昭和歌謡やAORが再注目されるのはなぜ? 今、知っておきたい和モノレアグルーヴ事情

NHKラジオが特集番組を放送、海外でも竹内まりやや山下達郎特集が組まれるなど人気になっている。
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2018.09.26 03:00

近年、寺田創一ら90年代の和製ハウスや、高田ミドリ、清水靖晃らによる80年代のニューエイジ/アンビエントが世界中で再評価されている中、一方でインターネット上では、山下達郎や秋元薫の曲が、Future Funk(フューチャーファンク)と呼ばれるネット発のフィルターハウスにおけるサンプリングネタとして人気を博していたりと、日本の和物レアグルーヴと呼ばれる音源は、国内外で人気になっている。そのせいか、最近では日本人も知らないような古い和モノ音源を求めて、街中のレコード店でレコードをディグする外国人観光客の姿を見かけることも多くなったように思える。




インターネットから広がり世界を魅了する和モノレアグルーヴ 


そんな中、NHKラジオ第1では、そのブームを特集する「昭和歌謡リターンズ!~和モノグルーヴで世界が踊る」を9月17日放送。司会はベテランミュージシャンの近田春夫と女優、モデルの高田都が務め、ゲストとして、tofubeats、MURO、須永辰緒が出演し、それぞれにオススメのレアグルーヴを紹介するなど、この手のジャンルに興味を持つ音楽ファンにとっては珠玉の放送内容となった。そんな番組では、冒頭から和物レアグルーヴを買い求めに日本のレコード店にやってきた海外のハードコア音楽ファンに対して行ったインタビューを放送。そこでは「60〜80年代の日本の歌謡曲を探しにきた」と答える者がいたり、Future Funk、竹内まりや「プラスティック・ラブ」といった単語も出てきたため、このブームが本当に海外の音楽ファンを魅了していることを実感した。



今、海外の和モノレアグルーヴファンの間で人気の亜蘭知子『浮遊空間』 とは?


また取材先のレコード店のスタッフによると、和モノを購入する層では、Future Funkの影響から興味を持った若者や海外からの観光客が増加傾向にあるそうなのだが、最近では、特に海外からの観光客は、80年代のニューウェーブ寄りの和物レアグルーヴを目当てにやってくることようになったとのこと。その中でも最近リイシューされた亜蘭知子の『浮遊空間』というアルバムが人気を集めているそうだ。ちなみにオリジナル盤は、1983年にリリースされ、プロデュースは、ビーインググループの創始者である長戸大幸が担当。80年代の日本の音楽に対する海外での再評価を象徴する作品の1つと評されている作品で、収録曲では特に「I'm In Love」の80sモダンファンク/コズミックディスコ感が、Future Funk系のサンプリングネタとしても重宝されそうな印象を受ける。




tofubeats、MURO、須永辰緒が紹介する和モノレアグルーヴ  


そんな番組ではまず1組目のゲストとしてtofubeatsが登場。週1ペースで中古レコードを探しに出かけるという彼は、番組では、東北新幹線(Narumin & Etsu)の「Up And Down」を紹介。同曲はDiscogsで調べてみると、オリジナルは1982年にリリースされたアルバム『Thru Traffic』に収録されていたもののようだ。ちなみにtofubeatsによると、このグループは山下達郎のライブでコーラスを担当していたこともあるそうで、よくDJでもプレイしているとのこと。ほかには、松原みきの「真夜中のドア〜Stay With Me」を紹介。こちらもオリジナル盤が1979年にリリースされた和物レアグルーヴだ。



次に2組目のゲストとして登場した”キング・オブ・ディギン”ことMUROは、いつもレコードバッグに入れている和モノレアグルーヴ曲は、山下達郎の「Windy Lady」と吉田美奈子の「恋は流星 –SHOOTING STAR OF LOVE–」だということを明かした。また番組では和物レアグルーヴのDJミックスも公開。そちらでは、当山ひとみの「Kissしたい - Wanna Kiss」、Future Funkでもサンプリング対象として人気の八神純子による「IMAGINATION」などがプレイされていた。




