりとは

2018/02/19 03:00
admin
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日本人DJやアーティストが愛用する完全オリジナルVUメーター『FORMA』、デザインから開発、そして販売までに至る制作秘話に迫る

みなさん、「VUメーター」って知ってますか?

楽器雑誌やアーティストのスタジオ写真、DJブースのどこかで見たことあるようで、実はなかなか見ることのない機材。そんなVUメーターの開発に命をかける、とまではいかないけれど、物凄く情熱を注いだ1人の楽器開発者が東京にいます。

元Vestax社員で、現在はDJ機材やレコードの通信販売を行う専門店『OTAI RECORD』が運営する音楽スクール『OTAIRECORD MUSIC SCHOOL』で校長を務める早雲健悟(ハヤクモケンゴ)さん。

早雲さんが作ったVUメーター。それは、彼が立ち上げたアーティストの要望を製品化するオーディオブランド”HAYAKUMO”の第一弾プロダクトとしてデザインから開発、そして販売までを早雲さんが全て手がけた、その名も『FORMA』。

実はVUメーターの開発は、block.fmとも所縁のある「あの人」のアドバイスでこのプロジェクトがスタートしたんです。今回は同じくOTAIRECORD MUSIC SCHOOLで講師を務め、早雲さんと同世代でもあるDJのMidori Aoyamaが開発秘話に迫りました。

こんなマニアックで無茶な要望を聞いて機材作るやついないよ、、、

▷ 改めて『FORMA』の発売おめでとうございます!いきなりですが、そもそもVUメーターって何ですか?

早雲:まず皆さんが日頃DJミキサーでよく目にするピカピカ光るデジタルのメーターは「PPM(ピークプログラムメーター)」というもので、入出力される音楽の信号の最大値を常に追って素早く表示しています。それに対してVUメーターというのはアナログの針の動きによって数値を表示するので、PPMほどは入力音に対し素早く反応出来ないんですよね。

しかし、僕たち人間は意外と鈍感で、「聴感上の音量」を把握するのはPPMよりVUメーターの方が近いんですね。つまり、クラブやイベントスペースの現場でPPMだけ見てしまうと、実はフロアや楽曲に対する音量感を上手くコントロール出来なかったりという事があるので、VUメーターを見てボリュームなどをコントロールしていくという事は、クラブの運営や音楽スタジオの現場では大事な要素なんです。

▷ VUメーターを作ろうって思ったキッカケは何ですか?

早雲:何というか誰の話で。事の発端はCOLDFEETのWatusiさんから「こんなのがあったらいいなぁ~」なんていう話がありまして…。

▷ え、、、その一言だけ?

早雲:2012年に某クラブでイベントがあった時、共通の知り合いを通して紹介してもらいました。僕は当時Vestaxという音楽機器のメーカーで働いていて、Watusiさんが愛用していたVestaxのエフェクターのラックマウントケースを探しているという相談から始まったんです。結局そのケースは見つからなかったんですが、その後も色々話すようになって。翌年の2013年に「OTAI RECORD」代表のようすけさんと名古屋でミーティングしていた時、またWatusiさんと再会して、それ以降も仲良くさせてもらってたんですが、2016年にOTAI RECORDの新年会で初めてVUメーターの話になったんです。

僕は機材の話をするのが好きなので、Watusiさんとも必ずと言っていいほど機器にまつわる色んな話をしていました。そこで、急にWatusiさんが新しいVUメーターで、コストもリーズナブルかつパフォーマンスがいいVUメーターを探していると言われて。

普通は6万円以上の相場なので、なかなか市場に出回っていない。こんなマニアックで無茶な要望を聞いて機材作るやついないよな、、、と思いながらも心の中で「いつか自分が作ろう」と密かに決意していました。

▷ 密かに決意してたんですか!?でもVUメーターって、普通簡単に作れなくないですか…?

早雲:Watusiさんがすごく困っていたのは何度か話して耳にしていたし、Watusiさんがどの人に相談をしても「その価格でできるわけがない」とか、「そんなもの作ってもたくさん売れるわけがない」と言われていたそうなんですね。

その時、自分の立場的にもある程度自由になんでもできる時期だったので、「これは自分がやるしかないな」という使命感に駆られたというか。

とはいえ、資金もないし、ゼロからのスタートだったんで、決断してから最初の試作品ができるまで結構時間かかりましたね。

▷ VUメーターをこれから作ろうと思ってる人のために、開発で苦労した部分を教えてください。

早雲:VUメーター自体の設計ってそんなに難しくないんですよ。ただそれ故にすごく難しい。限られたマーケットサイズの中で、数あるハイエンド機材よりも、個性が光って使い勝手が良くコストパフォーマンスの良いものを作らなければならないという事には頭を悩ませました。

開発を始めるにあたって、ハンドメイドの一点物みたいなものは作りたくなかったんです。

安い汎用品の筐体の中にメーターを押し込んで、良いメーター使ってます!みたいなものは、今回の意図にそぐわないと思いました。

コストについては、あくまで部品単価ではなく量産体制でコストを落とす事を念頭に置き、それでいてデザイン的に新しく、性能も今現場に求められているモノに忠実である事を意識して開発に取り組みました。とは言え、サンプルの開発については、プロダクトの羅針盤であるWatusiさんには秘密にしておきたかったんですよ。

▷ どうして秘密にしてたんですか?

