Dubstep以来の発明「Wave」の中心人物Karefulが語るシーンの現在とは?

Waveを構成する要素からオススメの音源、実際に行われているイベントなどについてインタビュー
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2017.05.23 21:30
Written by Jun Fukunaga

Photo by Liquid Ritual


現在、UK・ロンドンを拠点にDubstep以来の発明と目され、若い世代を中心に盛り上がりを見せている新ジャンル「Wave」。同じようにインターネットを発祥地とする、これまでのVaporwaveなどのインターネットベースのダンスミュージックとは違い、「URL to IRL」を掲げ、現実世界でのムーブメント化を目指すこのジャンルは、Trap的なビートフォームを基調としながらも、レンジの広いテンポ、クラブでのプレイを前提としない自由な音の作りなどが注目され、シーンのクリエーターと同世代のファンだけでなく、PlasticianのようなUKのビッグネーム達や、音楽メディアからの支持を得て、現在進行形で躍進を続けている。そんな中、この「Wave」のムーブメントをさらに加速させることを目的に、シーンの中心人物であるKarefulが、すでにRadar Radioでホストを務めているラジオ番組「Liquid Ritual」と同名のレーベルをスタートさせ、5/19に1stリリースとなる「Fractals」を、先述の番組で供にホストを務めるLTHLと共同リリースした。

しかし、すでにロンドンでは注目されているこのジャンルだが、そこから遠く離れた日本からすれば、まだまだ未知のものであるということには間違いない。今回、その全貌を把握すべくblock.fmではKarefulに対し、「Wave」の実態や、レーベルのコンセプトなどについてインタビューを行ってみた。

▶︎Kareful インタビュー・新しく「Liquid Ritual」というレーベルを始動させましたが、レーベルのコンセプトはどのようなものでしょうか?


Kareful(以下K): このレーベルに対して求めている役割はいくつもあって、ただのレーベル以上のものにしたいと思っているだ。例えば、”Wave”に関して興味を持っている人たちのハブになるようなもの、ただリリースしたり、それをプロモーションするだけでなく、シーンがグローバルな舞台で発展するようにカバーしていくものにしたいんだ。確かにシーンはオンラインの世界ではよく知られているけど、それ以外では、一体”Wave”というシーンの中で一体何が起こっているのかを追いかけていくことはまだまだ難しいんだ。だから、Liquid Ritualの立ち位置としては、シーンに興味をもった新しいリスナーやメディア関係者が気軽にWaveについての情報を得ることができる存在を目指している。それこそ音楽やラジオ、またはイベント、記事、インタビューを通してね。


・今回「Fractals」を共同プロデュースしたLTHLとは、一緒にRadar Radioで番組のホストを務めているくらいだから気の合う仲間だと思いますが、彼とは最初どのように出会ったのですか?また彼の音楽的センスについてはどのように考えていますか?


K: LTHLとは最初に彼のショーを見た後にすぐに出会ったよ。その時、彼がDJでプレイしていた‘untitled’という曲は本当にクレイジーなトラックで、僕が元々好きなキャッチーなメロディー、イかれたベースライン、トリッピーなパーカッションといった要素を持っていた。その後、その曲をネットで探し出して、彼のEPのプロモーションを手伝っていたんだけど、その時期にRadar Radioからこのプロモーションのために番組へのゲスト出演をオファーされたんだ。そして、その番組は大成功して、ネット上のWaveファンはもちろん、イギリスのラジオファンからも高く評価してもらうことができたし、それをきっかけにRadar Radioで、僕のSoundcloudにアップしていたようなWaveスタイルと、彼のUKGスタイルが融合したような今の番組を持つことになったんだ。今ではそのスタイルが僕らの番組の象徴になっているし、それは僕らのコラボレーション曲の「Fractals」にも反映されているんだ。


・その「Fractals」ですが、もしあなた達の音楽をまだよく知らないという人に簡単に一言で説明するとしたら、どのように説明しますか?


K:一言で説明するのは難しいんだけど、”Wavey”かな。最近はこの一言で自分の音楽を表現することが多いんだよね。でもトラックとしては、Trap, Dubstep, Drum and bass, Grimeなんかのこれまでの全てのベースミュージックの影響を受けていると言えるね。こんな感じで色々な要素が混ざっているんだけど、こういう音楽のことを多くの人々は”Wave”って最近は読んでいるかな。また、ジャンルを表すための呼称は必要だし、ハッピーではあるけれども、僕が考える”Wave”というジャンルはひとつ限りの”Wave”という要素を持っているものではなくて、色々なジャンルの要素をミックスして組み合わせた上で成立したものなんだ。そもそもそれがこのジャンルが生まれたきっかけだしね。


・正直なところ、UKとは違い、日本ではまだ”Wave”がよく知られているとは言えない状況です。でも以前、block.fmでも紹介したことがきっかけとなり、このジャンルに興味を持った人が増えてきているように思います。そこでもし、そのような人がWaveシーンのアーティストやリリースなどについてもっとよく知りたいと思った場合、そういった情報はどこで入手すればよいのでしょうか?また、ロンドンで実際に”Wave”をクラブで聴きたいと思ったらどのイベントがオススメですか


