block.fmライターが選ぶ2020年注目すべきアップカミングアーティスト

田島ハルコ、SATORUなど2020年はさらなる飛躍が期待できる若手アーティスト4組をピックアップ。
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2020.01.01 10:00

様々な音楽が勃興したテン年代が終わり、新たな10年紀の始まりを告げる2020年。先の10年の間には音楽業界の環境も変化し、テクノロジーの発達により、音楽機材の進化やリリース、マネタイズ、プロモーションの”民主化”が進み、レーベルに所属せずともアーティスト個人が自由に音楽を流通させることができる時代になった。 


しかし、その一方で、誰でもアーティスト活動ができるようになり、楽曲のクオリティだけでなく、様々な分野に対して、アーティスト自身が相当なセンスを発揮しないと頭角を表すことが難しくなったのも事実だろう。今回は、そんな環境の中で活動を続け、最近、にわかに注目を集める若手アーティストの中から2020年さらなる飛躍が期待できる4組をピックアップしてご紹介したい。



女性のエンパワメントを推進するNEWWAVE GYARU - 田島ハルコ 


2018年にアジア風サウンドとレゲトンを独自のセンスで融合させた”ネットの中のアンダーグラウンド”なヴァイヴス溢れる楽曲「奇跡コントローラー」をひょんなきっかけで知って以来、筆者にとっては気になる存在となった”NEWWAVE GYARU(ニューウェイヴギャル)”田島ハルコ。2019年は先述の曲を含むアルバム『聖聖聖聖』に続く、新作アルバム『kawaiiresist ──カワイイレジスト──』をリリースし、注目を集めた。 


そんなアルバムを通して発信されるメッセージは”女性のエンパワメント”の推進だ。また前作に比べ、トラップ色を強めた印象も強く、ラッパーのワッショイサンバを客演に迎えた「ちふれGANG」、タイトル曲の「カワイイレジスト」などヒップホップサイドに接近した曲が目立つ。とはいえ、「人権 MAX Princess」のようなジューク/フットワークに通じるビート感の曲もあれば、「Astral Gal」のようなレイヴ寄りの曲も収録されるなど、前作に動揺、様々なエレクトリックミュージックの要素がごちゃまぜになっており、田島の楽曲制作センスの多様さを感じる。また2019年にはTBSラジオ『アフター6ジャンクション』で楽曲を紹介されるなど、インターネットの枠外にもその名が知られることに。そんな彼女は2020年1月31日に東京・WWWで自身初のワンマンライヴを開催。ヴェイパーウェーヴ由来のネット感から昨今の社会問題までをリンクアップさせる田島ハルコの晴れ舞台ではどのようなパフォーマンスが披露されるのかに期待したい。ちなみに筆者はTシャツ付きチケットを購入済み。気になった人はあわせて彼女が販売するユニークなマーチャンダイズにも注目してほしい。



ストリートのリアルを告げるリリック全てがパンチライン - SATORU 


2019年、突如インターネット上に現れ、瞬く間に知名度を上げた若手アーティストといえば、栃木県足利を拠点に活動する若手ラッパーのSATORUだろう。彼が注目されるきっかけになったのは、敬愛する地元の先輩ラッパーについてラップした「MAKA」のリリックの過激さと某USのお騒がせラッパーのMVを彷彿とさせるMVだった。そんなSATORUの魅力といえば、ストリートのリアルとその中で育った自身のバックグラウンドを全リリックがパンチラインといえるワードの強さでリスナーに伝えていくところ。そのことについては、話題になったデビューEP『金と女と注射器』を聴いていただければよくご理解できるはず。 


また2019年年末までストリートの真実について”一切の出し惜しみをする事なくオブラートに包まず、ありのままの真実を全てこの作品で【暴露】する”究極の1stアルバム”『路上の真実』”リリースに向けたクラウドファンディングも早耳のヒップホップファンの間で注目されたことも記憶に新しい。さらに今後は、先述の某USのラッパーの劣化版と褒め称えてくれるヘイター達に対する”感謝の気持ち”を込めたEP『SATORU69』の配信も控えており、そちらには理貴、Lil’Yukichi、ZOT on the WAVEといった現在の国内ヒップホップシーンを代表するプロデューサーたちが参加していることからもシーンにおいて注目すべき存在になっていることがわかる。





ウィスパーボイスで作り上げられるアトモスフェリックな音世界 - 玉名ラーメン 


18歳のラッパー、玉名ラーメンが作り出す音楽は一言でいえば、とにかくアトモスフェリックだ。2019年はいくつかのEPとシングルをリリースし、そのアブストラクトなトラックが一部のコアな音楽ファンの間で話題になった。  


玉名ラーメンの特徴は、純粋なラップというよりは、朗読のように言葉を紡ぎ出していくウィスパーボイスによるラップだ。ウィスパーボイスのガールズラップといえば、泉まくらが頭に浮かぶが、トラック自体は先述のとおり、よりアトモスフェリックで幻想的なヴァイヴスに満ち溢れている。時にかつてのフォークトロニカの雄、múmのような哀愁を感じることもあれば、ウィッチハウスにも通じる耽美さも感じる。そのため、海外のそういった音楽好きにとっては、間違いなく気になる存在だろう。気になった人は醒めるような耽美さを醸し出すEP『organ』と玉名ラーメン流の”エモトラップ”「柔らかい」あたりからまずはチェックしてほしい。



京都発、令和のコズミック・シティ・ポップの担い手 - SNJO  


今、ネット界隈で注目を集め、急成長を遂げているといわれているのが、ヴェイパーウェーヴ以降の「ポップ・ミュージック」的音楽性で話題の島根のネットレーベル「Local Visions」だ。そのLocal Visionsを代表するのが京都を拠点に活動するプロデューサーのSNJO(シンジョー)。


2018年に同レーベルからリリースされたアルバム『未開の惑星』が当時、好事家たちの間で話題になり、2019年には新作アルバム『Diamond』を再び、Local Visionsからリリース。『未開の惑星』は、コズミックブギー的なアプローチの曲からシンセウェーヴ、フューチャーベース、エレクトロの影響がうかがえる作品であり、『Diamond』はそれをさらに発展進化させ、よりアーバンに仕上げた作品になっている。どちらもインストの洒落たかっこよさに一聴するだけで耳を奪われるが、SNJOの音楽のそこに加えられた歌によってより洗練されたポップ・ミュージックに昇華されているといっても決して過言ではないだろう。海外アーティストでいえば、Space Dimension Controllerにも通じるコズミックなメロウさを持ちつつ、日本人特有の耳馴染みの良い叙情的なメロディセンスによる歌の合わせ技から生まれる楽曲はまさに今後、世界的にも認められるであろう令和のコズミック・シティ・ポップだ。



written by Jun Fukunaga



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