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Dubstep以来の発明か?今、UKで躍進する新ジャンル「Wave」とは?

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ロンドンから発信される最新音楽はネットから現実への移行を目指す
2017/04/29 17:45
admin
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Written by Jun FukunagaPhoto by Soner Dogan photography via Yusoul Facebook

2010年以降の代表的なインターネットミュージック「Vaporwave」。近年、その手法を取り入れた、Simpsonwaveや、Future Funkといった派生ジャンルを生み出してきたが、今年に入り、「Wave」系と呼ばれるカテゴリーの中から新ジャンルが注目を集め、インターネット上のみならず、世界のクラブミュージックの中心地であるロンドンを拠点に盛り上がりを見せている。


Vaporwaveから派生した新ジャンルの名前はシンプルに「Wave」と呼称され、今では、それがこれまでの本拠地であったインターネットを飛び出し、特にロンドンではDubstep以来の発明として、UKの大物DJや、有名クラブだけでなく、海外音楽メディアが特集を組むなど、期待の新ジャンルとして紹介されることも少なくない。Waveの音楽の特徴は、Vaporwave風のトラックに、DubstepやTrap、Grime由来のサブベース要素をブレンドしたものであり、Vaporwaveが80年代~90年代のPopsやラウンジ音楽をスクリューさせてピッチダウンさせたサンプルのコラージュを基本手法にして制作されていたことに対し、Waveは、全体的にダークでひんやりと冷たい印象を与える仕上がりではあるものの、醒めたような甘美なシンセメロディーに重きを置いており、映画音楽的な要素も持っている。また、一般的にこれまでのTrapや、GrimeといったBass Musicが、マッチョで男性的なスタンスで作られていることに対し、Waveはどこか女性的なしなやかさを感じるのが特徴だとMixmagは説明している。

また、その起源は、先述のVaporwaveと同じように、インターネットにあり、SoundcloudとTumblrを通じて、年齢制限によりクラブに足を運ぶことができない10代を中心としたトラックメイカーと、オンラインで3Dアートなどを発表するグラフィックアーティスト達の交流の場として発展。その後、このジャンルの総本山として知られるコレクティブ「Wavemob」がシーンの中核を担い、ファンはオンライン掲示板RedditとSoundcloudを駆使し、その新情報を得ることに余念がないという現象を巻き起こしている。Waveは、Vaporwaveからの派生ジャンルの1つという面があり、成り立ち方などで類似点が見られるが、音楽性以外にも作品アートワークが90年代のレトロPC風が印象的だったVaporwaveに対し、Waveはクールな印象を与える3Dアートワークが採用されるなど違いが挙げられるが、その最も大きな相違点は、活動スタンスに見られる。これまでの他のインターネットミュージックのムーブメントは、通常ネット上から飛び出したとしてもリアルなクラブミュージックのムーブメントとしては市民権を得ることが出来ずにあくまでネット上のトレンドとして完結することが多いが、Waveは、それに反して「URL to IRL」、つまり、ネットから現実世界への進出を掲げており、ジャンルの現実世界での本拠地であるロンドンでは、レーベル/イベント「Yusoul」によるレギュラーイベントが行われており、ファンのミーティングポイントとなっている。

このように今では現実世界に進出しているWaveだが、この音楽はクラブで聴くという点でも非常に興味深い。その理由は、先述のとおり、そもそもはクラブに行くことが出来ない10代達がベッドルームで作っていた音楽であり、クラブを実際に体験したことがないということから、クラブでの鳴り方などは一切気にせず作られており、テンポも一般的なTrap、DubstepがBPM140なことに対し、このジャンルではBPM100~140(メインは120~140)とレンジも広い。ロンドンの有名クラブfabricのブログに掲載されたシーンの中心人物の1人であるKarefulのインタビューによれば、夜9時頃のライブイベントタイムではBPM100~120でプレイし、オールナイトイベントでは、BPM140でプレイするそうで、普段はジャンルによってある程度決まったテンポでプレイするクラブDJとしても興味深いジャンルと言える。

そのこれまでなかった新感覚に目をつけたのが、ロンドンのDJ、Plasticianだ。彼は、BBCによるWaveシーンを紹介したドキュメンタリーで、ロンドン発のDubstep、Grimeリバイバルの次に来る音楽を探していた時に見つけたのが、このWaveだと語っており、それ以来、自身がRinse FMで持つ番組で、Waveのプロデューサーを積極的に紹介することを続けている。また、同じく大物DJのToddla Tもこのジャンルをフックアップしている1人で、ブリストルでもBBCのホストThadeous Matthewsがサポートを表明。そして、先述のYusoulは、今では有名ネットラジオRadar RadioでのWaveに特化した番組を持っており、影響力を持つDJやメディアと連動することで、ロンドンが産み出した「Dubstepの次の可能性」としてのこのジャンルの規模を日夜拡大し続けている。

ここまでWaveという音楽の成り立ちや、現在の状況を説明してきたが、最後にこのジャンルを知る上で、重要なアーティスト、音源を紹介したい。まずは先ほど名前を挙げたKareful。すでに先述のPlasticianに見初められ、彼がfabricで行ったレーベルナイトや、バルセロナの有名クラブにも出演を果たすなど、いち早く「URL to IRL」の道を歩んでいるアーティストだ。その他にも彼と一緒にラジオ番組を担当するLTHLKlimeksSkitなどが中心的なアーティストだと言える。また、Waveシーンを知る上で、聴いておきたいプロモMixとしては、KarefulがMixmagに提供したシーンのショーケス的なDJ Mixが最適だろう。

今、UK、ロンドン発の最新ミュージックとして現地のクラブミュージックシーンからの期待を背負い、注目されるWaveは、インターネットのコミュニティーを通じて、アメリカ、カナダなど北米にも伝播し、にわかに盛り上がりを見せつつある。今回の記事を読んで興味を持った人は、コレクティブ「Wavemob」などにアクセスして、この新ジャンルの最新情報をチェックしてみて欲しい。

Waveは、果たして本当にDubstep以来の発明となるのか?今後の動向を注視していきたい。

参考:

http://mixmag.net/feature/wave-the-emotive-new-genre-with-its-own-icy-ecosystem/2

https://www.fabriclondon.com/blog/view/introducing-kareful-and-his-mighty-mix

https://wavemob.net/2017/04/10/wave-a-bbc-mini-documentary/

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