K: まず音源を知りたいなら「Liquid Ritual」が作成したこのSpotifyのプレイリストをチェックするといいよ。

あとリリース前の新譜の情報をいち早く知りたいなら、僕らのラジオ番組が1番かな。プレイするのはほとんどリリース前のものだしね。
それとWaveに関するニュースについて知りたいなら「Liquid Ritual」のfacebookをフォローしておくことをオススメするよ。このシーンに関する情報の全てをカバーしているから良い情報源になると思う。それともうすぐブログも開設する予定だから、それも一緒にチェックして欲しい。イベントに関しては、Plasticianがサウスロンドンのブリクストンで主催している「Survey London」っていうイベントを強くオススメしたい。それとSkitと僕がやっている「Yusoul」かな。まだこのイベントの規模は他の有名なロンドンのクラブイベントに比べたら規模は小さいけど、ロンドンのシーンでは間違いなくこの2つが2大巨頭だと思う。あとは、「Liquid Ritual」もイベントシリーズを近いうちにスタートさせる予定だよ。


・WaveとVaporwave、それの派生ジャンルであるSimpsonwaveなどとの最大の違いはどういった部分でしょうか?


K: そうだね、まず唯一リンクする部分があるとしたら、それは名前に”wave”という単語が付いているところくらいかな。でもなぜ、そういったジャンルと僕らのジャンルが結びついているような側面を見せてしまうのかは僕らとしてもよくわからないんだ。でも思うに、そういったジャンルはインターネットつまりURLをベースにしたもので、皮肉やパロディーとして作られているものだし、”Wave”は「IRL」、現実世界を舞台にしたものであるから別物だと思っている。その証拠にロンドンではクラブイベントも実際に行われているし、偉大なUKベースミュージックのパイオニア達からのサポートを受けているしね。別にそういったジャンルに異議を唱えるわけではないけど、Wave自体はそこではなく、音楽的にも別のところをルーツにしていると考えているよ。


・近年、このシーンは成長を続けているように見えますが、現在の状況をどのように見ていますか?また、これ以上の発展は可能だと思いますか?


K: そうだね、2012年からこのシーンに身を置いているけど、その頃は音源をリリースするようなレーベルもなければ、そういった音楽を発信するプラットフォームない、まだまだ赤子のような状態だった。当初は単純なもので、言うなればラッパーのためのインストを作っているって感じだったしね。でも数年経って、シーンのプロデューサーの制作スキルは上がったし、音楽的にも複雑的になった。それと構造的にもボーカルが加わるように変化を遂げたという感じだね。僕の目にはそのタイミングで真の意味でシーンが生まれたように見えたよ。みんながそれに興奮して巻き込まれていったようにも見えたしね。それにその頃、UKのDJ達はこのコミュニティーの発展を次のレベルに押し上げるために手助けしないといけないことに気づいたんだんだと思う。今では僕もそのチームの重要な一員になっていると思うし、シーンは更なる発展に向かっていると思う。また、音楽的にもこのジャンルは成長、変化を続けていると考えているよ。これまでに”Wave”のトラックの良い「公式」となるようなものを見てきたと思うし、それは衝撃を僕らに与えてくれるものだったけど、個人的には、いつも少しずつ別の要素を加えた制作スタイルを模索している。確かにこんな風に別の要素を取り入れ続けていたら、いつか自分の音楽が”Wave”以外のサブジャンルの1つとして呼ばれるようになるかもしれないと考えることはあるけど、色々な要素を取り込み変化し続けることも”Wave”というジャンルが持つ要素なんだ。


・シーンには日本人のプロデューサーは存在するのでしょうか?


K: 残念ながら個人的には知らないよ。でも必要だと思っている。もし、日本人で”Wave”を制作しているなら、今がシーンに飛び込むには非常に良い時期だと思うね。


・最後に今後来日してパフォーマンスを行う予定はありますか?また、日本のプロモーターやオーガナイザーがあなたをブッキングするにはどこにコンタクトを取ればよいのでしょうか?


K: 実は、日本を含むアジアツアーが今年の9月に予定されているんだよ。それについては、Waveをアジアに持ち込める良い機会となるからとても興奮しているんだ。それに”日本”という響きには常にインスパイアされているしね。もしブッキングを考えているなら僕のマネージメント(dltm.mgmt@gmail.com)にコンタクトしてくれたら嬉しいよ。


これまで謎が多かったこの”Wave”についてKarefulは、その成り立ち、派生ジャンルと思われていたVaporwaveとの違い、Waveのトラックの形態、今のUKでの立ち位置、状況といったシーンやジャンルの核心に触れる部分を語ってくれた。彼が来日する10月に生の”Wave”を体験してみたい人は、レーベルのSNSをフォローしてこまめに情報をチェックしてみよう。なお、リリースされた「Liquid Ritual」からの新曲「Fractals」の詳細は下記のとおり。


【リリース情報】

Title: Fractals

Artist: Kareful & LTHL

Label: Liquid Ritual

その他の購入、ストリーミング先は下記リンクにて。http://smarturl.it/fractals

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