早雲:一言で言えば、Watusiさんと僕の『FORMA』に対する熱量を上げたかったからです。飲みの席の話って、大体次の日に忘れるじゃないですか。でもそれを誰かが覚えてて、且つ形にして本当に目の前に登場したら嬉しいだろうなと。

そうする事で僕の本気感が伝わるだろうし、Watusiさんもより熱くなって頂いて、更に製品を良くする為のアドバイスを頂けると確信しての事です。

なので、サンプルの仕様に関してはWatusiさんと新年会で話した時の会話だけをヒントに作りました。お陰で最終品は一次サンプルとはほぼ別の製品になりましたが(笑)。

でも、ものづくりだけでなくどんな仕事は、結局人と人のやり取りで成り立っているものじゃないですか。その中で、如何に感動や驚きを演出しながらゴールまで突き進んでいくかというのは大事だと思います。完成した時の想いが変わりますし、それがセールスにも影響しますからね。自分の中で想像を膨らまして作りました。

それに、最初から規格を決めたり、コストや予算、売れる見込みを想定して作ってしまうと、リスクやネガティブなことばかりを考えすぎて、良いものが作れない、企画倒れになるということもあります。なので自分の中で「まずとにかく作ってみる」という気持ちで取り掛かってみることが大事だと思ったんです。

▷ その想いで試作機が完成したんですね。

早雲:出来上がった試作機をWatusiさんに持って行きました。もちろん内緒にしてたのもあってメチャクチャ喜んでくれたんですが、もちろん全てが彼の希望に沿っていたわけでもなく、まだまだ改善すべき点は多かったです。

▷ 現在の『FORMA』が完成するまでは、どんなところに気を使ってきたんですか?

早雲:Watusiさんは本来プロのスタジオにしか使われないようなVUメーターを、自宅のスタジオや楽曲制作を始めたばかりの人にも使って欲しいという想いがあったので、オーディオインターフェースとスピーカーの間にメーターを挟んでも音が変わらないような音質のこだわりや、多くの人に使ってもらうために高いクオリティを保ちながら、コストにもこだわるという課題もありました。

特にTHROUGH OUTの音質の部分では、何度も何度もWatusiさんのスタジオで実験を繰り返して試行錯誤して、やっと納得のいく音質へ持っていくまで本当に苦労しました。またサイドのウッドパネルはアカシアの無垢材を使っているのですが、無垢材なので同じ色や柄のものがないんですね。よって左右のパネルの色合いや柄を合わせるのはかなり苦労しましたが、これがFORMAの個性を際立たせるために必要でした。

Watusiによる「FORMAの使い方」

 

そのほかにもVUメーターの必要性などを説いた動画などがいくつかコチラのYoutubeページにもアップされています。要チェック。

https://www.youtube.com/channel/UC14g38K4EF0gd5by7p4CvNw

音に関してアクションできるものは全て「楽器」だと思っている

▷ 苦労が実って完成した『FORMA』ですが、具体的に他のVUメーターとの違いは何なんでしょうか?

早雲:まずはこのコンパクトなサイズです。今は 自宅スタジオで作業する人が増えていると思うので、それに合わせたコンパクトな設計にしています。またメーターが取り付けられているパネルの角度も15度ほど傾ける事で、目線と同じ高さに置く必要がなくなり、設置できる場所の自由度も広がります。また、センターにLEDのPPMも付いているので、DJ用途でも使い易いです。あとはインプットのレベルも2段階切り替えられるようになっているので、キャリブレーションと合わせればほとんどの現場に対応出来ます。

▷ 機能もさることながら値段もリーズナブルですよね?

早雲:Watusiさんとの新年会のやりとりに戻りますが、ご本人から「より多くの人へVUメーターの重要性を広めるために、絶対に3万円を切って欲しい!」という希望があったので、その価格帯に納めることも必須条件だったんです。

但しこれは粗悪なパーツを使用して達成するのではなく、あくまで量産する前提で部材仕入れ、流通と合わせ調整を重ねた結果なので、モノとしてはMade In Japanのハイクオリティを保っています。

とは言いつつも、正直いうと普通のメーカーや企業では、この価格では売れないですね(笑) 。通常であればこの倍くらいの値段はするので。僕みたいな個人活動の立ち位置からこそ実現したという実感はありますね。

そもそも量産体制を組みながらも、「VUメーター」というアナログなものを作って本当に売れるのか?という気持ちはありました。ですがプロジェクトに関わった皆さんの熱量が物凄くて、日本だけでなく海外にまで熱量が届き、ヨーロッパやアメリカからも注文が来ている事は非常に嬉しいです。

