アフリカのストリートに吹くJ-POPの風。アーティスト集団「Urban Cohesion」インタビュー

「今夜はブギー・バック」「白日」などのカバー動画が話題のアーティスト集団「Urban Cohesion」。そのマネジメントに携わる現地の日本人スタッフに話を聞いた。
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2020.03.23 10:30

Written by TOMYTOMIO


SNS上でしばしば見かけるアフリカの路上パフォーマンスの動画。グルーヴィーな演奏によって奏でられるメロディはどこか聞き覚えがあり、なんと歌詞も日本語だ。これはアフリカ複数国からなる無国籍アーティスト集団Urban Cohesion(アーバンコヒージョン)クルーによるパフォーマンス。原曲を巧みにアレンジし、グルーヴ感マシマシのJ-POPは耳にとても新鮮に聴こえる。なにより演奏者、アーティストたちが楽しそうなのが見ているこちらも楽しい。Urban CohesionのSNSやYouTubeは日本語で情報発信されているのだが、このクルーを立ち上げたのは1人の日本人なのだという。


アフリカの路上に響く日本の楽曲。アーティスト集団Urban Cohesionの今までとこれから


Urban Cohesionに属するアーティストは国籍も性別も年齢も様々。代表的なアーティストとしては、SNSで見かけることも多い、Biko's Manna(ビコマナ)。シンガーの姉ビコと、ギターの弟マナによる姉弟デュオがカバーしたKing Gnu「白日」は、King Gnuメンバーである勢喜遊、新井和輝がinstagramにアップし、井口理も“いいね”したという本家のお墨付き。動画では本物のヌーがカットインで登場するなどアフリカらしさも満点だし、バックダンサーとして曲に合わせて踊りまくるキッズはビコマナの家族である3番目の男の子、フンドゥだろうか。クラブで酔っぱらった筆者そのもので親近感を覚えた(ダンスは圧倒的にこの子の方が上手であるが)。



また、同クルー所属、コートジボワールのラッパーDEFTYは、tofubeatsの「Keep on Lovin' You」のリミックスでフィーチャーされたことでご存知の方も多いだろう。



Urban CohesionのYouTubeチャンネルをのぞいてみれば、路上でハプニング的に収められたパフォーマンスだったり(動画タイトルも偶然発見的な切り口で付けられているのが面白い)、演奏動画を多数観ることができる。アーティストのプロフィールや楽曲をカバーした経緯、制作背景などが日本語で親切に記されていて、僕を含め外国語に不得手な者にも演奏のバックグラウンドが理解できるようになっている。





中には「HIPHOP WEEKEND」と称した日本のHIP HOPアーティストカバーオンリーのライヴ企画も実施されているようだ。その楽曲を観れば、ZEEBRAとAKTIONによる「Neva Enuff」、キングギドラ、童子-T、UZIによる「平成維新」、DJ RYOW「ビートモクソモネェカラキキナ」など、コアな選曲。イキっていた中高時代、カラオケでドヤ顔のマイクリレーを仲間たちと披露していた甘酸っぱい記憶がフラッシュバックする。そんなガキのカラオケとは比較にならない、想像を遥かに凌駕するバイヴスとクオリティを彼らは見せてくれている。ちゃんと本物のシマウマもカットイン。リアルだ。



そんな魅力溢れるUrban Cohesionを立ち上げたのは1人の日本人。日々、アフリカから音楽を発信し続けるUrban Cohesionについてメールで話を聞くことができた。





「繋がっていないものを繋げたい」—社会と都市生活者の融和を目指して


—まず、Urban Cohesionはどういったクルーですか? 