3組目のゲストとして登場した須永辰緒は、山下達郎、大瀧詠一、大貫妙子のようなAOR/シティーポップ系の中から厳選した曲を常にレコードバッグの中に入っていると語り、DJ中に困った時は山下達郎が鉄板だということも明かしている。特に山下達郎の中では「LOVE SPACE」、「LOVELAND, ISLAND」は、音の粒立ちが良く、洋楽と繋げてかけても違和感がないとのこと。また和物レアグルーヴを使ったDJミックスではプレイされたのは青木三奈の「オープニング "MOANIN'"~伊勢佐木町ブルース」、クリエーションの「ロンリー・ハート(Lonely Hearts)」、竹内まりやの「September」などだった。



和物レアグルーヴに造詣が深い3組が紹介したレア曲の数々は、レコードディガーだけでなく、若いFuture Funkファンにとっても非常に興味深いものだったのではないだろうか? 是非とも「昭和歌謡リターンズ!」の第2弾が放送されることに期待したいものだ。




竹内まりや「プラスティック・ラブ」がYouTubeで人気に 


和モノレアグルーヴでいえば、海外のファンによる、ラジオでも名前が挙がった竹内まりや「プラスティック・ラブ」とDaft Punkの名曲「Something About Us」をマッシュアップした動画が最近、YouTubeで人気になっている。



ほかにもネット上で人気を博す「プラスティック・ラブ」とは一体、なんぞや? ということを英語で竹内まりやのキャリアや、昨今のミーム化するMVの事例などを絡めて多角的に考察していく解説動画「What is Plastic Love ?」も公開後、約1ヶ月半ほどで、36万回以上再生される人気動画になっている。こういった事例を見ると、改めて日本のレアグルーヴに対する海外からの注目度が増していることがよくわかる。




ロンドンのラジオ局が和モノレアグルーヴをアーカイヴする「EIGHTIES JAPAN」 


最新のオルタナティヴなクラブミュージックを放送するロンドンの人気ネットラジオ局NTSもまた和モノレアグルーヴに注目している音楽プラットフォームだ。同局では現在、日本の80年代音楽にフォーカスした内容の番組をアーカイヴするカテゴリー「EIGHTIES JAPAN」を開設しており、注目を集めている。



そちらでは、これまでに放送された坂本龍一がナビゲーターを務めた番組や細野晴臣/YMO特集、モデルでDJとしても活動する水原佑果によるYMO縛りDJミックスといったものから、山下達郎縛りの特集、70~80年代の日本のアイドル特集など様々な和モノレアグルーヴを聴くことができる。




その中でも特に興味深いのは、『WHO'S THAT GIRL? (JAPANESE ALL-GIRLS SPECIAL)』という特集番組。有名和モノレアグルーヴとして知られる寺田創一プロデュースによる島田奈美「Sunshower」や近田春夫プロデュースによる小泉今日子のハウス曲「Fade Out」をはじめ、矢野顕子、浅川マキの曲などが紹介されており、内容は相当ドープなものになっている。



このように国内外で人気を集める和モノレアグルーヴは、ネット上での注目やリイシュー盤の発売を通じて、以前よりもさらに広がりを見せており、そのコアな世界は数年前より確実に規模を拡大させているように思える。そのため、今後も日本人が知らないところで、忘れ去られた日本のレア曲が発掘され、再評価、逆輸入されるという流れはしばらく続きそうだ。 


最後に筆者のオススメ和モノレアグルーヴを1曲ご紹介。アニソン界の御大である水木一郎が松本茂之名義で歌う70年代のアニメ『侍ジャイアンツ』のテーマ曲「侍ジャイアンツ」のオケは、スウィング感抜群で最近のJ-POPにはないジャジーさを醸し出している。個人的には是非今こそ再評価されてほしいトラックだ。



written by Jun Fukunaga


source:

http://www4.nhk.or.jp/P5062/

https://tower.jp/article/feature_item/2018/08/28/0702

https://www.discogs.com/ja/%E6%9D%B1%E5%8C%97%E6%96%B0%E5%B9%B9%E7%B7%9A-Thru-Traffic/master/1236749

https://www.nts.live/radio/collections/80-s-japan


Photo: doldolmarling



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