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インタビュー | TREKKIE TRAXのandrewが語る11年ぶりのEPと音楽性の変容。「理想郷を求めて」

2023/09/07 19:00
block.fm編集部
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TREKKIE TRAXの主宰の一人であるandrewが『Blueprint for The New Paradise EP』 をリリース。彼の音楽遍歴やライフスタイルに迫った2万字を超えるロングインタビュー。

日本を代表するダンスミュージック・レーベル<TREKKE TRAX>の主宰者の1人であり、ラッパー・なかむらみなみのバックDJやプロデュースワークでも知られるandrewが実に11年ぶりとなる作品集『Blueprint for The New Paradise EP』 をリリースした。

リリース前からオランダのアムステルダムで開催された大型音楽フェス<Dekmantel Festival 2023>にてBen UFOが収録曲である「Pulse Clap Riddim (Duxi Instrumental)」をプレイ。その動画はSNSでも話題となり、ここ日本でもリリースされるやいなや様々な媒体の主要プレイリストに複数入曲。シーンから大きな注目を集めている作品だ。

彼のクラブでのDJとしての評価は言わずもがなではあるが、トラックメーカーとしての側面にも飛躍的な進歩を感じる新たな挑戦作となった本EPについて。そしてみんなに愛されるandrew君という人間の音楽遍歴やライフスタイルについて。andrewがバックDJを務めたTENG GANG STARRのマネージャー時代からの友人として話を聞いてみた。
andrew
取材:志磨 雅人
撮影:なかむらみなみ

ー まずはリリースおめでとうございます!11年ぶりのEP(笑)。

andrew:ありがとうございます!いやー、11年ぶりっすね(笑)。

ー ちょうどリリース日の0時に下北沢CREAMでパーティーをやっていて、andrew君がDJ中にK8(TYO GQOM)ちゃんとかフロアにいた人達から歓声が上がってたよね。

andrew:まとまった作品をリリースすることに慣れてなさすぎて照れ臭かったです。まるで子供が生まれたぐらいに祝ってくれて…。

ー 「何?このお誕生日ムーブ」って言ってたよね(笑)。あの日はメチャメチャ盛り上がったし、確かにそれぐらいみんな待望という部分もあるのかなと思って。そもそも何で前作のEP『Monolith』から11年も経ったの?

andrew:『Monolith』はTREKKIE TRAXの5作目のリリースで、レーベル立ち上げ当初は1年に3〜4作品ぐらいしか出してなかったんですよ。元々はパーティーをするクルーだったからリリース作品もコンピとかばかりで、Seimei & Taimei(Carpainter)しか個人作品を出してなかったんですよね。で、「次、誰か出せよ」みたいな空気があって、じゃもう無理やり出すかってリリースしたのが最初のEPなんですけど…ぶっちゃけマジでクオリティが低くて今は恥ずかしくて全然聴いて欲しくない(笑)。

ー 『Monolith』はBandcampでしかリリースしてないんだよね?

andrew:そうですね、当時のTREKKIE TRAXはフリーダウンロードのリリースだけだったので。その後にフリーダウンロード音源をTREKKIE TRAXからストリーミングサービスに再リリースした時にも「俺のはもうあげないでくれ」って言って。

ー でもこれが1stリリースではあるんだよね?

andrew:レーベルからのリリースという意味ではそうですね。自分でSoundCloudとかMyspaceに上げたりはそれ以前もやってました。

ー そこに関連すると思うんだけど、andrew君の音楽の遍歴。その1st EPを作るに至る話も聞きたくて。

andrew

HIP HOPを入り口に、様々なジャンルをインプットした10〜20代前半

andrew:自分から音楽を聴き始めたのは小4、5ぐらいですね。それまでは家で母親がX-JAPANだけ聴いてたり、叔父がミクスチャー・バンドやってたりしてたんですけど、当時は家庭内で流れてたそういう音楽が全然好きじゃなくて(笑)。今思えばその反動もあったと思うんですけど、家でケーブルテレビを観てたらHIP HOPが流れてきて、それでラップが好きになって極端にラップしか聴かなくなったのがその時期でした。

ー 生バンドというよりは打ち込まれた音楽に興味が向いたのはカウンターとしてだった?

andrew:多分そうですね。メロディックでテンポが速い音楽よりも、メロディー感がなくてミニマルな音楽の方がかっこ良いと強く思ってました。だから最初に好きになったHIP HOPも90’sの東海岸のものでしたね。当時流行っていた00年代のメインストリームの音楽も好きではあったんですけど、 小〜中学校時代にやっぱり1番好きだったのは90’sでした。

ー そこからトラックを作り始めるのはどのタイミングだったの?

andrew:それからはずっとブックオフ行ってひたすら中古CDを買ったり、ケーブルテレビで流れてたMVをVHSに録画して何回も観る生活でした。そこで観たインタビューやMVには絶対MPCが映ってるんですよ。

ー 当時は楽曲の制作過程を見せる映像も多かったもんね。

andrew:今思えばあの頃はすでにハード機材からDAWが主流の時代に移り始めてると思うんですが、そのイメージの刷り込みもあってとりあえずMPCを買わなきゃと思い、高校1年の時にバイトして買ったのがMPC-1000でした。そこからは何もわからないまま、とりあえず家のCDとか色んな音源を入れて、サンプリングで曲を作る日々ですね。

ー 手に入りやすいギターじゃなくMPCを真っ先に買ったっていうのは、さっき言ってたカウンターな気持ちがまだ強く残ってたのかな?

andrew:でもその頃になるとロックも聴いてましたね。HIP HOPを聴いてるとやっぱりサンプリング元が気になってくるじゃないですか。ファンクとかディスコとかジャズとか…。俺が通ってた高校の近くに小石川図書館っていう在架がめちゃくちゃヤバい図書館があって。ついこの前も「今日は小石川図書館でこれを借りた」っていう過去のツイートをゴウ(D.J.G.O)さんに漁られて沢山ライクされました。見たら2012年のツイート(笑)。

ー ゴウさん自身も最近図書館で借りたCDをSNSにあげてるよね(笑)。

andrew:図書館ディグ。基礎的な音楽の素養じゃないですけど、James Brownもそこで借りたし。サイケ・ロックとかプログレ・ロックとか、The Doorsみたいな60年代とか70年代の音楽も結構そこで借りていました。

ー その頃になるともう隔たりなく聴いてたんだ。

andrew:そうですね。そのくらいになるとHIP HOPが色々な音楽を出汁に使って作られてる音楽ということがもうわかってきてたんで、耳にもすんなり入るようになってました。まあそれでもX-JAPANを自ら進んで聴くことはなかったですけど(笑)、でもだんだんラウドな音楽も聴くようになってましたね。入り口は多分Beastie Boysかな。今でも大好きですけどハードコア・パンクが好きになったのは完全にBeastieの影響です。

