lute×block.fm|TOKiMONSTA 独占インタビュー。難病を克服して辿り着いた新たな音楽の境地とは?

脳手術を伴う大病を患い、一時は音楽を聞けなくなってしまっていたLA出身のビートメイカー、TOKiMONSTA。復活のサード・アルバム『Lune Rouge』で辿り着いた新たな境地を語る。
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2018.08.24 08:50

2015年後半、患った脳血管障害の一つ「もやもや病」によって、音楽活動中断を余儀なくされた、LAを拠点に活動するビートメイカー・TOKiMONSTA。一時は言葉が理解できない段階まで進行したものの、2度の脳手術とリハビリによって克服し、昨年10月に実に4年ぶりとなるサード・アルバム『Lune Rouge』を完成させた。人生最大の困難の先に実を結んだ今作が、どのような意味をもたらしたのか。彼女自身の内面に迫る、独占インタビューをお届けする。


以前はShing02とも、坂本龍一ともコラボしたことがあった。次はちょっと意外な人とコラボしてみたい


▷自分の音楽を言葉で表現するなら?


TOKiMONSTA : エレクトロニックでもあり、ヒップホップやR&B、ポップな時もある。正直、自分でもどう答えればいいのか分からないな。 


▷オフの日はどう過ごす?


TOKiMONSTA : 友達に会ったり、ご飯を食べに行ったり、猫とゴロゴロしながらテレビを見てる。


▷誰と普段遊ぶ?


TOKiMONSTA : LAに帰っている時は、ミュージシャンでもない友達と遊ぶことが多いかな。LA育ちだから、音楽を作り始める前からの友達がほとんどで。アーティストとしてではなく、等身大のまま愛してくれている友達には感謝している。 





私の音楽をあまり聴かないとか、むしろ好きじゃないっていう友達もいるんだよね。彼らとの経験が私を穏やかにしてくれていると思う。もちろん、ミュージシャンたちとも遊んでいるけど、猫と一緒に時間を過ごすのが一番多いかな。


▷影響を受けた人は? 


TOKiMONSTA : いろんな人にインスパイアされている。J Dilla、DJ Shadow、RZA、Aphex Twinのような、ヒップホップと、エレクトロニックミュージック周りのプロデューサーには特に。


▷どこで音楽制作をする?


TOKiMONSTA : 昔はよく家の部屋で作っていたけど、今では世界中で作れるようになった。ホテルの部屋の中、飛行機の中でも。エネルギーとモチベーションがあれば、パソコンを開いて作り始める。


▷音を作るにあたって、一番大事にしていることは? 


TOKiMONSTA :ユニークなものになることと、聞き手に何かを感じてもらうこと。


▷今の音楽業界に不満はある?


TOKiMONSTA : もちろん、ある。一番は、有色人種と女性のリプレゼンテーションが少ないこと。でも、両方私に当てはまることなんだよね。私のような人間が前を走ることで、音楽業界の有色人種と女性が表現する場や、舞台裏の人々やミュージシャンが増えてきているように思う。まだまだだけど、少しずつ変わっているのを見ると希望をもらえる。


▷日本人のアーティストでコラボしたい人はいる? 


TOKiMONSTA : もっと日本人のアーティストとコラボしたいと思ってる。前にShing02とコラボしたことがあって、彼とは今もすごく仲良くしてるよ。ありがたいことに、坂本龍一ともコラボしたことがあった。次はきゃりーぱみゅぱみゅのような、ちょっと意外なアーティストとコラボしたいな。日本からはいつも素晴らしいアーティストたちがデビューしているし、素敵なプロデューサーもいる。例えばDaisuke Tanabe。彼のことは本当に尊敬している。


▷初めて日本に来た時の印象は?

 

TOKiMONSTA : まだ学生で、旅行で来ていたんだよね。最先端でユニークで、多くの人が自己表現していた。東京のような場所は他にないと思う。




手術をきっかけに「もし明日死んでも、自分の作っている音楽に自信を持てるか?」と問いただした


▷「もやもや病」にかかっていることを知ったのは?


TOKiMONSTA : 2015年後半に、前回のアルバムのツアー中に、自分が「もやもや病」になっていることを知った。実はもやもや病は日本の医者が付けた名前で「煙」という意味なんだ。脳に血が通いづらくなることで、最終的には致命的な影響を与える難病。一番大変なのは、病気がどこまで進行しているのかがわからないことかな。脳に5%〜10%の血液しか届かないこともあるから、いつ脳がシャットオフするかわからない。私は自分がその病気であることすら知らなかったんだ。


▷手術による影響は?


TOKiMONSTA : 副作用で人と話せなくなったり、物事の理解度が落ちたり、音楽を聴けなくなってしまった。次第に音楽に対する喜びも感謝の気持ちもなくなり、音楽を作れなくなって。ただ、感情やスキルを全て失っても「お腹空いた」や「何かしなきゃ」のような思考は残っていて、言葉が出なくなっただけ。誰かに話しかけられても、何を言っているか理解できなかった。


その経験はとても辛かったけど、少しずつ改善していくのが徐々に見えてきて。話ができるようになったり、音楽を聴く能力も戻ってきて、そこから少しずつ音楽も制作できるようになったの。だから「音楽の作り方を全部忘れて、全てを習い直した」という感じではなくて、どちらかというと「見えないところに隠れてしまった(音楽を作る)スキルが、治癒することで戻ってきた」という感覚だった。

再び自信をもって質の高い音楽を作れることががわかった瞬間『Lune Rouge』の制作を始めたの。この最新アルバムは、私にとって、生きていることに対する祝福。周りの評価を気にせずに自分を表現できたと思う。




▷具体的には自分の内面のどんな部分が変化した?


TOKiMONSTA : このアルバムを制作するまでは、周りの人や社会からのプレッシャーを感じていたんだよね。「この人はこういう音楽を作っていて、それがうまくいっているから有名で、お金もたくさん入ってきている」。そんなふうに周りのアーティストを見てしまうと―もちろん、なるべくそんなことには影響されないように努力するけど―、プレッシャーを感じるのは避けられない。「(病気でこれまで通りの音楽を作れなくなって)今までの私のようにやっていたらもっと有名になって、もっと成功していただろうな」と思ってしまっていた。


でも、手術のおかげで目覚めることができた。自分自身に「もし明日死んでも、自分の作っている音楽に自信を持てるか?」と問いただしたの。「他の人と同じように音楽を作っていたな」と思いながら死にたくない。だからこそ、このアルバムは自分がハッピーになるものを作ると決めた。たとえそれがポップなテイストでも、(これまでの自分の作風から見れば)ちょっと変なものでも、トレンドの方向性じゃなくても。一連の経験から、今回の作品は生まれたの。


▷最後に、日本のファンへにメッセージをお願いします。


TOKiMONSTA : 何年にもわたるサポートにとても感謝しています。日本に来る素晴らしい機会を何度ももらってきました。 大好きです。オルタナティブな音楽でも、みんなが音楽を愛しているところが大好き。皆さんにどれほど感謝しているか、どれほど愛しているかを感じてくれたら嬉しいです。 次回来日する時も、初めて来たときと同じくらい幸せであることを願っています。



 



written by lute

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