Urban Cohesion(以下:UC):簡単に言えば、アートや音楽好きな人たちの無国籍な集まりです。アフリカの人が圧倒的に多く、中でも南アフリカのマボネンというストリートで活動するアーティストが中心になっていますが、あまり詳細に定義はしていない柔軟なネットワークです。


Urban Cohesionは2019年に1人の日本人サラリーマンが、家族や友人に支えられながら作ったチームです。彼は10年近くアフリカを含めた海外で仕事をしており、その先々でミュージシャンやアーティストと出会い、本業の合間に一緒に制作活動をすることがありました。離れた国々にいる仲間たちと、国境を越えて何か一緒にやりたいという思いで、インターネットをベースにしたUrban Cohesionというプラットフォームを立ち上げたんです。


Urban Cohesionという名前は、Social Cohesion(社会の融和)という紛争や移民問題のある社会で使われる政策用語をもじったもので「繋がっていないものを繋げたい」という思いを込めています。アフリカを一度離れますが、パレスチナとイスラエルの両方に親しい友人がいて、距離的に遠くない彼らが絶対に交わることがない事実に悔しさを感じていたことも関係するかもしれません。


アーバン(都市の)という言葉を入れた理由は、都市という人や機会が集中する華やかで活気のある環境の魅力と、同時に失業や犯罪のリスクとも共存する実情に対する問題意識からです。アフリカの都市部には感性豊かなアーティストが集まっていますが、アーティストとして生計を立てることは奇跡に近いですし、日本のように並行して身銭を稼げるアルバイトも無かったりします(勿論、日本のアーティストも大変だと思いますが)。そんな閉塞感のなかで、彼らの活動の選択肢を1つでも増やせたら良いなという思いもあります。


—メンバーにはどういった方がいるのでしょうか? 


UC:アーティストとマネージメントに分けることが出来ると思います。アーティストは、ミュージシャン、ビジュアルアーティスト、小説家、俳優、ファッション関係など多岐に渡り、関わっている人数は50名以上になるでしょう。現状アクティブに動いているのは、南アフリカとコートジボワールのミュージシャン達で、裏方も入れて20名程度かと思います。


マネージメントとしては、プロジェクトを作った本人がいますが、本業や論文、家族のことなどもあるので、現地ベースの体制強化も進めています。コロナの状況次第ですが、2020年4月からは「元木良彦」という日本の若い映像作家がヨハネスブルグのマネージメントと撮影全般を担当してくれます。彼は直近まで、日本の大御所ミュージックビデオ監督の下で修業をしていました。


コートジボワールは、Konanという最近弁護士事務所を辞めたマネージャーが面倒を見てくれています。Konanは現地最大手のSNSサイト運営にも関わっていて、才能や思いがあるのに世に知られる機会のないアーティストの支援を彼のミッションの一つに位置付けているようです。


—クルーとしては主にどういった活動をしていますか? 


UC:各メンバーは、Urban Cohesionのプラットフォーム以外でも様々な活動をしていますが、現地での作品作りやライヴ・展示などに時間を割いていることが多いです。Urban Cohesionの枠組みでは、YouTube上に音楽動画を上げるのが今のところ主な活動になっていますが、今後はメンバー間の協働を進め、活動の領域を広げていきたいと思っています。例えば今水面下では、コートジボワールと南アフリカのラッパーで作ったトラックをイギリスのアーティストに提供する、といった話もあります。



違う国の友達同士が生み出す“時空の歪み”—「もっとぐわんぐわん歪ませたい」


—動画やSNSを日本向けに発信している理由を教えてください。


UC:言い出しっぺが日本人である背景も当然ありますが、メンバーには日本好きで日本と接点を持ってみたいというアーティストが多いです。もともとは「違う国の友達同士をつなぎたい」くらいで始まったので、そこまで考えていたわけでもないのが事実ですが、アフリカと日本をつなぐ一つのプラットフォームとしての在り方も、少しずつ内外から求められてきているのかなという感じはしています。


アフリカではなかなか巡り合えない機会や出会いをアフリカのアーティストが、或いはその反対を日本のアーティストが、Urban Cohesionを通して得られたら素敵だなと思います。そういう機会の創出を、Urban Cohesionでは恰好をつけて“時空の歪み”と呼ぶことがあります。


