「レジェンドから突然DMが届いて、最初は目を疑った」名門レーベルからEPをリリースしたVelocityが語る“発信し続けること”の大切さ

先日ドラムンベース名門レーベルよりEPをリリースしたDJ/プロデューサーのVelocityにインタビュー。
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2019.02.27 08:00

先日Liquid Funkの名門レーベル「Liquid V」からEPをリリースした、ドラムンベースのDJ/プロデューサーであるVelocity。シーンではレジェンド級のMC、Fatsを迎えた楽曲『Hide & Seek』と『We Gotcha Junglist』は国内外から多くの反響を得ている。今回block.fmでは、名門レーベルからリリースすることになった経緯や制作裏話を本人に語ってもらった。





ーまずはレーベル「Liquid V」からリリースすることになったきっかけは何だったのでしょうか?


Velocity(以下、V):そもそも「Liquid V」が何なのかというと、90年代ドラムンベースを支えてきた「V Recordings」のLiquid Funk部門として、2000年初頭にオーナーのBryan Geeが立ち上げたドラムンベースレーベルです。オーナーのBryanとの出会いは2000年でした。今も開催されているDJ AKiさん主催のドラムンベースパーティー「06S」の外タレのアテンドを、DJ KEiTAと一緒に行っていた時期があったんですが、その時にたくさんのアーティストと出会う機会がありました。DJ Marky、dBridge、Fabio、Friction、Pendulum、Hype…など。駆け出しの僕にとってはヒーロー達ばかりで、その中にレーベルオーナーのBryan Geeもいたんです。




その後Bryanと話す機会は5年ほど無かったのですが、2012年、僕が「Human Elements」から『Walk On By』という曲をリリースした際、彼から直接「曲良いね!」と連絡をもらったんです。そこからどんどん未リリース曲を送るように言われて。まあ送っても特に音沙汰はなかったんですけど(笑)。僕の曲が彼のラジオでプレイされたこともありましたが「Liquid V」と契約するという話はなく、「なかなか難しいな…」と思っていたんです。そんな中、今回のMC Fatsとの曲を聴いてくれて、すぐに「Liquid V」からリリースしようという話になって。あまりリリースを意識していないタイミングだったので正直びっくりしましたね。


ーMC Fatsとはどういった経緯で知り合うことになったのですか?


V:Fatsは昔からいるドラムンベース レジェンドMCの一人で、DJ Hype『Peace Love & Unity』やCalibre『Drop It Down』などのクラシックを産み出しているアーティストです。



もちろん彼のことは一方的に知っていましたがつい最近まで接点はなく、アメリカ人のJason MaginというラジオDJが僕の曲を彼に聴かせてくれたことからコネクションが繋がりました。

連絡が来た時の事ははっきり覚えていて、弟と一緒にラーメン屋でご飯を食べている時にFacebookに突然メッセージが来たんです。彼の本名で連絡が来たので誰だかわからず、よく見たらFatsって書いてあって目を疑いましたね(笑)。



MC Fatsから届いたメッセージ


きっかけになったJason Maginは有名なDJではないかもしれませんが、「Bassdrive」という大手ラジオ局のDJを担当していて数多くのプロデューサーとコネクションがあるんです。僕も色々な人を紹介してもらいました。Lenzmanも確か彼からの紹介だった気がしますし、Fatsとコネクションを繋げてくれた張本人なのでとても感謝しています。若い駆け出しのプロデューサーは彼に曲を送ってみるのも良いかもしれませんね。


ー今回のEP制作で、苦労されたことなどはありましたか?


V:『Hide & Seek』は結構苦労しました。元々この曲はインストとしてかなり前に作っていて、他のレーベルからリリースが決まっていたんです。でもそのレーベルからはリリースがなさそうだったので、Fatsに「こんな曲もあるよ」って感じで送ったらボーカルが乗って返って来ました。ただ、どうも自分の中でインストの印象が強すぎてしっくりこなかったので、Fatsの盟友A-Sidesに相談して「こうしたら?」みたいな感じでアドバイスをもらってなんとか形になりました。




『We Gotcha Junglist』は比較的思い通りにいったのですが、ちょうど作っている時に家を改修工事する事になり、集合住宅の仮住まいに引っ越したタイミングで制作しなければいけなかったのが辛かったですね。それまでは深夜でも何も気にせず大きな音を出して制作していたのですが、ご近所さんの迷惑を考えると音も出せないし、ヘッドフォンで作ることに慣れていなかったのでその辺に苦労しました。




ー無事リリースを迎えた今の心境はいかがでしょう?