▷ 世の中的にも「アナログ回帰」のムーブメントがありますよね?レコードブームやアナログ機材で楽曲を制作する流れがまた戻ってきている気がします。そういう意味でDIY精神を持ってアナログスタイルなVUメーターを作り、さらに自分の手で販売するのは今の時代に沿っているかも?と思いました。

早雲:そういう流れはありますよね。音楽も機材も、デジタルとアナログが両者の弱みを補い合うハイブリッドな時代だと思いますし、思考としてもそういう意識を持たなければいけないと思います。

今の時代だと、大企業だけでなく中小企業も「モノづくり」する時、大掛かりなマーケティングありきで考えますよね?でもそれってある種の企業病で、本当に「モノづくり」の本質なのかな…という違和感を感じる事はあります。

何か大事な事を置き忘れて進化していっているような。デジタル的な数値や意見の解析などは必要ですが、データには表れないアナログ的な要素、その人自体の特性や感性を意識していく事も重要だと思います。

会議室でパソコンと睨め合い、あぁでもない、こうでもないと考えるよりも、クラブやスタジオで出会ったアーティストやDJからリアルな意見や熱を受けることで意外と簡単に解決しちゃうこともたくさんあります。そこを起源にプロジェクトがスタートしても良し。

会社内のプレゼンで「この商品何個売れる?」と聞かれて「確実に10個売れます!!!」なんてこと言ったら、普通は上司に相手にされない。ハナシにならないですよね?でも僕は「5,000個売れる予想です」という言葉より「確実に10個売れる」と言い切る方が難しいけれど、重要だと思います。

その10という数字には誰かの顔があって、10人いたら性格も環境も違うのに、それでも確実に売れる。一番大事なのは、どういう人がどういう人の意見を聞き、どういう結論に至ったのか、という個の特性と発想の分析をする事だと思います。

▷ そこまでのモノづくりの意識とVUメーターがつながった理由は何だったんでしょう?

早雲:もちろん、Watusiさんの提案があったから。というのもあるんですが(笑) 。そもそも、VUメーターって正直言って絶対なければいけないものでもないし、無理にお金をかけてリデザインする必要も正直ないと思うんです。でも音に関してなにかしらアクションできるものは全て「楽器」であると思っている意識が僕の中では大きいからだと思います。

例えばDJミキサーは、昔は音を通すだけの「ミキサー」だったけれど、それこそ今では楽器のように様々な音を奏でることができますよね。だから、機能性やデザインを追求し続けることで元々あった概念を壊すことができる。

この『FORMA』も少しでもVUメーターを楽器として考えてもらえるキッカケにしたいなと思って。スタジオや自宅に常に置きたくなるようようにサイズやデザインにもこだわりました。

▷ 早雲さんが何か得たものはありますか?

早雲:色々ありますが、、、。まずはソフトではなくハードとして存在する”モノ”の価値を改めて感じましたね。

一度オランダのお客さんへFORMAを発送したのですが、その人が非常に喜んでくれて、わざわざ日本まで僕を訪ねて来てくれたんです。たかだか一つの機材ですが、それをきっかけに交流が始まるというのもロマンがあってエモいもんだなと(笑)。

ハードは良くも悪くも売った後は簡単にアップデート出来ませんし、故障する事もありますが、それ故にユーザーとのコミュニケーションが大事ですから。

音楽でも、別にデータで簡単に買えてしまうけど、この曲は絶対レコードで欲しい!という曲ってあるじゃないですか。それって単に音質面の話だけでなく、自分がそれを手に取る事、それを大事に掛ける事に対する、自分の美学みたいなものがあると思います。

機材も同じで、パソコン上のソフトでも素晴らしいものはたくさんありますが、ハードでしか伝える事の出来ない、音質を含めた質感や美学はこの先も大事にしていかないといけないと感じています。

あと、自分は本当にたくさんの人に支えられてるんだなと、身をもって実感したことも大きいですね。制作の最後の方はプライベートもメチャクチャになってる中、それでもWatusiさんを始めサポートしてくれる人に本当に助けられました。有難い事にプロモーションをサポートしてくれるアーティストの方や、何年も会ってない友達や中学の同級生などもリアクションを起こしてくれた事には本当に感謝しきれないですね。

* * *

話している時から早雲さんの「熱量」がヒシヒシと伝わったこのインタビュー。僕は「音楽業界にもこんなにアツい人がまだまだたくさんいるんだな」と率直に感じました。機能やデザインにこだわりながらも、初心者にも手が届くリーズナブルな価格で完成したVUメーター『FORMA』この熱量を音の波動に変えて制作やパフォーマンスに没頭したい方はマストバイです!

▶︎FORMAのオーダーはコチラ

https://www.hayakumo.tokyo/items/6163296

written by Midori Aoyama

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