“時空の歪み”としては、昨年日本のプロデューサーでDJのtofubeatsさんとコートジボワールのラッパーDEFTYが「Keep on Lovin’ You」という楽曲でコラボレーションをさせて頂いたり、99年に東芝EMIからメジャーデビューしたロックバンド「ゼリ→」20周年イベントをアフリカで実現したり、私達のカバー動画に原曲のアーティストの方々からリアクションを頂けたり、沢山の方に動画を観て頂けたり。本来決して交わることの無かった方々と、アフリカのアーティストに接点を生むことができているので「ほんのちょっとだけ歪んだかな」と思っていますが、もっとぐわんぐわんに歪ませたいです。



「自分たちのスタイルや解釈、アレンジを入れています。単純にその方が楽しいので」


—日本語曲のカバーシリーズはどのようにしてスタートしたのですか?Urban Cohesionのメンバーが自然におこなっていたのでしょうか? 


UC:どうやってスタートしたか、若干曖昧です。友人関係から始まったプロジェクトなので、その前から日本の楽曲を含む色んな曲をお互いに聴かせ合ったりしていました。tofubeatsさんとのコラボに繋がったのも、たまたまメンバーと移動中に車でtofubeatsさんの曲をかけていたら、「この曲何?」と現地のアーティストが反応したのがきっかけでした。


また、そもそもヒップホップのサンプリングや、カバー、リメイクといった二次創作の文化は、その楽曲の別の表情を引き出すことが出来るので楽しいよね、という話を仲間内でしていました。日本の楽曲はメロディが美しかったり、音楽的に高度なものも多いので、音楽の勉強的な位置づけで練習しているUrban Cohesionの若いアーティストもいます。


—Urban Cohesionメンバーはカバーする曲をどうやって決めているのですか? 楽曲やアーティストのどんなところに惹かれてカバーしているのでしょうか。


UC:ざっくり言えば話し合って決めますが、その過程は様々です。日本人から何曲かオススメして選んで貰うこともあるし、アフリカのアーティスト自身が好きな曲を提案することも多いです。動画のコメント欄などで頂くリクエストも参考にしています。


カバーさせて頂く曲やアーティストの有名無名はまったく気にしておらず、演奏するミュージシャンが好きな曲をやっている感じです。あとは、未成年のアーティストがこの歌詞を歌うのはちょっと違うな、などの配慮は日本側から提案しています。


もうひとつロジスティックな面でいえば、日本の主要な著作権団体との包括契約が結ばれている関係で、YouTubeでのカバー動画のアップロードが権利上の問題を生みにくくなっていることも大きいです。自分たちの中では、権利上の問題がなくても、音楽的なリスペクトを持ってやることの方が大きいポイントではありますが。


—カバーする上でアーティストが苦労している部分やこだわっている部分はありますか? 


UC:日本語でカバーをするとき、まず苦労するのは言語でしょうか。アーティストは誰も日本語を話せないので、歌詞の意味を英語かフランス語で理解したうえで、音楽を聴きこんで、ローマ字の歌詞で覚えています。


それ以外の苦労としては、環境面が多いと思います。やる気はあるけど機材が揃っていなかったり、歌は歌えるけどビートが作れなかったり。その辺りはメンバー同士で助け合ってどうにかしています。最近は、コートジボワールのUrban Cohesionのメンバーの数名が「USB:United States of Beat」というチームを組んでバックビートだけ作り、ビートが作れない南アフリカの歌手に提供する動きも出てきました。


工夫としては、曲やアーティストによってその程度は異なりますが、ただコピーするのではなくて、自分たちのスタイルや解釈、アレンジを入れています。単純にその方が楽しいので。



日本でのライヴを実現したい。


—日本のアーティストの楽曲をアフリカで耳にすることはありますか?


