インタビュー|「これからは“ルーツ”で音楽を語る時代」VivaOlaが考える音楽の新しいジャンル観

待望の1stフルアルバム『Juliet is the moon』をリリースしたVivaOlaにアルバムのコンセプトや制作、コラボレーションアーティストについて、また“ルーツ”で考える音楽について話を聞いた。
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2021.09.02 09:00

新進気鋭のR&Bシンガー / プロデューサーVivaOlaが初のフルアルバムをリリースする。先に結論からお伝えすると、このアルバムは歌詞、メロディ、トラック、全ての基準を一つ上のステージに持ち上げてしまう、次世代のスタンダードとなりそうな予感のする傑作だ。


リリースされる楽曲はどれもコアな音楽ファン層から高い評価を得ており、多くのプレイリストに掲載されている。


アルバムにはYonYon、starRoといった音楽シーンをリードするクリエイターや、これまでも共演しているZIN、Wez Atlasといった次世代を担うアーティストが参加。まさに待望のアルバムと言えるだろう。


インタビューでは作曲手法やジャンル観、まさかのフリー音源を使っている話など、新世代ならではの新しい視点や思考を垣間見ることができた。





***


―まず、アルバムのコンセプトやアルバムタイトル『Juliet is the moon』に込められた意味を教えてください。


VivaOla:タイトルのとおり、シェイクスピアの『ロミオとジュリエット』がコンセプトとなったアルバムです。ただ、ストーリーにインスパイアされているのではなく、作中に登場する、例えば太陽と月のような対比的なメタファーをモチーフにしています。アルバムタイトルは作中のロミオの台詞「Juliet is the sun」から、sunというメタファーをmoonにすり替えました。


1つの楽曲に1つのテーマがあり、アルバム全体でストーリーになるように作っています。二人が出会い、愛し合い、破局し、一方が傷ついてその後も人生が続いていくといった物語です。タイトルにあるmoonは、月が三日月になり半月になり満月になるように人も変わっていくという要素も込めました。


ただ、ストーリーといってもあまり物語について言及したくないんですよね。半分くらいは抽象性を残して、聴いた人のそれぞれの人生の状況によって捉え方が変わってくるように作りました。


―初のフルアルバムということで、アルバム制作においてはこれまでのシングルやミニアルバムにはない難しさがありましたか?


VivaOla:今回のアルバムはたくさんの人と制作したので、単純なコミュニケーションが意外に難しかったですね。コラボしたミュージシャンやプロデューサーとのコミュニケーションもそうですし、どのようにプロモーションしていくかなども含めて関わる全ての人との意思疎通は丁寧に行いました。


普通のビジネスでもそうだと思うんですが、特に音楽という抽象的な媒体で一緒に仕事をしているので、しっかりとしたビジョンを共有して同じ方向へ向かうことが大事なんじゃないかと思っています。


ミニアルバム『STRANDED』のときは単純に音楽のために音楽をやっていたという感じでしたが、今回はビジョンや成し遂げたいことなど強い目的意識に加え、音楽で何かを具現化させたいという思いや、アルバムとしてのコンセプトも意識して作ったこともあって、これまでとは注力する部分がまた大きく違いました。


―今回、多くの人と制作をするという決断をしたのはどういう経緯だったんですか?


VivaOla:“セルフプロデュース”というとすごいことのように考えられがちですが、自分の感覚としてはそのほうが簡単だと思うんですよ。自分のできることを自分のやりたい規模感でやっているということですから。今回は人を巻き込むことでどれだけ等身大の自分を拡張させられるか、自分が知り得ないような場所まで届けることができないだろうかと考え、多くの人の力を借りたいという結論に至りました。


―このアルバムはいつ頃から計画されていたんですか?


VivaOla:アルバムを作りたいと思ったのは2020年の12月に「nocturnalis」というシングルを出した頃で、新年明けた時に仕事始めの感覚で1曲目の「Saving Grace」を作り始め、3月頃にはほぼ全曲できていました。と言ってもコラボレーション作品についてはトップライン(歌メロ)と歌詞と簡単なデモを用意して送った、という状態でしたが。


―アルバムを作りたいと思ってから2ヶ月ほどで骨子となる部分は完成していたと。制作のスピードはかなり速いですね。


VivaOla:そうですね、留学中に色々学んだ成果と言えるかもしれません。ラッパーの人で、そんなに考え込まずにぱっと書いて作っちゃう人っているじゃないですか。細かい言葉遣いに少し悩むくらいで。僕もあの感覚に近いのかもしれません。