V:ホッとしたという感想はありますが、良い意味で全く達成感がないのでそれは自分にとって良かったと思います。正直な話、一応名門ではありますが「Liquid V」からシングルをリリースしたからといって、自分がドラムンベースシーンの中心に入り込めるとは1mmも思っていないんですね。もっとリリースを重ねていかないとな、と。やはり「Liquid V」からLPを出すくらいじゃないとこのゲームには乗り込んでいけないと考えているので、もっとクォリティの高いトラックを量産してもっと多くの人に認められるようになりたいです。


ただ、日本のリスナーさんに多く聴いていただけていることと、世界中のDJ/プロデューサーから何百とフィードバックが来ているのは素直に嬉しいです。大きなレーベルだとこんなに聴いてもらえているんだなーと感心してしまいました(笑)。大抵プロモフィードバックには「これは好きじゃない。星1つ!」みたいなフィードバックがいくつかあるんですけど、今回はなぜかほぼないんですよね。ドラムンベースアーティストから評価を貰えたのももちろんですが、DMC世界チャンピオンのDJ Crazeからも良いフィードバックをもらえたのが特に嬉しくて。元々僕はHip Hopが好きなので、彼が僕の曲を聴いてくれているというのはとてもありがたいです。ドラムンベースもよくプレイしている人なので、いつかコンタクトも取ってみたいなと思いました。


あとは「V Recordings」のプロモーションチームがすごく丁寧で「こういう案があるけどどうかな?」とか「何かしてみたいことある?」とか日本の企業間のやりとりをしている感覚になりました(笑)。この記事は日本語なのでわからないと思いますけど、スタッフのAlexとGarethにはこの場を借りて感謝を伝えたいです。





ー日本のクリエイターが海外でもっと活躍するために必要だと感じていらっしゃることはありますか?


V:昔は「ああした方が良い!こうした方が良い!」なんて色々言ったりしていましたが、今の若いプロデューサーは技術もあるし、参考になる制作動画がYouTubeとかにたくさんあるので、こうした方が良いと言うことはありません。最近では大阪のMountainをはじめ、九州のOshirijimaや、maidable、Tomoyoshi、そして先日blockfmでインタビューされていたIttiなど、日本人が海外のレーベルからリリースをする人が多くなっているので、彼らにコンタクトしてみるのも良いと思います。海外至上主義というわけではないですけど、やはりドラムンベースはイギリスから生まれた音楽なので、そこで勝負しているプロデューサーとリンクするのも良い方法ですね。あと横の繋がりというか、同じくらいのレベルのプロデューサーを見つけて仲良くなり、一緒に情報共有しながら進んでいくっていうのもステップアップの一つかなと思います。


これから曲作りを始める初心者の方たちに向けてアドバイスできるとすれば、今すぐ“がむしゃらにやってみる”ということでしょうか。


僕はDJからプロデューサーになったタイプの人間で、曲作りを始めるまでは楽器も全く触ったことがなかったし、音楽理論なんて何もわからない状態でした。DJは長くやっていたので、若いうちから比較的大きな舞台でプレイもさせていただいていたし、自分たちのパーティーも大成功とまでは言いませんがそれなりに形にはなっていました。だから僕自身、DJプレイにはそれなりに自信があったんです。


ただ曲作りに関して言えば超初心者からのスタートだったので、自分の曲がいかに低レベルで、ひどいものだというのはわかっていました。なので自分のDJプレイに自分の曲を組み込むのが、昔はすごく恥ずかしかったんですよ。急に音圧は下がるしお客さんの足は止まるし(笑)。なので、正直プレイするのが嫌だなと思っていた時期が結構ありました。自分のプレイに変なプライドがあったんですよね。