UC:正直に言えば、ほとんどありません。でもアフリカの人達と話していると、日本のアーティストをYouTubeやアニメ経由で知っていたりすることは少なくないです。あとは意外と、日本でもかなりコアなDJの名前を聞くこともあって、案外ディグの文化のあるアンダーグラウンドの方が見えないところで繋がっているのかも、と思う時もあります。


—日本の楽曲に対するアフリカの方の反応はどうでしょうか。


UC:これは完全に楽曲とアーティスト個人の趣向によりますね。良い悪いとは別の基準でその曲を好きかどうかだけの世界だと思います。アフリカのアーティストが日本の曲を気に入ってくれることはとても多いですが、この時、曲の有名無名は本当に関係ないです。


特にポップスなどでは、曲の展開や構成、メロディのつけ方がアフリカの一般的なものと違うことも多いので、音楽的にとても勉強になることも多いです。


—日本でのライヴなどは今後、行われるのでしょうか?


UC:ぜひ、やりたいです。今年中にクラウドファンディングなどで実現したいですが、コロナウィルス含め、色んな状況の見極めをしながらだと思います。アフリカから5人来日すれば渡航費だけでざっくり100万円という世界ですので、金策を練る必要はありそうです。赤字でも今年どうにか実現したいことの一つです。


あとは、今年アルバムを制作予定のアーティストもいるので、もし需要があれば日本の皆様にもオリジナルの楽曲を聴いて頂ける機会が作れると良いなと思っています。




「子猫の手も借りたい。そして誰でも参加できるプロジェクトにしたい」


—Urban Cohesionのオリジナル楽曲は日本ではどのようにして聴くことができますか? 


UC:YouTubeやMyspaceなどに各アーティストが置いている楽曲がありますが、一緒に作ったものを含め、必ずしもUrban Cohesionの名義で出していません。現在ウェブサイトを準備中ですので、そちらから飛べるようにする予定です。サブスクなどの配信も、いずれは考えたいです。


—カバーシリーズ以外でUrban Cohesionメンバーのオススメの楽曲を教えてください。


UC:あまりに沢山あるので、とりあえず1つだけ選んでみました。



UC:Les AutresというコートジボワールのグループのボーカリストIngaが、別の名義で出している曲です。Ingaは米津玄師さんとDAOKOさんの「打上花火」のカバーをさせて頂き、その動画のリンクから日本の方が訪れて、こっちの動画にも沢山のコメントを残してくれました。西アフリカの無名のアーティストの動画が日本のコメントで溢れているのを見た時は、胸にこみ上げてくるものがありました。



—Urban Cohesionの活動を支援するためにわたしたちができることはありますか?


UC:子猫の手も借りたい、という現状です。そして、誰でも参加できるプロジェクトにしたいと思っています。でも、寄付は今のところ受け付けない方針です。


カバー動画に字幕を付けたり、日本語の歌詞をローマ字にしたりみたいな作業すら手が回っていないですし、英語やフランス語(或いは中国語や韓国語でも)、デザインや映像、音楽が出来る方、遠隔や現地でインターンして下さる学生さん、日本でイベントスタッフをしてくださる方など、いらっしゃればすごく助かります。そういうサポートをして下さる方に作業を振らせて頂くFacebookコミュニティとかを作りたいと思いつつ作れていないので、そもそもそこから作って下さる方、そしてコラボレーションしてくださるアーティストの方々も募集中です。


受入れのキャパ自体が弱いので少しずつだと思いますが、みんなで作っていくオープンなプロジェクトにできたら楽しいなと思っています。




コロナウィルスによって不安定な世界情勢。先行きは不安でも、音楽が日常を彩ってくれる。それは単なる気休めなのかもしれない。しかし気休め上等。美しいものを美しい感じられなくなってしまったらそれは、病原体に感染するよりも恐ろしいことだと思う。アフリカに行ったことはないが、日本よりはおそらく治安も悪いだろうし、不便も多いだろう。しかしUrban Cohesionにとってそれは日常で、今日もアフリカの路上から美しい歌声とグルーヴィーな演奏を発信する。僕はこれらの動画の中で、身体を目一杯つかって音楽を楽しんでいる彼、彼女らの姿に元気づけられ、背中を押された。日本でその姿が観られる日を心待ちにするとともに、この記事が来日ライヴを実現するのにほんの少しでも役立てたら幸いだ。





▶Urban Cohesion 


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photo:Urban Cohesion Youtube




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