宇多田ヒカルがアルバム『Fantôme』に小袋成彬を引っ張り出したワケ

宇多田ヒカル復帰第1弾アルバム『Fantôme』
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2020.03.24 00:00

宇多田ヒカル復帰第1弾アルバム『Fantôme』


『Fantôme』は長い休養期間から復帰した宇多田ヒカルが、2016年に発表した復帰第1弾アルバムだ。朝ドラやCMタイアップ曲、他では有名アーティストとのコラボレーション楽曲などが収録されている。そのコラボレーション楽曲だが、ゲストボーカルの1人に小袋成彬というアーティストの名前があるのをご存じだろうか。




世代を超えて愛される、宇多田ヒカルというアーティスト


小袋成彬がどういう人物なのかを紹介する前に、まず宇多田ヒカルの経歴をざっと振り返っていきたい。宇多田ヒカルがデビューしたのは20世紀も終わりが見えてきた1998年のことだ。リアルタイムを知っている方は「天井が低い」というワードを聞いて、思わずにやりとされるかもしれない。宇多田ヒカルのデビューシングル「Automatic」は、楽曲の素晴らしさはもちろん、MVにおける独特な世界観でも世間の注目を集めていたのだ。


一体どういう構成だったかと言うと、宇多田ヒカルが腰を屈めながらカメラと正対し、身体でリズムを刻みながら歌唱するというものだった。その様はまるで天井が低い部屋で歌っているかのようで、一部では大いに茶化す向きもあった。しかしどれだけ茶化されたところで楽曲が持つ魅力が損なわれることはなく、むしろその話題性も利用して”宇多田ヒカル”というアーティストの世間に対する認知度は加速度的に広まっていった。


そして宇多田ヒカルの人気を決定づけたのが1999年に発売され、ドラマ主題歌にも抜擢されたサードシングル「First Love」だ。当時の宇多田ヒカルはまだ10代だったが、大人びた切ない歌詞とメロディーが多くの人の胸を打ち、デビューから1年も経たない間にトップアーティストとしての地位を不動のものとした。その後活動期間にブランクが挟まれているのは前述した通りだが、復帰後もその人気に陰りは全く見られなかった。むしろそのブランクのおかげでファンの年代層は広がったと言えるかもしれない。長期間楽曲を発表していない時期がありながら高い支持を集め続けている事実が、宇多田ヒカルのアーティストとしての実力が本物だということを証明しているのではないだろうか。そしてその復帰作が件の『Fantôme』であり、小袋成彬との接点もそこで生まれている。



宇多田ヒカルが惚れ込んだ小袋成彬という才能


小袋成彬は2014年に音楽レーベル「Tokyo Recording」を立ち上げており、他アーティストへの歌詞提供やプロデュースを手掛けている。つまり『Fantôme』にゲストボーカルとして参加したときは裏方の人間だったわけだが、自らアーティストとして活動したことがないわけではない。澄んだ張りのある歌声と文学的な歌詞が特徴で、2015年に解散したR&Bユニット・N.O.R.Kのボーカルとして歌声を披露していたこともあるのだ。


レーベルの話に戻すとその活躍は目覚ましく、設立後間もなく音楽業界から一目置かれる存在となった「Tokyo Recording」は、音楽雑誌やファッション雑誌で特集が組まれる程注目を集める存在となった。このように音楽での仕事は順風満帆と言ってよく、業界での地位を確立しつつある小袋成彬だったが、その歌声を宇多田ヒカルが知ったことによって立ち位置に変化が生じ始める。歌詞提供やプロデュースといった裏方から、再び自身の声を表舞台で披露していくという変化だ。


宇多田ヒカルに招かれる形で参加した『Fantôme』において、小袋成彬は「ともだち」という楽曲でその歌声を披露している。コーラスとしての参加なので、聞く人によってはあまり印象に残らないかもしれない。『Fantôme』にはコラボレーション楽曲が3曲収録されていて、そのうちの2曲はゲストボーカルがソロパートを担当している。ソロパートを与えられていないのは小袋成彬だけなのだ。しかしこれは宇多田ヒカルが小袋成彬の声を評価していないというわけでは決してないだろう。宇多田ヒカルは小袋成彬の歌声を聞いたとき、「この才能を埋もれさせてはならない」といった旨の発言をしているのだ。事実、『Fantôme』発売以降も2人の繋がりは続いていく。



宇多田ヒカルによるプロデュースでデビュー


小袋成彬が宇多田ヒカルプロデュースの元、ソロアーティストとしてデビューすると発表されたのが2018年1月のことである。それと同時にデビューアルバムからのカットシングル「Lonely One feat.宇多田ヒカル」もリリースされた。それから3ヵ月後の4月、ファーストアルバム『分離派の夏』を携えてついにメジャーデビューを果たしている。音楽配信ランキングでも上位を記録しているあたり、期待値は高いと言えるだろう。


しかしその後の小袋成彬の活躍は表舞台だけに留まらない。元々生業としていた裏方としても成果を上げているのだ。アニメーションの音楽を手掛けたり、プロデュースしたアーティストがCMソングを担当したりとその活躍は多岐にわたる。テレビや雑誌、ラジオ等メディアへの露出も益々増えているので、世間の認知度も恐らく増していくだろう。


宇多田ヒカルという本物のアーティストが惚れ込んだ小袋成彬という才能が、この先どれだけ花開くかは誰にも分からない。しかしここまでの活躍を見る限り、その才能は順調に開花していると言えるのではないだろうか。小袋成彬が宇多田ヒカルのような世代を超えて愛されるアーティストになる日も、そう遠くはないかもしれない。




written by 編集部


photo: https://www.universal-music.co.jp/utada-hikaru/products/tyct-60101/

https://www.sonymusic.co.jp/artist/nariakiobukuro/profile/


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