『マジック・マイク ラストダンス』公開記念|今こそ評価されるべき2000年以降のダンス映画たち


この記事をシェア
Text:バフィー吉川
© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
『オーシャンズ11』(2001)や『ローガン・ラッキー』(2017)などで知られるスティーヴン・ソダーバーグが唯一手掛けたダンス映画であり、男性ストリッパーたちが主人公という斬新な設定も注目された『マジック・マイク』の最新作にして完結編『マジック・マイク ラストダンス』が現在公開中だ。
単純に「マジック・マイク」シリーズの最新作というだけではなく、舞台版のプロローグとしても機能しているし、チャニング・テイタムの精神的な部分からは「ステップ・アップ」シリーズの完結編にも思えて、様々な観方のできる作品だといえる。
また今回はサルマ・ハエックが相手役ということもあり、ラテンの要素も加わっており、エキゾチックなダンスシーンにも注目してもらいたい。
今回でフィナーレをむかえた「マジック・マイク」シリーズは、間違いなく2000年以降のダンス映画の代表作となっているわけだが、他に2000年以降でダンス映画といえば何があっただろうか……。
なんとなく、近年のダンス映画の印象が薄くなってしまっている気がしないだろうか。そもそもなぜ、そんなイメージのなのか。
2000年代から現在にかけて、多くのダンス映画が制作されているだけに、『マジック・マイク ラストダンス』の公開をきっかけとして、改めてダンス映画について深堀してみることで新たな価値が見出せるかもしれない。
■2000年以降急激に増加したダンス映画フランチャイズ
© 2023 Warner Bros. Ent. All Rights Reserved
例えば70~80年代の場合は、ディスコブームの火付け役ともなり、インド映画のダンスシーンにおいても多くのインスピレーションを与えてきた『サタデー・ナイト・フィーバー』や『フットルース』、あるいは『フラッシュダンス』、『ダーティ・ダンシング』などが有名なところだが、2000年代というと、少し回答に迷ってしまう。
かと言って、ダンス映画が制作されていないわけではない。実は2000年以降もダンス映画というのは大量に制作されており、決して下火になっていたというわけではなく、むしろ『ユー・ガット・サーブド』『ストリートダンス/TOP OF UK』『バトル・オブ・ザ・イヤー ダンス世界決戦』などなど、ヒップホップブームの流れでかなり多くなっているのだ。
それでもダンス映画といえば、常にディスコブームと接続した関係性のように感じるのは、上映形態の変化が大きいのと、ターゲットが10~20代に絞られているからといえるだろう。
特に2000年以降、DVDが急激に普及したことで、劇場映画ではなくビデオストレート(ソフトで視聴を前提として制作される映画)が制作されるようになり、ダンス映画はヒットしても続編はビデオストレートという形態になることが多く、日本に入ってくる頃にはビデオストレートのように扱われてしまっていることも、印象が薄くなってしまった原因のひとつである。だからこそ「マジック・マイク」シリーズのように、全て劇場公開されたダンス映画は稀ともいえる。
確かにターゲットは割と若年層なのかもしれないし、ティーンムービーの延長線上にあったりもして、そういったイメージが観客離れを起こしているのかもしれないが、パフォーマンスの部分でいうと、2000年以降のダンス映画にはスタイリッシュなものが多いということを改めて発見してもらいたい。
ということで、今回は2000年代を代表するダンス映画をいくつか紹介していこう!!
