日本文化に夢中な映画監督ウェス・アンダーソンが『犬ヶ島』で描く日本人も忘れがちな日本観とは?

「ファンタスティック Mr.Fox」以来のストップモーションアニメに挑戦したウェス・アンダーソン監督。日本を最新作の舞台に選んだのは、そのあふれる日本愛からだった。
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2018.04.09 10:00

先日、ベルリン国際映画祭にて、ウェス・アンダーソン監督最新作『犬ヶ島』がプレミア上映された。



題が示す通り、犬が主役のSFムービーで、なぜだか日本を模した架空の近未来都市、"メガサキ"が舞台となっている。アンダーソン監督はなぜ日本を題材に取り入れたのだろうか。その理由について、インタビューで応えている。


「日本の映画だったり、アートに建築… とにかく日本が大好きなんだ」


アンダーソン監督は、制作する上で間違いなく日本の文化や美的様式から影響を受けていると話した。特に、日本人の几帳面さに感銘を受けることが多いんだそう。


「ある男が毒を盛るシーケンスを映画に入れ込んだんだけど、(毒を飲み込んでしまうシーンより)食材を準備する時間を多く撮った。寿司を弁当箱に詰め込んで、弁当箱をスリーブに入れて、それからバッグに、箱に…そしてさらにラッピングするんだ。まさに日本で物を買う時の光景そのものなんだよ。それぞれ正確に完璧に包装される。そういうところが好きなんだ」




葛飾北斎、歌川広重など、浮世絵に魅せられて


『ムーンライズ・キングダム』でアンダーソン監督と脚本を共著したロマン・コッポラが、ある日アンダーソン監督に日本の伝統的な彫刻画のひとつである“浮世絵”をプレゼントしたところ、監督はすっかりその魅力に取り憑かれてしまったとのこと。


ともにインタビューに応えたジェイソン・シュワルツマンは「彼の家は、何年もかけて集めたすごい数の浮世絵で埋め尽くされてるよ。『ダージリン急行』を撮る前も、インドのポストカードやアクセサリーなんかが至る所にあって。きっとそういうコレクションが、彼のセンスに繋がってるんだね」と語り、アンダーソン監督の収集グセが、監督自身の映画制作のヒントとなっていることを明かした。


印象的な口ヒゲを蓄えた人物がシュワルツマン


異種動物間のノンバーバルな愛情がテーマに


前述の通り、『犬ヶ島』は近未来の日本をモチーフにした世界で起きるSF映画だ。主人公の小林アタリという人間の少年が、愛犬の行方を追って、犬の隔離収容島である犬ヶ島を探索する、という冒険譚となっている。英語圏で上映される際、人間は日本語を話し、犬は英語で会話するのだが、人間の日本語に英語字幕はつけられていない。その理由について問われたアンダーソン監督は「ただのお楽しみ要素のひとつというわけじゃなくて、このストーリーを真摯に伝える手段なんだ」と、伝わらないことそのものが、この映画の本質であると説明した。


「アタリと犬たちとの会話が翻訳されていないことで、とても惹きつけられるシーンがあるんだ。ちゃんと理解できない状態で、お互いにコミュニケーションをとっているのが印象的で。種族の違う動物同士が通じ合おうとトライするっていうアイデアは、すごくいいと思うよ」と、シュワルツマンも監督の意見に同調していた。


アンダーソン監督の日本愛にあふれたこの作品は、日本という国が親日の外国人からどのような見られ方をしているのか、ということも率直に伝わる内容になっているはずだ。きっと我々日本人でも知り得ない日本の魅力に気づかせてくれるだろう。日本での公開は今年5月25日を予定している。


参考元:

http://www.dazeddigital.com/film-tv/article/39512/1/wes-anderson-jason-schwartzman-isle-of-dogs-interview


Written by Kenji Takeda

Photo:Wall Street Journal

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