ー その辺がandrew君の音楽性を表す部分として結構重要なところかなと僕は思っていて。どのジャンルでも隔たりなくというか。現場も含めてもう全部のジャンルをオールラウンドにやっていくスタンスがその辺から来てるのかなと思うんだよね。

andrew:確かに。ただ、オールラウンド過ぎる弊害もあったと言うか。今思えば俺の10代から20代前半ってインプット過多で、だから11年もEPが作れなかったんだろうという原因でもありますね…。毎回その日によって気持ちが変わり過ぎちゃって。ここにきてやっとEPを作れたのは、大人になったことでインプットがだんだん整理できてきたのかなと思います。

ー なるほどね。そんな感じでトラックを作りだした時にTREKKIE TRAXのみんなと出会ったって感じかな?

andrew:その前に高校の時バンドをやってたのも、もう一つ重要な出来事かもしれないです。今回EPのアートワークを作ってくれた曽根(Sone Takaaki)と一緒に、YMOのコピーバンドをやってたんです。人前で音楽を演奏したのはそれが初めてですね。演奏って言ってもMPCでシーケンスを組んだり、FX的な音をパッドで再生してただけですが。

ー DJを始めたのもその頃?

andrew:DJは高3の時にクラブに行ってからなので、その少しあとですね。最初にクラブに行ってTechnoとかHouseを聴いた時すごく感動して。好きなラッパーとか友達のバンドのライブには行ってたんですけど、ずっとステージを観てじっと聴くっていう行為がどうしても苦手で。でもクラブではフロアのどこで踊ってもいい、飲み物も途中で買っていい、なんなら友達と話しててもいいっていう。もちろん純粋な音楽としての出音にも衝撃を受けましたけど、その環境自体にすごく感動したのを覚えています。

ー じゃあクラブに行き始めた頃と、TREKKIEのみんなに出会った頃、DJを始めた頃っていうのが一致してるんだね。

andrew:まさにそうです。クラブミュージックの話ができる同世代の友達が欲しいと思ってネットにかじりついてました。そこから同世代のDJがやってるパーティーを見つけて遊びに行ったらTREKKIE発足メンバーのbankと出会って、「DJやっちゃいなよ」って。その頃はCDJも触ったことがなかったんですけど「Ableton Live持ってて曲作れるんだったら、それに曲並べるだけでいいから」って言われて。そこから本当にそのスタイルで、前の人から無理やりテンポを合わせて繋いで曲をかけたっていうのがDJの最初でしたね。まじで右も左もわからないまま放り出された感じでした。

ー へえー。そこから何年間かはさっき言ってたみたいに自分のアウトプットがぐちゃぐちゃになってる感覚だったの?

andrew:正直そうでした。でも最初はHouseしかかけてなかったんですよ。当時はDisco DubとかNu Discoとかが打ち込みとの中間ぐらいで自分の体に馴染みが良くて。だけど実際色んなクラブ行ってみると、やっぱり10代の多感な時期なんでそこでかかってる別のスリリングな音楽もどんどん好きになっていって。ある時SeimeiにDubstepの鳴ってるサウンドシステムのパーティーに連れて行ってもらったんですけど、やっぱり全然違う音楽体験じゃないですか?ベースミュージックやばすぎる!みたいな感じになっていって。その体験が結成当時のTREKKIEの共通項であり、土台になりました。その中でも自分はやっぱりHIP HOPが好きって感覚はずっとあったし、Houseで踊ったら楽しいし、 結局どれを表現したいかが全然定まってなかったですね。

1st EPリリースから“11年”かかった経緯

ー 僕も、昔のandrew君から受けた印象と今のandrew君の印象では違う部分があって。ここ最近のプロデュースワークを経てちょっとずつ変わってきたのかなと思うんだけど。

andrew:確かに。

ー 例えば自分の作る楽曲がまたHIP HOP的になってきたという感覚は自分の中ではあったの?

andrew:変化というと、自分の音楽制作の方法は、逆にHIP HOPから離れちゃったかもって最近思ってるんですよね。最初の頃はMPCで作ってるんで基本サンプリング、シンセを弾くとしてもすごいバイブスっていうか…不協和音もあるしコラージュ的で。

ー シンセもサンプリングの延長みたいな感覚だよね。

andrew:シンセの音をサンプラーに入れて並べるみたいな。最初はそんな感じだったんですけど、プロデュースワークをやり始めて、ピアノロールに触れないとボーカルのメロディを成立させられないし、サンプリングじゃない方法で全部曲を作れるようになろうって決意したんです。そうしてみたら、こっちの方が俺に向いてたんじゃないかってぐらいすんなり曲が作れるようになったんですよね。サンプリングでノリで作るよりも、段階をしっかり踏みながら制作する方法の方が自分の脳内を思い通りに再現できるじゃん!って。

ー それは所謂「楽譜を書く」っていう感覚に近いのかな?手元にあるもので作業するというよりは曲の全体像を構築していく感じ?

andrew:実際楽譜を書いたことはないですし理論も完全に独学ですが、ある意味そんな感じですね。コードを並べて、ベースラインやメロディを打ち込んで、最後にビートを入れる方が俺はゴールしやすかったんですよ。その方法を経た後にまたサンプリングして曲を作ってみたら、そのサンプリング元の音程だったり、楽器の音色、曲自体の構成に対しての解像度が自分の中でメチャクチャ上がってて、そこから更にサンプリングも使えるようになってきたんですよね。

ー それでまたサンプリングが活きてくるようになったんだ。

andrew:そうですね。あと意外と色んな人から「メロディのセンスが面白いね」とか言ってもらえたりして。自分はすげえ音程感がなくて、実際に歌も超下手なんですけど(笑)。「作曲のメロンセンスって音痴と関係ないんだな」って思ったのは「Ride」や「Nautica」を作った時ぐらいからですね。

ー 僕が思ったのは曲調に関してはどんどんHIP HOP的、まあHIP HOP的をどう捉えるかは難しいんだけど、プロデュースワークを経てラップがのりやすい曲にだんだんなってるのかなと思ったんだよね。

andrew:確かに今回のEPに関してはラップがのる前提のHIP HOP的、ビート・ミュージック的なニュアンスも大事にしたいと思ってました。EP制作前のコロナに入った直後はプロデュースワークに並行してクラブトラックもめっちゃ作ってて、<NC4K>っていう京都のレーベルのコンピに曲を提供したり、<Moveltraxx>ってUKのレーベルからCarpainterと一緒にシングル出したりとか。でもHouseだけの形式だと借り物感があるというか…。100%の自分かって言われたら、もうちょい自分を出せるんじゃないかみたいな気持ちがずっとあって。Houseを作ったら自分でもかけられるし、みんなにもDJでかけてもらえる。だけど今回のEPは11年ぶりだし、もう少し自分の内面を突き詰めた結果この塩梅になった感じです。自分のルーツであるHIP HOPに向き合うという。曲だけ聴いてHIP HOPだと思う人は少ないと思うんですけど、制作過程においての姿勢の話ですね。