曲は作ろうと思えばいくらでも作っていられるので、曲を作るのは昼の12時から18時までと決めています。今は音楽が仕事になったので、メンタル面できつくなるような残業はしたくないなと思っていて(笑)。


―かなりのホワイト企業ですね(笑)。


VivaOla:そうなんです。アーティストのドキュメンタリー作品をよく観ていたんですが、そういう生活の人が意外と多かったんですよ。締め切りがないとか曲を作る理由がないときは作らないので“毎日が土曜日”(「Vise le haut」のリリックからの引用)ですね(笑)。


―制作以外の時間はどのように過ごされるんですか?


VivaOla:美味しいものを食べたり友人や彼女と遊びに行ったり、あとゲームが好きなのでモンハンをやったり。ちょうど今(インタビュー時)は、アルバムは完成しているけどまだリリースされていないから、次の曲を作るような気持ちにもなれず少し宙ぶらりんという感じで。だからこういうときは良いインプットの時期なんだと考えるようにしています。例えば自分が本当に好きだったアーティストの作品を聴き直したり、SerumやProphet 5といったシンセのソフトウェア版を買って勉強したりしています。





「これからの時代はルーツ、僕の曲がR&Bなのかどうかはまぁ自由に議論してもらえればいい」音楽ジャンルが複雑化する時代のジャンル観


―VivaOlaさんはご自身の音楽ジャンルをどのように考えていらっしゃいますか?


VivaOla:ジャンルについてよく聞かれるんですけど、最近自分の中で納得している答えとしては、もう音楽をジャンルで話す時代ではなくなっていて、ルーツで考える時代なんだと思っています。例えば人でも自分の名前や職業は選べると思うんですけど、自分のルーツは選べないと思うんですよ。その“ルーツ”という意味で言うとやはり僕のルーツはR&Bだと思っています。ただ、アウトプットするものにはジャズやソウル、ヒップホップからの影響も強いんですが、とにかくルーツはR&Bなんです。


なにがR&Bかというのは例えば日本とアメリカでも結構価値観が違いますし、僕の曲がR&Bなのかどうかは、まぁ自由に議論してもらえればいいと思っています。僕のルーツはR&Bで僕のやるべきことをやっていればそれでいいと思っていて、リスナーに対しても「このジャンルだ」と強要したいとは思っていないですね。


―音楽的にその“ルーツ”感が出ているのはどのあたりだと思いますか?


VivaOla:自分の楽曲をR&Bたらしめているものは、歌詞の世界観と歌かな。R&Bは恋愛についての歌詞が圧倒的に多いので、そこからどう広げられるのかを意識することが多いです。恋愛の心情やそこから生まれる禍々しい感情、人の本音の部分などを歌詞にしてみたり。技術的な面ではメロディーをペンタトニックで作るけれど、例えばJ-Popなどで使われるペンタトニックの使い方とは少し変える、というところは意識しています。


フェイクやボーカルランなど歌い回しも気にしていますね。ポップスではR&Bをかすったようなフェイクが多いですが、色々なアーティストから勉強して、自分が好きな人はどのルーツからその歌い回しがくるのか、その先人たちはどんな歌い回し方をしていたのか、それを知った上で自分がどうしたいのか、という部分まで考えて表現しています。


あとはボーカルのトーンも重要な要素だと思っていて。どういう音色でどういう内容を歌うのか、もし同じ内容やメロディだとしても歌の音色でジャンル感がでるのかなと思っています。


―アルバムの中では1曲目「Saving Grace(Intro)」で、R&Bとしては独特なコード進行を感じられますね。これもやはり何らかのルーツからの影響があるのでしょうか?


VivaOla:「Saving Grace(Intro)」はソウル・R&Bと捉えると答えが出ないものになります。どちらかというとヒップホップに近い考え方をしました。いわゆるコード進行的な解釈をコーダル、モード的な解釈をモーダルというのですが、この曲やヒップホップなどはモーダル的な考え方をしています。全体のコードに対するスケール感でメロディがありつつも色鮮やかというよりは、結局ひとつの音に戻ってくるような感じですね。



VivaOla:今回参加いただいたZINさんも僕もR&Bがルーツにありますが、最近の人はルーツが1つの音楽であるということはあまりなくて、ZINさんはネオソウルやソウル、僕はポップスやヒップホップをもう一つのルーツに持っています。


それが顕著にわかるのが2人で作った「My Moon」。この曲では2人ともリズムを刻むんですが解釈に違いがあり、ZINさんのリズムはD'AngeloとかErykah Badu、Donny Hathawayのようなリズミカルさでスウィング感がある。対して僕はBryson Tillerとか昨今のヒップホップ的な淡白なリズムが好きで、似ているようで違う部分が表現されています。



―なるほど。こういったルーツの違いを感じることは他の曲にもありましたか?