★『ステップ・アップ』(2006)
監督:アン・フレッチャー
出演:チャニング・テイタム、ジェナ・ディーワン、レイチェル・グリフィス、アリソン・ストーナーほか
「ステップ・アップ」シリーズは全5作と中国版『ステップ・アップ・イヤー・オブ・ザ・ダンス』(2019)、配信シリーズの『Step Up: High Water』(2018)などが制作されており、日本ではいくつかビデオスルーになったものの、本国のアメリカでは全て劇場公開されており、近年では一番大きな規模でフランチャイズ化されたダンス映画シリーズだといえる。
1作目は『チアーズ!』(2000)やミュージカル映画版『ヘアスプレー』(2007)の振付師としても知られるアン・フレッチャーが監督を務めた作品であるし、チャニング・テイタムがダンスのできる俳優として世間に知れ渡ったきっかけともいえる作品である。
また『ステップ・アップ2:ザ・ストリート』(2008)、『ステップ・アップ3』(2010)では『イン・ザ・ハイツ』(2021)のジョン・M・チュウ、『ステップ・アップ4:レボリューション』(2012)、『ステップ・アップ5:アルティメット』(2014)では、ディズニーアイドル時代のアシュレイ・ティスデイルのミュージックビデオを手掛けた スコット・スピアーが監督を務めており、それぞれの作品に監督の個性が現れている。
★『チアーズ!』(2000)
監督:ペイトン・リード
出演:キルスティン・ダンスト、エリーザ・ドゥシュク、ジェシー・ブラッドフォードほか
2000年代を代表するガールズ・ダンス映画の決定版ともいえるのが、ミュージカル舞台化もされた『チアーズ!』である。監督をしたのは、今ではマーベルの「アントマン」シリーズを手掛けているペイトン・リードだ。
学園ドラマ内においてチアリーディングというものが扱われることは多かったが、スポ魂映画、ダンス映画として本格的に扱われた作品というのは本作が初めてといえ、「glee」のチアシーンも下敷きになっているように感じる。
ちなみに本作の1年前に『Go!Go!チアーズ』(1999)という作品があるが、これは『チアーズ!』のヒットによって日本がつけた邦題であるし、ダンスよりも学園ドラマ色の方が強いため、全くの別ジャンル映画だ。
フランチャイズ化もされ、現在までに6作制作されており、劇場版は1作目のみで、それ以降はビデオストレート作品として制作され、『Bring It On: Worldwide #Cheersmack』(2017)のみ日本未発売となっているが、5作目の『チアーズ!アミーゴ』(2009)ではラテン系の主人公を歌手のクリスティーナ・ミリアンが主演を務めており、劇場映画ではない中でも様々なアプローチが行われたシリーズといえるだろう。
★『ハートビート』(2016)
監督:マイケル・ダミアン
出演:キーナン・カンパ、ソノヤ・ミズノ、ニコラス・ガリツィン、ジュリエット・ドハティほか
ストーリー自体は、これまたよくありがちな芸術系学校もので、その中で挫折や葛藤を描いているだけに、それほど目新しいものではないし、バレエダンサーがヒップホップに魅了されるという点では『セイブ・ザ・ラスト・ダンス』(2001)や日本ではNetflixで配信されている『イントゥ・ザ・ビート ~心のままに踊れ~』(2020)もある。
今作はそこにクラシックも加わり、音楽とダンスのジャンルを超えたパフォーマンスの決定版というべき作品に仕上がっているのだ。
ヒップホップダンスシーンの振付師には『ストンプ・ザ・ヤード』(2007)、『ステップ・アップ2:ザ・ストリート』のデイヴ・スコット、音楽も「ステップ・アップ」シリーズの関係者が多く参加するテレビシリーズ『THE LXD/バトル・オブ・ダンサーズ』のネイサン・ラニアーが手掛けていることから、「ステップ・アップ」シリーズの遺伝子を別のアプローチで描いているともいえるだろう。
続編となる『ハートビート ネクストステージ』(2018)も小規模ではあるが、日本でも劇場公開されている。
★「ABCD(Any Body Can Dance)2」(2015)
監督:レモ・ドウザ
出演:ヴァルン・ダワン、シュラッダー・カプール、プラブー・デーヴァ、ローレン・ゴットリーブほか
ディズニーが制作したインド映画。「ABCD」シリーズは全3作が制作されているが、3作目に関してはディズニーが制作から外れたこともあって、『ストリート・ダンサー3D』(2020)というタイトルで公開されている。