ー あとは、ここ最近のandrew君のビートはもちろんHouseもありつつのDembowだったり、Amapianoだったり、「Kokodoko」とかもGqomだったし。ああいうマージナルなビートとの掛け合わせも結構やってるよね?

andrew:あー、そうですね。


ー その辺が今回のEPにもかなり生きてるのかなと個人的には思っていて。その辺も含めて今回のEP『Blueprint for The New Paradise EP』 について話を聞いていきたいんだけど。まずはタイトルに込めた思いとか意味合いを教えてくれる?

andrew

音楽で生活する、理想の状況の中で初めて気づいた孤独

andrew:まず「Paradise」= 理想郷についてなんですけど。今の自分は毎週どこかでDJさせてもらってて、ぶっちゃけ音楽始めた時の自分からしたら理想の状況なんですよね。なんかもう、超夢のような状態だなと感じるんですよ。自分は東京都の板橋区出身で近所に娯楽も文化施設もマジでなくて、都心でもなければ田舎でもなくて、山も海もなくて、音楽の話ができる友達もいなくて、その環境で育ったところからのギャップが凄いんですよね。だから今大好きな音楽にまつわることで生活ができているのはもはや幻想にまで感じるというか。

ー ある意味もう理想には近づいてしまっているんだ。

andrew:それで、今そういう恵まれた環境になってみたら…、それはそれでちょっと孤独というか。自分がやりたい音楽という部分で本当にシンパシーを感じる人はそこまでいないのかも?みたいなことを突然ふと思ったりして…。

ー 意外にもその境地に立ったら孤独を感じたということかな?

andrew:例えばクラブってTechnoだとすごい集中度高く楽しむ場所で、会場も真っ暗にして。別に嫌いじゃないけど、ストイックすぎて自分が表現する音楽じゃないのかもと思ったり。 かたやHouseのようにフォーマットを守りながら社交的な側面が強い音楽は、もうちょっとスリリングな音楽体験をしたいと思ってしまう時があるんですよね。じゃあベース・ミュージックかと言うと自分が表現するにはちょっと身体性から離れすぎてるかもという気持ちになる時もありました。

ー どれもが好きだけど自分が表現するものではないと。

andrew:結局どれも全部大好きで、そのバランスなのかもしれないんですけど、自分が表現したいスタイル、テンションをしっかり提示しないと自分が苦しくなってしまうと思ったんです。

ー インプットは充分だけど、アウトプットに悩んでたって感じかな?

andrew:それこそ、DJ Mixも自分のスタイルを提示する一つの大事なアウトプットですよね。Worldwide FM(Gilles Petersonがディレクターを務めるロンドンのラジオ局)に提供したMixでは自分のモードを出せてたと思うし。でも自分の音楽性に関してはそれに加えて作品も出さないと、しっかり自分を提示することは難しいと思ったんですよ。自分の現在地が伝わらない孤独感というか、逆に言うとそれがオリジナリティなのかもしれないんですけど。もっと要素を濃くして表現しないと伝わらないんだって感じたんですよね。

▼TREKKIE TRAX: SEIMEI AND ANDREW (Worldwide FM)
https://worldwidefm.net/episode/trekkie-trax-seimei-5

ー それはTREKKIE TRAXという仲間達がいて、その中でも敢えて言うなら自分がちょっと違う/異質な部分があると感じてたってこと?

andrew:そうですね。外から見たらそれぞれみんな異質だと思うんですが、クルーの中でいうとSeimeiとTaimei(Carpainter)の共通項は凄く多いじゃないですか?兄弟なので当たり前なのかもしれないですけど、ホントに幼少期からTechnoとかTranceがルーツにあって、そのルーツだけじゃない色々な情報も生まれてからずっと共有しているみたいな。そういう環境は自分にはなかったんですよね。

ー まああの2人もそれぞれキャラがたってるもんね(笑)。

andrew:もちろんあの2人もfutatsukiも俺の音楽性をわかってはくれてるんですよ。でも彼らが表現するものかと言われたら、それはもちろん違うんですよね。そうなると当たり前ですけど自分が好きな音楽、スタイルは自分で表現するしかないし。今思えばその一つがプロデュースワークでしたね。自分は元々ラップが好きだったし、そこを経て、その次は自分の作品集を作るべきだという結論に、消去法的ですがたどり着いたんです。

ー 自分の作品集を出すことによって自分のジャンル、居場所が確立されていく感じかな?

andrew:まさしく。本当はもうちょっと「Paradise」じゃなくて自分の現在地っぽい言葉にしようかなとも思ったんですけど。でもこんなこと言ってる自分は無茶苦茶欲張りだなとも思って(笑)。あくまでも今の状況は恵まれてるんですよ。更に目指すところとして「Paradise=理想郷」という単語に落ち着きました。

ー めっちゃ「エキゾチシズム」だなという印象で、憧れた土地に対する羨望みたいな。その話を聞くと凄く納得したし、いい言葉だなと思いました。

andrew:最初にコンセプトを決める時に、クラブ・ミュージックのもつ都市性が現在地だとしたら、Baile FunkとかUK Funkyみたいなマージナルな音楽は自分達の生活環境から出てきたものではないし、身の回りから自然発生的に生まれてくる音楽ではないのだけど、今の東京では当たり前にプレイされているし、もちろん自分も大好きで。そういう状況だからこそ「違う場所の音楽」としての距離感を感じるんですよね。近くにあるのに遠くから眺めているような。

ー なんかそれって細野晴臣さんのコンセプトみたいだよね。

andrew:ああ、確かに確かに!

ー このEPを聴いた時に僕は実はそれを感じていて。細野さんのアルバムってそういうコンセプトのものもあるよね。

andrew:細野さん…めちゃくちゃ影響を受けてます。

ー 彼も東京で生まれて、南国/異国を夢見て現地の音楽を解釈して演奏するみたいな。まあ時代背景とかジャンルはもちろん全然違うけど。

andrew:EP作る前に、細野さんのアルバムや関連曲を聴き込んでいる時期がありました。YMOでも1stアルバムをよく聴いていたし、特に「シムーン」は今思い返すと今回のEPに通じるニュアンスがあるかもしれません。

ー さっき話にでたYMOのコピーバンドを高校時代に友達とやってたというのも案外そういう部分が根底にあるのかなと思ったり。

andrew:そうですね、そして当時からやっぱり細野さんが一番好きでした。

ー 話は変わるけどEPの制作の期間ってどのくらいだったの?

andrew:2年前、最初に出来た曲が「Palm Tree」です。でも「Palm Tree」自体はDJツール的に作ってたんで、その時期からぼんやりEPの構想が見えてきて、徐々に作って最後の2、3ヶ月ぐらいでガッと詰めて作った感じですね。

ー 最後2、3ヶ月は追い込んでたよねー、それは近くで見てた(笑)。

andrew:そうですね。まだ手足が出来てない胎児の段階から無理やり成長させたみたいな感覚でした(笑)。

ー さっき言ってたコンセプトがしっかり出来ていったのって、実はリリースまでの2、3ヶ月だったりするの?