VivaOla:9曲目「Over The Moon」ではSagiri Sólさんが参加しているんですけど、ルーツの違いからハモリ方が違うんですよね。何度でハモるか、もしくはそもそもどこでハモるのか、とか。その結果、ピアノがずっと入っているアレンジなんですが、僕のパートはベースだけでピアノを全部取っちゃったりしています。



―今回の参加アーティストはどういう形で決まったんですか?


VivaOla:ZINさんとは以前「Runway」のリミックスでご一緒して。このアルバムでは日本語を増やしたいと思っていたんですが、ZINさんの書く日本語の歌詞がすごくいいなと思っていたのでお願いしました。


もともとZINさんの曲がすごく好きで、「Runway」のリミックスも僕から連絡してお願いしたんです。とにかくお互いにリスペクトしている関係ですね。


YonYonさんに関しては、曲がある程度までできた時点で誰にオファーしようか考えていて。候補に挙がっていた中にYonYonさんのお名前があり、僕も知っている方だったので連絡を取って、気づいたら1曲出来上がっていました。



VivaOla:starRoさんはSoulectionの一員としてかなり有名でしたし、以前からいちリスナーとしてYouTubeを見たり活動は追っていました。運良く会えることになってその後にリミックスをお願いして。今回もアルバムに参加していただくことができました。


starRoさんとの「All This Time」は先行リリースしたのですが、僕の周りだとオルタナ好きやUKロックのアングラなバンド好きにすごく受けていましたね。メロディーはすごくポップなんですけどアレンジが少し複雑で。僕はこのくらい振り切ったものが好きです。


アレンジは全てstarRoさんが行ってくれました。僕は「ここは少し下げてください」とか少しお願いをしたくらいで、ほぼそのままです。2人で「この曲でキューバに行きましょう」なんて話をしながら作りました(笑)。



―今回は他にもたくさんのコラボレーションワークがありますが、制作過程が印象に残った楽曲はありましたか?


VivaOla:ぱっと思いつくものだと8曲目の「Mixed Feelings」です。僕もメンバーであるコレクティブ<Solgasa>のmichel ko君のプロデュースもしているKRICK君がプロデュースしてくれたのですが、デモを3回くらいすべて却下したんです。「ダサくない?」とか言って何度も戻したんですが、最終的にKRICK君の得意な感じで作ったデモがきて、それがめちゃくちゃ良かったんですよ。それで「Mixed Feelings」ができました。



―ご自身の作業で難航した部分はありましたか?


VivaOla:7曲目の「Waste」はボーカル・プロダクションにこだわったんですが、ミックス作業にめちゃくちゃ時間がかかりました…。難航どころでは済まない状態で、1ヶ月くらい毎日毎日やっていたので、「もう聴きたくない」と思うほどでしたね。だから本当に最近まで、子離れできない毒親のような心情でその曲と関わっていたんですが、最近ようやく客観的に聴けるようになりました。この曲も最終的にはすごく良いものになっているのでぜひ聴いてほしいです。



―ご自身でミックスをされているということですが、マスタリングはどうされているんですか?


VivaOla:マスタリングは塩田 浩さんにお願いしています。今すごく人気の売れっ子エンジニアさんで、これまでも何度かお願いしていますが毎回すばらしいマスタリングをしてくれます。塩田さんにマスタリングをお願いすることで、ミックスについても勉強になりましたね。塩田さんは若い感性を持っている上に、柔軟で優しい人で。年上の人が何かアドバイスしてくれるという感じではなく、「前にこんなことがあってね」という話から、いろんなことに気づかせてくれるというか。


マスタリングエンジニア 塩田 浩さん

https://twitter.com/shiota_hiroshi?s=20


https://saltfieldmastering.com/


―塩田さんとは信頼関係ができている感じですね。


VivaOla:はい。4曲目の「Love you bad」も思うようにいかなくて、マスターをもらった後に5回ぐらいやり直しをお願いしてしまって…。マスタリングだけでなくミックスから5回やり直していたので、最後の方は塩田さんにも「神経質になりすぎだよ」って言われたり。でも「お願いします」って言うと次の朝には送ってくれていました。そんなこともあったのに、「またスタジオに遊びに来てください」なんて言ってくれるんです。本当にお世話になりました。





音作りではシンセをたくさん買うより、DAWデフォルトの音を作り込むほうに振り切る


―全編を通してキーボードの音色もこだわりを感じます。音源やソフトウェアはどういうものを使っているんですか?