2010年前後からインドではヒップホップダンススクールや大学内にサークルも多く誕生したこともあって、そんなヒップホップムーブメントの波に乗って制作された本格的なヒップホップダンス映画というわけだ。
『スチューデント・オブ・ザ・イヤー 狙え! No.1!!』(2014)や『勇者は再び巡り会う』(2015)などの振付師として、ヒップホップ調のダンスシーン普及の立役者でもある振付師のレモ・ドウザがシリーズ全作の監督を務めているだけに、本当にダンスが主流の作品だ。
インド映画、特にボリウッドでは、作中にダンスシーンが挿入されることがあっても、ダンスそのものを題材とした作品は実は珍しく、当時としては画期的な作品だったといえるだろう。
1作目は振付師として知られるダンサーのプラブー・デーヴァが主演を務めているが、2作目は若者世代をターゲットにしており、ヴァルン・ダワンやシュラッダー・カプールといった人気の若手俳優を起用し、プラブーは一歩引いた位置から新世代を育てるような物語となっており、メタ的に世代交代が描かれている。
★『ダンス・レボリューション』(2003)
監督:ビリー・ウッドラフ
出演:ジェシカ・アルバ、ミッシー・エリオット、メキ・ファイファーほか
ジェシカ・アルバ主演のダンス映画。全米ではそこそこヒットした作品ではあるが、日本はビデオスルーとなっている。
主人公が10代後半や20代に設定になっていると、『フェーム』(オリジナル・リメイク含む)や「センターステージ」シリーズのように、ダンススクールもしくはそこを目指す物語になっていることが多く、ほとんどの場合、主人公は経済的な問題を抱えている。
今作も基本的にプロットはそんな感じではあるが、サウンドトラックには本人役として出演もしているミッシー・エリオットやショーン・ポールといった、当時の旬なアーティストが多く参加している。
またフランチャイズ化もされており、『Honey: Rise Up and Dance』(日本未公開)までの4作が制作されている。劇場公開されたのは1作目だけだが、珍しいことに監督のビリー・ウッドラムは、フランチャイズ化された作品も全て監督を務めている。
このビリー・ウッドラムという監督は、もともとブリトニー・スピアーズやジェシカ・シンプソンといったポップソングアーティストから、クリスティーナ・ミリアンやトニー・ブラクストンといったR&Bアーティストまで、幅広いジャンルのミュージックビデオを手掛けたこともあり、どの作品においても全体的なテンポ感には、その経験が活かされているといえるだろう。
それに加えて振付師のひとりのルーサー・ブラウンは『ピッチ・パーフェクト ラストステージ』(2017)や「ゾーイの超イケてるプレイリスト」といった作品でもヒップホップダンスの振付をしているなど、最前線で活躍するスタッフが揃っているのだ。
★『バーレスク』(2010)
監督:スティーヴン・アンティン
出演:クリスティーナ・アギレラ、シェール、クリスティン・ベル、スタンリー・トゥッチほか
ブリトニー・スピアーズやジャスティン・ティンバーレイクなどのスターが多く出演していた「ミッキーマウス・クラブ」のメンバーでもあり、90年~2000年代の音楽業界を支えたクリスティーナ・アギレラの初主演作品。
今作の着想元がロキシーシアターで行われたアギレラとプッシーキャット・ドールズのコラボパフォーマンス。つまりアギレラありきで進んだ企画だったこともあり、バーレスク(エンタメクラブ)を舞台としていながらも、ノーメイクに近いアギレラがアーティスト、クリスティーナ・アギレラになっていくメタフィクションのような側面からも楽しめる作品となっている。
ティーンアイドルとしての全盛期ではなく、ある程度の知名度を確立してから、こういった若者世代に向けたサクセスストーリーに出演していることへの違和感も指摘され、残念ながら評価はとして低い作品ではあるし、歌手が主演を務めた作品をことごとく目の敵にしているラジー賞のターゲットにされてしまった作品ではあるが、アギレラの力強い歌唱シーンに加え、『シカゴ』(2002)や『NINE』(2009)の振付師ジョーイ・ピッツィが手掛けたゴージャスなダンスシーンも必見だ。
実はインドでも注目された作品であり、プリヤンカー・チョープラー主演映画『Gunday』(2014)など、いくつかのボリウッド映画のダンスシーンにおいて影響を与えた作品でもある。