andrew:そうですね。DJではUK FunkyとかBaile FunkのクラブトラックにDancehallやAfrobeatがクロスオーバーしてる曲をかけることが一番多いので、その辺を作っていくのが理想的だなとは思っていたんですけど、自分の納得がいく落とし所がなかなか出来なくて…。だからその間にHouseを作ったり、プロデュースワークを進めたり、EP制作のヒントを探すための寄り道をしていました。そしてホントにそろそろ出さなきゃやばいってなった時、先にTREKKIEにリリース日を伝えて納期も決めて周りから固めていったんですよ。そのタイミングで曽根にもアートワークを頼んで、丸一日かけて自分の制作のコンセプトについて一緒に話した時に「あ、これだ」みたいなイメージが出来たんです。そこまでに「Blueprint for The New Paradise」も「Daydream」も「Manic State Riddim」も土台は出来てたんですけど、そこからコンセプトに合わせてブラッシュアップしていきました。

ー じゃあアートワークを作っていく過程でEP自体のコンセプトも固まっていったって感じなのかな?

andrew:そんな感じですね。

自分の軸を見つめるパーティー<ANDREWラウンジ>

andrew

ー そのアートワークについても聞きたいんだけど、このアートワークの左側の奥に写っている場所ってandrew君がレギュラーパーティーをやってるBAR & SOUND SPACE 新宿ドゥースラーだよね?

andrew:そうですね。

ー 新宿ドゥースラーが見える場所からandrew君のデカい顔が海を見ているという、まあ海というか理想郷を見ている感じなのかな?と思って。

andrew:最初に曽根と話した時は俺の地元の板橋区から都心を見てる方が良いんじゃないかって言われたんですけど、ぶっちゃけ俺、板橋区になんの音楽的な思い入れもないんですよ(笑)。クラブがあるわけじゃないし、ただ家で曲を作る場所っていうか…。それよりもうちょっと都心に迫った場所から見つめてる構図の方が今回のコンセプトに合うだろうなと思って。となるとドゥースラーぐらいの場所、甲州街道から向いてるのは渋谷の方向で。渋谷での自分は外向きの自分というか(笑)。10代、20代前半の頃はその意識が特に顕著で、どんなパーティーにも出てたし、毎回そのパーティーごとに自分のモードをチューニングし過ぎてた。そんな思い出が沢山あるのが渋谷だったんですよね。結局それは場所のせいというより自分のせいなんですけど、それだけやってたら自分が失くなりそうなタイミングがあって。そんな時期に始めたのが新宿ドゥースラーでの<ANDREWラウンジ>なんですけど。

ー 今も続いているレギュラーパーティーだね。

andrew:そこでも、来るお客さんによって選曲を変えたりもするんですが、もうちょっと自分のムードを保つ意思を持って臨んでたんですよ。だから自分は新宿にいて、ある意味渋谷は非現実な場所。アートワークのとおり、現実と非現実の間にあるのが甲州街道辺りなのかなぁと。

ー 更に「Paradise」的な部分もそこにかかっているってことだよね?

andrew:渋谷をぶっ壊して海、ビーチ、想像上の「Paradise」にしちゃうっていう(笑)。

ー (笑)。

andrew:もちろん渋谷は大好きですよ。渋谷、海、ビーチは自分にとって非現実、理想郷だと思っていて、それらを表現したという感じです。あと、新宿ドゥースラーって暖かい地域の音楽が合うんですよ。場所のムードも相まってだと思うんですけど、アットホームなのにDJしてるとちょっとだけ非現実に連れていかれるような感覚があって。そういう感覚から新宿側にもビーチの砂や椰子の木、そこには絶対にないモチーフを置いてもらいました。

ー 渋谷で毎週のようにプレイしているDJの時よりも<ANDREWラウンジ>でのプレイ時の方が、EPの延長線上で選曲してるところが想像つくね。もう8年だっけ?

andrew:今年で9周年ですね。

ー ある意味、andrew君のホーム的なパーティーだよね。

andrew:実はTREKKIE TRAXのCREW SETとかが忙しすぎた時に一瞬辞めようかなと思ったこともあるんですよ。自分自身のルーツやムードに向き合う時のギャップも凄くて…。でも今は全ての活動に一本筋が通ってきた気がして、一番楽しいかもしれないです。辞めなくてよかった(笑)。

ー TREKKIE TRAX CREWで<EDC Japan>に出て<ULTRA JAPAN>に出てっていう活動とはやっぱり違い過ぎるよね(笑)。

andrew:ただ、そういうデカいフェスやパーティーでも自分個人としてのアイデアを提案できるようになったというか。今はそういう意味でも全ての活動に一本筋が通ってきたと思いますし健康的に出来てますね。
andrew

ー 今回のEPは海外からも反応があるし、規模感の大小が乖離してる感じはないよね。

andrew:確かに。でも海外で一番プレイされてるのは「Duxi」で。「Duxi」ってホント最後にボーナス・トラック的に作ったというか、トラックも実は1日ぐらいで作ってて(笑)。

ー 海外でかかってるのは「Duxi」のインストの方(「Pulse Clap Riddim」)で、そこの意外さもあるよね(笑)。

andrew:リリースする前は「どうせみんなインストヴァージョンだけ聴かないでしょ」と思いつつ、GrimeのインストってMCのセッションで使うこともあるから、そういう需要のためにBandcampだけボーナストラック的に入れたんですけど、普通のクラブプレイとしてもインストが一番プレイされるっていう…。

ー 予想外だったんだね(笑)。

andrew:謎現象でしたね。

ー まあまあ(笑)。今回ミキシングもマスタリングもandrew君が自分でやってて、本当に自分で全部完結した作品で。そこも今作が好きな理由の一つなんだよね。

andrew:ありがたいです。ミキシングとマスタリングに関しては最初から自分でやろうと思ってたんですよ。今回のEPは自分の中での純度を高めることに意味があると思っていて、だからマスタリングでの最終的なゴールを想像しながら音も並べてたし、そういう意味ではやりやすかったです。その分時間がかかるんでそこは大変でしたけど(笑)。あと前に曽根のEP(Sone Takaaki 『Permeate』)のミキシングとマスタリングを全部やったり、友達の曲のミキシング手伝ったりもしてて、それがあったから今回自分の作品にも臨めたなって感じですね。

各楽曲に込めた意図

ー じゃあそろそろEPの各楽曲について聞いていこうかな。まずは1曲目タイトルトラックの「Blueprint for The New Paradise」から。これが一番さっき話した細野さん的なトラックだよね。

andrew:確かに、そうなのかも(笑)。

ー EPの中でもエキゾチシズム溢れる曲だなーって思うんだけど。Baile Funk調で。

andrew:Baile Funkのリズムだけどメロディー感はゲーム音楽みたいな。Baile Funkではなかなか聴かないメロディーですよね。

ー 現地の人のBaile Funkでこのメロディーは使わないと思うんだよね。それが凄い面白い気がしていて。

andrew:ああ、そうですね。この曲も土台は1年半ぐらい前からあったんですよね。メロディーとドロップだけの1分弱ぐらいのものがあって。それをEPに入れると決めたのが完成の3ヶ月ぐらい前。曽根とアートワークについて話してた時に、この曲がEPのコンセプトに一番合うんじゃないかって気がついて、そこからさっき話したコンセプトに基づく要素を意図的に沢山入れていったんですよね。

