Kanye Westのニューアルバム『ye』リスニングイベント後、正式リリースへ

Kanye Westのニューアルバム『ye』がリスニングイベント中継後、正式にグローバルリリースされた。
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2018.06.01 17:00

Kanye West(カニエ・ウェスト)がスタジオのあるワイオミングの山中から「WAV」アプリを介し、リスニングイベントを行ったことはblock.fmでもお伝えしたとおり。噂のアルバム『ye』はイベント後、Tidal、Spotify、iTunes、Apple Musicなどで正式にグローバルリリースされた。


参考記事:Kanye Westが噂の新アルバム『ye』リスニングイベントをスマホアプリでライブ配信! 





『ye』は全7曲。Ty Dolla $ign、Valee、John Legendら多数のアーティストが作品に関わっている


『ye』は『Life of Pablo』以来2年ぶりとなるスタジオアルバムとなる。数々の言動と行動で、世界中に話題と論争を振りまいてきたKanye Westのニューアルバムはリスニングイベントからあっという間の正式リリースとなった。


参考記事:今からでも分かる! Kanye Westの物議を醸す発言集。一体何が起こっているのか。


全7曲入りのアルバムには先行で公開された 「Lift Yourself」、 T.I. を迎えた対談形式の楽曲「Ye vs. the People」は含まれていない。


参考記事:Kanye Westが新曲を発表! T.Iと“あの問題”についてバトっているらしい!?


The FADERによるとTy Dolla $ign(タイダラーサイン)、Kid Cudi(キッド・クディ)、Jeremih(ジェレミー)、Young Thug(ヤングサグ)、070 Shake(070シェイク)、Charlie Wilson(チャーリー・ウィルソン)、 PARTYNEXTDOOR(パーティネクストドア)、Valee(ヴァレー)、John Legend(ジョンレジェンド)、DeJ Loaf(デージ・ローフ)、Nicki Minaj(ニッキー・ミナージ)と幅広いアーティストがなんらかのかたちで参加に関わり、共同作曲者(co-writing)はFrancis and the Lights(フランシズアンドザライツ)がクレジットされている。





アルバムのカバーはワイオミングで撮られたiPhoneの写真


Kim Kardashian(キム・カーダシアン)のTweetによると、カバーに使われている写真はリスニングイベントの前に、Kanyeが自身のiPhoneで撮ったものだという。お、おう。という感じだが、綺麗な写真。



数々の言動で世界中のファンとヘイターをひっくり返してきたKanye。一体どんなアルバムが出るのかと待ちわびていたリスナーに対し、新作『ye』は意外にもすんなりと毎朝届く新聞のように人々の耳に届けられた。


同時にこのアルバムにおけるさまざまな考察や分析が今後行われていくはずだ。Kanyeはそれをどんな風に見つめるだろう。Esquireは『ye』のサウンドを「泣きながら助けを求めているようだ」と表している。






『ye』以降のYeはこれからどうなるのだろうか


とあるラジオ番組に出演した、編集者・ライターの速水健朗が「見方を変えればKanyeはHIP HOPアーティストとしてもっとも健全かもしれない」と評した。これはChildish Gambino(チャイルディッシュ・ガンビーノ)の「This Is America」について自身の見解を述べた際に出た言葉である。この言葉が個人的には昨今のKanye論争のなかでいちばん納得のいくものであった。


清水健朗は「どちらも勇気がいること」としてRCサクセションの忌野清志郎が「君が代」をパンク調にアレンジし、国への反抗を表現したことに糸井重里が「つまらない」と批判したエピソードを引き合いに出した。こじらせた反骨心を歌ってきたアーティストが真っ当な政治批判をしたらそれは“普通”=“マジメ”すぎてつまらない。ということである。


XXXTANTATION(XXXテンタシオン)や6ix9ine(シックスナイン)がウケていることから分かる通り、HIP HOPは今も昔も、根幹にあるのはカウンターカルチャーでありアウトローの文化だ。体制や貧困への不満、お金への憧れ、差別に対する怒り。そして退屈な日常を楽しもうとする喜びが詰まっている。


不自由から生まれた音楽はメインストリームとなり自由を得た。HIP HOPのカウンター表現もまた変化していく。今、HIP HOPはじめブラックミュージックアーティストのほとんどがリベラル思想を持っている。ブラックミュージックに限らずアーティストとは常にリベラルな思想を持ちあわせているのが“普通”だ。


そんな中でKanyeは、トランプ支持を打ち出した。そして彼は復活させたTwitter上で訥々と“自由思考”であることを唱えつづけている。


ここからはあくまで推察に過ぎないが、“普通”のアーティストがリベラルであるべきという思考に凝り固められてしまっているとしたら、HIP HOPはそうであってはならないのだ。反旗をひるがえし、脱却しなければならない。そうでなければHIP HOPのクリエイティビティとアイデンティティは失われてしまう。ともすればKanyeがとっている行動は、清水健朗が言った“KanyeがHIP HOPアーティストとしてはもっとも健全”であるという言葉とイコールで結ばれる図式が成り立つ。


彼は全米ナンバーワンの“アウトロー”ドナルド・トランプと手を取り、真っ赤な“MAGA”キャップを被った。予想通りKanyeはさらに孤立していく。「トランプ支持なんてありえない」と思うのが“普通”だからだ。まさにそれこそが狙いで、Kanyeの一連の行動や言動は“普通”の思考に迎合するポップカルチャーへのKanyeなりのカウンターとはいえないだろうか。


しかし、政治に加え奴隷制について、黒人の人種差別問題が関わってくるとなると話が複雑になってくる。Kanye自身のルーツ、アイデンティティにも関わってくることだからだ。トランプに対する擁護や迎合も「HIP HOPは自由で、権力に属さない高潔なるアウトローの文化だ」という主張を目的としているとしたら、逆を突きすぎるあまり自身の発言がブーメランとなってしまっているように思える。かくしてKanyeはすっかり嫌われ者となってしまった。


参考記事:Kanye Westの言動を批判するアーティストたちが出現


Kanyeが“Kanye West”でなくなってしまったことを悲しむ人々は新たなヒーローを追い求める。そこでセンセーショナルに登場したのがChildish Gambinoである。「This is America」のバイラルは少なからず、“Kanyeロス”に対するフラストレーションの反動が影響していると思われる。Kanyeの忌み嫌われぶりがはからずもバイラルヒットを生み出す、火種のひとつとして一役買ったのだ。


こじらせた天才の手によってワイオミングの山中で創造された音楽はアーティストKanye Westの評価にどのように影響するのだろうか。Kanye関連作品ではすでに発売しているPusha T(プッシャT)のアルバム『DAYTONA』に続き、Nas(ナズ)のアルバム、Kid Cudiのアルバムが控えている。『ye』を聴きつつ、今後のYeの動向を見守っていきたい。






written by Tomy Mochizukiy


source:https://www.esquire.com/entertainment/music/a21049646/kanye-west-ye-album-review-2018/

http://www.brooklynvegan.com/kanye-west-officially-releases-new-album-ye-listen/

http://www.thefader.com/2018/06/01/kanye-west-ye-cover-iphone

http://www.thefader.com/2018/06/01/kanye-west-ye-album-credits


photo:『Ye』iTunes



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