でもある時から「なんだその小さなプライド」 と思うようになって、「出来なくて当たり前だからもっと披露していこう」という思考に変わってからは、DJプレイでもなんとか自分のセットに組み込もうと努力したし、今でいうSoundCloudのような音楽SNSのmyspaceというものに自分の曲をアップしていきました。そこにアップした『Shadow Roll』という曲をMakotoさんがたまたま聴いてくださって、「Human Elements」からリリースすることになり自信がついてきましたね。今でもここが僕のプロデューサーライフの原点です。



プロデューサーライフの原点となったMakotoとのやり取り


音楽に関わらず、作品は披露していかないと日の目を見ることもなくひっそりと終わってしまうことが多いと思うので、若いうちはどんどんアピールしていって良いんじゃないかなと考えています。僕から見ても、日本人はアクションしない人が多いように感じています。海外の若いプロデューサーからはしつこいくらいに連絡来ますから(笑)。まずは出来ないなりに1曲を完成させて色々な人に意見を求めてみるのが良いのではないでしょうか。20代後半から作曲を始めた音楽初心者の僕でさえ、世界の色々な国のレーベルから曲をリリース出来ているので自信を持ってください。リリースが増えれば海外の友達もできるし良いことばかりですよ(笑)。



ー最後に、今後の活動で決まっているものがあれば教えてください。


V:現在はいくつかのレーベルとサインしているのですが、直近だと「Jazzsticks」というレーベルからリリースがあると思います。「Jazzsticks」はPaul SGという僕の大好きなプロデューサーが立ち上げた、今年10周年を迎えるレーベルです。そこからリリースされる『Untitled Roller』は自分でも気に入っている楽曲なので、早く皆さんにお届けできたら嬉しいです。他では大阪で活躍しているMountainくんとのコラボを始め、いくつかの共作も進んでいます。

DJに関しては、青山Zeroで開催しているパーティ「Human Elements」を中心にプレイしていますが、呼ばれれば日本全国どこでもいきますので気軽にお声がけください。次回の「Human Elements」は3/30に青山Zeroで開催します。MakotoさんがUKに移住して不在のことが多いのでもう少し自分が引っ張っていけるように仲間たちと一緒に頑張りたいと思っています。




【リリース情報】


Velocity & MC Fats

We Gotcha Junglist / Hide & Seek


https://dbapp.io/go/lv074/



【プロフィール】


Velocity (Human Elements / Liquid V)  




2003年2月、DJ、Designer、VJから構成される7NiNE Productionsの設立に参加。同年、7NiNE ProductionsがオーガナイズするマンスリーのドラムンベースパーティーZEROの始動に伴い、渋谷WombでレジデントDJを務める。2008年Pioneer主催のC.N.S (CDJ New Style) Battle の第一回大会でCDJ、Mixer、Effect を巧みに操り、そのスキルを余すこと無く発揮した結果、準優勝の栄冠に輝き日本トップクラスの実力を証明した。オリジナルチューンがMarky, Bailey, Bryan Gee, Fabio, Random Movement, Makoto, Lenzman, A-Sides さらにはBBC Radio 1でFrictionによりプレイされるなど、世界中のDJ にサポートされている中、HE:Digital よりVelocity & Key MC - Ladder がリリースされ、収録されたアルバム"Something We Can Do" がiTunes Store JapanのElectronicチャート1位、Beatportシングルチャートで20位台を記録し、同年2011冬には同レーベルより自身初の4曲入りのConcentration EPをリリースし話題を呼ぶ。2014年には本場イギリスのドラムンベースパーティーinnerSoul @ Plan BでプレイしUKデビューを果たした。2016年にはVelocity - Jelly Break がJuno Recordsのバイナルセールスチャートで1位を獲得。さらに同年、Makoto によるレーベルHuman Elementsより“Night Owl EP” やFokuz RecordingsからSatl & Velocity - Set It Outを発表。同曲はDrum&Bass Arenaの年間ベストコンピレーションにも選出された。2017年にはVelocity & Key - Rebirthのバイナルリリースを始め、世界各国から多くのリリースを残している。そして2019年、名門Liquid VよりMC Fats との共作 ”We Gotcha Junglist”, “Hide & Seek” がリリースされ大きな話題を呼んでいる。現在DJ Marky によるレーベルInnerground を始め、Jazzsticksなど世界各国からのリリースを控えている。


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written by 編集部



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