ー じゃあ結構この曲に関してはコンセプトに沿わせたって感じなのかな?

andrew:そうですね。タイトル・トラックにしようと途中で決めてからは、この曲自体がEP全体のコンセプトを決めると思って。責任重大だと気合いを入れ直して着手しました。

ー 僕はこれがEPの中で一番好きな曲なんだよね。

andrew:ありがとうございます!今回ホントみんな好きな曲が違うんですよね、それがすげえ嬉しくて(笑)。あと個人的には一番長く作業してたのがこの曲だったので、一番思い入れがあるのはこの曲かもしれないっすね。

ー andrew君が「この曲は普段のDJプレイには向かないけど」ってラジオ(TREKKE TRAX RADIO #203)で注釈をつけてたんだけど。その分しっかりと自分に向き合った曲という感じがしてて。

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andrew:そうですね。ある意味ビート・ミュージック的というか、リズムと上のテクスチャーやメロディーの組み合わせを実験的に考えて作りました。

ー そこが好きなんだよね。

andrew:嬉しいです。DJ始めた頃にAbleton LiveとかSP-404でブーンバップ的なビートじゃないけど、ビートライブのスタイルでパフォーマンスする人がかなり多くて、その頃の実験的な楽曲を1曲1曲聴かせるようなニュアンスも入れたいなと思ったんですよね。

ー ロブ(Submerse)さんとかがやってた感じ?

andrew:そうですね。その頃のSubmerseさんのSP-404でのセットは、サウンドデザインが作り込まれたビートミュージックからJukeまで、新鮮な音楽体験の提案みたいなスタイルでした。ジャンルは全然違いますけどそういうニュアンスを1曲目に入れたくて。

ー その想いが良い感じに帰結した感じがするね。で、次は2曲目の「Daydream」。EPのテーマにも沿いつつ、こっちはもっとDJ的に実用重視な気がするんだけど。

andrew:この曲は確かパーカッションのループをとにかく重ねることから作り始めたんです。その途中でBaile Funkのグルーヴをうっすら感じて。そのままストレートにBaile Funkにするアイデアもあったんですけど、そのうっすら感じるBaile Funkへの距離感を維持したいと思って(笑)。あえて普通に四つ打ちでキックを打ってみたらバウンシーだけど聴いたことない感じのグルーヴが出てきて。これはこれで面白い!ってなったんですよね。

ー Minimal Techno系のキックの質感なんだけど「何か変」みたいな(笑)。

andrew:実はサブベースとかもあまり入れてなくて、コンガとかタムみたいな音を裏で鳴らしてベースのグルーヴを確保するみたいな。そういう配置がBaile Funkでは結構あるんですよね。

ー じゃあ作業工程としてはBaile Funk的だけど、キックをイーブンキックにすることでこの面白さが出てるんだね。

andrew:多分そうですね。更にDetroit Technoみたいにシンセのフィルターがどんどん開いてドラマチックな展開にしてみるという試みですね。

ー これはフロア映えしそうだよね。

andrew:EPの中に1曲は四つ打ちの曲を入れたかったというのもありますね。四つ打ちに俺は「社交性」を強く感じてて。一番普遍的に愛されるリズムパターンじゃないですか。イーブンキックが鳴ってる上では何やってもオッケーというか。自分の中での安心感みたいなものがありますね。

ー Seimei君はこの曲が好きって言ってたよね。

andrew:ああ、そうですね。Seimeiとfutatsukiはこの曲が好きって言ってくれて。シンセの広がり方とか、ボーカルサンプルのキャッチーさとか。

ー 次は「Palm Tree」これが一番最初に出来た曲ってことだよね?

andrew:この曲は最初、直球なUK Funkyを作ろうというところからスタートしました。UK FunkyってHouseでもあるしDancehallでもあるんですけど、近年Baile Funkっぽいビートアプローチのものも出て来てて。それこそRoskaの「Pree Me」とかってスネアがBaile Funk打ちなんですよね。でもBaileなんだけどあんまりスイングしてなくて、尚且つミニマルなグルーヴも保たれてるみたいな。

ー じゃあ、ちょうど「Pree Me」が出た頃に制作を始めたって感じだ。

andrew:今思えばそうなりますね。もう一つ意識したのは、ビートの打ち込みがHouseマナーになり過ぎないようにすること。具体的に言うと、2拍目と4拍目にだけスネアやクラップを入れるリズムパターンにしないところとか。それによって横ノリと縦ノリのどっちでもいける余地を残したかったんですよね。DJで言えばそのあとにハーフのリズムのR&BやRapもかけられるし、極論Discoやハードなテクノもかけられるようなバランスを維持したくて。その塩梅をはじめて作れたのがこの曲かも?結果EP全体でもその部分を意識することになりました。

ー Grimeっぽさを感じるのはそのせいもあるのかな?

andrew:それに関してはベースの音色やフレーズの印象が大きいかもしれません。でもDancehall由来の音楽では、2拍目と4拍目にスネアとかクラップが入ることはほぼないんですよね。だからそういう細かいニュアンスからもGrimeっぽさに辿り着くかもしれないです。
andrew

ー 面白いね。

andrew:俺の中での曲を作る上での構造論というか。

ー それがDJでのプレイしやすさ、フロアユースにも繋がるってことだよね。

andrew:それはあると思います。

ー で、次が「Manic State Riddim」これもまた面白い曲だよね。

andrew:たしかにこれは特に変な曲かもしれないです(笑)。

ー ドラムの感じが「何これ?」みたいな(笑)。

andrew:ちょうどGrimeと向き合った時期があって。去年の年末「やっぱGrimeいいな!!!」ってテンション高くなって一晩で作った曲なんですよ。俺の中でGrimeってストリートでエッヂーでダーティーでマッチョな音楽な反面、特に初期ではWileyの「Eski(Eskimo)」って概念があったり、コミカルな音使いとかアドリブで入れる音がゲームのサントラから取って来てたり、その遊び心の要素も大好きで。

ー それこそ初期Grimeで言ったらX-MENのウルヴァリンのゲーム音楽が最初のGrimeの曲なんじゃないか?みたいな説があるぐらいだもんね。

andrew:そうそう。Grimeが持ってるフィジカルでマッチョな部分も好きなんですけど、そうじゃないコミカルさみたいな部分をもうちょっと自分の音楽には落とし込めそうだなと思って。