VivaOla:LABSという無料で配布している音源がすごく音が良くてよく使っています。過去作だと「nocturnalis」のアップライトピアノもこの音源ですし、エレピなどもいい音ですよ。例えばOuter Lands SynthのようなLogicにデフォルトで入っているプリセットもよく使います。ベーシックな音はプラグインチェーンの違いで全然違う音色を作れるじゃないですか。そこがVivaOla流みたいな部分かもしれません。


KanyeとかFrank Oceanを聴いて、シンプルなピアノひとつでも作り込むことでこんなにかっこいいのかって思ったんですよね。だからシンセをたくさん買うよりも音を作り込むほうに振り切るようになりました。


―エフェクトプラグインも、Logicに最初から入っているものでやっていたりするんですか?


VivaOla:コンプやEQは最初から入っているものでもできないといけないなと思いますが、より良い音や精密な作業をするために外部のものも使っています。例えばFabFilter Q3とか、それでなければできないというわけではないですが、ベーシックなEQを使いこなせている場合は導入をおすすめします。フィルターやRC20などのサチュレーション系などDAWのデフォルトにはないものもあるので、そういうものは買いますね。


―ドラムについてはどのような制作方法をされているんですか?


VivaOla:ドラムはすべてサンプルを直接貼り付けていて、MIDIは使っていません。サンプルもSpliceは使っておらず、Redditで拾ってきたり。いわゆる変態側だと思うんですけど(笑)。サンプルを直接エディットした方が、頭をずらしたりとか細かい調整がやりやすいんですよね。曲作りにおいてリズムにはかなり時間をかけていて、歌を除いたらドラムとベースを作っている時間が8割と言ってもいいかもしれないです。


コードは変に人っぽく打ち込むのはあまり好きではなくて、実は結構シンプルなものが多いですし。個人的な好みなのですが、やっぱり踊れなきゃ意味ないなと思っています。そうなるとピアノやコードよりもリズムなんです。


―そこに曲の核となるVivaOlaさんの透き通るような綺麗さと悲しさみたいなものがまざったボーカルがグッときますね。最後になりますが、今回のアルバムでの聴きどころや、こう聴いてほしいといったメッセージがあればお願いします。


VivaOla:全インタビューの中で1番難しい質問です(笑)。全部いいので全部、と言いたくなりますね(笑)。強いて言うならスマホの小さなスピーカーではなく、パソコン用などの小さくてもいいので普通のスピーカーやヘッドフォン、イヤフォンでちゃんと音を鳴らして聴いていただけると嬉しいです。





【リリース情報】




アーティスト名: VivaOla

タイトル: Juliet is the moon

Release: 2021.9.1

Format: CD / Digital

Label: HIP LAND MUSIC


Track:

1.Saving Grace (Intro)

2.Not Enough For You

3.My Moon (feat. ZIN)

4.Love you bad (feat. YonYon)

5.All This Time

6.Goodbye

7.Waste

8.Mixed Feelings

9.Over The Moon (feat. Sagiri Sol)

10.Two Years (Outro)


配信リンク

https://VivaOla.lnk.to/Jitm


【ライブ情報】


VivaOla「Juliet is the moon」Release Party

11/20(土)@渋谷WWW

OPEN 17:00 / START 18:00

¥3,500-(税込/オールスタンディング/1Drink別)

オフィシャル先行

期間:9/1(水) 18:00~9/12(日)23:59

https://eplus.jp/sf/sys/comingsoon.html

出演 : VivaOla

GUEST : YonYon / and more


【イベント出演情報】


VivaOla出演予定

ODD BRICK FESTIVAL 2021

日時 2021年9月26日(日)

開場10:00am / 開演11:00am

会場 横浜赤レンガ倉庫特設会場

https://oddbrickfes.com/


【アーティスト情報】




VivaOla

Instagram: https://www.instagram.com/viva0la


twitter: https://twitter.com/viva0la


【FRIENDSHIP.】

https://friendship.mu/



written by Yui Tamura






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