ー まさに初期Grimeのゲームっぽい音が使われてるのがこの曲の魅力の一つだよね。更に言うと「Duxi」に続く連続性も感じたし、今回のEPの中で一番攻撃的だよね。

andrew:あと正直この曲が入らないと「Duxi」の意味がわからないなって(笑)。

ー 確かに確かに(笑)。という意味のブリッジの役割を果たしつつ、とはいえこの曲も素晴らしい楽曲なんだけど。まあじゃあこのまま「Duxi」の話を聞こうか。「Duxi」と「Pulse Clap Riddim」って同じ曲なんだけどラップ曲とインストでタイトルを変えたのはどういう意図があったの?


andrew:単純にDancehallへの憧れっすね。Riddim(インスト)はRiddimで名前ついてるとアガるみたいな(笑)。これもfutatsukiに「ややこしいからInstrumentalで良くないか?」って言われたんですけど「いやこれは俺がアガるんで別名をつけさせてください。」って言いました(笑)。あと「Pulse」って言葉をつけると、Grimeが好きな人は「Pulse X」の「ギョーン」っていうベース音を思い出すので、曲名から情報としてどういう曲か気づいてもらえるかなとも思ったんですよね。

ー そこの部分も海外で支持されてる理由なのかもね。

andrew:多少なりともあると思うんですよね。

ー これはまさに初期のGrimeのサウンドだよね。曲の制作期間が短かったという部分も含めて疾走感も出てると思うし。

andrew:ぶっちゃけ一番ラフだけどその分タフになったのかもしれないですね。繊細さはないんで(笑)。

ー 僕もそんなに詳しいわけじゃないけど、むかし故・飯島直樹さんが何かのインタビューで言ってた「ガラージ・ラップ」とか「グライミー・ガラージ」って言葉を連想させる楽曲だったな。

andrew:最近のUK Drill以降のGrimeもメッチャ好きなんですけど、やっぱ初期のGrimeが好きで。今自分が現行でチェックしてるGrimeも初期のスタイルを継承してる人達の方が多いですね。

ー そういう初期のスタイルの人達って減ってきちゃってる印象だけど。

andrew:ここ数年で少しまた元気になってきてるかな?最近は他ジャンルのDJがGrimeをかけることも結構あって、それこそ今回リリース前から「Duxi」をプレイしてくれたBen UFOとか。BLACK GIRL / WHITE GIRLに関しては完全にHard TechnoのDJなので、ダンスミュージックとしての幅の広がりも感じました。

ー 映像みたけどメチャメチャ盛り上がってたもんね。曲に合わせてクラップ叩いてるお客さんも居て。

andrew:いや〜嬉しいです。SeimeiもDJでかけてくれたり、Technoの間にGrimeをかける人が増えてきてるという話を元々してたので、そこの親和性については確信してました。さらにそこでプレイされてるのが最近のUK Drill以降のハーフのスタイルのGrimeじゃなくて、昔ながらのUK Garageスタイルのものだったりするんですよね。

ー UK Garageから派生したGrimeって感じの。

andrew:Grime側のアーティストで言うとGrandmixxerとか、DJだとNeffa-Tという人がいて、TechnoをGrimeに突っ込んだり、逆もやってたりとか。そういうプレイの想定は当初からありましたね。勝手な話ですけど、今自分がGrimeをアップデートできる要素はそこだと思ったというか(笑)。


ー はい、はい。

andrew:一瞬Jersey ClubとかBmoreみたいなドロップにしようかなというアイデアもあったんですけど、今回のEPのコンセプトに合わないかなと思って。最近GrimeとJerseyの合いの子みたいな曲も実際あるにはあるんですけど、EPの最後の曲で入れるにはちょっとテクニカル過ぎるかなと思ったんですよね。スカッと終わらないというか。だったらバンガーなトラックにしようって感じでこういう曲になりました。

ー 結果それが4曲目→5曲目の連続性に繋がっていったような気がするね。じゃあちょうどみなみちゃん(なかむらみなみ)もいるし、「Duxi」の話を聞いていこうかな。

なかむらみなみ:こんにちは。

andrew:ずっと携帯いじってたけど聞いてた?(笑)。

なかむらみなみ:ちゃんと聞いてました!!!

ー 今回はandrew君から歌詞の指示とかはあったの?

なかむらみなみ:歌詞の指示っていうか、しっかりGrimeのスタイルで曲を作るのは初めてだったから、どっちかというと詰め方みたいなとこですかね。

ー 言葉の詰め方とか、リズム感みたいな感じかな?

なかむらみなみ:そうですね!そういうところの方がいっぱい話し合いましたね。

ー ノリ的には今までのみなみちゃんの曲にもないような感じなのかなと思うんだけど。あとこの曲でMEZZちゃんの歌詞(MEZZ & なかむらみなみ「ROYAL MILK TEA」)のサンプリングしてるよね?これも自分から?

なかむらみなみ:あのフレーズ(Sipping tea, spilling tea)を入れたい!ってなったんですけど、私じゃなくてMEZZっちが歌ってるところなんですよね。RECしながら凄く悩んだ結果、聴いてもらえるとわかると思うんですけど色んな声を重ねることにしました。

andrew:特殊なトラックなのでそれに負けないように、いきなりメロディ感があるフレーズが入ったり、語りみたいなアプローチのパートはバリエーションとして入れて欲しいとは話してました。でもそれが直球にGrimeの中に入ると生々しくなっちゃって。だから逆にもっとコミカルな感じにしていこうと思って、エフェクトをかけたり色々な声色で歌ってもらいました。

なかむらみなみ:5パターンくらい録りました、あれを。多分原曲のMEZZっちのロイミ(「ROYAL MILK TEA」)のRECよりも私の方が歌ってますね(笑)。

ー あの部分を一番歌ってる人(笑)。確かにメッチャ重なってるもんね。あとちょっと話が前後しちゃったけどタイトルの「Duxi」って言葉の語感がすごく面白いと思うんだけど、ここは悩んだんじゃないの?

なかむらみなみ:これはアンディ(andrew)からちょうどこのトラックが上がったぐらいの時に雑談で「ローカル・ルールってあった?」みたいな話から「デュクシってあった?」って言葉が出て来て。で、「この曲なんかデュクシじゃね?」みたいな感じで決まっていきましたね。

andrew:まあローカル・ルールの話はマジで全然関係ない雑談だったんですけど。俺の地元の中学では二つにチーム分けする時「グッチー」だったんですよ。それで高校に上がったらみんな他の人達は「グッパー」だったんで凄いディスられて。

ー 「ドロケイ」と「ケイドロ」みたいな話しかな?

andrew:ああ、そうです。そういうのはどっちだった?みたいな話をしてた延長で「え、じゃあデュクシってあった?」みたいな話が出たんですよね。そしたらなかむらみなみの地元ではデュクシってちょっとチョップするとか小突くみたいな感じじゃなくて、普通にグーパンだったんですよ。

なかむらみなみ:グーだった…。

andrew:それメチャクチャ面白いじゃんって。

ー それぞれのデュクシ感。その話は僕も後になって一緒に話したよね。

なかむらみなみ:だからこれは迷って決まったというより、雑談してる時に自然に決まっていった感じですね。「Duxi」のトラックの音も格闘ゲームみたいだったし。

ー みなみちゃんは前に別の曲で「スピニングバードキック」とか「首が長いダルシム」(どちらもRoska「Pree Me ft なかむらみなみ」)ってリリックに入れてたりするから、その辺の相性もいいよね。

andrew:あと「デュクシ」ってワードが自分がGrimeでやりたかったノリを体現してるなって思ったんですよね。マッチョでストイックで攻撃的なGrime、だけじゃない感じにするのに相応しいワードな気がして。コミカルでキャッチーな雰囲気をこんな短く体現しているワードってないなって思ったんですよ。

ー ゲームから出て来た言葉って意味でもGrimeとも繋がっていくし、日本語の言葉ではあるから海外でニュアンスが伝わるのかってとこはあるけど。

andrew:逆にここから伝えていけたら良いなぐらいに思ってます(笑)。

なかむらみなみ:デュクシ・マイスターになります!

ー あとはやっぱりこの「Duxi」って綴りは悩んだんじゃないの?

なかむらみなみ:あ、綴りはマジでデュクシの英語がなかったからアンディと2時間ぐらいどの文字を当てはめるか相談しましたね。

andrew:デュクシを命名する気持ちで、責任重大ですね(笑)。

ー 某格闘ゲームにまで影響を与える可能性あるからね。

andrew:元々やっぱりこの言葉自体「ストリートファイターⅡ」から発生した説が有力っぽいっす。

なかむらみなみ:テレビ番組とかで擬音として真似して使われて広がったみたいですね。それを英語にするっていうのは実は結構大変な作業だったかも。

andrew:最後(英語圏での生活経験がある)Seimeiに「これでデュクシって読ませようと思うんだけど…。」って聞いてみたりして。「まあまあ〜、読めるんじゃない?」みたいな。

ー そこはSeimei君軽いな(笑)。

andrew:ちょっと俺らだけで盛り上がり過ぎた説はありました。

なかむらみなみ:あと「Duxi」の中盤のシャウトの部分!よーく聴いてほしいです。

andrew:どういうこと?

ー ブレイクのところで言ってる内容わかりました?って言われたけど、僕は聴いても全くわからなかったよ(笑)。

なかむらみなみ:1番言いたいことをシャウトしてます!でもさっきのロイミの話の延長で、そのままのせるだけだと悪目立ちっぽく浮いちゃったんですよね。そこをアンディの音楽性で私がやりすぎな部分を上手く間引いて調整してもらいました。

ー 本当に最後の最後までこの曲のレコーディングをやってたよね。

andrew:まあギリギリに作ってしまったのが原因なんですけど。本当は客演のボーカル・トラックって一番最初に作りますよね(笑)。でもこの曲は最後に作りたくて。全てやり尽くした後に全てをぶっ壊すというか。EPの最後とかアルバムの最後に突然Breakcoreとかノイジーな曲でハードに終わるのも好きなんですよ。

なかむらみなみ:わかる!

andrew:「あれ何だったんだろ?」みたいな感覚。「何でこれで終わったんだろ?」みたいな感じにしたい気持ちもあって。そういう意味でも最後にこの曲を入れたんです。

ー 急にボーカルが出てくるってことだけでも結構びっくりする曲だよね。とは言え、みなみちゃんの声ってandrew君のプロデューサータグとしては1曲目からいるからね。

andrew:1曲目の最初の「アンディ」ってタグは自分の中では映画の冒頭に会社のロゴが出てくるみたいなイメージで。自分にとってもシグネイチャーな存在なんですよね。サウンドロゴという意味通りの使い方をしました。

ー そこが、みなみちゃんで始まってみなみちゃんで終わるみたいなところで統一感があったよね。

なかむらみなみ:嬉しい…。

andrew:逆に全体通してタグを多めに入れたのも最後にラップが入る違和感をなくしたいという意図もありました。
andrew

“未知数の夜”を仕掛けるリリース・パーティー

ー あとはこの後の活動についても聞きたいんだけど。

andrew:まずはやっぱりリリパですね。俺リリパめっちゃしたくて(笑)。凄いリリパへの憧れがあるんですよ。

ー そもそも11年まとまった作品をリリースしてないからね(笑)。

andrew:キャリア12年ぐらいで、TREKKIE始めて11年で、俺個人のリリパってしたことなくて。むしろリリパしたいがためにEP出したみたいなところありますね。

ー リリパへの憧れがそんなにあるんだ。

andrew:ありましたね。やっぱりCarpainterが横にいて最初のCDアルバム出した時にリリース・ツアーやって、それに俺も帯同したりとかしてて。他にも、リリース・ツアーもリリパも散々横目で見てきて。ぶっちゃけメッチャ羨ましいなと思ってて。自分の作品出して、自分の純度の高いパーティーを打てるって凄い良いなと。

ー それでやっと出来るとなってこのメンツってことだよね?本当に最高のメンツだね!

andrew

andrew:マジで最初の草案通りのメンツが全員オッケーになって。叶わなかったオファーが1人もなくて。

ー ちょうど決まる前にandrew君と話してて「これが決まったら最高なんですけどね…。」って話をしてたのが本当にちゃんと揃ったよね。

andrew:LIVE HAUS(下北沢LIVE HAUS)で開催できるのも嬉しいです。渋谷でも新宿でもない独特な感じ。まあこれはちょっと後付けなんですけど、あのアートワークは下北沢の方角から捉えた絵になってるんですよ(笑)。LIVE HAUSはフロアの集中度が凄く高い瞬間もあるけど、バーカンの方に行ったらスタッフの方々が温かく迎えてくれるしアットホームで。あと入り口周辺で休める場所もあって。かといってそこがフロアと乖離しすぎてないし。出音もしっかりクラブっぽくチューニングしてくれるし。

ー あそこは本当に良い空間だよね。本来はライブハウスなんだけどクラブっぽい遊び方も出来るし。あと喫煙所の感じが良いんだよね(笑)。タバコ吸わないけど僕もandrew君もいたりとかして。

andrew:そうなんですよね。そこでさっきまでやってたアクトの感想を言い合ったりすぐ出来ますし。

ー そうそう、そこからまたドアから漏れてきた音を聞いて次観に行くか!みたいな。

andrew:今回のコンセプトではここが一番ベストかなって思ったんです。このEP自体クラブ・ツールっぽくない側面もあるから、正直どういうパーティーになるかまだわからない部分もあって。ビートライブっぽい音楽体験的な会にもなりそうだし、グルーヴが続いていく流れにもなりそうだし、逆にバンガーな曲がかかりまくるリワインド祭りみたいな会にもなるかもしれないし。

ー そうか、andrew君のセット自体もまだ未知数って感じ?

andrew:考えてはいるんですけど。でもどういう方向性になっても面白い空間になるのがLIVE HAUSかなと。どちらの場合も素敵な空間になっているのを観たことがあるので、そういう意味でもLIVE HAUSが良いなって思いました。

ー まあそりゃ盛り上がるだろうなって感じで楽しみ!

andrew:全員大好きなアクトなんですけど、強いて言うならキーになるのがisagenかなと思っていて。住んでいる場所の距離の問題で東京であまりプレイできないっていう状況もあり、だからこそ新鮮なポジションかなと。

ー 静岡から京都に引っ越したんだっけ?

andrew:そうですね。なので以前より東京に来てもらうカロリーは高くなってしまったと思うんですけど、isagenはどうしても呼びたくて。TREKKIE TRAXの最初期のアーティストの中でもスペシャルな存在なんです。彼は感情や身体性をストレートに楽曲に表現できるタイプだし、Ableton LiveでDJをするスタイルからもわかりますが、形式よりも自由度を自然に優先できるというか。彼自身はそれを意図してないかもしれませんが、いつも刺激的ですね。

ー 元々彼はバンドマンなんだよね?

andrew:そういう部分もあってか、要素が複雑に絡んでしまった今回のパーティーのコンセプトの中で、風通しを良くしてくれるアクトとして真っ先に彼が浮かびました。もはや自分から進んでどうなるかわからない夜にしたかったんだと思います。他にもこの日呼びたかった大好きなDJは沢山いるんですけど、DJとライブの間みたいな人を入れた方が、どっちかに転んだ時のヤバさみたいなものが引き立つのかなって思ったんですよね。だからisagenには自分の出番の前にやってもらおうと思ってます。「この後どういう夜になるんだろう」みたいな空気にして欲しいですね。

ー 挑戦みたいなね。

andrew:言っといてなんですが、本人が聞いたらめちゃくちゃ荷が重いですね、これ(笑)。今話したのは呼んだ動機の話ですけど、プレイに関してはみんな最高のアクトなので、ただただのびのび自由にプレイしてほしいってだけです。ブッキングされる側からするとこれが1番困るとは思うんですけど(笑)。

ー 僕ももちろん当日は遊びに行くし、みんなに体験しに来て欲しいね!あとは今後のプロデュースワークとか制作の予定は?

andrew:個人名義でいうと次はしっかりクラブにフォーカスした作品集を出したいなと思ってます。本作のEPでは夢を見られたので(笑)。腰を据えて海外のレーベルにも送っていきたいなと。あとはなかむらみなみのプロデュースワークもどんどん進めていきます。

ー 今もうリリースが決まってる部分もいくつかあるの?

andrew:コンピに入る曲やRemixがぼちぼちあったり、あと数曲は年内にリリースされると思います。

ー そちらもお楽しみに!ってことで。本日はandrew君の11年ぶりのEP『Blueprint for The New Paradise EP』についてガッツリとお話を伺いました。ありがとうございました!

andrew:ありがとうございます。とにかくリリパに来てください!!!

andrew

【リリース情報】

▼andrew / Blueprint for The New Paradise EP
andrew
https://www.trekkie-trax.com/ep/andrew-blueprint-for-the-new-paradise-ep

  1. Blueprint for The New Paradise
  2. Daydream
  3. Palm Tree
  4. Manic State Riddim
  5. Duxi feat. なかむらみなみ
  6. Pulse Clap Riddim (Duxi Instrumental) [Bandcamp Only]
  7. Duxi feat. なかむらみなみ (Acapella) [Bandcamp Only]

【イベント情報】

▼andrew from TREKKIE TRAX presents
<Blueprint for The New Paradise EP Release Party>
andrew
at LIVE HAUS Shimokitazawa
2023年9月16日土曜日 – 23:30 Open

DOOR ¥2,000-(No Drink)
Before 24:00 ¥1,500-(No Drink)
U-24 ¥1,000-(No Drink)

・DJs and MC
andrew (TREKKIE TRAX)
feat. なかむらみなみ
FELINE
isagen
K8 (TYO GQOM)
NirBorna
Tenmus (Tribal Connection)

・Exhibition
Sone Takaaki

▼andrew (アンドリュー)
andrew
東京を拠点に活動する Producer / DJ
HipHopやR&B、DiscoやFunkを聴き漁った幼少期を経て、高校時代にMPC1000を購入。楽曲制作を始める。卒業と同時にクラブでのDJプレイも開始し、同時期に発足したレーベル『TREKKIE TRAX』では現在も主宰の一人を務めている。
レーベル運営をするかたわら『ULTRA JAPAN Fes 2015』といったビッグフェスへの出演も果たし、B2Bユニット「TREKKIE TRAX CREW」のコアメンバーとしては日本各地やアメリカ、台湾へのツアーも敢行。現在は毎週末東京のパーティの第一線で活動しながらも、自身のルーツと今のムードに向き合うべく2014年には毎月第二木曜日にバー&サウンドスペース「新宿ドゥースラー」にてレギュラーパーティ『ANDREWラウンジ』をスタート。「温故知新」を常に掲げた真摯なプレイスタイルはローカルのクラブからも高い信頼を獲得している。
楽曲制作の分野で頭角を表したのはFinlandの老舗レーベル『Top Billin』のコンピレーションへの参加がきっかけであった。2014年にリリースされた「Funky Beatz」はSkrillexの主宰するレーベルOWSLAの傘下メディア『NEST HQ』にレビューが掲載。翌年リリースされた「Gear Up」はDubstepやJukeの世界的な認知に深く貢献したレーベル『Hyperdub』のラジオショーや、英国の国営放送局『BBC Radio1』でもプレイされ、国内外問わず通用する楽曲であることを証明してみせた。2020年には『TREKKIE TRAX』より「Bombtrack feat. なかむらみなみ, Peavis & Saint Vega」をリリース。GqomやUK Funkyといった彼の得意とするクラブサウンドをベースに客演陣の縦横無尽なラップが組み合わさった本楽曲は後にUK Funkyの第一人者として活躍する「Roska」によるRemixもリリースされ日本語詞にも関わらずワールドワイドな展開をみせることとなった。さらに同年末にはUKはロンドンのFMラジオ局『Reprezent Radio』『NTS Radio』にもGuest Mixを提供、2021年には同国の『Rinse FM』にてBen UFOがホストを務めるHessle AudioのプログラムにTREKKIE TRAX Takeoverとして出演を果たした。
もちろん国内アーティストからのラブコールも熱く「Part2Style」「80KIDZ」「Nature Danger Gang」「Carpainter」「4s4ki」「Peavis」にはオフィシャルRemixを提供。また2018年にはHIPHOP ユニット「TENG GANG STARR」のバックDJを担当し、現在は後にソロデビューしたラッパー「なかむらみなみ」のトータルサウンドプロデュースも手がけている。
またその活動はラジオパーソナリティにまで広がり、日本最大のダンスミュージック専門インターネットラジオ局『Block.fm』にてTREKKIE TRAXのSeimei&Taimeiと共に番組『Rewind!!!』を2013年末よりスタート(2018年より『TREKKIE TRAX RADIO』に改名)。

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